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チェコ 増設プロジェクトの優先交渉権を韓KHNPに
チェコ政府は7月17日、新規原子力発電プラント建設プロジェクトの主契約者をめぐる優先交渉権を、韓国水力・原子力会社(KHNP)に与えると決定した。検討対象となるプロジェクトは、ドコバニ発電所5、6号機増設のほか、テメリン発電所3、4号機増設で、フランス電力(EDF)とKHNPの2社が入札していた。ドコバニ発電所の増設契約の締結は来年第1四半期中を予定し、2029年までに建設許可を取得、2036年末までに試運転を開始、2038年に営業運転を開始させたい考えだ。今回の決定を受け、チェコのP. フィアラ首相は、「チェコは、可能な限りエネルギー自給率を高め、手頃な価格でエネルギー安全保障を達成することを目指している。増設プロジェクトは、チェコの質の高い生活、繁栄、競争力向上を約束するものだ。KHNPの提案は、これらの条件を満たすと同時に、チェコの産業界がプロジェクトに約60%関与し、経済発展に大きな弾みをつけるものとなる」とコメントしている。2社の入札評価には、国際原子力機関(IAEA)の評価モデルの勧告に従い、約200人の専門家が携わり、メガワット時あたりの電力価格を比較評価。同サイトに同時に2基を建設する場合、総事業費は1基あたり推定約2,000億コルナ(1.35兆円)となると試算されている。Z. スタニュラ財務相は、「現在、原子力発電はチェコの電力消費の3分の1以上を賄っているが、将来的には50%まで高めたい。また、既存のサイトに2基増設するとの選択肢は、作業の多くを2度行う必要がなく、スケールメリットを得られ、1基あたり約20%のコスト削減が可能。増設への投資はさらなる投資を生み、チェコ経済に3倍になって戻ってくるという試算結果もある。熟練した雇用創出も国家財政にとり不可欠な収入源になる」と言及した。ドコバニ発電所5号機増設の入札は2022年3月に開始され、同年11月末にEDF、KHNP、米ウェスチングハウス(WE)社は、最初の入札文書(ドコバニ5号機の増設、追加の3基:ドコバニ6号機とテメリン3、4号機の拘束力のない増設提案)を提出した。2024年1月末、政府は追加の3基も拘束力のある入札への変更を決定。WE社を除く、2社(EDFとKHNP)を入札に招聘した。同2社による応札を経て、ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)は6月中旬、優先交渉権を得るサプライヤーに関する政府の最終決定のベースとなる評価報告書を産業貿易省に提出していた。KHNPにとって、欧州では初めての建設契約となる。同社のJ. ファンCEOは、今回の選定は、国内外での原子力発電所建設プロジェクトにおける能力が評価されたものとし、「原子力事業は、建設から運転まで100年にわたる長期協力」と語った。なお、建設プロジェクトへのチェコ企業の関与はKHNPの最優先課題の一つであり、すでに200社以上の潜在的なチェコのサプライヤーを特定し、将来の協力を念頭に、76もの覚書を締結しているという。KHNPは、引き続きチェコ産業の現地化の期待に応えるために尽力するとしている。
- 19 Jul 2024
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加サスカチュワン州 原子力サプライチェーンの構築などでMOU
カナダ中西部サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社は6月17日、米ウェスチングハウス(WE)社及び加カメコ社(本社:サスカチュワン州)と、サスカチュワン州の将来のクリーン電力ニーズに向け、WE社の新型炉と関連する原子燃料サプライチェーンの可能性を評価する了解覚書(MOU)を締結した。MOU締結により、WE社製の「AP1000」と小型モジュール炉(SMR)の「AP300」などWE社の新型炉を長期的な電力供給計画に向けて展開する、技術的および商業的な道筋を検討する。この枠組みで、サスカチュワン州を拠点とする、燃料も含めた原子力サプライチェーンの評価を行う。また、サスカチュワン州の大学や職業訓練校と連携して、原子力研究開発およびトレーニングで協力する機会についても検討する。サスクパワー社は、サスカチュワン州初となるSMRの建設について、2029年に最終投資決定(FID)を行う予定だ。同社は、サスカチュワン州で建設される全原子炉を対象に、サスカチュワン州産のウラン利用を計画している。なお、同社は2022年6月、サスカチュワン州で2030年代半ばまでに導入可能性のあるSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製BWRの「BWRX-300」を採用すると発表。加オンタリオ・パワー(OPG)社がオンタリオ州内のダーリントン原子力発電所サイトで建設を計画するSMRとして「BWRX-300」を選定しており、同じ設計を選択することで、規制面や建設・運転面のコストが低く抑えられるほか、初号機建設にともなうリスクも回避されると説明している。本MOUの締結に際し、サスクパワー社のR.パンダャ社長兼CEOは、「原子力産業において重要な専門知識を有する組織の知識の活用は、電力の将来に関して責任ある情報に基づいた意思決定を確実に行うために重要である」と指摘し、原子燃料供給に係る協力と様々な技術の評価は、現在のSMR導入に係る作業とサスカチュワン州の電力システムの将来に関する計画の強化に資するとしている。WE社のP.フラグマン社長兼CEOは、「サスクパワー社と協力して、サスカチュワン州のクリーンエネルギーのニーズを支援するため、業界をリードする当社の専門知識を共有できることを誇りに思う。今後何世代にもわたり、サスカチュワン州にカーボンフリーの電力の供給のため、サスクパワー社を支援していきたい」とサスクパワー社との協力に意欲を示した。AP1000は米国と中国で運転中。ポーランド、ウクライナ、ブルガリアの原子力プロジェクトで採用されており、この他、中・東欧、英国、インド、北米の複数のサイトでも検討中だ。AP300は世界的に運転実績のある先進的な第三世代+(プラス)の大型炉をベースにした唯一のSMR。WE社は、2027年までにAP300の設計認証を取得し、2030年までに初号機の着工、2030年初めの運転開始を目指している。AP300は英国の大英原子力(Great British Nuclear=GBN)のSMRの支援対象選定コンペの最終候補の1つに選定されており、欧州諸国と北米の顧客も採用を検討中である。カメコ社のT.ギッツェル社長兼CEOは、「当社はサスカチュワン州を拠点に、世界有数のウラン生産事業を展開、大規模に発展する州の労働力や北部の先住民コミュニティとの長年にわたるパートナーシップを有する。サスカチュワン州の電力の脱炭素化において、当社ならびにWE社が果たす潜在的な役割を評価できることを楽しみにしている」と語った。なお、カメコ社はWE社の株式を49%保有。
- 25 Jun 2024
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カナダ 米WEがエンジニアリングハブを開設
米国のウェスチングハウス(WE)社は6月11日、カナダのオンタリオ州キッチナーにグローバルエンジニアリングハブを開設した。同ハブのサイト面積は約1,200m2。CANDU炉や海外の新設プロジェクトのサポートに特化した設計エンジニアリングチームのカナダ唯一の拠点となり、同社製の「AP1000」、小型モジュー炉(SMR)の「AP300」、マイクロ炉の「eVinci」の世界展開を支援する。ハブには、最先端のトレーニング施設や防火エンジニアリング・サービスの研究所も設置される。開設記念式典に出席したオンタリオ州経済開発・雇用創出・貿易省のV.フェデリ大臣は、「オンタリオ州は北米で2番目に大きな技術者集団の中心地。多くの優秀な技術労働者がキッチナーおよびウォータールー地域に居住している。WE社のキッチナーのエンジニアリングハブへの投資は、オンタリオ州の原子力の新たな進歩を約束するもの」と指摘した。同じく式典に出席したWE社のP.フラグマン社長兼CEOは、「現在、当社にはカナダを拠点に250人以上の専門家がいる。キッチナーの新しいエンジニアリングハブには、2025年までに約100人のエンジニアを増員予定。強固な国内サプライチェーンと実証済みの技術で何世代にもわたりカナダのクリーンエネルギーのニーズに応えていく」と強調した。キッチナーのサイトは、WE社の5つのグローバルエンジニアリングハブの1つ。このサイトが選ばれた理由は、クライアントや多くのサプライヤーに近いだけでなく、理工系で有名なウォータールー大学など優秀な人材の育成機関に近接しているためだという。なお、今年2月末、コンサルティングファームである英プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が、「カナダにおけるウェスチングハウス(WE)社製AP1000プロジェクトの経済的影響」を発表し、WE社がオンタリオ州に4基の「AP1000」を導入した場合の大きな経済的影響を示した。さらに、WE社とサスカチュワン研究評議会(SRC)は、カナダ初となるマイクロ炉「eVinci」の初号機をサスカチュワン州に2029年までに建設する計画だ。
- 18 Jun 2024
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ブルガリア コズロドイ5号機に米国製燃料を初装荷
ブルガリア北西部にあるコズロドイ原子力発電所(KNPP)5号機で5月29日、米ウェスチングハウス(WE)社製の燃料が初装荷された。ブルガリアにおける燃料供給源多様化の重要な節目となった。KNPPとWE社は、2022年12月に10年間の燃料供給契約を締結。今年4月、スウェーデンにあるWE社のベステロース燃料工場で製造された燃料がKNPPに搬入された。5号機(PWR=VVER-1000、104万kWe)に初装荷された燃料は、ウクライナの複数の原子力発電所で10年以上の装荷実績がある。KNPPのV.ニコロフ所長は、「燃料供給の多様化は、プラントの高いパフォーマンスを維持し、安全で信頼性の高い手頃な価格のエネルギー確保に不可欠である」と強調した。KNPPはブルガリアで唯一稼働する原子力発電所で、5、6号機はそれぞれ1988年、1993年に営業運転を開始した。6号機(VVER-1000、104万kWe)と併せて、国内の総発電電力量の約1/3を供給している。6号機の燃料は、仏フラマトム社と10年間の供給契約を締結している。なお、同発電所第Ⅱサイトでは米WE社製AP1000(PWR、125万kWe)×2基の新設計画が進展中だ。
- 05 Jun 2024
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チェコ ドコバニ発電所がWE製燃料を受け入れへ
チェコ電力(ČEZ)は2月14日、所有・運転するドコバニ原子力発電所(VVER-440×4基、各51万kW)に年末をメドにウェスチングハウス(WE)社製燃料が初納入されることを発表した。テメリン原子力発電所(各108.6万kW、VVER-1000×2基)の1号機では、2019年に6体のWE製燃料集合体が試験装荷され、現在、ČEZ社とWE社が燃焼特性を評価中だ。試験装荷の結果はドコバニ発電所用燃料の仕様決定等の準備に活用されている。WE原子燃料部門のトップであるT.チョホ氏は、「当社にはVVER-1000に1,500体の燃料集合体を納入し、問題なく運転している実績がある。今回、ドコバニ発電所に最新版のVVER-440用燃料集合体を初納入するが、ウクライナのリウネ原子力発電所のVVER-440×2基にすでに装荷実績があり、同様に成功すると確信している」と語る。2010年代末、それまでロシアの核燃料会社TVEL社に依存していたVVER用燃料の調達先を見直すEUの政策に則して、ČEZ社は燃料調達先を多様化する取り組みを始めた。2018年開始の入札に基づき、2022年にはテメリン発電所用燃料集合体の供給契約をWE社およびフラマトム社と締結。ドコバニ発電所用燃料については2023年、リウネ発電所に燃料を供給したWE社と契約を結んだ。これにより、今回のドコバニ発電所への燃料納入が実現する。ČEZは2022年、エネルギー安全保障の強化に重点を置き、燃料備蓄量のさらなる増量を決定、両発電所の管理区域内にある特別貯蔵庫の容量も拡大している。ドコバニ発電所では、少なくとも3年分の燃料備蓄を計画している。また、連続運転サイクルの長期化が可能となり、テメリン発電所では18か月、ドコバニ発電所では16か月となる。これにより、ČEZ社は2030年までに年平均320億kWhの原子力発電量の達成を見込む。2023年には両発電所で304億kWhを発電、総電力需要の36%を占め、毎年約2千万トンのCO2の排出削減に貢献している。なお、現在の新規原子力発電計画には、最大4基の大型炉新設の他、小型モジュール炉の展開可能性が含まれている。仏マクロン大統領が民生用原子力協力を含む二国間協力の強化のためにチェコ訪問中の3月5日には、ČEZ社は仏オラノ社とドコバニ発電所向けのウラン濃縮役務提供に関する契約を締結した。2023年末のテメリン発電所向けの転換と濃縮役務の長期契約に続くもの。ČEZ社は今回の契約について、欧州での燃料確保を確実にし、エネルギー安全保障を一層強化するものと評価している。
- 07 Mar 2024
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ウクライナ フメルニツキーへの4基増設を明言
ウクライナのG.ガルシェンコ・エネルギー大臣は1月29日、フメルニツキー原子力発電所への4基の増設計画を継続することを明らかにした。建設が中断している同3号機については、年内にも建設を再開したい考えだ。ガルシェンコ大臣がウクライナのテレビ番組で語ったところによると、「VVER-1000を採用した3~4号機の建設および、米ウェスチングハウス(WE)社のAP1000を採用した5~6号機の建設について、WE社と協議中」だという。3号機の工事進捗度は75%であり、最短で2年半で完成できるという。残りの号機が完成すればフメルニツキー発電所の全6基が供給する電力は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える。なお、同大臣は1月25日のロイター通信社とのインタビューの中で、ブルガリアと原子炉容器や蒸気発生器等の輸入について交渉中であることを明らかにしている。未使用の機器をフメルニツキー3~4号機に利用したい考えだ。ブルガリアのベレネ原子力発電所(VVER-1000)では2基の建設計画が2023年10月に中止となっており、ロシアから購入した炉設備等が建設サイトに保管されている。ウクライナには15基の原子力発電所があり、2022年3月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャの6基を含め、原子力は総発電電力量の約半分を供給している。フメルニツキー1号機(VVER-1000、100万kW)は1987年に送電網に接続されたが、他の3基の建設は1990年に中断。2号機(VVER-1000、100万kW)の建設のみ再開され、2004年に送電網に接続された。3~4号機は未完成のままである。いずれもVVER-1000を採用し、1990年から建設工事は中断している。 2023年12月、ウクライナの原子力発電事業者エネルゴアトムとWE社は、フメルニツキー5号機のAP1000機器購入に関する契約を締結した。
- 07 Feb 2024
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米国 WE社製次世代燃料を照射後試験へ
米国のウェスチングハウス(WE)社は1月25日、事故耐性燃料(ATF)を含む25本の照射済みの試験用燃料棒を照射後試験のため、アイダホ国立研究所(INL)に送ったことを明らかにした。この照射後試験は、新型燃料の商業用原子炉での使用認可を得るために重要なプロセスの一環。納入された燃料は、ATFと商業用原子力発電所の炉心で照射された高燃焼度燃料。照射済み燃料が試験のためにINLに納入されたのは、20年ぶりのこと。INLを含む複数の国立研究所の技術支援と米エネルギー省(DOE)の資金援助を受けてWE社が開発・製造した次世代燃料は、安全性能の向上だけでなく、原子力発電所の運転サイクル期間を現在の18か月から24か月に延長することが可能だ。燃料交換停止回数の削減、使用済燃料の減容により発電事業者は大幅なコスト削減が可能になる。また、出力も増強されるため、原子炉の増設にも匹敵する。INLでは次世代燃料が通常の使用条件下でどのような性能を発揮するか実験・分析、また、想定される事故条件下における性能を確認し、貯蔵中や再処理中における挙動を実証するために追加試験を実施する。得られたデータは、米原子力規制委員会(NRC)の燃料に関する安全基準策定に利用される。同様の照射済み燃料棒は、以前にもテネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で試験された。INLとORNLにおける高度な検査と照射後試験は、次世代燃料を世界中の商用炉に装荷する最終承認を米NRCから得るための重要なマイルストーンである。WE社、米NRC、DOE原子力局、DOE国家核安全保障局(NNSA)のほか、日本、韓国、西欧の規制機関などにもデータが提供される。
- 06 Feb 2024
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マイクロ炉eVinciの開発で2社が協力
米ウェスチングハウス(WE)社は1月23日、可搬型の原子力発電システムの開発を行うカナダのプロディジー・クリーン・エナジー社と協力し、2030年までにカナダで最初の洋上可搬型の原子力発電所の設置を目指すことを明らかにした。WE社製のマイクロ原子炉「eVinci」を搭載する。WE社とプロディジー社は、2019年からWE社製のマイクロ原子炉「eVinci」の展開について共同で検討。カナダで戦略的に価値の高い鉱物資源を扱う多国籍企業が2019~2020年に、信頼性の高いクリーンエネルギー源を特定するための研究に資金を提供したことから、この研究に従事したプロディジー社が、広範囲に展開することを目的に標準化された可搬型原子力発電所の開発の先駆者となった。マイクロ原子炉「eVinci」は、分散型の電力市場、遠隔地のコミュニティや鉱業、国防などの重要インフラや島嶼国などで電気や熱を供給することが可能。熱出力は1.4万kW、定格電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要、燃料交換は約8年おき。最小限のメンテナンスで競争力と復元力のあるエネルギー供給が可能であり、信頼性に優れた設計であるという。単一または複数の「eVinci」を搭載した可搬型の発電所を、必要とされる場所に輸送、海岸線に設置する。なお、発電所は自走式ではない。WE社とプロディジー社は2022年に契約を締結、概念設計と規制要件の調査は完了している。調査の一部は、カナダの戦略イノベーション基金からWE社が授与された助成金で実施している。次のステップは、「eVinci」搭載のための可搬型原子力発電所の設計を完了し、発電所の建造、艤装、輸送といった一連の流れの監督モデルの確立、2030年までにカナダで最初のプロジェクト実現に向けた許認可取得と立地評価の作業であるという。WE社のeVinciテクノロジー社のJ.ボール社長は、「eVinci」は当初から可搬式が重要な設計原則であり、プロディジー社の可搬型原子力発電所は「eVinci」本来の可搬性に付加価値をもたらすものである、と語る。プロディジー社のM.トロジャーCEOは、「eVinci」のコンパクト設計と簡素化された運転要件は可搬型原子力発電所への搭載に最適であり、自社の技術で「eVinci」を展開、遠隔地にクリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力を供給するスケジュールを加速させたい、と意欲を示す。プロディジー社はマイクロ原子炉だけでなく、石炭発電の代替と送電網へ接続規模の発電に最適で洋上設置が可能な、小型モジュール炉(SMR)を搭載する可搬型発電所も開発している。2022年10月には、米ニュースケール社と共同開発した可搬型発電所の概念設計が発表されている。ニュースケール社製のSMR「NPM」(7.7万kWe)を1基から12基搭載する。プロディジー社は、どちらの可搬型発電所も原子炉を搭載後に設置場所まで輸送し、60年後の運転終了時に撤去することで、「施設のライフサイクル全体を簡素化し、追加の建設コストや複雑な作業を大幅に削減する」と期待を寄せている。
- 02 Feb 2024
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ウクライナ フメルニツキー5号機用のAP1000機器購入でWH社と契約
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は12月17日、フメルニツキー原子力発電所4号機(当初の予定はロシア型PWR、100万kW)の建設計画に続いて、同5号機としてウェスチングハウス(WH)社製AP1000を建設するため、同社と原子炉系統の購入契約を締結した。 ウクライナ議会がAP1000の建設に必要な法案を可決・成立させるのを待って、エネルゴアトム社は建設工事の関連作業を開始する。総工費は50億ドルに達する見通しで、この建設工事により国内では最大9,000名分の雇用が創出されると強調している。エネルゴアトム社は2021年8月、フメルニツキー原子力発電所で建設工事が中断中の4号機も含め、合計5基のAP1000を建設するためWH社と独占契約を締結した。同年11月には、フメルニツキー発電所でのAP1000建設に必要な追加契約をWH社と交わしており、4号機のこの変更計画はAP1000のパイロット建設プロジェクトと位置付けられている。2022年6月になると、同社は国内で稼働する15基のロシア型PWR(VVER)すべてにWH社製原子燃料を装荷するとともに、AP1000の建設基数も合計9基に拡大するため、さらなる追加契約をWH社と結んでいる。これらの契約締結後、エネルゴアトム社はWH社と共同でプロジェクトの実施に向けた準備作業や設計活動を展開。ウクライナ政府の今年1月の承認をうけて、実行可能性調査の実施案も作成した。今回の契約締結は、WH社とのその後の交渉で5号機用の機器購入で好条件が整ったことによる。5号機の原子炉系統はすでにWH社が製造済みで、納入を待つばかりだという。今回の契約への調印は、エネルゴアトム社のP.コティン総裁とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが会談した後、ウクライナ・エネルギー省のG.ハルシチェンコ大臣が立ち会って行われた。エネルゴアトム社とWH社の協力関係はすでに長期にわたっており、ウクライナでは2015年から2016年にかけて、100万kW級のVVERが設置されている南ウクライナ原子力発電所やザポリージャ原子力発電所で、WH社製燃料の装荷がすでに開始されている。また、2022年の追加契約に基づいて、リウネ原子力発電所の40万kW級VVERに今年9月、WH社製の燃料が初めて装荷された。また、スウェーデンのバステラスでWH社が操業する燃料製造工場では、燃料集合体の製造についてウクライナへの技術移転が続けられている。コティン総裁はこの件について、「燃料集合体の製造ラインを国内に設置できたため、今後はロシアによる燃料市場の独占体制を打ち崩すことも可能だ」と述べた。WH社のフラグマンCEOも、「両社の協力関係を一層強化するため、共同エンジニアリング・センターをウクライナに設置する計画がある」と表明。同センターを通じて両国が共同プロジェクトを進め、連携を強めていきたいとしている。両社間ではこのほか、WH社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」のウクライナ導入に向けた了解覚書も今年9月に結ばれている。(参照資料:エネルゴアトム社の発表資料①、②、ウクライナ・エネルギー省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Dec 2023
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UAE SMRやマイクロ炉の導入に向け米国ベンダー3社と覚書
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを担当する首長国原子力会社(ENEC)は、連邦内での小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の導入に向けて、12月3日から5日にかけて、これらを開発している米国ベンダーのGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社とテラパワー社、およびウェスチングハウス(WH)社の3社と、相次いで協力覚書を締結した。これらの覚書は、11月30日から12月12日までUAEのドバイで開催されている「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」の会期中に結ばれた。ENEC社はその開幕の前日、先進的な原子炉技術を通じて連邦の脱炭素化を加速するという「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を始動しており、3件の覚書締結は同プログラムの一環ということになる。UAEでは現在、連邦初の原子力発電設備となるバラカ発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の建設が順調に進展中。連邦原子力規制庁(FANR)は11月17日に同発電所の4号機に運転許可を発給しており、2024年の起動が見込まれている。ENEC社によると、すでに営業運転を開始した1~3号機はアブダビ首長国におけるクリーン電力の80%以上を賄うなど、UAEの発電部門や重工業などエネルギー多消費産業の脱炭素化は大幅に進んでおり、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するというUAEの目標達成に大きく貢献している。ENEC社は「アドバンス・プログラム」でこのような大型炉の建設経験と国際的な先進的原子炉サプライヤーのネットワークを統合、エネルギー多消費産業の脱炭素化を一層加速して、世界のクリーン・エネルギーへの移行を主導していく方針だ。同プログラムでは、SMRやマイクロ原子炉など最新の原子力技術を評価し、国内関係者や国際的なパートナーらとともにこれらの原子炉の建設に向けた具体的な道筋を決定付けるとしている。ENEC社はまず、12月3日にGEH社と協力覚書を締結しており、同社製SMR「BWRX-300」をUAEのみならず、中東地域やアフリカで建設する機会を共同で模索するとした。「BWRX-300」は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得した同社製原子炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。両社は「BWRX-300」のように小型で経済的、かつ柔軟性の高い運転が可能な原子炉で安価なクリーン電力を生産し、エネルギーの持続可能性や脱炭素化を追求する世界の潮流に歩調を合わせていく。この協力はまた、UAEが米国と進めているクリーン・エネルギーの促進イニシアチブ(U.S.-UAE Partnership for Advancing Clean Energy=PACE)の目標を達成する一助にもなるとのこと。ENEC社はまた、4日にテラパワー社と協力覚書を締結、署名式にはテラパワー社のビル・ゲイツ会長が同席した。同社が開発した電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉「Natrium」で、送電網の安定化やクリーン・エネルギーへの移行促進に向けた共同評価を行う方針。「Natrium」は溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせることにより、発電所のピーク時の電気出力を50万kWまで拡大して5時間以上稼働できるなど、コスト面の競争力が高いという。「BWRX-300」と同じく、「Natrium」を中東地域やアフリカ、南アジア地域でも建設することを目指し、両社が結んだライセンシング契約や「PACE」イニシアチブに基づいて「Natrium」の商業化を世界規模で進めていく。ENEC社はさらに、5日にWH社と協力覚書を締結しており、同社製のマイクロ原子炉「eVinci」をUAEやその他の国で建設し、CO2排出量実質ゼロ化に貢献する可能性を共同で研究する。「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等での熱電併給が主な目的だが、エネルギー供給保障や地球温暖化の対策としても解決策になり得るという。ENEC社はアドバンス・プログラムの牽引役としてSMRやマイクロ原子炉の技術を評価し、今後の建設につなげる考えだ。ENEC社のM.アル・ハマディCEOは、COP28 に向けたUAEのメッセージとして「原子力はCO2排出量の実質ゼロ化に不可欠のエネルギー源であり、UAEのクリーン・エネルギー化戦略においても中心的役割を担っている」と強調した。(参照資料:ENEC社の発表資料①、②、③、④、WH社、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Dec 2023
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加サスカチュワン州 マイクロ炉の建設に向け補助金
カナダのサスカチュワン州政府は11月27日、ウェスチングハウス(WH)社製のマイクロ原子炉「eVinci」の州内建設に向けて、同州が一部出資している公共企業体「サスカチュワン研究評議会(SRC)」に8,000万カナダドル(約87億円)の研究補助金を交付すると発表した。SRCとWH社が2022年5月に結んだ協力覚書に基づくもので、この補助金を活用して同州の規制要件や許認可関係の手続きを行い、2029年までに初号機を建設。そうした経験を基盤に、将来複数の「eVinci」を州内の様々な産業や研究、エネルギー源に利用できるか実証する。建設サイトについては、規制手続などプロジェクトの進展にともない決定する方針だ。SRCはカナダで第2の規模を持つ技術研究関係の公共企業体で、年間収益は2億3,200万加ドル(約252億円)。過去76年にわたり、農業・バイオテクノロジーやエネルギー、環境、および鉱業などの分野で、世界22か国の約1,600の顧客に科学的なソリューションを提供しているという。また、同州中央部のサスカトゥーン市にあるSRC環境分析研究所では、電気出力20 kWの研究炉「SLOWPOKE-2」を2021年11月に閉鎖するまで約38年間運転した実績がある。WH社の「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等における熱電併給を目的としている。8年以上燃料交換なしで運転することが可能で、炉外復水器となる部分の周囲にチューブを環状に巻き付け、主要熱交換器とする設計だ。カナダ政府は2022年3月、国内での将来的な「eVinci」建設に向けて、2,720万加ドル(約30億円)をWH社のカナダ支社に投資すると発表。イノベーション・科学・研究開発省(ISED)の「戦略的技術革新基金(SIF)」から資金を拠出し、SMRの持つ「いつでも利用可能で運搬も容易な低炭素エネルギー源」としての能力を活用するほか、カナダの経済成長や2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するという目標の達成に多大な貢献を期待するとしていた。また、今年6月からは、「eVinci」について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査:VDR)」が本格的に始まっている。10月には米エネルギー省(DOE)が、WH社も含め米国内でマイクロ原子炉を開発中の3社と総額390万ドルの基本設計・実験機設計(FEEED)契約を締結。アイダホ国立研究所(INL)内にある国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)の新しい「マイクロ原子炉実験機の実証用テストベッド(DOME)」を用い、3社の設計作業や機器製造、5分の1サイズの実験機建設と試験を支援する方針である。なお、サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社は2022年6月、オンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション社の例に倣い、サスカチュワン州で将来建設の可能性がある初の小型モジュール炉(SMR)として、同じくGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を選定。現在、建設サイトを選定中で、2029年に建設実施の判断が下れば、2030年代半ばまでに最初のSMRを運開させるとしている(参照資料:サスカチュワン州、SRC、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Nov 2023
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鉛冷却高速炉SMRの開発で4か国5者が協力
ベルギー原子力研究センター(SCK CEN)、イタリアの経済開発省・新技術・エネルギー・持続可能経済開発局(ENEA)とアンサルド・ヌクレアーレ社、ルーマニアの国営原子力技術会社(RATEN)、および米国のウェスチングハウス(WH)社の5者は11月8日、鉛冷却高速炉方式の小型モジュール炉(SMR-LFR)建設を加速することで、了解覚書を締結した。液体重金属の技術蓄積がある5者が協力し、ベルギー北部のモルにあるSCK CENでSMR-LFRの商業用実証炉を建設。同炉の技術やエンジニアリング面の可能性を実証し、クリーン・エネルギーへの世界的な移行に際し、持続可能なエネルギー源である原子力を主力に位置付けていく考えだ。欧州原子力共同体(ユーラトム)のLFR研究開発プロジェクトでは、ENEAとアンサルド社が主導的役割を担っており、両者はユーラトムのLFR開発ロードマップに明記されたLFR実証炉「ALFRED」(電気出力12万kW)の建設をルーマニア南部のピテシュチ(Pitești)で実現するため、2013年にRATENと「FALCON(Fostering ALfred CONstruction)企業連合」結成の協力覚書を締結していた。今回覚書を結んだ5者は、SMR開発の次の段階の作業として、同計画で過去10年間に行われた設計・建設経験を活用し、商業用SMR建設の経済的、技術的実行可能性等を探る方針だ。覚書への署名はベルギーの首都ブリュッセルで行われ、同国のA.デクロー首相とルーマニアのK.ヨハニス大統領が同席した。また、在ベルギーのイタリア大使館と米国大使館からも代表者が出席している。ベルギー政府は2022年5月、SCK CENに革新的なSMRの研究を委託しており、研究予算として同センターに1億ユーロ(約160億円)を拠出すると表明。 SCK CENは、この研究を切っ掛けに鉛冷却高速炉SMRの実現に向けたパートナーの選定作業を始め、様々な企業が過去数年間に実施した鉛冷却炉関係の技術開発成果に基づいて、今回の5者が決定したという。受動的安全系が組み込まれた鉛冷却高速炉SMRは非常に高い安全性を備えており、原子燃料サイクルにおいては一層効率的な燃料の活用と長寿命放射性廃棄物の削減が可能である。協力覚書を締結した5者は、この有望な技術をコスト面の競争力を持ったエネルギー源として完成させ、それが商業規模で建設されるよう各メンバーが強みを発揮し補完し合う考えだ。 具体的なアプローチとしてSCK CENは、WH社が開発中のLFRを出発点に設定。将来のエネルギー・ミックスに、低炭素で持続可能かつ競争力のある鉛冷却高速炉SMRの電力と熱、水素製造等を提供するため、5者はあらゆる要件を満たせるよう協力する。鉛を冷却材として使用する原子力技術は、ENEAやRATEN、SCK CENなど同技術のパイオニアにとって未知の領域ではないという。これらの機関のノウハウで商業用SMR-LFRの技術を実証した後は、市場投入までの期間を最短にできるよう、WH社とアンサルド社の設計や許認可手続き、建設等での経験を活用。最終的な商業化を目指して盤石な基盤を固め、世界展開を図るという。(参照資料:SCK CEN、RATEN、アンサルド社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Nov 2023
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チェコのドコバニ増設計画で3社が入札の最終文書提出
チェコの国営電力(CEZ社)は10月31日、ドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で建設するⅡ期工事の最初の1基となる5号機について、100%子会社のドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)が大手ベンダー3社から入札の最終文書を受領したと発表した。2022年3月に始まったこの入札には、EDU Ⅱ社の安全・セキュリティ面の資格審査を通過した米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)が参加。3社は同年11月末に最初の入札文書を提出しており、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の3、4号機についても、法的拘束力を持たない意向表明として増設を提案している。これらの原子炉に採用する炉型として、WH社は中国と米国ですでに商業炉が稼働している120万kW級PWRの「AP1000」を提案。EDFは、中国で稼働実績があり欧州でも建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」について、出力を120万kW級に縮小した「EPR1200」を建設するとした。また、CEZ社のウェブサイトによると、KHNP社はアラブ首長国連邦(UAE)に輸出実績のある140万kW級PWR「APR1400」の出力縮小版、「APR1000」を提案したと見られている。EDU Ⅱ社は今後、国際原子力機関(IAEA)の勧告事項に基づき設定した評価モデルで、各社の提案を技術面や商業面から評価し、報告書を産業貿易省に提出する。チェコ政府としてこれらのうち1社を最終決定した後は2024年中に契約を締結。2036年に試運転の準備が整うよう、建設プロジェクトの計画文書を作成する計画だ。同社は増設計画におけるその他の関係業務も進めており、2019年9月に環境省が増設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的な評価を下した後、2020年3月にⅡ期工事の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請した。5、6号機は既存の4基の隣接区域に建設されることになっており、SUJBは翌2021年3月に同許可を発給している。WH社の発表によると、米国政府は同社とベクテル社の企業連合がこの増設計画を落札できるよう、全面的にサポートする方針である。チェコ駐在のB.サベト米国大使は「エネルギーの戦略的供給保障面から見て、米国の技術は地球温暖化に対抗可能な、信頼できるクリーン・エネルギー源を提供するだけでなく、チェコの原子力サプライチェーンで数千人規模の雇用を創出する可能性がある」と指摘、米国とチェコの双方にメリットがあるとした。WH社はまた、チェコの原子力産業界とは約30年前から協力関係にある点を強調。ロシア型PWR(VVER)用の原子燃料を製造できる西側諸国で唯一のサプライヤーとして、VVERが稼働するドコバニとテメリンの両発電所に2024年から原子燃料の供給を開始するとしている。EDFは今回、「子会社であるフラマトム社のノウハウと工業技術力により、原子炉系統の機器や計装制御(I&C)系を提供できる」と表明。タービン系統に関しては、低速タービン「アラベル」の開発企業である仏アルストム社を米GE社が2015年に買収したことから、EDFと長年パートナー関係にあるGEスチーム・パワー社が同タービン付きのものを供給する。また、2022年6月にプラハに設置したEDFの原子力支部を拡張し、チェコのサプライヤー企業約300社との長期的な協力に向けた調整活動を行うほか、EDFが後援する「チェコ・フランス原子力アカデミー」が10月に正式開校したことから、チェコにおける原子力人材の育成を支援するとしている。(参照資料:CEZ社の発表資料①、②、WH社、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Nov 2023
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米エネ省 3つのマイクロ原子炉で基本設計契約を締結
米エネルギー省(DOE)は10月23日、国内でマイクロ原子炉を開発中のウェスチングハウス(WH)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)、およびスタートアップ企業のラディアント(Radiant)社と、総額390万ドルの基本設計・実験機設計(FEEED)契約を締結した。この契約金は、DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)内にある国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が提供するもので、NRICのFEEEDプロセスに沿って、WH社のマイクロ原子炉である「eVinci」、USNC社の「Pylon」、ラディアント社の「Kaleidos」の商業化を促進。具体的にはNRICの新しい「マイクロ原子炉実験機の実証用(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)テストベッド」を使って、3社の設計作業や機器の製造、燃料を装荷した実験機の建設と試験に際し、支援を提供する。NRICは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してDOMEテストベッドを建設中。DOEは早ければ2026年にもDOMEテストベッドでマイクロ原子炉の実験機試験を開始する計画で、3社が試験にかける経費を削減してプロジェクト全体のリスクを軽減するなど、これらの開発が一層迅速に進むよう促す方針だ。DOEのK.ハフ原子力担当次官補は、「今回のFEEED契約により、3社のマイクロ原子炉はさらに一歩、実現に近づいた」と指摘。「これらの原子炉は、クリーン・エネルギーへの移行を目指す様々なコミュニティに複数の選択肢を提供することになる」と述べた。WH社の「eVinci」はヒートパイプ冷却式の原子炉で、電気出力は0.2万kW~0.5万kW。DOEは2020年12月、官民のコスト分担方式で進めている「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」の支援対象に選定しており、7年間に総額930万ドル(このうち740万ドルをDOEが負担)を投じて、2024年までに実証炉を建設する計画である。今回のFEEED契約による資金で、WH社はINLにおける5分の1サイズの実験機建設計画を策定。最終設計の決定や許認可手続きに役立てたいとしている。USNC社の「Pylon」は、第4世代の小型高温ガス炉(HTGR)として同社が開発中の「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」(電気出力0.5万kW~1万kW、熱出力1.5万kW)の技術に基づいている。MMRよりさらに小型で、送電網が届かない地域や宇宙への輸送が容易。「Pylon」1基あたりの電気出力は0.15万kW~0.5万kWだが、複数基連結することで出力を増強することが可能である。ラディアント社の「Kaleidos」は、電気出力が最大0.1万kW、熱出力は0.19万kWの小型HTGR。遠隔地域のディーゼル発電機を代替するほか、軍事基地や病院、データセンターその他の戦略的インフラ施設に確実にエネルギーを供給。陸上や海上の輸送のみならず空輸が可能であり、立地点では一晩で設置することができる。同社のD.バーナウアーCEOは今回の契約締結について、「2026年に『Kaleidos』で試験を行い、2028年に最初の商業炉を建設するという当社のスケジュールが保たれる」と強調。V.バッギオCOO(最高執行責任者)も、「DOMEテストベッドでの試験では『Kaleidos』の安全性やその他の性能に関する重要データが得られるので、そうしたデータやその分析結果を原子力規制委員(NRC)に提出することで、商業化に向けた許認可手続きが前進する」と指摘した。(参照資料:DOE、WH社、ラディアント社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Oct 2023
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ブルガリア企業と米WH社 AP1000への機器供給で協力へ
米ウェスチングハウス(WH)社は10月19日、ブルガリア北部のコズロドイ原子力発電所(100万kW級ロシア型PWR=VVER-1000×2基)で予定されているAP1000の建設プロジェクトおよび地域全体におけるその他のプロジェクトを支援するため、ブルガリアの主要サプライヤーと技術協力に関する覚書を締結した。サプライヤーには、OSKAR-EL、Glavbolgarstroy、ENPRO Consult、EnergoService、EQE Bulgaria等が含まれている。ブルガリアは、安全性が懸念されていた同発電所1~4号機(各44万kWの旧式のVVER)を2006年までにすべて閉鎖。現在は同5、6号機の2基だけで総発電量の約35%を賄っており、新たな原子炉の建設については、1980年代から検討されていた。2021年1月に同国政府が「ベレネ発電所用に購入済みだったVVER機器(ロシア型PWR)を利用して、コズロドイ7号機を建設するのが経済的で合理的」と表明したが、同国議会で今年実施された票決において、WH社製AP1000の導入に向けて、米国政府と政府間協力協定(IGA)の締結を交渉する方針が確定。今年3月2日には、WH社とコズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB社)が協力覚書を締結した。今回の覚書では、計装制御(I&C)システム、放射線監視システムなどの主要コンポーネントの製造や、エンジニアリング、コンサルティング、建設サービスを、ローカリゼーションの一環としてブルガリア企業に委託することを視野に入れている。WH社のD.ダーラム社長は、「AP1000プロジェクトの成功には、豊富な経験を持つブルガリアの原子力サプライチェーンからのサポートが不可欠。」とコメントしている。AP1000は、唯一稼働している第3世代+(プラス)原子炉であり、米国内では、7月31日にジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所において、AP1000を採用した3号機が営業運転を開始。翌月には同型の4号機も燃料装荷を完了し、2024 年3月に営業運転を開始する予定だ。中国では4基の中国版AP1000が稼働中。また、2022年11月にはポーランド政府が同国初の原子炉建設計画にAP1000を採用した。そのほか、中・東欧、英国、北米の複数地点で導入が検討されている。
- 20 Oct 2023
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米規制委 濃縮度6%の試験用燃料集合体の装荷を承認
米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2023
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ポーランド AP1000の建設に向け米社とサイト設計等で契約
ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)傘下の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社は9月27日、同国初の大型原子力発電所建設に向けて、米ウェスチングハウス(WH)社およびベクテル社の企業連合とエンジニアリング・サービス契約を締結した。同国北部ポモージェ県のルビアトボ-コパリノ地区で、WH社製のAP1000(PWR、125万kW)を3基建設するため、WH社らは18か月の同契約期間中、建設サイトに基づいたプラント設計を確定する。契約条項には、原子炉系やタービン系などの主要機器に加えて、補助設備や管理棟、安全関連インフラなどの設計/エンジニアリングが含まれており、両者はこの契約に基づく作業を直ちに開始。初号機の運転開始は2033年を予定している。ワルシャワでの同契約の調印式には、ポーランドのM. モラビエツキ首相をはじめ、政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相、米国のM.ブレジンスキー・ポーランド駐在大使、米エネルギー省(DOE)のA.ライト国際問題担当次官補が同席。PEJ社のM.ベルゲル社長とWH社のP.フラグマン社長兼CEO、およびベクテル社のJ.ハワニッツ原子力担当社長が契約文書に署名した。今回の契約の主な目的は、建設プロジェクトの実施に際して順守する基準や、設計/エンジニアリング上の要件を特定すること。同発電所のスペックを満たす初期設計の技術仕様書作成など、両者は同契約の条項に沿って様々な許認可の取得で協力。同契約は、建設工事の進展に応じて次の段階の契約を結ぶ際のベースとなる。同契約はまた、建設プロジェクトがポーランドの規制当局である国家原子力機関(PAA)や技術監督事務所(UDT)の規制に則して実施されるよう、PEJ社を支援するもの。ポーランドと欧州連合の厳しい安全基準に則して建設許可申請を行う際、同契約で実施した作業の結果が申請書の作成基盤になるほか、原子力法の要件に準じて安全解析や放射線防護策を実施する際は、事前評価を行う条項が同契約に盛り込まれている。同契約はさらに、WH社らとの共同活動にポーランド企業を交えていくと明記している。これにより、ポーランド企業の力量や需要を考慮した上で、出来るだけ多くの企業が建設プロジェクトに参加できるよう、原子力サプライチェーンの構築を目指す。このほか、同契約を通じてポーランド企業の従業員が米国を訪問し、最新原子炉の設計/エンジニアリングや運転ノウハウを習得することも規定されている。ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、ポーランド環境保護総局(GDOS)が今月19日に同プロジェクトに対して「環境決定」を発給した後、21日付でWH社とベクテル社がポーランドでの発電所設計・建設に向けて、正式に企業連合を組んだ事実に言及。「これらに続く今回の契約締結は、国内初の原子力発電所建設をスケジュール通り着実に進め、国内産業を活用しながら予算内で完成させるというポーランドの決意に沿うもの」と指摘した。同相はまた、WH社とベクテル社が米国のボーグル3、4号機増設計画でもAP1000の完成に向けて協力中であることから、「両社がボーグル・プロジェクトで蓄積した経験と教訓、先進的原子炉のエンジニアリング・ノウハウは、ポーランドのエネルギー・ミックスの根本的な再構築に生かされていく」と表明。ポーランドにおける原子力エンジニアの育成や、ポーランド経済の発展にも大きな弾みとなると強調した。WH社のP.フラグマン社長は、「ポーランドのみならず、今回の契約締結は当社とベクテル社にとっても転機となるが、安全かつ信頼性の高い原子力でエネルギー供給を保証し、脱炭素化を図ろうと考えている国々にとっても、モデルケースになる」と指摘している。参照資料:PEJ社、WH社、ベクテル社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 29 Sep 2023
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ウクライナ WH社製SMRの導入に向け覚書
ウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社は9月12日、ウェスチングハウス(WH)社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」の導入に向けて、同社と了解覚書を締結した。今後10年以内に国内初号機の設置を目指すとともに、将来的には同炉設備の国内製造も視野に入れた内容。差し当たり、具体的な建設契約の締結に向けた作業や許認可手続き、国内サプライチェーン関係の協力を進めるため、共同作業グループを設置する。「AP300」は100万kW級PWRであるAP1000の出力を30万kWに縮小した1ループ式のコンパクト設計。AP1000と同様にモジュール工法が可能なほか、受動的安全系や計装制御(I&C)系などは同一の機器を採用している。ウクライナは2050年までのエネルギー戦略として、無炭素なエネルギーへの移行とCO2排出量の実質ゼロ化を目指している。このため原子力発電の増強を進めており、引き続き新しい大型炉を建設していく一方、ウクライナにとって有望な選択肢であるSMRの設置も進める考えだ。WH社との協力については、エネルゴアトム社が2021年11月、フメルニツキ原子力発電所で国内初のWH社製AP1000を建設するとし、同社と契約を締結。翌2022年6月には、国内で稼働する全15基のロシア型PWR(VVER)用にWH社製の原子燃料を調達し、AP1000の建設基数も9基に増やすための追加契約を結んだ。15基中13基の100万kW級VVER(VVER-1000)については、すでにWH社製原子燃料の装荷が進んでいるが、エネルゴアトム社は今月10日、残り2基の44万kW級VVER(VVER-440)に初めてWH社製の原子燃料を装荷している。WH社のP.フラグマン社長兼CEOは、「原子燃料の調達からプラントのメンテナンス、発電に至るまで、長期的に信頼されるパートナーとしてウクライナにクリーンで確実なエネルギーをもたらせるよう貢献したい」とコメントしている。今年5月に発表した「AP300」については、同社は稼働実績のある第3世代+(プラス)のAP1000に基づく炉型である点を強調しており、実証済みの技術を採用しているため許認可手続きが円滑に進むことや、AP1000用の成熟したサプライチェーンを活用できると指摘した。同社の計画では、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から「AP300」の設計認証(DC)を取得し、2030年までに米国で初号機の建設工事を開始、2030年代初頭にも運転を開始するとしている。(参照資料:エネルゴアトム社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Sep 2023
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米ボーグル4号機、燃料初装荷
米サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は8月17日、ジョージア州のA.W.ボーグル原子力発電所で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)原子炉AP1000として建設中の4号機(PWR、110万kW)で燃料装荷を開始した。157体の燃料集合体はWH社がサウスカロライナ州の工場で製造したもので、数日間で装荷を完了するとしている。同発電所では先月31日、米国で約35年ぶりに本格着工した同型の3号機(PWR、110万kW)が営業運転を開始。4号機でも燃料の装荷後は、起動試験で一次冷却系や原子力蒸気供給系が設計通りの温度や圧力で動くことを実証し、様々な出力レベルで試運転を実施する。ジョージア・パワー社は、今年の第4四半期か2024年の第1四半期には同機で送電が可能になると予想。同社と両機を共同保有する3社のうち、オーグルソープ電力は「これらの試験が首尾よく進めば、現時点のスケジュールどおり2024年3月に営業運転が開始される」と述べた。同発電所では、すでにWH社製PWRの1、2号機(各121.5万kW)が稼働していることから、4基が揃えば同発電所は米国でも最大規模となる。3、4号機だけでもそれぞれ、50万戸の世帯や企業に無炭素で安全、安価な電力を十分供給できるとジョージア・パワー社は強調している。米国初のAP1000であるボーグル3、4号機は、2013年3月と11月にそれぞれ本格着工したが、2017年3月にWH社が倒産申請したのを受けて、サザン社のもう一つの子会社で3、4号機の運転を担当予定のサザン・ニュークリア社がWH社からプロジェクト管理を引き継いだ。また、2020年には新型コロナウイルスによる感染の影響を軽減するため、建設サイトの労働力を約20%削減するなど、プロジェクトは様々なトラブルに見舞われたが、4号機では今年3月から5月にかけて温態機能試験を実施。7月末には米原子力規制委員会(NRC)から、「同機は建設・運転一括認可(COL)が認定した基準とNRCの規制通りに建設され、運転も行われる見通し」だとする確認事項書「103(g)」がサザン・ニュークリア社に到着。これにより、同機では実質的に燃料の装荷と起動が許可されていた。 WH社によると、AP1000はすでに中国・浙江省の三門発電所と山東省の海陽発電所で、合計4基が2018年以降順次営業運転を開始。ボーグル3、4号機はこれらに続いて、世界で5基目と6基目のAP1000となる。中国ではまた、中国版のAP1000となる「CAP1000」や「CAP1400」が合計6基、三門と海陽、および山東省の栄成石島湾発電所で建設中である。さらに、ポーランドなどの中・東欧地域やウクライナでも複数基のAP1000建設が計画されている。(参照資料:ジョージア・パワー社、オーグルソープ電力、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Aug 2023
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加テレストリアル社 WH社製熔融塩炉燃料を調達へ
カナダのテレストリアル・エナジー社は8月3日、同社製の「小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)」で使用する燃料を将来的に調達するため、同燃料の製造・供給契約を米ウェスチングハウス(WH)社の英国子会社と締結した。この子会社「スプリングフィールド燃料会社(SFL)」は、英ランカシャー州のスプリングフィールドにあるWH社の燃料製造工場を運営している。この契約の下で両社は、同工場の様々な既存インフラを活用してIMSR用燃料の試験製造プラントを設計・建設する計画だ。同契約はまた、2030年代に複数のIMSRを稼働できるよう、最終的に商業規模の製造施設建設を想定している。このため、英国政府はこの試験製造プラント建設に「原子燃料基金(NFF)」の中から290万ポンド(約5億2,500万円)の支援を約束。同契約は元々、テレストリアル社とSFL社および英国の国立原子力研究所(NNL)がIMSR用燃料の商業規模の確保に向け、2021年7月に調印した協力契約に基づいていることから、英国政府もこの協力関係を利用して国内エネルギー供給の保証戦略を進めていくとしている。テレストリアル社のIMSRは熱出力40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほか熱エネルギーの供給が可能。使用する熔融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり民生用の軽水炉に装荷されてきた「標準タイプ」の低濃縮ウラン((U-235の濃縮度が5%以下))を熔融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料((U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用する。この関係で、同社は2022年11月にこの標準タイプ燃料の梱包方法と国境を越えた輸送について、第三者に依頼して規制面の独自評価を行っている。その結果、これまで既存炉に利用されてきた燃料の梱包方法は、新たな種類の燃料梱包に派生するコンテナの設計や製造、許認可等の面でコストや時間がかからず、IMSRの燃料輸送に適していることが実証された。IMSRを主要な市場に速やかに送り出すという商業的側面でも、有利な燃料選択だったと強調している。同炉は今年4月、カナダの規制要件に対する適合性の事前審査で、同国の原子力安全委員会(CNSC)が提供している「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第2段階を完了。CNSCが「カナダで同炉の商業利用を阻むような根本的障害は見受けられなかった」と結論づけたほか、テレストリアル社も、「VDRは熔融塩を燃料として使う先進的原子炉がクリアした最初の規制審査になった」と指摘していた。IMSRについては、カナダのアルバータ州政府が建設に向けた検討を進めており、テレストリアル社と同州の州営非営利企業「インベスト・アルバータ(Invest Alberta)社」は2022年8月、同州をはじめとするカナダ西部地域でのIMSR建設に向けて了解覚書を締結している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Aug 2023
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