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米DOE TMI-1の運転再開に向けて10億ドルを融資
米エネルギー省(DOE)は11月18日、DOEの融資プログラム局(LPO)が電力大手のコンステレーション・エナジー社と10億ドルの融資契約を締結したと発表した。同社がペンシルベニア州で所有する、クレーン・クリーン・エナジー・センター(旧称:スリーマイル・アイランド原子力発電所)1号機(PWR、89万kWe)の運転再開を支援する。同融資は、2025年7月に成立した「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」(OBBBA)(=ワーキングファミリー減税法)に基づき推進されている「エネルギー支配資金(EDF)プログラム」(貸出枠2,500億ドル、2028年9月30日まで)から拠出される。同1号機は1974年に営業運転を開始したが、安価なガス火力との競合で経済性が悪化し、2034年まで運転認可を残したまま2019年に閉鎖された(同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進行中)。コンステレーション社は今年6月、最短で2027年の運転再開を目指す方針を示しており、米原子力規制委員会(NRC)による許認可を得た上で運転再開する。運転再開後は約80万世帯分に相当する電力供給が可能となり、電気料金の抑制、雇用創出、系統信頼性の強化に寄与するとされる。AI関連の電力需要の増加傾向が続く中、米政権が目指す「AIイノベーション主導」と国内製造業再興に資する点も強調されている。一方、同社は11月4日、メリーランド州で最大580万kWeの新規発電および蓄電を含む大規模エネルギープロジェクトに対する数十億ドルの短・長期の投資計画を公表した。電力需要の増加に対応しつつ、電気料金の引き上げを回避し、同州の経済成長を支える次世代のクリーン電源の導入を目指している。長期的には、同社のカルバートクリフス原子力発電所の既存炉2基(PWR、各90万kW級)の運転期間延長(80年運転)と出力向上を行い、2034年と2036年に予定された閉鎖を回避する考えだ。これに加えて、同サイトで約200万kWe規模の次世代炉新設も検討しており、同発電所の合計出力を400万kWe規模へと実質倍増させる計画である。これらが実現すれば、現在50%強を占める州のクリーン電源比率が約70%へ引き上げられる見込みだ。なお、カルバートクリフス発電所2号機では、仏フラマトム社製のPROtect事故耐性燃料集合体が照射試験されている。同先行燃料集合体(LFA)は、DOEの事故耐性燃料プログラムを通じて開発されたもので、2021年に商業炉としては初装荷された。2023年春、2025年春の燃料交換停止時に各24か月運転サイクル後の検査を実施。この48か月の運転において、堅牢な燃料特性が設計通りに機能していることが確認され、2027年春に3回目の運転サイクルを完了予定。その後、DOE傘下の国立研究所に送られ、許認可取得活動の一環として、照射後試験を実施する。LFAは2019年のコンステレーション社との契約に基づき、ワシントン州リッチランドのフラマトム社の施設で製造。176本のクロム被覆燃料棒とクロミア添加燃料ペレットが含まれ、炉心の変化に対する耐性の向上、高温条件下での腐食や水素生成の抑制が期待されている。フラマトム社、GEベルノバ社、ウェスチングハウス社はいずれも、2030年までに事故耐性燃料が広く採用されることを目指し、全国の商業炉で試験を実施しているところ。DOEは事故耐性燃料の利用は、既存炉の経済性と性能の向上に寄与し、トランプ米大統領が掲げる2030年までに既存炉による500万kWeの電力供給の目標を支える可能性があると指摘している。
- 26 Nov 2025
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米国 V. C. サマー増設プロジェクト再開へ
米サウスカロライナ州営電力であるサンティー・クーパー社の取締役会は10月24日、同州で建設が中断されているバージル・C・サマー原子力発電所2-3号機の建設プロジェクト再開に向けて、カナダの資産運用会社であるブルックフィールド・アセット・マネジメント社との独占交渉に関する意向表明書(LOI)を承認した。同プロジェクトはウェスチングハウス社(WE)製の大型炉AP1000を採用しており、ブルックフィールド社はWE社の大口株主である。LOIでは、6週間の初期プロジェクト実現可能期間を設定。同期間中に、両当事者は共同でプロジェクトマネージャーを選定し、2基の建設再開を行う建設業者を評価。同発電所が発電する電力購入に関心のある事業体とも事前協議の実施を計画する。サンティー・クーパー社のP. マッコイ会長は、「当社の目標は、民間資金で原子炉を完成させ、料金支払者や納税者に負担をかけずに、サウスカロライナ州に大幅な発電設備を追加すること。ブルックフィールド社の提案はまさにそれを実現するものであり、その提案を支える財務能力がある」と語り、J. ステートンCEOは、「過去8年間にわたって設備を維持するという当社の戦略的な決定により、2基の完成をより迅速かつ低コストで完成させることができる」と指摘。建設が停止された2基の保存状態と、ジョージア州のA. W. ボーグル3-4号機および海外で運転実績のあるAP1000は、原子力産業にとって非常に魅力的な資産であるとし、同2基の完成により、初期投資を行った顧客に利益を還元していく考えを示した。家庭用および産業用の電力需要の急増と州の支援を受けて、サンティー・クーパー社は昨年、未完成の原子炉を完成させるために第三者に資産の売却を検討。2025年1月に提案依頼書(RFP)の募集を実施し、当初、70社以上から関心表明と15件の正式な提案を受けたという。2基の完成プロジェクトにより、数千人の建設雇用の創出、数百人の高度なスキルを持つ常勤雇用のほか、送電網の信頼性の向上、新たな産業誘致に伴うより多くの雇用と経済的利益が見込まれている。なお、この完成プロジェクトの権益を売却する競争プロセスにおいて、米投資銀行のセンタービュー・パートナーズ社やJPモルガン社がサンティー・クーパー社の財務アドバイザーを務めている。同発電所の建設プロジェクトの過半数(55%)を所有していたスキャナ(SCANA)社傘下のSCE&G社(2019年1月にドミニオン・エナジー社が買収)は、2-3号機の建設・運転一括認可(COL)を、2008年3月に米原子力規制委員会(NRC)に申請。COLは2012年3月に発給され、2013年3月に2号機、2013年11月に3号機が着工した。同じAP1000を採用したA. W. ボーグル3-4号機の着工とほぼ同時期である。しかし、長年にわたるコスト超過およびスケジュール遅延と、その後に続く2017年3月のWE社の破産申請を受け、SCE&G社は建設プロジェクトの残り45%の所有者であったサンティー・クーパー社とともに、2017年7月に2-3号機の建設中止を決定した。SCE&G社はその後、2018年12月に納入されていた機器の所有権をサンティー・クーパー社に譲渡。ほどなくサンティー・クーパー社とWE社との間で、プロジェクトに係る設備・機器所有権をめぐり係争に発展したが、和解が成立している。なおNRCは、SCE&G社とサンティー・クーパー社の合意により、2019年3月にCOLを失効させた。新たに建設・運転を希望する場合、再申請が必要となる。
- 11 Nov 2025
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カナダ 2州で原子力新設を模索
脱炭素化を掲げるカナダにおいて、これまで原子力発電を導入していなかった2州で新設への動きが具体化しつつある。サスカチュワン州政府は10月20日、同州初となる「エネルギー安全保障戦略」を公表し、原子力を含む長期的な電源多様化方針を示した。一方、隣接するアルバータ州と米ウェスチングハウス(WE)社は10月21日、とAP1000(PWR, 125万kWe)の導入可能性を探る覚書(MOU)を締結。サスカチュワン州政府の新戦略は、エネルギー安全保障を最優先課題とし、単一電源への依存を避ける多様な電源構成の確立を目的とする。公式資料によると、州の発電量の約50%を天然ガスが占めており、石炭火力も依然として安定供給を支える重要な電源となっている。再生可能エネルギーの比率は35%に上るが、出力変動や土地利用の制約が課題とされる。同州は世界有数のウラン産出地でありながら、これまで原子力発電所は建設されてこなかった。新戦略では今後のエネルギー需要の拡大を見込み、2050年まで石炭火力の運転を認め、原子力導入までの「橋渡し電源」として活用する方針を示している。州電力会社のサスクパワー社は、SMR「BWRX-300」の導入を軸とした開発計画を進めており、エステバン近郊2地点を候補サイトに絞り込み、2026年中の立地決定を目指している。また、州内3大学に対してそれぞれ300万~400万ドル(約3.5~4.6億円)を投資し、原子力工学・安全・先端研究分野での人材育成や拠点整備を予定。ウラン資源と研究機関を活かし「採掘から発電まで」を一貫させた産業クラスターの形成も視野に入れる。一方、アルバータ州では、同州北部で「ピースリバー原子力発電プロジェクト」を推進するエナジー・アルバータ社が10月21日、WE社とAP1000の導入可能性を検討するMOUを締結した。同プロジェクトは最終的に4基、合計480万kW規模の原子炉建設を目指している。当初はCANDU炉の採用を前提としていたが、米国型PWRの適用可能性についても検討を進める。サスカチュワン州とアルバータ州は、2024年5月には原子力技術の導入や規制分野での協力に関するMOUも締結している。
- 07 Nov 2025
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日米首脳が対米投資で合意文書 原子力やAI分野で連携強化へ
高市早苗首相は10月28日、訪日中のD・トランプ米大統領と会談し、両国による対米投資を柱とした経済協力の強化で合意した。会談後に公表された「日米間の投資に関する共同ファクトシート」には、エネルギーやAI、重要鉱物など幅広い分野で日本企業が米国のプロジェクトに参画を検討していることが明記された。両首脳は、7月の関税合意を踏まえ、総額5,500億ドル(約84兆円)規模の対米投資枠を設定。そのうち最大2,000億ドルが原子力分野への投資となる見込みだ。日本政府系金融機関の支援も活用し、日米双方の企業による新たなビジネス協力を促進する考えを示した。原子力分野では、ウェスチングハウス(WE)社が米国内で進める大型炉AP1000(PWR、125万kWe)やSMR(小型モジュール炉)の建設計画に対し、三菱重工業、東芝、IHIなどの日本企業が関与を検討している。事業規模は最大1,000億ドル(約15兆円)に達する見通し。また、米国のGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kWe)についても、日本の日立GEベルノバニュークリアエナジー社らが関与する構想が盛り込まれた。経済産業省によると、ファクトシートは関心を示した企業の案件を列挙したものであり、投資実行が確定したわけではないという。日米両政府は同日、AIや核融合など7分野の科学技術協力に関する覚書にも署名し、経済・技術両面での連携強化を確認した。
- 29 Oct 2025
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米政府とWEが原子炉新設で連携 日本の政府系金融も支援検討
米ウェスチングハウス(WE)社はこのほど、カナダのウラン供給大手カメコ社および資産運用会社ブルックフィールド社とともに、米商務省と原子力発電所の新設を推進する戦略的提携を結んだ。米政府の支援を受け、国内で複数の原子炉建設計画を進める方針で、総投資額は少なくとも800億ドル(約12兆円)に上る見通しだ。WE社は今年7月、トランプ大統領に対し、大型炉AP1000(PWR、125万kWe)10基の米国で建設する計画を報告。2030年までの着工を目指している。今回の提携により、米政府は資金調達や許認可支援を行う。投資スキームには、米政府が「参加持分」と呼ばれる権利を保有し、利益が175億ドルを超えた場合、その20%を受け取る仕組みを盛り込む。H.ラトニック米商務省長官は、「このパートナーシップは、トランプ大統領が掲げる“原子力ルネッサンス”を具体化するものだ」と強調。トランプ政権は2050年までに米国の原子力発電設備容量を現在の4倍に拡大する目標を掲げており、今回の協定はその中核に位置付けられる。資金面では、日本の政府系金融機関による対米投融資も活用される見通し。10月28日に日米両政府が発表した「日米間の投資に関する共同ファクトシート」では、5,500億ドル(約84兆円)規模の対米投資枠が設けられ、エネルギーやAIインフラ関連プロジェクトの支援が想定されている。日本の国際協力銀行(JBIC)などが、米国側が承認したプロジェクトに対し出資や融資保証を行う仕組みで、現在21件の案件が候補に挙がっている。
- 29 Oct 2025
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ポーランド 石炭の町が描く“次の10年”
ポーランドの原子力プロジェクトをめぐるオピニオンリーダーたちが、このほど来日した。顔ぶれの多くは、かつて石炭で栄えた自治体の副市長クラスや議会関係者である。脱炭素とエネルギー安全保障の双方をにらみ、石炭火力の終幕と次の主役探しを同時に迫られる地域が、日本の原子力発電をめぐる非常時対応や廃止措置など、“現場”をその目で確かめに来た——その動機は切実だ。ポーランドは大型炉とSMRの“二正面作戦”を採る。大型炉はポモージェ県ルビアトボ=コパリノでAP1000×3基の建設計画が進み、8月末に県知事から準備作業許可を取得した。今秋から測量・フェンス設置・伐採・整地などの先行作業が順次始まる見込みで、2036~38年の段階的運転開始を見通すという。一方、SMRはGE日立製BWRX‑300を採用し、初号機建設サイトを化学コンビナートの街ブウォツワベクに決定。合弁会社OSGEが独占使用権を持ち、環境影響評価(EIA)と立地調査が進行している。今回来日したリーダーたちは、ベウハトフやコニンなどの石炭・褐炭地域が中心。これに中央政府のエネルギー省担当官が同行した形だ。一行は、日本原子力研究開発機構の「原子力緊急時支援・研修センター(NEAT)」(茨城県)でオフサイトセンターの運用や日本の緊急時システムについて見学した。福島第一サイトでは、工程管理や情報公開の透明性が、どのように社会的信頼を支えるのか、時間軸で追体験。玄海原子力発電所(佐賀県)では多重防護や特重施設、地震津波対策の考え方などを、福井県庁では原子力担当部署より、行政としての原子力との関わり方などを学んだ。4日間で日本各地を、駆け足で回ったことになる。ポーランドの石炭地域が他産業への移行を迫られているのは、欧州連合(EU)加盟後に強化されたEUの環境規制(LCPDからIED/BAT)への適合や欧州排出量取引制度(EU-ETS)の炭素価格上昇といった、規制および市場からの圧力に加え、主力であった褐炭資源の先細りが重なったためである。これに伴う雇用・地域経済の痛みを和らげる政策枠組みとしてJust Transition(公正な移行)が整備されてきた。地域の住民からは、期待と不安が入り混じった声があるという。現実的な移行が目前に迫る中、地域のリーダーたちが語った「次の10年」はきわめて実務的だ。第一に一貫した人材育成の道筋である。初等・中等から大学、工科系へと、地域の若者が段階的に学び、将来の担い手へと育つ道筋を用意する。「学校で論理的に説明すること」を重視し、テクノロジーや安全文化を丁寧に説明していく姿勢が強調された。チョルノービリ事故を知らない若い世代には、「感情的な賛否より、なぜ必要かを自分の言葉で理解してもらうことが効く」という。第二に既存の雇用や産業の連続性だ。鉱山や火力発電所の閉鎖が目前に迫る地域もあり、人口・雇用の大規模な減少への懸念は切実なようだ。20万人だった人口が、すでに5万人に激減している地域もあるという。だからこそ、石炭で培ったスキルを土台に、次の仕事を地元に残す(原子力の運転・建設・保全などへ職能を移す)という発想が中核になる。産業の維持の観点から、BWRX-300への期待が多く寄せられており、「SMRのサプライチェーンへ参画することで、既存の企業や人材の受け皿を広げていきたい」との声もあった。そして第三に、避難計画の策定など行政としての準備である。日本のシステムを学んだ上で、ポーランド版の緊急時システムをどう整えるか、引き続き検討していくという。また、特に日本に対し、施設運用や人材育成などの面で、実務的なセミナーやワークショップをポーランドで開催して欲しいとの要望が上がっていた。原子力産業新聞から「ポーランドの原子力プロジェクトにとっての最大の課題」を問われた、エネルギー省のZ.クバツキ原子力担当参事官は、「時間」と即答した。「許認可のプロセスがとにかく長い。ポーランドの場合、欧州委員会との調整も必要になる。調整を終えた後も着工から運開まで、ほぼ10年かかるだろう。時間が延びれば延びるほど、コストや制度面の前提が崩れやすくなる」。同氏は差額の清算で収入を安定させる仕組み、いわゆるCfDs(差金決済)にも触れ、「市場価格が高いときは事業者が払い戻し、低ければ差額を受け取るという設計は理解している。しかし、これが本格的に効果を発揮するのは運開後だろう。工期が長引けば長引くほど建設コストを吸収し切れなくなる」と懸念を示し、改めて「だからこそ“時間”が最大の課題だ」と強調した。
- 16 Sep 2025
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米ペンシルベニア州での原子力プロジェクト詳細が明らかに
米ペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギーメロン大学(CMU)で7月15日、人工知能(AI)とエネルギー革命の推進に焦点をあてた、エネルギー・イノベーション(EI)サミットが開催された。サミットでは、ペンシルベニア州がAIイノベーションのハブとなり、州全体で高レベルの雇用機会を創出する可能性が示されるとともに、主な原子力プロジェクトの詳細が明らかにされた。同サミットは、米上院議員D. マコーミック氏(ペンシルベニア州・共和党)の呼びかけにより開催され、D. トランプ米大統領やエネルギー省のC. ライト長官、内務省のD. バーガム長官などの政権の主要メンバーのほか、エネルギーとAI業界のトップリーダー、投資家など数十人が出席した。うち、コンステレーション社のJ. ドミンゲスCEOは、ペンシルベニア州内で運転する原子力発電所3サイトでの計画について詳細を公表。リメリック発電所(BWR、119.4万kWe)を2040年代まで運転を継続し、追加出力34万kWeの増強に向けて、24億ドルを投資するとしたほか、「クレーン・クリーン・エナジー・センター」(旧:スリーマイル・アイランド原子力発電所)については1号機を1年前倒しの2027年に運転再開すると発表した。同機は2050年代まで運転を予定し、3,400人の新規雇用を創出、計36億ドルの連邦・州税収、160億ドルの州内経済効果が見込まれている。さらに、「ピーチボトム・クリーン・エナジー・センター」の運転認可を少なくとも2054年まで延長するよう原子力規制委員会に申請中であり、今後20年間で延べ3,000万時間の雇用創出と、数百億ドル規模の電力供給が可能になると言及。「これらの投資は、AIをはじめとする未来を担うデジタル産業に力を与えるもの」と強調した。ウェスチングハウス社のD. サムナー臨時CEOは大統領令にしたがい、2030年までに米国で10基のAP1000の建設を開始する計画を策定・実行するための取組みを開始したと発表。計画が実施されれば全米で750億ドルの経済効果、5.5万人の新規雇用、ペンシルベニア州単独で60億ドル、1.5万人の新規雇用の創出が見込まれるという。また同社は、Google Cloud社との新たなパートナーシップにも言及。Google Cloud社のAIツールを活用して原子力発電所の建設効率と運用の向上を目指しているという。トランプ大統領は、「大統領令によって、原子力建設は『非常に簡単かつ非常に安全』になった」と述べ、老朽化した電力網の更新、データセンターと発電所の併設の可能性、そして原子力・非原子力を問わずエネルギープロジェクトの許認可プロセスの加速と改革についても言及した。
- 28 Jul 2025
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欧州データセンター 米製SMRの導入を評価へ
米ウェスチングハウス(WE)社は3月11日、欧州のデータセンター開発・運営企業であるData4社と、欧州における将来のデータセンターへの電力供給を目的に、同社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(PWR、30万 kW)の導入評価に関する了解覚書(MOU)を締結した。Data4社は、フランス・パリに本拠地を置き、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、ドイツ、ギリシャで35のデータセンターを運営している。米ゴールドマン・サックスの調査によると、生成AI関連サービスの成長に伴い、データセンターの電力需要は2030年までに23年比で165%増加すると予測されている。データセンターは、24時間365日稼働させるため、豊富で信頼性の高い、クリーンな電力が不可欠である。WE社のAP300は先進的な第3世代+炉で、既に運転実績のあるAP1000をベースとした、安全でコンパクトかつ柔軟な設計が特徴。AP1000のエンジニアリングやライセンス、コンポーネント、サプライチェーンを活用できるため、導入が容易で、2030年初めの運転開始をめざしている。同社は「エネルギー集約型の次世代コンピューティングに対して、コスト効率が高く、クリーンな電力をオンサイトで提供できる」としている。Data4社は「これまでのデータセンターは従来の電力会社のみに依存していたが、将来はオンサイト発電と従来のグリッド供給、エネルギー貯蔵を統合し、複数の電源を活用する時代に入る」と指摘。そのうえで、「AP300の導入は、キャンパスのエネルギーの自律性を高め、自給自足の持続可能なデータセンター・インフラ確立に向けた大きな一歩になる」と強調している。一方、WE社製のマイクロ炉「eVinci」について、米ペンシルバニア州立大学は2月28日、ユニバーシティパーク・キャンパスの新しい原子力研究施設への設置に向け、米原子力規制委員会(NRC)に申請プロセスの最初のステップとなる意向表明書(LOI)を提出した。この取組みは、ペンシルベニア州立大学とWE社が2022年に開始した、マイクロ炉の研究開発協力が発展したもの。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。キャンパス全体の研究施設や建物に電力を供給し、燃料補給なしに8年以上にわたり電力の安定供給が可能だ。同大学には、1955年に全米初の運転認可を取得した研究炉BNRがある。WE社のJ. ボールeVinciマイクロリアクター担当プレジデントは、「ユニバーシティパークの研究施設は、ペンシルベニア州を世界有数の原子力イノベーションハブとし、学生や研究者に原子力を活用する新たな方法を見つける機会を提供する」と重要性を強調している。
- 19 Mar 2025
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浮揚式原子力発電所の米国導入で英米企業が提携
海洋分野の原子力利用プロジェクトを進める英国のコアパワー社は1月29日、米国の船舶設計および海洋工学コンサルタント会社であるグロステン社と、米国の港湾に導入する浮揚式原子力発電所(FNPP)の開発で提携したことを明らかにした。コアパワー社が考案したFNPPのコンセプトは、港湾のインフラシステム。バージ船をベースとする原子力発電所、バージ船のサポートサービス、送電網との接続、運用チームなどを含んだ一括パッケージだ。燃料補給なしで長期間稼働し、運用現場への輸送が容易であり、モジュール工法のため、迅速な規模の拡大が可能であることを特徴とし、発電電力量は年間1.75億kWhを想定する。FNPPを港湾に係留し、停泊中の船舶、ターミナルクレーンや設備、港湾車両に対してゼロエミッションの電力供給を可能にするものだ。コアパワー社は、FNPPの運用コンセプトの開発と浮揚式施設の設計をグロステン社に委託。このほか、グロステン社はバージ船の規制関係の対応、サイト位置承認の取得、FNPPの製造・組立て・輸送・設置のためのサプライチェーンの開拓も行う。このFNPPプロジェクトは現状、コンセプト段階であり、米国南部にある未特定の港を対象として設計されている。コアパワー社とグロステン社は、原子炉搭載のバージ船のリスク評価を行い、安全性を最大限に高めるほか、実用性を考慮して全体的な調整をしているところだ。グロステン社のM. ファンバーグCEOは、「コアパワー社のFNPPは、海事産業の脱炭素化という大きな潮流の中で、効果的かつ現実的な手段。当社の役割は、コアパワー社のビジョンを、港湾施設に信頼性の高い、ゼロエミッションの原子力発電を実現する実用性のある設計にするとともに、複雑な規制環境に対応し、規制当局の承認を得るための明確な道筋を示すこと」と語った。海洋での原子力利用の歴史は古く、原子炉は1950年代から軍用および民間船舶に搭載され、初のFNPPである「スタージス(Sturgis)」は、1968年~1975年までパナマ運河に配備、1万kWの電力と浄水を供給している。コアパワー社のM. ボーCEOは、「原子力発電は、温室効果ガスを排出せずに、安全かつ確実に、必要に応じて膨大なエネルギー源の利用が可能。陸上での原子力発電コストの80%以上は土木工事費であり、原子炉や電力システムに係わるコストは20%未満である。FNPPは造船所で製造され、組立てられるため、納期の迅速化と低コストを実現する」と指摘し、「FNPPは港湾における電力供給の問題を解決し、地域のエネルギー安全保障を確立する」と強調した。コアパワー社は2024年11月、米ウェスチングハウス(WE)社とWE社のマイクロ炉「eVinci」を搭載した、FNPPの設計と開発に関する協力協定を締結。WE社のeVinciとヒートパイプ技術を用いて、FNPPの設計を進めるほか、FNPPの認可取得に向けた規制対応における協力を目的としている。
- 12 Feb 2025
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米国 WE社が月面マイクロ炉開発を継続へ
米ウェスチングハウス(WE)社は1月7日、米航空宇宙局(NASA)と米エネルギー省(DOE)から月面に原子炉を設置する「月面原子力発電(FSP)」プロジェクト向けのマイクロ炉の概念設計開発を継続する契約を獲得したことを明らかにした。FSPプロジェクトは、NASAが米DOEとアイダホ国立研究所(INL)と協力して実施。月面や将来的には火星での使用も想定する、信頼性の高い電力供給源となる小型の発電用核分裂炉の概念設計の開発に重点を置いている。INLから獲得した今回の新契約は、フェーズ1でWE社が完了した設計作業をベースに、FSPシステムの設計と構成を最適化し、重要な技術要素の試験を開始するもの。NASAはフェーズ1の契約を延長して更に情報を収集、リスクの低いシステム設計をするための要件を設定し、フェーズ2で月面実証の最終的な原子炉設計の依頼を計画する。FSPプロジェクトの継続的な進展により、NASAが掲げる今後10年以内の月面実証という目標の達成が期待されている。NASAによると、FSPシステムは比較的小型で軽量なほか信頼性も高く、日射量等の自然条件や場所を選ばずに継続的に電力供給が可能。月面でFSPシステムの能力を実証し、火星等への長期ミッションに道を拓きたい考えだ。WE社は月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への電力供給や地表面での設置を目指して、マイクロ炉「eVinci」の小型版を開発している。eVinciは熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。近いうちにINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営するマイクロ炉のテストベッドで試験を行う予定である。月や火星、その他の惑星軌道上にある宇宙探査機への継続的な電力供給や地表面での設置において、設計がシンプルな同炉は、信頼性の高い自動稼働式の低質量発電システムを月面や人工衛星等に構築する技術として理想的であると、WE社は指摘する。また、この頑丈な炉は可動部分が非常に少なく、故障箇所を減らすことでミッションに応じて柔軟に対応可能。また、操作が簡単で、過酷な宇宙環境にも耐える高い信頼性を実現するとしている。WE社は2022年6月、宇宙用原子力技術の開発で協力中のNASAとDOEから、月面で稼働可能なFSPシステムの概念設計の提案企業に選定された。NASAの主導により有人宇宙飛行、月面着陸および持続的な探査活動を目指す「アルテミス計画」では、2020年代末までにFSPシステムを月面に設置するため、NASAとDOEはこれに間に合うようWE社を含む3社を選定。当初の仕様には、月面環境下で少なくとも10年間連続稼働する電気出力40kWであることのほか、システムが直径4メートル、長さ6メートルの格納シリンダー内に収まること、システムの総重量が6トン以下であること、月面着陸船のデッキまたは別の移動システムからの自律運転が可能であることなどが含まれていた。3社はシステムの初期概念設計を開発するため、INLと12か月契約を締結、各社に約500万ドルが支払われた。WE社は2023年6月、月着陸船やローバーの設計や配備を行うアストロボティック社と、NASAと国防総省(DOD)の宇宙開発技術プログラムでの協力可能性を探る了解覚書を締結している。
- 23 Jan 2025
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米WEと韓国企業 知的財産権をめぐる紛争を終結
米ウェスチングハウス(WE)社は1月16日、韓国電力公社(KEPCO)ならびに韓国水力・原子力(KHNP)との間で、知的財産権に関する紛争の終結で合意したことを明らかにした。併せて、WE社は韓国の両社と協力して、現在係争中の訴訟をすべて取り下げる予定であると表明。なお、和解の条件については、当事者間の合意により機密事項となっている。WE社のP. フラグマンCEO(今年3月末にCEOを退任予定)は、「世界的にベースロード電源の需要が高まる中、この合意は両社による新たな原子力プロジェクトを推進するための協力関係の基盤となる」と述べた。一方、KHNPのJ. ファンCEOは、「今回の合意は、両社のより一層緊密な協力関係を構築する契機となる」とし、世界市場での協力体制と競争力を強化する方針だ。この和解を受け1月16日、米エネルギー省(DOE)のJ. グランホルム長官は声明を発表、「民生用原子力部門で数十万人の雇用創出を維持し、数千億ドルの協力プロジェクトを進める道を開く可能性のある大きな成果。私はこれら関係企業とリーダーたちの献身、決意、忍耐力に感謝している」と述べた。WE社は、韓国のAPR1000やAPR1400が同社の技術を組み込んでおり、KHNPはWE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有しておらず、米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけであると主張。知的財産権と輸出管理をめぐり、2022年以降、KEPCOならびにKHNPと係争を繰り広げてきた。国際仲裁ならびに米国での訴訟が進行しており、WE社は仲裁が2025年後半までに決着する可能性は低いとみていた。こうしたなか1月8日、米DOEと韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2024年11月に仮調印していた、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に正式調印。両政府が、原子力輸出協力の意向を明確に示したことにより、両企業間の交渉が今後円滑に進む可能性が指摘されていた。
- 20 Jan 2025
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ポーランド 原子力発電所の完成に遅れ
ポーランド産業省のW. ヴロースナ次官兼戦略エネルギー・インフラ担当政府全権代表は12月11日、ワルシャワで記者会見を行い、ポーランドの第1原子力発電所の運転開始について、当初の予定より3年遅れ、初号機が2036年の営業運転開始を想定していることを明らかにした。同会見には、同省のP. ガイダ原子力局長も同席。2023年12月の政権交代を機に、これまで気候・環境省の所掌にあった原子力政策・開発分野が産業省に移管された。会見でヴロースナ次官は、2020年に閣議決定された原子力発電プログラム(PPEJ)の更新作業が最終段階にあり、更新版では、ポーランド初の原子力発電所の初号機の運転開始は2036年、2号機、3号機の運転開始はそれぞれ2037年、2038年を想定していると述べた。また、第2原子力発電所の建設計画は継続しており、競争入札によってパートナーを選定すると強調した。また、数週間以内に、欧州委員会(EC)による第1原子力発電所への国家補助の承認手続きが開始されるだろうと指摘。ポーランドは今年9月、ECに対し、第1原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、建設および運転の実施主体となる国有特別目的会社(SPV)のPEJを支援する計画を通知していた。これに対してECは12月18日、ポーランドの計画がEUの国家補助規制に沿っているかどうかを評価するための詳細な調査の開始を明らかにした。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。ガイダ原子力局長は、第2原子力発電所の計画について、現在、旧石炭火力発電所の4サイトを建設候補地として検討していることを明らかにした。システム要件に合致し、閉鎖後の投資も呼び込みやすいため、だという。同原子力局長はまた、今年11月に産業省の委託により実施された原子力に対する国民の世論調査の結果について、回答者の92.5%がポーランドでの原子力発電所の建設を支持し、回答者の79.6%が原子力発電所が自分の居住地の近くに建設されることに同意していると言及。これは、2012年より毎年実施されている世論調査の中でも最高の数値を記録したという。現行のPPEJでは、総発電設備容量600万~900万kWeの、2サイトでの原子力発電所の建設を想定している。前政権は、第1原子力発電所のパートナーとして米国のウェスチングハウス(WE)社とベクテル社によるコンソーシアムを入札を経ずに指名した。第1原子力発電所(WE社製AP1000×3基、合計出力375万kWe)は、同国北部ポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区に建設が計画されている。第1原子力発電所の建設プロジェクトの総投資額は約450億ユーロ(1,920億ズロチ、約7.3兆円)と見積もられている。ポーランド政府はプロジェクト費用の30%をカバーする約140億ユーロ(600億ズロチ、約2.3兆円)をPEJに出資。この他、投資プロジェクトの資金調達のためにPEJが負った債務の100%をカバーする国家保証や、60年間の発電所の運転期間にわたり収益の安定性を確保する差金決済取引(CfD)により、プロジェクトを支援するとしている。PEJによると今年12月に入ってから、第1原子力発電所のプロジェクト支援に向けて、カナダ輸出開発公社から最大14.5億米ドル(約60億ズロチ、約2,294億円)の融資可能性の意向書を受け取り、フランスの輸出信用機関のBpifranceや公共開発銀行であるSfilからも37.5億米ドル(約150億ズロチ、約5,736億円)もの融資への関心が示されたという。今年11月には、40億ズロチ(約1,530億円)規模の融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印。米輸出入銀行(US EXIM)も約700億ズロチ(約2.7兆円)相当の融資支援を実施することになっており、これまでにPEJが海外の融資機関から資金拠出の意向表明を受けた総額はおよそ950億ズロチ(約3.6兆円)になる。PEJは、機器供給国を中心とする、輸出ファシリテーターである各国の輸出信用機関と緊密な協力関係を築き、資金調達の構造における輸出信用機関のシェアを最大限に高めたい考えだ。
- 20 Dec 2024
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米WE社 カナダで主要機器製造へ
米ウェスチングハウス(WE)社とBWXTカナダ社は12月12日、カナダ国内外における原子力発電の新規建設プロジェクトを支援する覚書(MOU)を締結したことを明らかにした。WE社は、新規建設プロジェクト遂行のため、カナダにおけるサプライチェーンの構築を進めている。今回のMOUは、BWXTカナダ社による、WE社製AP1000と小型モジュール炉(SMR)であるAP300の原子炉容器、蒸気発生器、熱交換器などの主要コンポーネントの製造を想定している。加オンタリオ州ケンブリッジに拠点を置くBWXTカナダ社は、PWR向け蒸気発生器、原子燃料および燃料関連機器、重要プラント機器・部品など、原子力発電設備の設計、製造、試運転、関連サービスにおいて60年以上の経験とノウハウを有している。本社は米国にあるBWXテクノロジーズ社で、米国、カナダ、英国に事業所を置く。WE社は、カナダには西側諸国で最強の一つとされる原子力サプライチェーンがあり、米国のサプライチェーンと組合わせることで、新規建設を迅速に行う強力なプラットフォームになると考えている。WE社はカナダのオンタリオ州において、AP1000を4基建設するプロジェクトを計画しており、早ければ2035年までに完成するとしている。経済効果は建設段階で287億加ドル(約3.1兆円)、運転中に年間81億加ドル(約8,717億円)のGDP増となると試算している。なお、カナダ国外での建設ではカナダのサプライチェーンを通じて、1基あたり約10億加ドル(約1,076億円)のGDP増を見込んでいる。また、カナダ国内に12,000人の高賃金のフルタイム雇用が創出されるという。
- 19 Dec 2024
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米WEと英コアパワー FNPPを共同開発へ
米ウェスチングハウス(WE)社と英コアパワー社は11月25日、WE社のマイクロ炉「eVinci」を搭載した、浮揚式原子力発電所(FNPP)の設計と開発に関する協力協定を締結した。今回の協定に基づき、両社はWE社のeVinciとヒートパイプ技術を用いて、FNPPの設計を進めるほか、FNPPの認可取得に向けた規制対応でも協力を行う予定。 両社の発表では、コスト競争力があり建設も比較的容易なFNPPは、島しょ部や沿岸地域、港、そして産業プラントに原子力エネルギーを導入する画期的なアプローチであり、なかでもeVinciはメンテナンスが最小限で済み、燃料交換なしで8年間フル稼働が可能なため、FNPPに最適であるという。 eVinciは、熱出力1.5万kW、電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却の可搬式原子炉で、軽水炉のような冷却ポンプは不要。工場で組み立てが可能で、燃料にはHALEU燃料を3重に被覆した燃料粒子「TRISO」を使用する。水素製造などに利用可能な高温の熱が発生するため、電源としての用途以外にも遠隔地のコミュニティへの熱電供給などが期待されている。 コアパワー社が進めるFNPPプロジェクトには、2023年5月に日本の今治造船(愛媛県今治市)や尾道造船(兵庫県神戸市)など13社が出資したことが明らかになっている。同社は、主力事業として進める原子力船開発プロジェクトと合わせて、2030年までに最大で100億ドル(約1兆4,900億円)相当の受注獲得をめざしている。 コアパワー社のM. ボーCEOは、eVinciを使用したFNPPについて、「クリーンで柔軟性があり、信頼性の高い電力を予算内でスケジュール通りに供給できる」と語り、急増する需要に応える完璧なソリューションとして現実的な選択肢となることを強調した。
- 03 Dec 2024
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米ラディアント マイクロ炉開発に進展
米エネルギー省(DOE)は11月14日、スタートアップ企業のラディアント社が、アイダホ国立研究所(INL)で同社製マイクロ炉「Kaleidos」プロトタイプの試験に向けて、基本設計・実験機設計(Front-End Engineering and Experiment Design:FEEED) プロセスを完了したことを明らかにした。マイクロ炉「Kaleidos」は、早ければ2026年半ばにもINL内で国立原子炉イノベーション・センター(NRIC)が運営する世界初のマイクロ炉のテストベッドで試験を開始する。ラディアント社のT. シバナンダン最高執行責任者は、「FEEEDプロセス完了は大きなマイルストーン。多くの設計レビューを行い、概念安全設計報告書も提出。すべて予定通り、予算内で実施した」と語り、INL/NRICとの今後の連携に意欲を示した。米エネルギー省(DOE)は2023年10月、国内でマイクロ炉を開発するウェスチングハウス(WE)社、ラディアント(Radiant)社、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の3社に対し、FEEEDプロセスの実施に向けて総額390万ドルをNRICを通じて提供。具体的には、燃料を装荷する実験炉の設計、機器製造、建設、およびNRICのマイクロ炉実験機の実証(Demonstration of Microreactor Experiments=DOME)用テストベッドを使った試験の計画策定を目指している。DOMEテストベッドは、INLで30年以上運転された「実験増殖炉II(EBR-II)」の格納ドームを利用してNRICが改修中。同テストベッドはHALEU燃料を使用する最大熱出力2万kWの先進的な実験用原子炉を収容、初臨界時には安全性を重視した閉じ込め機能を持つ。産業界による新技術開発に伴うリスクを軽減して開発を促進させ、先進的な原子炉設計を概念段階から実証段階へと進め、実用化と商業化への道筋をつけることを目的としている。ラディアント社は引き続き、NRICと協力して「Kaleidos」試験計画の最終調整や、テストベッドへの設置に向けた長納期品の確保に着手する。なお、米WE社のマイクロ炉「eVinci」はFEEEDプロセスを今年9月に完了している。USNC社は高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」(0.1万kWe)を開発していたが、同社は破産申請ならびに業務継続を条件とする売却手続きを今年10月末から実施している。「Kaleidos」は電気出力0.12万kW、熱出力0.19万kWの高温ガス冷却炉。TRISO燃料(3重被覆層・燃料粒子)を使用し、運転サイクルは5年。コンパクト設計のすべてのコンポーネントは単一の輸送コンテナに梱包されるため、迅速な配備が可能。遠隔地のディーゼル発電機の代替から、病院、軍事施設、データセンターへのバックアップ電源や、熱供給、海水脱塩まで、幅広い用途に対応する。
- 21 Nov 2024
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米開発銀行 ポーランド初の原子力発電所への融資に関心表明
ポーランド国営PEJは11月12日、ポーランド初となる原子力発電所の建設プロジェクトへの融資支援を検討する米国国際開発金融公社(DFC)と基本合意書(LOI)に調印した。融資額は、40億ズロチ(約1,515億円)規模。PEJは、ポーランド初の原子力発電所の建設および運転の実施主体で、国営の特別目的会社(SPV)。米ウェスチングハウス(WE)社製AP1000を3基、同国北部のポモージェ県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ・サイトに建設する。初号機は2033年に運転開始予定だ。DFCは、低所得国および中低所得国のプロジェクトを優先的に支援する米国の政府系開発金融機関。民間セクターと提携し、エネルギー、医療、重要インフラ、テクノロジーなど、開発途上国が直面する最重要課題の解決策に金融支援を実施している。PEJは、DFCの関与が米政府による本プロジェクトへの関心を裏付けるものであり、ポーランドをはじめ、世界のエネルギー移行に関心を持つ米国市場の主要機関とPEJとの数か月間にわたる協議の結果であるとの考えを示す。DFCは、中・東欧全体の地域エネルギー安全保障の強化に取組んでおり、今回のLOI締結をロシア産エネルギーへの依存を削減するとともに、経済成長の強化、雇用の創出に向けた一歩であると評価する。米WE社と米ベクテル社はコンソーシアムを結成し、PEJによる原子力発電所の建設プロジェクトに協力している。米輸出入銀行(US EXIM)もWE社との数年にわたる交渉の末、同プロジェクトに対して、約700億ズロチ(約2.6兆円)相当の融資支援を実施することになっている。
- 20 Nov 2024
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チェコ当局 韓国社選定に対する異議申し立てを棄却
チェコ政府内で独立した第三者機関である競争保護局(ÚOHS)は10月31日、チェコ電力(ČEZ)が原子力発電所増設プロジェクトの優先交渉者に韓国水力・原子力(KHNP)を選定した入札手続きに対する、米ウェスチングハウス(WE)社ならびに仏EDFによる異議申立てを、第一審で却下した。ČEZは今年7月、ドコバニとテメリン両原子力発電所における最大4基の増設プロジェクトの優先交渉者としてKHNPを選定した。しかし、入札に参加を認められなかったWE社と、選外となったEDFは翌8月、ÚOHS に入札手続きの見直しを求め、異議を申立てた。WE社は契約権限者による公共調達法の枠外となる国家安全保障上の例外適用に一部異議を唱え、また、WE社とEDFはKHNPの選定に関して公共調達の基本的原則に準拠しない違法性(公共契約の履行対象の大幅な拡大、優先交渉者であるKHNPの契約履行能力の欠如など)を訴えたが、ÚOHSは、WE社が例外適用を認識した時点から15日以内(2022年3月)の異議申立て期限を過ぎていること、また、例外適用により公共契約を行う契約権限者の特定の手続きに対する法的異議の申立ては受入れられないとして、行政手続きを終了させた。このほか、外国補助金規則の違反とする両社の主張については、契約権限者が公共調達法により従うべき手続きではないため、異議を却下した。ÚOHS は今回の一審判決の前日30日には、最終判決が出るまでKHNPとの契約締結の仮差止めを命じている。なお、今回の一審判決への不服申立ては、 ÚOHS長官宛てに控訴することで可能だ。今回の裁定を受けČEZは声明を発表。契約締結の仮差止めは通常の措置であるとし、ドコバニ発電所5、6号機の増設に関する最終契約についてはKHNP社と交渉が進行中であり、 ÚOHSの最終判決は、予定する来年3月末の契約調印に間に合うだろうとの見通しを示した。なおWE社は、「KHNPのAPR1000およびAPR1400設計は、WE社がライセンス供与した技術を利用、KHNPはその基本技術を所有しておらず、WE社の同意なしに第三者にサブライセンス供与する権利も有していない。米政府から技術輸出に必要な承認を取得する法的権利を有しているのはWE社だけである」として、知的財産権と輸出管理をめぐり、現在、国際仲裁および米国で訴訟が進行中である。WE社とKHNP間で係争が続く中、11月1日、米エネルギー省(DOE)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、原子力輸出及び協力の原則に関する覚書(MOU)に仮調印した。両国の当局者は、最高水準の不拡散、安全、保障措置、安全保障を支持しつつ、原子力の平和利用を促進するという相互のコミットメントを再確認し、両者は民生用原子力技術の輸出管理を強化するとしている。同時に、気候変動対応、グローバルなエネルギー移行の加速化及びサプライチェーンの確保などの分野での協力も拡大し、両国の産業に数十億ドルの経済効果と数万人の雇用をもたらすと強調している。両国企業間の紛争にも係らず両政府の協力意向を明確に示し、原子力輸出管理分野のコミュニケーションを通じて将来の紛争防止を図り、今後グローバル市場で両国間の原発輸出協力を緊密に行いたい考えだ。
- 11 Nov 2024
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米・韓企業 北欧2か国での新設に向けて提携
米ウェスチングハウス(WE)社と韓国の現代E&C(現代建設)社は9月10日、スウェーデンとフィンランドにおけるAP1000(PWR、125万kWe)導入に向けて提携することで合意した。同合意に基づき、WE社はAP1000の設計と開発を提供し、現代E&C社は、エンジニアリングおよび建設サービスの提供で提携。これは、2022年5月に両社が締結したAP1000のグローバル展開に共同参画する戦略的協力合意に基づく。今回の提携合意は、スウェーデンの電力会社であるバッテンフォール社が今年2月に発表した、同社のリングハルス原子力発電所サイトでの大型炉または小型モジュール(SMR)の建設計画に関連し、年内の採用炉決定を念頭に置くもの。バッテンフォール社は、2030年代前半にも初号機を稼働させる方針である。さらに、WE社はフィンランドの電力会社であるフォータム社と2023年6月に了解覚書を締結、フィンランドとスウェーデンにおいて、WE社製AP1000とSMRのAP300を建設する可能性や前提条件の調査を目的としている。なお、フォータム社は、スウェーデンにあるオスカーシャム原子力発電所とフォルスマルク原子力発電所の共同所有者であり、それぞれ43%、22%余りを所有している。WE社傘下のWEエナジー・システムズ社のD. リップマン社長は、「世界でトップクラスのEPC企業の現代E&C社とのパートナーシップにより、スウェーデンとフィンランドにさらに100年のエネルギー安全保障を提供していく」と語った。現代E&C社のY. ヨンジュンCEOは、「当社は、世界市場で24基の大型原子力発電所の建設を通じて、原子力EPCの競争力、技術力、および建設管理システムの運用ノウハウを蓄積してきた。両社のシナジー効果を最大限に発揮していく」と抱負を述べた。
- 30 Sep 2024
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英SMRコンペ 4社が最終選考へ
英国の大英原子力(GBN)は9月25日、小型モジュール炉(SMR)支援対象選定コンペで4社が選考に残ったことを明らかにした。今後、4社は最終選考に入る。最終選考に残った4社は、米GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、米ホルテック・インターナショナル社英法人、英ロールス・ロイスSMR社、米ウェスチングハウス(WE)社英法人。米ニュースケール社は選外となった。英政府は原子力発電設備容量を、2050年までに2,400万kWまで拡大する計画を発表しており、SMR導入も謳われている。英国の原子力発電所新設の牽引役として2023年7月に発足した政府機関のGBNはSMRの支援対象選定コンペを開始。同年10月には関心表明をした6社が入札に招待され、今年7月の締切までに辞退した仏EDF社を除く5社が入札書類を提出した。なお、GBNは今年3月、最終選考では今年後半までに2社を選ぶと発表している。当初、今年夏には選定企業との契約締結を計画していたが、遅延している。最終的に選定された企業はGBNからSMRへのサイトを割当てられ、技術開発の資金を獲得する。英政府は2029年にSMRへの最終投資決定を行い、2030年代半ばには運転を開始したい考えだ。
- 27 Sep 2024
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スロバキア ロシア型原子炉への仏製燃料供給で契約
スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE)社と仏フラマトム社は7月23日、国内で運転する50万kW級ロシア型PWR(VVER-440)を採用するボフニチェおよびモホフチェ原子力発電所向けの長期燃料供給契約を締結した。2027年より順次、フラマトム社製の燃料を装荷する。今回の契約締結は、2023年5月にSE社とフラマトム社が締結した了解覚書に基づくもので、スロバキアにおける燃料調達先多様化の一環。昨年8月には、燃料供給分野で長期的に協力するため、米ウェスチングハウス(WE)社と合意文書を交わしている。公益事業者として燃料供給途絶を回避し、ロシアからの輸入依存を減らすため、燃料調達先の多様化はカギであり、ユーラトム供給安全保障庁(ESA)の勧告に沿った動きである。現在、EU域内では18基のVVERが稼働しており、100万kWe級のVVER-1000はブルガリアとチェコで各2基ずつ、VVER-440はチェコで4基、フィンランドで2基、ハンガリーで4基、スロバキアで4基の計14基が稼働中。フラマトム社は今年6月、欧州連合(EU)から1,000万ユーロ(16.2億円)の資金拠出を受け、欧州原子力共同体(ユーラトム)の研究トレーニングプログラム下で、VVER-440向けの燃料開発と供給を目的とした「Safe and Alternative VVER European(SAVE)」プロジェクトを実施中。VVER-440を運転する、チェコ電力(ČEZ)、フィンランドのフォータム社、ハンガリーのパクシュ社、スロバキア電力などの電力会社を含む欧州の17の企業・機関が参加し、燃料供給リスクの低減を目指す(既報)。SE社は、2023年のスロバキアの総発電電力量の70%以上を賄っている。ボフニチェ(3、4号機)とモホフチェ(1、2号機)の両発電所の計4基の他、31の水力発電所を稼働、石炭火力発電所をすべて閉鎖し、脱炭素電源を100%達成した。なお、モホフチェ発電所では追加の2基(3、4号機、各VVER-440)を建設中で、3号機は2023年1月に送電を開始している。
- 01 Aug 2024
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