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韓国KHNP社 ポーランドでの「APR1400」建設に向けサイト調査開始
韓国水力・原子力会社(KHNP)は11月11日、ポーランド中央部のポントヌフにおける韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指して、韓国の原子力企業チームが現地でのサイト調査に着手したと発表した。ポーランドの原子力開発計画では、100万kW級の大型原子炉を2043年までに6基、合計600万kW~900万kW建設することになっており、同国のM.モラビエツキ首相はこの件について10月末に「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表。同国北部のルビアトボ-コパリノ・サイトにおける最初の3基、375万kW分として、WH社のAP1000を建設することになった。一方、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は同じ頃、ポーランドの原子力開発計画の一環としてポントヌフで「APR1400」を建設することを目指して、KHNP社が年末までに建設費や資金調達方法などを盛り込んだ予備的建設事業計画を準備できるよう支援する協力覚書を、ポーランド国有資産省(MOSA)と締結した。また、ポーランドの原子力開発計画を担当する国営エネルギー・グループ(PGE)は、ポントヌフで別途、小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているエネルギー企業のZE PAK社とともに、「APR1400」の建設計画でKHNP社に協力するための「企業間協力意向書(LOI)」を3社間で締結していた。KHNP社の発表によると、韓国チームは同社のほかに韓電技術(KEPCO E&C)や韓電原子燃料、韓電KPS、斗山エナビリティ(前「斗山重工業(株)」)、大宇建設などで構成されている。現在はZE PAK社の社員と協力して、9日からポントヌフの原子力発電所サイトとしての特性調査を開始しており、これまでに冷却水の水量や送電網との接続状況といった適性を検証している。同チームはまた、ZE PAK社のZ.ソロルツ会長とも、この計画に関する事業協力案について協議している。KHNP社はまた、このプロジェクトにおける韓国とポーランドの協力関係を強化するため、韓国原子力発電輸出産業協会(KNA)、ポーランド電力産業協会(IGEOS)と、10日にワルシャワで「APR1400サプライヤーズ・シンポジウム」を共同開催した。このシンポには、ポーランドの政府や関係機関、原子力サプライヤーなどから約200名が参加しており、韓国チームは「APR1400」の優秀性をアピールするとともに、ポーランドへの技術移転戦略などを紹介した。このイベントではさらに、両国の原子力関係企業が相互協力できる分野や人的交流の拡大等についての会合が複数開催され、韓国チームはポーランドの関係サプライヤー13社と了解覚書を締結。ポーランドの原子力発電所建設に対する資機材の相互提供や、運転・保守等でも企業間協力を強化することになった。このほか、KHNP社の海外原子力プロジェクト担当者が同じ日、ポーランドで副首相を兼任するJ.サシン国有資産相らと会談。このプロジェクトの事業計画の作成やサイトの適性評価計画、ZE PAK社との協力案について協議している。(参照資料:KHNP社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Nov 2022
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ポーランド 大型炉3基にAP1000を採用
ポーランド政府は11月2日、大型原子炉を備えた最初の発電所として、米ウェスチングハウス(WH)社が開発した第3世代+(プラス)の加圧水型炉「AP1000」を建設することを承認したと発表した。気候環境大臣が提出していた決議を内閣が正式に承認したもので、この承認と同時に同決議は発効している。同国の改訂版「原子力開発計画(PPEJ)」では、2043年までに複数サイトで100万kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900万kW建設することになっており、政府は今回、このうちの最初の3基、375万kWに安全で実証済みの技術を用いたAP1000を採用すると表明。原子力発電所の建設に最適の地点として昨年12月に選定した北部のルビアトボ-コパリノ・サイトで、2026年にも初号機の建設工事を開始し2033年の完成を目指す。これによりポーランドは、エネルギー供給保証の基盤として新たな電源を確保しつつ、エネルギー・ミックスの多様化を図り、電力価格を低い水準で安定させるとともに、発電部門におけるCO2の排出量を削減。クリーンで安全な原子力発電所の建設に向けた新たな産業部門を、国内経済にもたらしたいとしている。ポーランドにとって、エネルギーを恒久的に自給しロシア産のエネルギーから脱却する上で、国内最初の原子力発電所建設に向けた投資を加速することは非常に重要である。そのため、原子力発電所の建設計画は長年にわたって、同国のエネルギー部門における重要課題の一つとなっている。政府のPPEJについては、WH社のほかにフランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの原子炉を提案。韓国政府とKHNP社は先月末、PPEJを補完する計画として、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)建設の実現を目指し、ポーランド政府との協力に向けた覚書、および同国企業との協力意向書を締結した。一方、WH社は9月12日、ポーランドと米国の両国政府が2020年10月に締結した「(ポーランドの)民生用原子力発電プログラムに関する政府間協定(IGA)」に基づいて、大型炉建設のロードマップとなる「民生用原子力分野における両国間協力の概念と計画に関する報告書」をポーランド気候環境省に提出。その中で、WH社がポーランドの計画にAP1000を提供する方針であること、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)や国際開発金融公社(DFC)が同計画に融資を行う可能性があることを示していた。今回ポーランド内閣が承認した決議では、WH社のこの報告書の提案に同意することになり、明示されているそれぞれの基本的義務事項を双方が履行する。具体的には関係する企業を支援するとともに、政府レベルでも規制やスタッフの訓練といった活動や、サプライチェーンの構築や一般国民の理解を求めるキャンペーン等を実施していくことになった。ポーランド政府は今回、エネルギー部門の重要課題を解決するための方策として、AP1000の初号機を2033年までに完成させることを挙げたほか、国内2つ目の原子力発電所を建設する準備を進めるため、速やかに対策を講じるとした。また、現在主流となっている化石燃料発電を低炭素な電源に取り換えるほか、電力需要を満たしつつ送電網の安定を図るため、分散型の再生可能エネルギーを大規模に導入するとした。さらに天然ガスの役割については、再エネの不安定な供給量を補完する移行期の燃料に限定するとしている。2つ目の原子力発電所の建設準備については、気候環境省のA. モスクヴァ大臣が記者会見の席上、「欧州その他の国の企業とも協力する余地が残されている」と発表。内閣の意向として、現段階では採用炉型の決定を待たずに建設準備を加速することを明らかにしている。なお、WH社は同じく2日付でコメントを発表しており、「ポーランドと当社にとって歴史的な日になった」と表明。ポーランドの建設計画については、AP1000設計の採用を前提に同社は今年1月、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したほか、9月にはさらに22社の同国企業と、ポーランドおよびその他の中欧地域におけるAP1000建設への協力を取り付けるため、了解覚書を締結したと改めて表明している。(参照資料:ポーランド政府の発表資料(ポーランド語)①、②、③、ウェスチングハウス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Nov 2022
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韓国KHNP社 ポーランドのポントヌフにおける「APR1400」建設に向け協力意向書
韓国の産業通商資源部(MOTIE)は10月31日、ポーランド中央部のポントヌフ地域で韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設に向けた計画の策定と支援を行うため、ポーランド国有資産省(MOSA)と情報交換等の協力を行う了解覚書を、また両国の関係企業3社が「企業間協力意向書(LOI)」を締結したと発表した。ポーランドでは2021年2月に内閣が決定した「2040年までのエネルギー政策」に基づき、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設するプログラムを進めている。同国の国営エネルギー・グループ(PGE)が設立した原子力事業会社のPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)は昨年12月、バルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区を建設サイトに選定しており、この案件の最初の部分についてM.モラビエツキ首相は2日前の10月29日、「ウェスチングハウス(WH)社の技術を採用する」と発表していた。ポントヌフにおける今回の協力構想について、ポーランドのPGEグループは31日付のリリースで「政府の原子力プログラムを補完するもの」と説明。LOIでは、同グループがエネルギー企業のZE PAK社とともに、韓国国営の韓国水力・原子力会社(KHNP)と協力する可能性を模索することになったが、主な目的は「APR1400」の建設に向けた予備的開発計画を年末までに作成すること。このプロジェクトを通じて、ポーランドのエネルギー供給システムの安定性と独立性を向上させ、安価でクリーンなエネルギーを今後60年にわたって安定供給していく。また、同プロジェクトを通じてポーランドの経済的競争力を強化し、新たな投資の機会を創出したいと述べている。ポントヌフ地域では、ZE PAK社と同国の大手化学素材メーカーであるシントス社が昨年8月、ZE PAK社所有の石炭火力発電所に共同でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」、あるいはその他の有望な米国製SMRを4基~6基(出力各30万kW程度)建設すると表明した。今回PGEグループは、同地で同グループとZE PAK社、およびKHNP社の3社が実施する具体的な作業として「APR1400」の建設に向けた地質工学的解析、地震条件や環境条件などの予備的調査を挙げている。3社はまた、準備作業と建設・運転段階における予算の見積もりや資金調達モデルの提案、実施スケジュールの作成と各段階の作業区分けなども実施。さらには、安価でクリーンな電力を適宜安定供給していくため、見積もり投資額や関係支出を合理的に抑えていくとした。「APR1400」を採用した発電所の建設に投資することで、ポーランド企業には新たな技術に対応した広範なサプライチェーンへの参加機会がもたらされるとPGEグループは指摘している。ポーランドの副首相を兼任する国有資産省のJ.サシン大臣は、「昨今のような地政学的状況下においては特に、原子力はポーランドにとって不可欠の重要電源になる」と指摘。低コストなエネルギーとエネルギーの自給という観点からも、ZE PAK社とPGEグループが進める今回の協力構想は、ポーランドの戦略的目標の達成に向けて、大きく貢献すると述べた。また、「『2040年までのエネルギー政策』の中でポントヌフは大型原子力発電所の建設候補地の一つだったが、同地での建設計画はポーランドの原子力プログラムにも貢献する」としており、両社がKHNP社との協力協議を開始し、韓国との協力関係強化に乗り出したことに歓迎の意を表明している。なお、ポーランド政府の原子力プログラムに沿ってルビアトボ-コパリノ地区で大型炉を建設する件について、「WH社の技術を採用する」とM.モラビエツキ首相が発表した後、両国政府もWH社も詳細を公表していない。しかし、米国のK.ハリス副大統領はこの発表ツィートに対し、「この協力が我々すべてにとって有益なのは明らかであり、地球温暖化に対処するとともに欧州のエネルギー・セキュリティ強化に貢献、両国の戦略的協力関係も深めていきたい」と返信。米エネルギー省(DOE)のJ.グランホルム長官も、「ポーランドが400億ドル規模となる建設プロジェクトの最初の部分に米国とWH社を選定したことはビッグニュースだ」とコメント、これにより米国では10万人以上の関係雇用が維持・創出されると説明している。(参照資料:韓国産業通商部(韓国語)、PGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Nov 2022
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【短信】ポーランド首相 ツイッターに「WH社の技術を採用する」と投稿
ポーランドのM.モラビエツキ首相は10月29日、自身のツイッターアカウントに「米国のK.ハリス副大統領、およびJ.グランホルム・エネルギー省(DOE)長官との協議を終え、我が国の原子力発電プロジェクトではウェスチングハウス(WH)社の安全で信頼性の高い技術を採用することを確認した」と投稿した。同国では2021年2月に内閣が決定したエネルギー政策に基づき、国営企業が進めている小型モジュール炉(SMR)の導入計画とは別に、約100万kWの大型原子炉を2043年までに6基、合計600万~900万kW建設することを計画中。米WH社のほかに、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がそれぞれの技術を提案していた。(参照資料:モラビエツキ首相の投稿、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 Oct 2022
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加カメコ社とブルックフィールド社の再エネ投資会社がWH社を買収
カナダのウラン生産大手であるカメコ社と、再生可能エネルギーに特化した投資会社のブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズ(BEP)社による戦略的企業連合は10月11日、米国の大手原子力発電機器メーカーであるウェスチングハウス(WH)社を総額78億7,500万ドルで買収すると発表した。この総額には負債も含まれており、これを除いた株式の価値は約45億ドル。WH社の株式は現在、ブルックフィールド・ビジネス・パートナーズ(BBU)社が44%、残りを提携する機関投資家が保有しており、カメコ社は約22億ドルで全体の49%を取得しWH社の最大株主となるほか、BEP社と複数の機関投資家が共同で約23億ドルを支払い、それぞれ17%と34%取得する。買収手続きは、BBU社の関係投資家や規制上の承認を得たうえで、2023年後半に完了する予定である。BBU社の発表によると、同社とBEP社の親会社であるブルックフィールド・アセット・マネジメント社が2018年に東芝からWH社を買収して以降、WH社はBBU社の下で中核事業である原子力発電機器や関連サービスに改めて集中。運営費の削減や社内の専門技術を強化することにより、その収益性は2倍近くに拡大した。また、原子力発電は近年、脱炭素化という世界的な目標の達成に有効な、信頼性の高いクリーンエネルギー源として認識されつつあり、WH社の事業はこうした強力な追い風の恩恵を受ける理想的な位置にある。 このような背景から、カメコ社とBEP社はそれぞれが保有する原子力関係とクリーンエネルギー関係の専門的知見を統合、クリーンエネルギー社会移行への中核事業として原子力を位置づけている。今回の買収を通じて、原子力部門を戦略的成長の中心基盤とする考えだ。BBU社のC.マドンCEOは、「この4年以上の間に当社はWH社の事業運営を大幅に改善しており、売り上げを拡大するとともに世界的リーダーとしての立場も強化。同社の経営状態は非常に良好だ」と述べた。カメコ社のT.ギッツェル社長兼CEOは、「原子力部門にとって、市場はかつてないほど良好な状態にあり、原子力は安全・確実かつ安価に無炭素なベースロード電力を生み出せる数少ない発電方法の一つだ」と表明。電化や脱炭素化、エネルギーの供給保証が優先される世界の中で、その重要性はますます大きくなると指摘した。同CEOはまた、「WH社の買収によって、原子力のバリュー・チェーン全体が成長するための基盤が築かれるほか、当社の戦略とも完全にマッチする」と強調。エネルギーの原産国や輸送の安全性が大きな関心事となっている現在、既存の顧客のみならず新たな顧客のニーズに応えるカメコ社の能力が増強されるとした。さらに、「WH社が提供する原子力発電設備製造や関連サービス、原子燃料は強力な収入源となり、当社のウラン燃料事業を補完する安定したキャッシュ・フローが生み出される」と説明している。(参照資料:BBU社、カメコ社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Oct 2022
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ルーマニア原子力公社、SMR建設でプロジェクト企業設立
ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は9月27日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁で、同計画のプロジェクト企業「RoPower Nuclear社」を設立したと発表した。計画では、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設する。2028年頃の完成を目指す。同発電所ではまた、出力約8万kWの再生可能エネルギー源も併設する予定である。SNNとノバ社が折半出資するRoPower社は今後、米国のJ.バイデン大統領が今年6月にルーマニアへの提供を約束した支援金1,400万ドルを使って、この計画の予備的な基本設計(FEED)調査を実施する。具体的には、設計・エンジニアリング活動や建設サイトの詳細な技術分析、国内外の基準に適合する許認可活動を行うとしており、その際は国際原子力機関(IAEA)が今年8月に実施した「立地評価・安全設計レビュー(SEED)」の勧告事項も適用する方針である。 設立の記念式には、米国務省のJ.フェルナンデス経済成長・エネルギー・環境担当次官やルーマニア・エネルギー省のV.ポペスク大臣が同席した。同大臣は、ルーマニアで建設されるSMR初号機が欧州においても初のものになるとした上で、「この建設計画は、原子力分野における米国とルーマニアの連携協力の成功例だ」と指摘。この協力により、ルーマニアは最も重要な経済面の安定やエネルギーの供給保証という恩恵を被ることから、ルーマニア政府も同計画が近隣諸国を含めたエネルギーの自給に有効との認識から、支援していると強調した。この計画に関しては米国政府も積極的に後押ししており、2019年3月にSNNとニュースケール社が最初の協力覚書を結んだ翌年の10月、ルーマニアと米国の両政府は、ルーマニアでチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画を米国が支援するだけでなく、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化にも協力するため、「原子力分野における政府間協力協定(IGA)」に調印した。これと同じ日に米輸出入銀行(US EXIM)は、ルーマニアのエネルギー・インフラ分野等に対して、最大70億ドルの財政支援を行うための了解覚書を同国政府と結んでいる。2021年1月になると、米貿易開発庁(USTDA)がSMR建設サイトの選定に向けた予備的評価作業のため、約128万ドルの技術支援金をSNNに交付。この調査が完了した今年5月には、建設に適した候補地が複数特定されており、最有力候補であるドイチェシュティで詳細調査を行うことになった。同月24日には、SNNとニュースケール社、およびドイチェシュティの石炭火力発電所オーナーで、ノバ社を傘下に置くE-Infra社グループが了解覚書を締結、SMR初号機の建設について分析評価を行うと表明している。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2022
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中国で三門原子力発電所Ⅱ期工事の3号機が着工
中国核工業集団公司(CNNC)は6月28日、浙江省の三門原子力発電所で、3号機(PWR、125.1万kW)の原子炉系統の据付部分に最初のコンクリートを打設したと発表した。同炉は今後着工する4号機(PWR、125.1万kW)とともに同発電所のⅡ期工事に位置付けられており、CNNCはこれにより正式にⅡ期工事の建設工事開始を宣言した。同発電所および山東省の海陽原子力発電所では、受動的安全系を装備した米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)設計の「AP1000」が2基ずつ、それぞれ1、2号機(三門は各125.1万kW、海陽は各125.3万kW)として、2018年から2019年にかけて営業運転を開始。これらのうち、最も早い2018年9月に運転を開始した三門1号機は、世界で初のAP1000となった。今回の発表で、CNNCは三門3、4号機の炉型に言及していないが、AP1000設計中国版の標準設計「CAP1000」になるとの見方が有力である。CAP1000の開発は、その容量拡大版のCAP1400が中国に知的財産権を認めるとのWH社との契約にはあったものの、これまでその進展状況が明らかにされていなかった。中国・国務院の常務委員会は今年の4月20日、三門発電所と海陽発電所、および広東省の陸豊原子力発電所で、大型炉を新たに合計6基建設する計画を承認した。これを受けてWH社は同月26日、「新たに4基のAP1000建設が三門と海陽で承認されたことから、世界のAP1000は米国で建設中のものも含めて合計10基になる」とコメントしている。CNNCによると、浙江省には中国初の原子力発電所となった秦山原子力発電所(I期工事~Ⅲ期工事まで合計7基)が立地するなど、同国の原子力産業の発祥地である。三門発電所では最終的に合計約600万kWのPWR建設が予定されており、1、2号機の発電量は累計ですでに600億kWhを超えた。Ⅱ期工事の3、4号機が完成した場合、同発電所の設備容量は500万kWを超え、これらによる総発電量は年間400億kWhに到達する見通し。これは年間3,000万トンのCO2の排出が抑制されることを意味しており、浙江省と長江デルタ地域における中・長期的な電力供給を支えるとともに、産業構造とエネルギーミックスの最適化を促進。クリーンで低炭素なエネルギーへの移行が促され、同省の高度な社会経済の発展がもたらされる。 CNNCの顧軍・総経理も三門3号機が本格着工したことについて、「浙江省とCNNCの産業開発にとって非常に重要な意味があり、エネルギー分野における両者の協力は今後さらに進展する」と指摘した。また、今後の抱負として、「国家の要求に応じてCNNCは今後も原子力開発を積極的かつ整然と進めていき、クリーンなベースロード電源としての原子力の役割を十二分に発揮させる。科学的な計画立案と高い技術を備えた開発を精力的に促して、電力・エネルギーの供給と低炭素社会への移行を確実なものとし、経済の安定化を図りたい。中央企業としての実践活動の中で社会・政治的な責任を果たすとともに、中国原子力産業界の質の高い発展を牽引していく」としている。(参照資料:CNNCの発表資料①、②(中国語版)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Jun 2022
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ウクライナとWH社が追加契約、全基分の燃料調達と合計9基のAP1000建設へ
ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社と米ウェスチングハウス(WH)社は6月3日、ウクライナで稼働する15基のロシア型PWR(VVER)すべてにWH社製原子燃料を調達するとともに、同国で建設するWH社製AP1000も9基に増やすなど、これまでの協力を大幅に拡大する追加契約を締結した。ウクライナのロシア離れは、2014年にロシアがクリミア半島を一方的に併合して以降、進展している。南ウクライナ原子力発電所やザポリージャ原子力発電所ではすでに、2015年から2016年にかけてWH社製原子燃料の試験装荷が始まっていた。ウクライナはまた、建設工事が中断しているフメルニツキ原子力発電所3、4号機(K3/K4)(各100万kWのVVER)の完成に向けて、2010年にロシアと結んでいた協力協定を解除すると2015年に表明。2021年8月にエネルゴアトム社がWH社と締結した契約では、建設進捗率が28%のK4にAP1000を採用するとしたほか、その他の原子力発電所も含めてAP1000をさらに4基建設するとしていた。両社の今回の追加契約ではさらに、ウクライナ国内でのAP1000建設プロジェクトを支える「ウエスチングハウス・エンジニアリング・センター」を同国に新たに設置することになった。ウクライナで稼働する既存の15基の運転支援や、これらの炉で将来的に実施される廃止措置の支援も、同センターの役割に含まれるとしている。追加契約への調印は、最初のAP1000が2基建設される予定のフメルニツキ原子力発電所で、エネルゴアトム社のP.コティン総裁とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが行った。これにはウクライナのエネルギー相と、WH社の燃料製造施設が立地するスウェーデンの在ウクライナ大使も同席。調印後は同発電所の視察が行われている。新しい契約によって、両社は既存の契約を再構築したと説明している。WH社の発表によると、稼働中原子炉の全面的な燃料調達先として同社が選定されたのは、ウクライナでエネルギーを確実に供給していく必要性を両社が共有していることや、両社がこれまでに築いてきた盤石な協力関係に基づいている。また、ウクライナ向けの原子燃料を製造するスウェーデンのバステラスでは、燃料集合体の機器製造に関するウクライナへの技術移転を今後も継続。エネルゴアトム社傘下のアトムエネルゴマシ社は近年、WH社製燃料集合体の上下ノズルについて、製造認定を受けたとしている。エネルゴアトム社のコティン総裁は今回の契約について、「現在のように困難な状況下においても、当社は戦略的パートナーであるウェスチングハウス社との協力分野や規模を広げており、ウクライナの原子力発電の歴史に新たな一ページが刻まれるだけでなく、欧州のエネルギー自給にも大きく貢献できると確信している」と述べた。WH社のフラグマンCEOは「業界をリードする当社の原子燃料やサービスで、ウクライナの稼働中原子炉を全面的にサポートできることや、新たに建設するAP1000の基数が5基から9基に増えたことを誇りに思う」と表明。「エネルゴアトム社との長年にわたる連携関係を今後も大切にし、ウクライナの脱炭素化に向けて協力していきたい」としている。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 06 Jun 2022
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加サスカチュワン州の企業、WH社製マイクロ原子炉建設に向け協力覚書
カナダのサスカチュワン州政府が一部出資する「サスカチュワン研究評議会(SRC)」と、米ウェスチングハウス(WH)社のカナダ法人は5月18日、同州内におけるWH社製マイクロ原子炉「eVinci」(電気出力0.5万kW)の建設に向けて、協力覚書を締結したと発表した。SRCはカナダで第2位の規模を持つ技術研究関係の公共企業体で、農業・バイオテクノロジーやエネルギー、環境、および鉱業の分野で世界中の顧客に科学的なソリューションを提供中。同州中央部のサスカトゥーン市にあるSRC環境分析研究所では、1981年3月から2021年11月まで電気出力20 kWの研究炉「SLOWPOKE-2」を運転した経験もある。WH社の「eVinci」は遠隔地や鉱山等における熱電併給を目的としており、設計寿命は40年間。10年以上燃料交換なしで運転することが可能で、炉外復水器となる部分の周囲にチューブを環状に巻き付け、主要熱交換器とする設計である。両者は将来的にサスカチュワン州内で、「eVinci」をエネルギー利用を含む様々な分野で活用するための試験を実施する。安全で輸送も容易な「eVinci」を使い、同州のクリーンエネルギー生産について、ニーズに即した解決策を生み出したいとしている。サスカチュワン州は今年3月、オンタリオ州とニューブランズウィック州およびアルバータ州とともに、4州が協力して小型モジュール炉(SMR)を開発・建設するための共同戦略計画を策定した。将来的にカナダのSMR技術や専門的知見を世界中に輸出していくのが目的で、ウラン資源に恵まれたサスカチュワン州では今のところ原子力発電設備は存在しないが、オンタリオ州で2028年までに送電網への接続が可能な出力30万kWのSMRを完成させた後、サスカチュワン州で後続のSMRを建設する計画が設定されている。今回の覚書締結について、同州のJ.ハリソンSRC担当相は「SRCでは38年間にわたって『SLOWPOKE-2』研究炉を運転した実績があるので、この経験を新たな技術であるマイクロ原子炉に生かしたい」と述べた。D.モーガン州営電力担当相も「近代的な原子炉設計には、州民が日々必要とするクリーンで安全なベースロード電源を提供する能力がある」と指摘。サスカチュワン州内で原子力発電開発を進めていけば、州内送電網の近代化が促されるだけでなく、数10億ドル規模の経済活動が州内で新たにもたらされると強調した。「eVinci」については、米エネルギー省(DOE)が2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定。7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉の建設を目指している。一方、カナダにおいては2018年2月、WH社が同設計について「ベンダー設計審査(予備的設計評価サービス)」の実施をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請したが、実施条件等で両者が協議中で審査はまだ始まっていない。それでもカナダ政府は今年3月、「eVinci」を将来カナダ国内で建設するため、イノベーション・科学・研究開発省の「戦略的技術革新基金(SIF)」から、2,720万カナダドル(約27億円)をWH社のカナダ法人に投資すると発表した。この投資を通じてカナダ国内の技術革新を促進し、SMR技術が持つ「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」という特質を活用、カナダ経済への多大な貢献を期待するとともに、同国が目標とする「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」の達成で一助としたい考えだ。(参照資料:SRCおよびWH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 May 2022
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カナダ政府、WH社製SMRの国内建設に向け約2,700万加ドル投資
カナダ政府は3月17日、米ウェスチングハウス(WH)社が開発している次世代のマイクロ原子炉「eVinci」(電気出力は最大0.5万kW)をカナダ国内で将来的に建設するため、2,720万カナダドル(約26億円)を同社のカナダ支社に投資すると発表した。この資金は、イノベーション・科学・研究開発省(ISED)の「戦略的技術革新基金(SIF)」から拠出される予定。同基金からはすでに2020年10月、テレストリアル・エナジー社の「小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)」開発を加速するため、2,000万カナダドル(約19億円)を投資することが決まっている。発表によると、カナダは原子力発電とその安全性確保で世界のリーダー的立場を自負しており、国内には小型モジュール炉(SMR)技術を安全かつ責任ある形で開発できる世界的に有望な市場も存在する。そのため同国は、WH社が約5,700万加ドル(約54億円)かけて進めているeVinci開発プロジェクトを支援し、SMR技術の「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」としての能力を活用するほか、カナダ経済への多大な貢献を期待。同国が目標とする「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化」達成の一助になると説明している。カナダ政府はまた、eVinciプロジェクトへの投資を通じて、カナダ国内の技術革新を促進していく方針である。具体的には、ディーゼル発電に依存しているコミュニティのクリーンエネルギーへの移行を促すほか、エネルギー部門で高給の常勤雇用200名分以上を創出・維持する。eVinciプロジェクトはさらに、カナダの将来的な経済成長と技術革新を支える主要要素として、高度な技術力を持った労働力の育成や新たな基礎技術研究を促進していくと指摘。政府がカナダを世界の技術革新の中心地とするため、2017年予算で発表した「技術革新と技能計画」をも後押しするとした。eVinciプロジェクトはこのほか、カナダのSMR技術開発、およびその長期的なビジョンを示した2020年の「SMRアクション計画」を支援するとカナダ政府は指摘している。WH社の説明では、「eVinci」の設計寿命は40年間。10年以上燃料交換なしで運転することが可能である。主に送電網の届かない遠隔地や島しょ地域におけるクリーンな熱電併給を想定した設計であり、分散型発電を必要とする鉱山や産業サイト、データセンター、大学、舶用推進、水素製造、海水脱塩等に利用できる。また、負荷追従運転にも対応するなど、柔軟性の高い運転が可能な「eVinci」は主要なエネルギー源として活用するほかに、再生可能エネルギーなどその他の電源と組み合わせれば、恒久的なインフラ設備の建設費用を抑えられるため、カナダのエネルギーコスト削減にも役立つ。ISEDのF.-P.シャンパーニュ大臣は、「脱炭素化に取り組みながらカナダ政府はコロナ後の経済再興を進めているところであり、地球温暖化の防止策をしっかり講じた有望な将来基盤が形作られつつある」とコメント。「この投資は地球温暖化の防止で重要な役割を果たすだけでなく、カナダのエネルギー部門で確実に雇用を確保することにもつながる」と強調している。(参照資料:カナダ政府、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Mar 2022
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米WH社、U235の濃縮度が6%の試験用燃料集合体を商業炉に装荷へ
米国のウェスチングハウス(WH)社は1月27日、同社が進めている「高エネルギー燃料開発構想」で初めて、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型の先行試験用燃料集合体(LTA)を国内の商業炉に装荷すると発表した。WH社の計画では、サザン・ニュークリア社がジョージア州で運転しているA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、濃縮度6%の先行試験燃料棒が各1本含まれるLTAを4体装荷する予定。両社は同日、そのための契約を締結している。ただし、原子力規制委員会(NRC)がサザン・ニュークリア社に発給した現行の認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までしか許されていない。このためWH社は、サザン・ニュークリア社による認可の修正要請をNRCが承認し次第、2023年にも米エネルギー省(DOE)およびDOE傘下のアイダホ国立研究所の協力を受けてLTAの製造を開始。その年の秋にボーグル2号機で燃料交換を実施する際、サザン・ニュークリア社は同LTAを装荷する方針である。WH社は現在、福島第一原子力発電所事故を受けてDOEが2012年に開始した「事故耐性燃料(ATF)開発プログラム」に参加しており、同社製のATF「EnCore」を開発中である。同プログラムではWH社のほかに、フラマトム社やライトブリッジ社、米GE社と日立製作所の合弁事業体であるグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社などが産業界から参加。2022年頃を目途に3段階でATFを開発・実証することになっている。WH社はまた、電気事業者が燃焼度を高くできる燃料を使用し発生エネルギーの量を増加できるよう、「高エネルギー燃料開発構想」で濃縮度を高めた燃料を開発している。同構想では、現在18か月の運転期間を24か月に延長することも研究中で、これにより電気事業者は、停止期間を短縮しコスト削減が可能になるとしている。今回のLTAでWH社は、商業炉を長期的に運転するための安全性や経済性、効率性の向上対策を模索。具体的には、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性や変形耐性を向上させるという「AXIOM合金製被覆管」やクロムを塗布した被覆管、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などを活用している。このうち、ADOPTペレットとクロムを塗布した被覆管は、DOEのATFプログラムの下で開発した「EnCore」技術の一部であり、これらによって温度許容度や耐久性等が大幅に改善されたと強調している。サザン・ニュークリア社のP.セナ上級副社長は、「我々が最優先とするのは絶対的に安全なプラントで周辺住民や従業員の安全と健康を守ることだが、画期的な燃料技術によって顧客に年中無休で電力を供給する能力や発電所全体の信頼性が高まる」と指摘。規制の基準値を超える濃縮度のLTAを装荷することで、先進的燃料技術の商業利用が一層進展し、今後数10年にわたってクリーンで安全、信頼性の高い無炭素電力を供給する能力が増強されると述べた。(参照資料:WH社、サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Feb 2022
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米WH社、ポーランドでのAP1000建設に向け同国の10企業と戦略的連携合意
米国のウェスチングハウス(WH)社は1月21日、ポーランドの原子力発電プログラムで建設が予定されている原子炉に同社製「AP1000」設計が採用されることを前提に、同国の関係企業10社と戦略的連携関係を結ぶことで合意したと発表した。同社はポーランド北部のグダニスクおよび首都ワルシャワで、これらの企業との了解覚書に調印。ポーランドのみならず、その他の中・東欧諸国でも広くAP1000を建設していけるよう、これらの企業とは長期的に協力していく方針である。ポーランドでは2020年9月に政府が「2040年までのエネルギー政策(PEP2040)」を公表しており、2043年までに2つのサイトで大型原子炉6基(合計出力600万~900万kW)の建設を計画。初号機の運転を2033年までに開始した後、2~3年ごとに残り5基を建設していき、2043年までに6基すべてを完成させるとしている。この民生用原子力発電プログラムは、ポーランド内閣が2020年10月初旬に承認している。米国政府は、このプログラムを実行に移すための方策や必要となる資金調達方法等で支援するため、同じ月にポーランドと政府間協力協定(IGA)を締結。同IGAが2021年3月初旬に発効したのを受けて、WH社は米国から同国への技術移転も含め、包括的投資構想を策定中だと発表している。WH社がポーランドの原子力パートナーに選定された場合、同国内で2,000名分以上の関係雇用が創出されるよう原子力サプライチェーンの構築に尽力するほか、質の高い原子力機器や専門的知見の提供を保証する考えである。その後、米国政府で非軍事の海外支援を担当している貿易開発庁(USTDA)が2021年6月、ポーランドの原子力発電プログラムを支援するため、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社PEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)に基本設計(FEED)調査用の補助金を提供すると発表。このFEED調査は、WH社とパートナー企業のベクテル社が実施することになっている。PEJ社はその半年後の2021年12月、ポーランド初の原子力発電所建設サイトとして、北部ポモージェ県内のルビアトボーコパリノ地点を選定した。WH社が今回、了解覚書を締結したのは、発電所やエネルギー関係設備の建設エンジニアリングを専門とするRafako社、KB Pomorze社、Polimex Mostostal社のほか、冶金材料や鉄鋼製の機器・構造物の製造・供給企業であるZKS Ferrum社、Mostostal Kraków社。また、産業・発電設備の総合建設や最新化および修理が専門のOMIS社、産業投資を包括的に実施しているZarmen Group、発電機器の主要製造企業であるFogo社、造船会社のGP Baltic社、および各種クレーンなど吊り上げ機器を製造しているProtea Groupである。WH社ポーランド支社のM.コバリク社長は今回の覚書締結について、「当社には、ポーランドがエネルギー関係の目標を達成できるよう支援提供するための良好な体制が整っている」と説明。具体的には、ポーランド国内で同社が行っている原子力技術関係の投資を挙げたほか、同社がポーランド南部のクラクフに設置した世界規模のサービスセンターを指摘。同センターには現在200名近い従業員が勤務しており、ポーランドが地球温暖化の防止目標を達成したり、経済成長に必要なエネルギーを確保する際、同センターが最良の技術を提供していると強調した。(参照資料:WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Jan 2022
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米ホルテック社、SMRの建設目指し現代建設と事業協力契約を締結
米国のホルテック・インターナショナル社は11月22日、子会社のSMR社(SMR, LLC)が開発中の小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」を世界市場で建設していくため、韓国の現代建設(HDEC)と事業協力契約を締結したと発表した。ホルテック社は、同SMRで2025年までに米原子力規制委員会(NRC)から立地建設許可の取得を目指しており、NRCとの関係協議はすでに始まっている。設計認証(DC)審査は未だ申請していないが、初号機の建設候補地としてはニュージャージー(NJ)州のオイスタークリーク原子力発電所の跡地、あるいは南部の2州を検討中。同発電所は2018年9月に閉鎖され、ホルテック社は事業者のエクセロン社から所有権を受け継いでいる。HDEC社は今回の契約に基づき、ホルテック社の主要なEPC(設計・調達・建設)契約企業として「SMR-160」標準設計の完成に協力するほか、同設計を採用した発電所をターンキー契約でグローバルに建設していく。具体的には、発電所BOP(主機以外の周辺機器)の詳細設計を担当し、発電所全体の建設仕様書も作成。SMRの標準設計と建設予定地等で承認が得られた場合は、建設プロジェクトの施工者となり、実際のEPC業務と建設工事を実施することになる。ホルテック社によると、この契約を通じて両社は世界中の顧客の要望に沿って最も競争力のある価格で建設プロジェクトを遂行する。ただし北米市場に関しては、同社が米国の大手建設企業と結んでいた既存の誓約に合わせて、HDEC社の参加持ち分を確保する。ホルテック社は建設プロジェクトのアーキテクト・エンジニアとして、主要機器を米国内の製造施設や国際的なサプライチェーンから調達する一方、計装・制御(I&C)については三菱電機から、燃料は仏フラマトム社からそれぞれ調達する方針だ。ホルテック社の「SMR-160」は、ポンプやモーターなどの駆動装置を必要としない電気出力が最大16万kWの軽水炉型SMRで、受動的安全システムを備えている。同設計はまた、輸送部門で使用する水素や工業利用のための熱を生産することも可能な柔軟な設計であるため、脱炭素化という世界潮流にも適合。ホルテック社は、建設プロジェクトにともなう資金の調達や建設地における部品調達などについても、HDEC社と協力していくとしている。ホルテック社のSMR開発に関しては、米エネルギー省(DOE)が2020年12月に「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象の一つとして選定した。7年間で合計1億4,750万ドルを投資する計画で、このうち1億1,600万ドルをDOEが負担。残りの3,150万ドルがホルテック社側の負担分であり、初期段階の設計・エンジニアリングや許認可手続き関係の作業が行われている。また、カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、同設計がカナダの規制要件に適合しているかという点について「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)」を実施中。2020年8月に同設計は、この審査の第1段階を成功裏に終了している。(参照資料:ホルテック社、現代建設(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Nov 2021
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ウクライナのフメルニツキ3号機の完成に向け実務作業が開始
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は11月8日、建設工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所3号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)(K3)の完成に向け、ウェスチングハウス(WH)社のエンジニア・チームが7日に詳細点検などの実務作業を行うため、視察に訪れたと発表した。エネルゴアトム社とWH社は今年の8月末、同発電所で同じく建設工事が停止中の4号機(100万kWのVVER)(K4)にWH社製AP1000設計を採用して完成させ、さらに4基のAP1000をウクライナで建設するという内容の独占契約を締結した。K4についてはすでに10月、米国で建設工事が中止されたV.C.サマー原子力発電所向けの製造済みの機器・設備を活用する可能性も含め、具体的な作業が今年の年末から年始までに開始される見通しである。K3に関しては、VVER設計を採用した最初の建設工事が1985年9月に始まり、作業が停止した1990年時点の建設進捗率は75%に到達。このため、WH社で商業活動を担当するE.ギデオン上級副社長による12名のエンジニア・チームは、同炉の建設計画遂行での設計面その他の(技術的)懸念事項を特定・分析した上で、完成に向けた可能性を探り、具体的な方策を定める方針である。今回、WH社チームはエネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理とともに、K3の機器・設備の保管状態と冷却水供給池の状態を視察した。その後は、フメルニツキ原子力発電所とエネルゴアトム社の経営幹部や地元選出の議員、市長らを交えた実務会議に出席。この席で両者は、K3の準備状況に関する予備的評価の結果を審査、K3で新たな建設工事を実施する可能性と、その重要性を認識したとしている。WH社のギデオン上級副社長によると、米国と欧州の両方から派遣されたエンジニア・チームは今後、エネルゴアトム社との協力により建設サイトの詳細な点検調査と情報交換を実施する。米輸出入銀行(US EXIM)を始めとする金融機関とは、プロジェクトの資金調達問題について協議を行っており、短期間のうちにこの件で複数の合意文書に調印したいと考えていることを明らかにした。一方、エネルゴアトム社のコティン総裁代理は、建設工事に先立つ諸活動が早いペースで進展している事実に言及。今回の件については、「新たな原子力設備を建設する実質的な作業が始まった」と評価しており、そうした活動のすべてが質の高いものである点に非常に満足していると述べた。同総裁代理によると、「越境環境影響評価条約(エスポー条約)」に関わる諸手続きはすでに完了しており、環境省からはこの建設計画への肯定的評価が得られている。政府に対してはK3とK4両方の完成に向けた素案を提出済みであり、最高議会からも承認が得られるよう、近いうちに提案を行う考えを明らかにしている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 12 Nov 2021
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ウクライナ、年末から来年にかけWH社製AP1000の建設を開始
フメルニツキ原子力発電所©Energoatomウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は10月20日、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000技術を使った最初の原子炉建設を年末、あるいは来年の年始に開始するとの見通しを明らかにした。エネルゴアトム社は今年8月、国内で複数のAP1000を建設していくため、WH社と独占契約を締結している。同社が今回、AP1000設計の「試験ユニット」と表現したこの原子炉は、「フメルニツキ原子力発電所内で建設」としていることから、建設工事が28%で停止中の4号機(K4)(100万kWのロシア型PWR=VVER)の完成工事になると見られている。この工事について、ウクライナは近いうちに、政府間協定も含め複数の関係協定を米国と結ぶ予定。この計画ではまた、米国で2017年に建設計画が頓挫したV.C.サマー2、3号機(各110万kWのPWR)用の機器・設備を活用する可能性があると、エネルゴアトム社は今年9月に発表している。WH社と独占契約を締結した際、エネルゴアトム社はK4に加えて、さらに4基のAP1000を建設すると表明しており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見方を示した。資金は主に米輸出入銀行(US EXIM)からの借り入れで調達するが、機器類の約60%は国内企業から購入する方針である。今回明らかにされたK4建設の見通しは、同社が今月20日から22日にかけて開催中の「第1回・ウクライナ天然ガス投資会議(UGIC)」で、同社のP.コティン総裁代理が「ウクライナにおける原子力産業の開発戦略」として述べたもの。この会議は、ウクライナのエネルギー部門に諸外国からの投資を呼び込み、ウクライナ経済のさらなる発展を促すことが目的である。コティン総裁代理はまず、「我々のエネルギー部門には幅広い開発ポテンシャルがあり、低炭素な発電に関しては特にポテンシャルが大きい」とした。同総裁代理によると、世界では①2050年までにエネルギー消費量が1.5~2倍に増加、②温室効果ガスの排出量削減のため大規模な脱炭素化が必要――という傾向が見られることから、ウクライナでは輸送や産業部門の全面的な「電化」を計画している。エネルゴアトム社はウクライナで唯一の原子力発電事業者であるため、明確な戦略に従って原子力発電設備を開発し、旧ソ連時代に着工したVVERを刷新していく方針。WH社との戦略的な契約の締結も、この流れに沿ったものであるとの認識を示唆している。エネルゴアトム社はまた、原子力発電所を使った水素製造も検討中である。コティン総裁代理は、「原子力発電所ではベースロード運転が行われているが、電力需要が下がれば原子力発電所の電力で水素を製造できるし、需要が戻った時点で電気分解を止めればいい」と指摘した。このようなアプローチの下で、エネルゴアトム社は収益源の多様化を図るとともに、原子力発電所で柔軟性の高い運転を行い、その余剰電力を有効に活用。電気分解による水素製造はクリーンエネルギーへの移行を後押しするだけでなく、欧州連合(EU)が2020年7月に発表した(脱炭素化に貢献する)「欧州水素戦略」を実行することにもなるとしている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料(ウクライナ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Oct 2021
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三菱重工、IAEA提唱による「The Group of Vienna」に参画
三菱重工業は9月27日、IAEAと世界の原子力関連企業で構成される対話のプラットフォーム「The Group of Vienna」への参画を発表した。R.M.グロッシーIAEA事務局長の提唱により設立された気候変動への対応や持続可能な開発に原子力技術が果たす役割について議論する枠組みで、IAEA他、同社を含め世界各国の主要な原子力関連企業13社により構成。これを通じ、クリーンエネルギーへの転換における原子力の有用性を発信するほか、放射線技術の医療や食料生産への活用といった原子力平和利用の促進などを議題に、IAEAと各企業トップによる会議を毎年開催する。「The Group of Vienna」は、IAEA年次総会(9月20~24日)に合わせウィーンで開かれた発足会議で、「人々の健康と福祉を向上させるため、原子力の貢献を拡大するというIAEAの使命をサポートする」との共同声明を採択し、グループ設立と活動目的、構成企業を発表。三菱重工業は、「The Group of Vienna」の一員として、IAEAおよびメンバー企業とともに、グループの目的達成に向けた活動を推進するとしている。〈三菱重工業発表資料は こちら〉「The Group of Vienna」のメンバーは、IAEA、中国核工業集団(中国)、フランス電力(フランス)、ブラジル国営原子力発電公社(ブラジル)、カザトムプロム(カザフスタン)、三菱重工業(日本)、アルゼンチン原子力発電公社(アルゼンチン)、ニュースケール・パワー社(米国)、ロールス・ロイスSMR社(英国)、ロスアトム(ロシア)、SNCラヴァリン・グループ(カナダ)、テオリスーデン・ボイマ社(フィンランド)、ウレンコ社(英国)、ウェスチングハウス社(米国)。
- 29 Sep 2021
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ウクライナ、複数のAP1000建設に向けWH社と独占契約
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は8月31日、国内で複数の原子力発電所で「AP1000」を建設していくため、同設計を開発した米国のウェスチングハウス(WH)社と独占契約を締結したと発表した。この契約で、エネルゴアトム社は具体的に、建設進捗率28%で工事が停止しているフメルニツキ原子力発電所4号機(100万kWのロシア型PWR=VVER)にAP1000を採用するなどして、その完成計画にWH社の参加を促す方針。また、その他の原子力発電所も含めてさらに4基のAP1000を建設するとしており、これらの総工費は約300億ドルになるとの見通しを示した。契約の調印式は、米ワシントンD.C.にあるエネルギー省(DOE)の本部で開催された。ウクライナのV.ゼレンスキー大統領が立ち会い、エネルゴアトム社のP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名。DOEのJ.グランホルム長官とウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣も出席した。エネルゴアトム社の発表によると、同社はウクライナ政府の長期目標達成に向けてWH社のAP1000技術を選択した。今回の契約により、同社はクリーンで信頼性が高く、コスト面の効果も高い原子力発電を活用し、同国の脱炭素化達成につなげたいとしている。ウクライナでは2017年8月、P.ポロシェンコ前大統領の内閣が「2035年までのエネルギー戦略」を承認しており、総発電量に占める原子力の現在のシェア約50%を2035年まで維持していくと明記。現職のV.ゼレンスキー大統領も2020年10月、「このエネルギー戦略を実行に移すため、政府は今後も原子力発電を擁護し、その拡大を支援していく」と表明している。また、同国で稼働する全15基のVVERはすべて、旧ソ連時代に着工したもの。このためウクライナの規制当局は、経年化が進んだ11基で順次運転期間の延長手続を進めるなど、原子力発電設備の維持に努めている。エネルゴアトム社のコティン総裁代理は今回の契約について、「AP1000は実証済みの技術を採用した第3世代+(プラス)の110万kW級原子炉であり、モジュール方式の設計を標準化することで建設期間やコストの縮減が可能と聞く。また、完全に受動的な安全系を装備するなど優れた特長を持っている」などと説明。AP1000設計を長期的に活用していくことで、エネルゴアトム社では最高レベルの安全性と高い信頼性を備えた、環境にも優しい革新的な原子力発電所の運転が可能になるとしている。WH社のフラグマン社長兼CEOは、「ウクライナで稼働する既存の原子力発電所を支援するため、当社はすでに燃料その他のサービスを提供中だ。今回の契約により、当社とエネルゴアトム社の長年にわたる連携は一層強化される」と表明。同社の原子炉技術を使って、ウクライナの将来を低炭素なエネルギー社会に近づける重要な一歩になるとの認識を示した。同CEOはまた、「AP1000は米原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた第3世代+の原子炉の1つ」と指摘。欧州やアジアなど米国以外の国々でも認可されており、中国ではすでに運転中の4基のAP1000が良好な実績を残していると述べた。さらには、米国のボーグル原子力発電所で建設中の2基が完成間近くなっており、インドでは6基の建設プロジェクトへの採用が決まるなど、AP1000は中・東欧も含めた世界中で建設が検討されていると強調した。(参照資料:WH社、エネルゴアトム社(ウクライナ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 01 Sep 2021
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米規制委「ボーグル3号機のケーブル配置は不適切」と指摘
米国の原子力規制委員会(NRC)は8月27日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で建設中の3号機(PWR、110万kW)の電気ケーブル用配管について、NRCスタッフが特別に実施した検査の暫定的な結果を公表した。それによると、同機では緊急時に原子炉を安全に停止させる際、冷却ポンプや関連機器につながる安全系のケーブルとそれ以外のケーブルが適切に隔てられていなかった。またNRCは、建設現場でプロジェクト管理を担当するサザン・ニュークリア社が安全系の電気ケーブル用配管について品質保証上の問題点の確認や報告を行わず、是正プログラムも実施しなかったと指摘している。現状のまま建設工事が進むことになれば、NRCは同機の監視体制を強化すると表明。工事の完了までに電気ケーブル用配管の設置状況が改善されなかった場合、NRCは同機の燃料装荷や運転開始を承認しない方針だが、同機ではまだ燃料が装荷されていないため、サザン・ニュークリア社の改善措置で周辺住民のリスクが増大する恐れはないと強調している。ジョージア州のボーグル発電所では、サザン社の最大子会社であるジョージア・パワー社と複数の地元公営電気事業者の出資により、ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を米国で初めて採用した3、4号機を2013年から建設中。2017年にWH社が倒産申請した後は、EPC(設計・調達・建設)契約を放棄した同社に代わり、サザン社のもう一つの子会社であるサザン・ニュークリア社が全体的なプロジェクト管理を引き継いだ。サザン・ニュークリア社はまた、完成した3、4号機の運転を担当することになっている。NRCは6月21日、3号機の建設現場で電気ケーブル用配管の設置修正作業が行われたのを受けて、その根本原因と品質保証上の影響範囲を究明するため、7月2日まで特別検査を実施すると発表した。電気ケーブル用配管は主に専用の配管とトレイで構成されており、緊急時に安全系機器に確実に電力が送られるようケーブルを支持する構造。商業炉でこれらの機器が万が一にも作動しない事象が発生するのを防ぐ観点から、NRCは同検査でサザン・ニュークリア社が修正作業の実施に至った際の行動、特に品質保証プロセスや原因分析などに焦点を当てたとしている。サザン・ニュークリア社側では今後、NRCの暫定的な結果を検討した上で指摘を受け入れる、もしくは追加説明をNRCに文書で提出することが可能である。NRCとしては、最終的な判断を下して文書化した決定事項を一般公開する前に、同社の追加説明など入手可能な情報をすべて考慮に入れる考えである。 3号機の建設工事では昨年12月に初装荷燃料が建設現場に到着しており、4月に始まった温態機能試験も7月末に完了した。しかし、新型コロナウイルスによる感染の影響軽減で現場の労働力は昨年4月以降、約20%削減されており、試験や品質保証関係で追加の時間が必要になったことから、ジョージア・パワー社は7月末、3、4号機の送電開始時期を現行スケジュールから3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表している。(参照資料:NRCの発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 31 Aug 2021
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カナダのテレストリアル社、溶融塩炉燃料の確保でWH社と英NNLを選択
IMSRの炉心ユニット©Terrestrial Energyカナダを本拠地とするテレストリアル・エナジー社は8月17日、開発中の小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)で使用する濃縮ウラン燃料を商業的に確保するため、米国のウェスチングハウス(WH)社および英国の国立原子力研究所(NNL)と協力契約を締結した。WH社は現在、英国スプリングフィールドで原子燃料の製造施設を操業しており、世界中の商業炉にウラン燃料を供給。NNLもスプリングフィールドのプレストン研究所で原子力研究を実施中で、同じサイトのWH社には技術支援サービスを提供している。テレストリアル社は両者の原子燃料製造能力と世界レベルの知見を活用して、一層安全でクリーン、信頼性やコスト競争性も高い第4世代の先進的原子炉となるIMSRに産業規模でウラン燃料を供給する体制を構築、出来るだけ早期にIMSRを建設する方針である。テレストリアル社のIMSRは熱出力=40万kW/電気出力=19万kWで、電力のみならずクリーンな熱を供給できる。使用する溶融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウラン(U-235の濃度が5%以下)と溶融フッ化物塩を混合して製造。同社によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用することが可能である。同社はまず、IMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設し、その後、同社の米国法人(TEUSA社)を通じて北米をはじめとする世界市場でIMSRを幅広く売り込む方針。現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が同国の規制要件に対するIMSRの適合性を「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」で審査中である。また、TEUSA社は米原子力規制委員会(NRC)に対して、将来的に設計認証(DC)審査を受ける計画だと表明済み。TEUSA社は2020年代後半に米国初号機を起動できるよう、米エネルギー省(DOE)から財政支援を受けながら許認可手続き前の準備活動をNRCと進めている。 今回の契約について、テレストリアル社のS.アイリッシュCEOは「民生用として直ちに利用可能な標準濃縮度燃料を使用できるよう、我々はIMSRを設計しており、これは早期のIMSR建設実現に向けて大きな強みになる」と指摘。同社は現在、IMSRの燃料確保で複数の戦略を進めており、英国スプリングフィールドにおけるWH社とNNLの燃料関係の技術水準は世界でも最高レベルと考えている。このため、「この契約はIMSRを運転する電気事業者に専用燃料を長期的かつ確実に供給する重要ステップとなり、IMSR発電所の商業運転を明確に決定づけるものになる」と強調した。NNLのP.ハワース最高責任者は「IMSRに使用する商業用原子燃料の供給者として、テレストリアル社がNNLとWH社を選定したことをうれしく思う」と表明。この契約によって、IMSR初号機の運転開始に向けて新たな雇用が地元で創出されるとした。WH社のS.ルメール地域副社長も、「商業用原子燃料の世界的供給企業である当社には、先進的原子炉向けに新しい原子燃料を開発・製造する知識と技術と能力がある」と強調。「このような技術は地元スプリングフィールドに高度な製造専門職をもたらすとともに、英国にとっては戦略的国家資産にもなる」と指摘している。(参照資料:テレストリアル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Aug 2021
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米国ボーグル3、4号機、完成時期を延期
米国で約30年ぶりの新設計画として、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で3、4号機(各PWR、110万kW)を建設中のジョージア・パワー社は7月29日、両機の送電開始時期を3~4か月先送りし、それぞれ2022年第2四半期と2023年第1四半期に延期したと発表した。両機で採用されたAP1000型炉を開発したウェスチングハウス社が2017年3月に経済破綻して以降、ジョージア・パワー社は両機の完成スケジュールをそれぞれ、2021年11月と2022年11月としていた同社は昨年4月、新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減した。今回のスケジュール変更は、このような労働生産性の低下に加えて、試験や品質保証関連で追加の時間が必要になったことを理由として挙げており、この遅れによりプロジェクト全体の建設コストも上昇する見通し。同プロジェクトに45.7%出資するジョージア・パワー社の追加負担額は、4億6,000万ドルになる見込み。2013年の3月と11月に始まった3、4号機増設プロジェクトでは、ジョージア・パワー社のほかに、オーグルソープ電力が30%、ジョージア電力公社(MEAG)の子会社が22.7%、ダルトン市営電力が1.6%出資している。3号機の建設工事では2020年10月に冷態機能試験が完了した後、同年12月に初装荷燃料が建設サイトに到着。ジョージア・パワー社は今回、同機の温態機能試験が特に大きな問題もなく、無事に完了したことを明らかにしている。ジョージア・パワー社の発表によると、完成スケジュールを先送りしたことで同社が負担する建設コストは計92億ドルに達する。同社がこれまでにジョージア州の公益事業委員会(PSC)から承認を受けた建設コストは総額73億ドルであるため、これを超える金額についてはこれから承認を得ることになる。同プロジェクトではまた、建設期間中に顧客が電気代を通じて負担している金額に影響が及ぶのを防ぐため、出資企業の投資利益率を下げる措置が特別に取られている。プロジェクトの進行が一か月遅延する毎に、この利益率も徐々に下がっていくため、投資したコストを最終的にどれだけ回収できるかは、4号機が完成する頃に実施予定の包括レビューで明らかになる。ジョージア・パワー社のC.ウォマック社長兼CEOは、「この建設プロジェクトは、当社がジョージア州で60~80年にわたり、低コストで信頼性の高いCO2フリーの電力を提供していくための重要な投資案件だ」と説明。「これらを確実に実行することは、当社の顧客やジョージア州のみならず米国にとっても重要であり、必ず実行したい」との決意を述べた。3号機の温態機能試験では、同社は核燃料なしでシステムの温度や圧力を通常運転時のレベルまで上昇させ、機器やシステムが正常に機能することを確認。今回、この試験が完了したことから3号機の建設進捗率は99%に到達。4号機も含めたプロジェクト全体の進捗率は約93%となっている。(参照資料:ジョージア・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Aug 2021
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