キーワード:福島
-
「原子力産業セミナー2027」昨年を上回る盛況 大阪 福岡でも開催予定
原子力産業界の人材確保支援と理解促進を目的とした「原子力産業セミナー2027」(主催:日本原子力産業協会・関西原子力懇談会)が9月20日、新宿NSビル地下1階大ホールにて開催された。同セミナーは、原子力関連企業や関係機関が一堂に集う企業説明会で、今年で20回目の開催。9月27日には大阪市、10月18日には、福岡市内でも開催される。主に、2027年に卒業予定の大学・大学院生・高専生、既卒の学生らが対象。東京会場の出展企業・機関数は52社と、昨年の46社を上回ったほか、来場者数も239名と、昨年の223名を上回る結果となった。また、文系学生が全体の25%を占めるなど、専攻学科を問わず、原子力産業に対して熱意のある学生の姿が多く見られた。採用する企業側も人柄や意欲を重視した柔軟な採用活動、各々の個性に応じたキャリア支援を打ち出し、学生らに熱心に自社紹介をする様子が見られた。人口減少に伴ない人材獲得競争が激化している原子力産業界の現状について、主催者である日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、「ここ数年、各企業の採用意欲の高さを感じているが、当協会が毎年実施している産業動向調査の結果を見ても、希望採用人数に到達していない会員企業が多い」と述べ、「人口減少に対応するためには、原子力産業界全体の省人・省力化が必要になるだろう」とコメントした。9月1日より「日本中で考えよう。地層処分のこと。」をテーマとした新CMを公開している原子力発電環境整備機構(NUMO)の担当者は、「CMを見て興味を持った」と話す学生が来場したことを踏まえ、地道な広報活動が採用活動にも良い影響を与えていると実感したと語った。また、NUMOのここ数年の採用人数は増加傾向にあり、「特に技術系の職種の採用を強化し、国内外の研究機関等との共同研究への参加を通じて若手人材の育成に力をいれている」と強調した。「地層処分事業の社会貢献性の高さに共鳴し、課題に誠実に向き合えるプロフェッショナルな人材を育んでいきたい」と、今回のセミナーで得た手応えと意欲を語った。今回、初出展したゼネコンの株式会社安藤・間は、茨城県つくば市に放射線実験室「安藤ハザマ技術研究所」を保有し、厚さ100cmの遮蔽扉を備えた高レベル実験室にて、各種材料の遮蔽性能試験や、がん治療などに用いられる医療施設の設計・施工のための技術開発を進めている。先般行われた「日本原子力学会 2025年秋の大会」に出展し、中性子の遮蔽性能を向上させた独自のコンクリート建材などを紹介したという。セミナーには、前述の「安藤ハザマ技術研究所」での採用を見越して出展したが、想定以上に文系学生がブースに多く来場したことを明かし、「当社は文系出身者が技術職に挑戦できる体制を整えており、そうした強みも採用活動にて発揮したい」と意欲を述べた。同じく初出展となった日本核燃料開発株式会社は、原子燃料や、原子炉を構成する材料等の研究・開発を行っている企業だが、担当者によると「3年ほど前から潮流が変わり、インターンシップや企業研究会に来場する学生数が増えた」と述べた。「決まった製品を作るのではなく、さまざまなニーズに合わせて研究や試験を行う会社であるため、自ら探究心を持って試行錯誤しながら取り組める人材を採用したい」と初参加に際しての意気込みを語った同じく初出展の西華産業株式会社は、エネルギー分野に強みを持つ総合機械商社として、関西エリアに拠点を多く構え、主に三菱重工グループの原子力発電関連設備の販売代理店の役割を担っている。同社の担当者は、「想定を上回る来場があり、大きな手ごたえを得た。来年度以降、新卒採用者数を増やす計画でいる。原子力事業は、当社が扱っている商材の一部ではあるが、関西エリアで原子力新設・リプレースのニュースを受け、当社としても良い潮流の中にあり、今後の採用活動に繋げていきたい」と意気込みを語った。
- 24 Sep 2025
- NEWS
-
IAEA ALPS処理水に関する安全面の報告書を公表
国際原子力機関(IAEA)は9月12日、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関する安全面の報告書を公表。一連の対応は国際的な安全基準に完全に沿っており、問題は見つからなかったと結論付け、ALPS処理水の放出が人および環境に及ぼすリスクは無視できる程度であるという放射線環境影響評価(REIA)と一致していることが改めて明記された。同報告書は、今年5月26日から30日にかけて、IAEAのスタッフ及び専門家7名(アルゼンチン、カナダ、韓国、中国、米国、ベトナム、ロシア)が来日し、ALPS処理水の海洋放出に関する安全性レビューミッションを行い、その結論を示したもの。また、IAEAと日本政府(原子力規制委員会、環境省、水産庁、経済産業省及び外務省)、福島県及び東京電力との間で議論も交わされ、一連の対応が国際安全基準に合致しているかどうかを総合的に判断・確認した。今回で、安全性レビューミッションは海洋放出開始以来4回目となったが、これまでの3回で強調された結論と大きく変更はなかった。主な要点は以下の通り。IAEAが定めた国際安全基準の要求事項と合致しないいかなる点も確認されず、「包括報告書」に記載された安全性レビューの根幹的な結論を再確認することができる。ALPS処理水のために実施されているモニタリングプログラムは、関連する国際安全基準及び指針と一致。ALPS処理水の放出が人および環境に及ぼすリスクは無視できる程度であるという放射線環境影響評価(REIA)の結論と一致している。ALPS処理水の放出に関する安全監視を維持するため、原子力規制委員会が自らのモニタリングプログラム及び現地での立会を通じて、ALPS処理水に対する規制上の監視を継続してきたことを強調した。ALPS処理水の放出に関する機器及び設備は、国際安全基準に合致した方法で設置され、運用されていることが確認された。IAEAは、東京電力と日本政府から報告されたデータの正確性と信頼性を維持し、包括的で透明性のある独立した検証を提供するため、この監視を続けていく。同報告書を受けて東京電力は、webサイト上にて「ALPS 処理水の海洋放出にあたり、引き続き、IAEAの国際安全基準に照らしたレビューおよびモニタリングを通じて、安全確保に万全を期す。そして、広く国内外の皆さまに対し、理解が深まるよう努力する」とコメントした。
- 18 Sep 2025
- NEWS
-
復興庁 福島復興局の新拠点を双葉町に設置
伊藤忠彦復興大臣は9月2日、福島復興局の体制を強化するため、来年度のできるだけ早い時期に、福島県双葉町の産業交流センターに新たな拠点を設けると発表した。福島復興局は2012年に設置された復興庁の地方機関で、福島市の本局以外に富岡町と浪江町に支所がある。しかし、この度の体制強化の一環として富岡支所と浪江支所を統合し、双葉町の新拠点にて一本化することとなった。また、新たに福島復興局副局長のポストを設けて新拠点のトップとして常駐させるほか、職員数も増やすという。新拠点では、地域住民の医療、福祉、学校などの生活環境の改善、営農の再開、事業者支援など多岐にわたる課題の解決に取り組む。同日の会見で、今回の統合でどのようなメリットが生まれるかを問われた伊藤大臣は「限られた職員数で、効果的・効率的に復興を推進していくために、新拠点で新たに一元的に業務を遂行することが適当だと考えた」と述べ、「両支所が担っていた業務は新拠点が担う。支援体制を縮小したわけではない」と強調した。また、新拠点を双葉町に置くことにした理由を問われた伊藤大臣は「来年度なるべく早い時期に新拠点を発足させたかったため、すでに地域の中核施設として機能する産業交流センターのある双葉町を選定した」と述べた。同センターは2020年10月にオープンし、貸会議室や貸事務所のほか、フードコートやレストラン、土産物店等の商業施設が入る複合施設となっている。
- 12 Sep 2025
- NEWS
-
規制委 原子力災害指針を一部改正「屋内退避も有効」
原子力規制委員会は9月10日の委員長定例会見にて、原子力災害時の放射線防護の措置などの対応方針をまとめた「原子力災害対策指針」の改正を公表した。同指針の目的は、緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の重篤な影響を回避または最小化することであり、防護措置として、「予防的避難」と「屋内退避」の2点が重要な観点だと定められている。これまでも、原子力発電所にて事故が起きた場合、原則以下のような指針が定められてきた。①発電所から概ね5km以内のPAZ(予防的防護措置区域)においては、放射性物質が放出される前段階から予防的に避難等を行う②発電所から概ね5km~30km以内のUPZ(緊急防護措置区域)においては、予防的な防護措置を含め、段階的に屋内退避、避難、一時移転を行う今回の同指針の改正では、「屋内退避」に関する運用の考え方(実施期間や解除要件)に、一部、加筆修正がなされた。具体的には、屋内退避の継続は実施後3日目を目安に国が判断することや、発電所の状態(放射性物質の放出が無い場合)によっては、屋内退避期間中の外出も許可されること、放射性物質を含む空気の塊が周囲に留まらない場合には退避を解除できること等が、新たに盛り込まれた。記者から「屋内退避の継続判断の3日という期間の根拠はどこにあるか」と問われた山中伸介委員長は、「住民の心理的ストレス等を鑑み、国際的な基準と照らし合わせて導いた。また、福島第一原子力発電所の事故の教訓として、無計画な避難は住民に健康被害を及ぼす可能性があること、防災関連備品のストックの目安が3日とされていることも考慮している」と答えた。また、同指針の改正によって期待していることや、今後の課題について問われた山中委員長は「対話の場をこれからも増やし、遮蔽機能を持った建物に留まることも有効な防護措置であることをご理解いただく。そして、各自治体が定める防災計画と照らし合わせ、指針に不十分な部分があれば随時修正し、複合災害対策として、これまで以上に関係省庁間の密な連携を図る必要がある」と述べた。
- 11 Sep 2025
- NEWS
-
除染土の県外処分に向けたロードマップが具体化
政府は8月26日、福島県内に貯蔵されている除去土壌の県外処分へ向けたロードマップを明らかにした。2030年頃に最終処分場の候補地の選定を開始し、2035年をめどに処分場の仕様を具体化させ、候補地を選定する。これらの除染土は、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で一時保管されているが、2045年3月までに福島県外にて最終処分することが法律で定められている。政府は除染土処分の先行事例として、総理大臣官邸での除染土の再生利用をすでに発表し、今年7月には、中間貯蔵施設から官邸に運び込まれた除染土の上に普通の土をかぶせ、表面に芝生を張る作業が実施された。8月26日に再生利用等推進会議で配布された資料には、外務省南庁舎入口の盛土、霞が関の中央官庁の花壇など、合計9か所での除染土の復興再生利用の概要が示された。計79立方メートルの活用が予定され、その後、各府省庁の分庁舎、地方支分部局などに対象を広げる方針だ。いずれは、民間での再利用例の創出を目指すほか、対象の土を「復興再生土」といった呼称にする議論も予定されている。そして、前述の「ロードマップ」については、政府が今年5月に策定した「福島県内除去土壌等の県外最終処分に向けた基本方針」に則り、今後5年程度で復興再生利用を重点的に進める道筋を示した。同ロードマップは、「復興再生利用の推進」「理解醸成・リスクコミュニケーション」「県外最終処分の取組」の3本柱で構成され、今後、推進会議を年に1回程度開催し、進捗状況を継続的に確認する。また、必要に応じて環境省が福島県や関係自治体の意見を伺い、ガイドラインの見直しを行う。その他、IAEAのフォローアップを受けつつ、科学的根拠に基づき透明性の高い情報を発信する方針だ。政府は、復興再生利用の先行事例を創出しその拡大が見通せるよう「安心感・納得感」を醸成することを目標としている。そのために、ウェブやSNS 等を通じた情報発信をはじめ、中間貯蔵施設や飯舘村長泥地区環境再生事業の見学会など、理解醸成の取り組み等を引き続き実施し、実施地域・対象等を段階的に拡げていく。
- 29 Aug 2025
- NEWS
-
NEMS2025 海外13か国から計28名が参加
将来の原子力業界を牽引する人材の育成を目指した研修コース、「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2025」が8月19日に開講し、東京大学にて開講式が行われた。NEMSは、2010年にイタリアのトリエステで初めて開催されて以来、延べ2146名(112の加盟国)が参加してきた。日本での開催は今年で13回目。アジアや東欧、中近東など、原子力発電新規導入国等における若手リーダーの育成を主たる目的としている。今年は、海外13か国(ブルガリア、エストニア、インド、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、タイ)から18名、日本からは10名、計28名の研修生が参加した。約3週間にわたる日程で開催され、東京大学本郷キャンパスでの講義やグループワークのほか、東京電力福島第一原子力発電所、東北電力女川原子力発電所とPRセンター、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力科学研究所の原子炉安全性研究炉(NSRR)と原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)、産業交流施設「CREVAおおくま」、「株式会社千代田テクノル大洗研究所」等へのテクニカルツアーを通じ、原子力に関連する幅広い課題について学ぶ。開催に先立ち、組織委員長の東京大学大学院工学系研究科の出町和之准教授は、研修生らを大いに歓迎し、研修生同士の関係性向上が将来の人脈に繋がると、指摘した。また、暑さの厳しい時期であることを鑑み、「体調管理に留意し、実りある時間にしてほしい」と研修生を労った。続いて挨拶に立った日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、IAEAをはじめとする関係各位に謝辞を述べた上で、「グループワーク等では、主体的に、そして積極的に議論に参加してほしい」と期待を寄せた。IAEAからは、原子力エネルギー局計画・情報・知識管理部(NEPIK)部長を務めるファン・ウェイ氏が登壇。同氏は、「世界的に原子力の専門人材やリーダーシップの必要性が高まっている」と指摘し、「各国政府や教育機関と連携し、若手の知識や経験の共有、国際的なネットワークづくりを進めていくことが不可欠だ」と述べた。最後に挨拶に立った上坂充原子力委員会委員長は、「他国の知見や政策を積極的に学び、自国にとって最適な形を模索する上で、IAEAの基準や国際的な取り組みを参考にすることは、皆さんの将来にとって重要な学びになるだろう」とNEMSの意義を強調。また、「今回のプログラムで自身の目で見て理解したことを、帰国後にご家族や友人にも伝えてほしい。知識や経験の共有が、国際社会全体の原子力の未来を形づくることにつながるだろう」と述べた。
- 22 Aug 2025
- NEWS
-
全国知事会 各省庁へ提言書を提出
全国知事会で原子力発電対策特別委員会委員長を務める中村時広愛媛県知事は8月4日、原子力規制庁を訪れ、「原子力発電所の安全対策及び防災対策に対する提言」と題した提言書を金子修一長官に手渡した。また、中村知事は翌8月5日、経済産業省と内閣府を訪れ、加藤明良経済産業大臣政務官、城内実内閣府特命担当大臣(科学技術政策)、勝目康内閣府大臣政務官(原子力防災)に対し、同提言書をそれぞれ提出した。提言書は、国が責任をもって早急に取り組むべき「原子力発電所の安全・防災対策」について、3つの章に分けて記述。第1章では、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関し、特に廃止措置とALPS処理水を取り上げ、適切な支援と風評の払拭、原子力災害の風化防止対策など、政府一丸となって取り組むことを求めた。第2章では、原子力施設の安全対策に関し、2024年1月に発生した能登半島地震を受けて、原子力発電所の安全性や避難計画の実効性を懸念する声が上がったことを踏まえ、「全国に立地している原子力施設の安全確保に向けて、原子力規制委員会には、常に最新の知見を踏まえた新規制基準の見直し、厳正かつ迅速な適合性審査の実施、そして、その結果を国民全体に明確かつ責任ある説明を行ってほしい」と訴えた。また、同地震の教訓から得られた知見や安全研究の成果を、今後の対策に活かすことを求めた。そのほか、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定など、バックエンド対策の加速も要請され、使用済み燃料の最終処分地については「国全体で負担を分かち合うべき課題」として、都市部を含む全国的な議論と情報公開を呼びかけた。さらに、原子力分野の人材不足や技能継承への懸念を示し、研究開発や安全対策に必要な予算・人材を長期的視点で確保するよう国に求めている。第3章では、原子力防災の強化に関し、自治体が制定する原子力防災対策の幅が広がっていることを踏まえ、国が前面に立ち、予算面から立地自治体を支援する必要性を強調。2024年9月の原子力関係閣僚会議で確認された「避難対策を中心とする具体的対応方針」を踏まえ、自治体の意見を十分反映させることや、複合災害時における省庁間のスムーズな連携を求めた。
- 18 Aug 2025
- NEWS
-
除染土の県外処分 月内にロードマップを策定へ
林芳正内閣官房長官は8月10日、就任後初めて福島第一原子力発電所や中間貯蔵施設を訪問し、廃炉に向けた取り組みを視察した。東京電力の小早川智明社長らとの意見交換会も実施し、「安全かつ着実な廃炉、福島の復興は政権の最重要課題。安全確保を最優先し、廃炉作業を一歩一歩進めてほしい」と発言した。その後、記者団の取材に対し、福島県に残る除染土の県外処分に向けたロードマップ(工程表)を、今月中に策定すると明らかにした。このロードマップには今後5年間で取り組むべき課題が盛り込まれ、候補地選定条件の具体化に入る方針だ。その上で「県外での最終処分に向けては、最終処分場の構造や必要な面積などをまとめた複数の選択肢を示しており、候補地の選定を進めたい。国民への理解醸成が特に重要で、政府を挙げて積極的な情報発信に取り組んでいく」と述べた。これらの除染土は、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で一時的に保管されているが、2045年3月までに福島県外にて最終処分することが法律で定められている。政府はこの最終処分量を減らすために、放射性物質の濃度が低い土を、全国の公共工事の盛り土などに用いて再生利用する方針だ。その除染土処分の第一歩として政府は、総理大臣官邸にて除染土を再生利用することをすでに発表している。7月19日~20日にかけて、中間貯蔵施設から除染土を積んだ10トントラックが官邸に到着し、前庭にて、除染土の上から普通の土をかぶせ、表面に芝生を張る作業を実施した。除染土事業を管轄している環境省は今後、1週間に1回程度、放射線量を測定し、ホームページなどで情報を発信する方針。官邸での再生利用をきっかけに除染土への理解醸成につなげる狙いがある。
- 13 Aug 2025
- NEWS
-
全原協 発電所の新設に向け 環境整備などを要望
原子力発電所の立地自治体などでつくる全国原子力発電所所在市町村協議会の首長らは8月8日、経済産業省を訪れ、原子力発電所の新設に向けた安全規制や資金調達に関する環境整備などについて、武藤容治経済産業大臣と会談し、要請書(原子力発電に関する要請書)を手渡した。要請書の冒頭には、「今年策定された第7次エネルギー基本計画で『原子力を最大限活用する』と明確に示されたことは、立地自治体にとっても大きな意義があると受け止め、安全確保を大前提に、計画に示された施策の着実な実行を求める」の一文が記載された。そして、同協議会の会員の総意に基づき、次の4点を重点項目として強く要請するとしている。福島の復興について被災地支援の継続や財源確保は国の責務であると強調した上で、燃料デブリの取り出し、多核種除去設備等処理水対策や廃炉作業を着実に推進すること。安全規制・防災対策について2024年1月の能登半島地震の被害状況を鑑み、インフラの整備・強靭化は立地自治体における喫緊の課題であり、原子力防災対策の実効性向上と財源確保、自衛隊との連携を含む安全確保体制を強化すること。原子力政策についてエネルギーの安定供給と2050年カーボンニュートラル達成に向けた原子力利用の着実な推進、原子燃料サイクルの早期具体化、バックエンド対策の加速、国民理解の促進を継続すること。立地地域対策について原子力発電の意義を理解し、協力してきた立地地域の持続的かつ自立的発展のため、地域の実情に応じて制度を改善もしくは拡充をすること。なお、面会の冒頭、同協議会の会長を務める福井県敦賀市の米沢光治市長は、関西電力が美浜発電所にて地質調査を開始したことについて触れ、「建設期間を考えると速やかに具体化していかなければならない」と事業者へのさらなる支援を求めた。これを受けて、武藤容治経済産業大臣は、「次世代革新炉への建て替えに向けた研究開発やサプライチェーンなどの事業環境整備に取り組む」と発言したほか、「地域産業や雇用の維持発展に寄与し、地域の理解が得られるものに限り具体化を進めていく」と国として全面的にサポートする姿勢を強調した。
- 12 Aug 2025
- NEWS
-
放射線の知識をアップデート ぐぐるプロジェクト
環境省は7月31日、「令和7年度ぐぐるプロジェクト キックオフミーティング」を東京都内で開催した。同プロジェクトは、放射線に関する正しい情報発信を目的に2021年に始まった活動で、今年、最終年度となる5年目を迎えた。一般的に放射線はなじみが薄く、情報をアップデートする機会が少ないと言われている。そのため、過去に得た古い情報のまま、知識が止まっているケースが多々あり、放射線の健康影響に関する全国調査においても、「正しい知識を持つ人」の割合は未だ61.7%ほどに留まるという。こうした放射線の健康影響に関する誤解や風評、差別、偏見の解消を目指し、同プロジェクトでは、メディア向け公開講座や、ラジエーションカレッジ(全国の企業や学校での学びの場)によるセミナーの開催、学んだことを発信するための作品コンテストなど、幅広い活動を行ってきた。同プロジェクトでは、今年度までに「正しい知識を持つ人」の割合を80%にする目標を掲げ、昨年度発足した、福島の未来を担う若い世代で構成された「ふくしまメッセンジャーズ」による取り組みをパワーアップさせる方針だ。「ふくしまメッセンジャーズ」は昨年度、中高校生向けの絵本「木と鳥」やポスターの創作、福島県内でのフィールドワークやワークショップなど、さまざまな活動を通じて情報発信に努めてきた。今年度は活動の場を福島県外へと広げ、秋以降には全国8か所程度でのイベントにメンバーを派遣する。なお、活動の様子は動画にまとめられ、YouTube公式チャンネルなどで全国に発信される。早速、8/6(水)~8/7(木)には「こども霞が関見学デー」と題した小中学生向けの省庁見学イベント(環境省22階第一会議室で開催)にて、メンバーが先生役となって活動を紹介する予定だ。この日は、4名のふくしまメッセンジャーズのメンバーが登壇し、ロールプレイ形式で活動の様子が披露された。また、昨年度から同活動のサポーターに起用されている俳優・タレントとして活躍する箭内夢菜さん(福島県郡山市出身)も登壇。箭内さんは、「ふくしまメッセンジャーズの活動は、福島の今を知らない人たちの心を動かすきっかけになると思っています。私もサポーターとして、今年度も精一杯応援させていただきたいです」と意気込みを語った。
- 04 Aug 2025
- NEWS
-
JAEA 核物質量を非破壊で把握する新技術を開発
日本原子力研究開発機構(JAEA)は7月18日、燃料デブリの核物質を非破壊で測定する新技術「高速核分裂中性子同時計数法(FFCC)」を開発したと発表した。開発の背景には、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業をめぐる安全遵守と効率化の課題がある。原子炉から取り出される回収物は、核燃料が溶けて冷え固まった溶融デブリのように核物質を大量に含むものから、溶融物が原子炉構造材などに付着しただけでほとんど核物質を含まないものまで、多岐にわたる。そのため、回収物の核物質量に応じて分類し、管理・保管方法を最適化できれば、燃料デブリの取り出しから保管に至るまでの各工程の合理化が期待できる。本来、核物質は中性子による反応を利用することで非破壊測定ができるが、燃料デブリには制御棒由来の中性子吸収材が混ざっており、測定を妨害してしまうという。そのため、燃料デブリは「最も測定が困難な核物質」のひとつとされ、内部に含まれる核物質の量を非破壊で正確に把握する技術の開発が、以前から求められていた。こうした課題に対しJAEAでは、高エネルギーの高速中性子が中性子吸収材の影響を受けにくいという性質に着目し、「高速核分裂中性子同時計数法(FFCC)」という新たな非破壊測定法を開発。原理実証実験にも成功した。JAEAはこのFFCCの早期実用化を目指し、試験および検討を進めていく方針。この技術は、福島第一原子力発電所の廃炉作業における燃料デブリ中の核物質の非破壊計測に有効であるほか、核セキュリティ対策として手荷物などに隠匿された核物質検知などへの応用も期待されている。
- 23 Jul 2025
- NEWS
-
関西電力 次世代型革新炉建設へ
関西電力は7月22日、美浜発電所1号機の後継機(次世代型原子炉へのリプレース)設置の可能性検討に係る現地調査を開始すると発表した。この調査は、2010年に開始していたが、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、一時的に見合わせとなっていた。国内での新たな原子力発電所の建設は、2009年に運転開始した北海道電力泊発電所3号機(PWR、91.2万kWe)が最後で、実現すれば、2011年の事故以降初となる。政府は、今年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画にて、原子力の最大限活用を掲げ、既存サイト内での次世代革新炉へのリプレースを進める方針を明記していた。現地調査では、新規制基準への適合性の観点から、地形や地質等の特性を把握し、後継機設置の可能性の有無を検討する。また、調査結果に加え、革新軽水炉の開発状況や規制の方針、投資判断を行う上での事業環境整備の状況を総合的に考慮するため、「同調査の結果のみをもって後継機設置を判断するものではない」と、同社はコメントしている。美浜発電所は、2015年4月に1、2号機の廃止が決定し、現在は、3号機(PWR、82.6万kWe)のみ稼働している。関西電力の森望社長は「データセンターや半導体産業の急成長を背景に、今後も電力需要は伸びていく。資源の乏しい日本において、S+3Eの観点から、原子力は将来的にわたって役割を果たすことが重要」と述べたうえで、新増設やリプレースに関しては「投資回収の見通しを確保することが重要で、国の政策に基づく事業環境整備などが必要となる」と強調した。同社はウェブ上で「地域の皆様のご理解をいただきながら、安全を最優先に原子力事業を推進していく」とコメントしている。
- 22 Jul 2025
- NEWS
-
東京電力 青森県知事へ使用済み燃料の搬入を説明
東京電力が7月7日、福島第一原子力発電所5、6号機と福島第二原子力発電所の1~4号機で保管していた使用済み燃料を、青森県むつ市の中間貯蔵施設へ搬出する方針を示した。同社の小早川智明社長は同日、青森県庁で宮下宗一郎知事と会談。中間貯蔵施設に関する中長期の搬入・搬出計画を提示し、「事故後の点検や技術評価の結果、中間貯蔵と再処理を行うことは十分技術的に可能だ」と説明した。なお、発電所からの搬出に当たっては、原子炉等規制法に基づき、事前に発送前検査を実施し、中間貯蔵および再処理に問題がないことを改めて確認する。むつ市にある中間貯蔵施設は、東京電力と日本原子力発電が出資するリサイクル燃料貯蔵(RFS)によって運営され、昨年9月には柏崎刈羽原子力発電所の使用済み燃料を受け入れている。同施設は、使用済み燃料を空気で冷やす「乾式貯蔵」方式が採用されている。中間貯蔵施設への具体的な搬入時期等は未定だが、2030年代には年間200~300トン程度の使用済み燃料を搬入する考えだ。同施設で、使用済み燃料を最大50年間保管した後、日本原燃再処理工場(2026年度に竣工予定)へ搬出する計画だが、搬出は貯蔵期限に間に合うよう、年間約300トンのペースで進められる想定となっている。東京電力は、現時点で保有する原子力発電所の稼働基数を確定できていないものの、少なくとも3基の稼働を想定し、安定的な運転の継続や、運転終了後の計画的な廃炉に向けて、使用済み燃料を順次搬出していく方針。また、日本原子力発電も同様に、東海第二原子力発電所(BWR、110万kWe)および敦賀2号機(PWR、116万kWe)の運転を想定し、使用済み燃料の早期搬出を進める考えだ。
- 08 Jul 2025
- NEWS
-
金子規制庁新長官 「新型炉の規制で事業者らと連携」
原子力規制庁で7月3日、1日付で原子力規制庁長官に新たに就任した金子修一氏(59)の就任会見が開かれた。6代目長官の金子氏は、前任の片山啓氏(62)に続く経済産業省の出身。2012年の原子力規制委員会の発足準備段階から携わっているひとりだ。2011年の福島第一原子力発電所の事故対応の経験を持つ同氏は、「事故対応の経験を持つ職員は一定数いるが、数としては少なくなった。事故から学んだことは、準備ができていないことは実行できないということ。危機感や臨場感を口頭で伝えるだけではなかなか伝わらないという課題もあるが、規制庁で培われてきた独立性や継続的改善の姿勢を継承し、当時の状況や意識を伝え続けていく」と抱負を述べた。その後、記者から、「準備に万全はないという発言は、安全規制には終わりがないという意味が込められていると思うが、特に力を入れたいことは何か」を問われ、金子長官は、「最近は、新型炉の規制や核融合といった新しい技術に対応する規制のあり方など、幅広い課題に取り組んでいる。そういった技術の動向や政策の方向性については関心を持って見ており、事業者や研究機関と密に連携していくつもりだ。また、4月から新しい中期目標を設定し、今後5年間で重点的に取り組むべき課題をその中に盛り込んだ。これら課題を着実に解決したい」と述べた。そして、他の記者から「審査期間の長期化によって、膨大なコストをもたらすと懸念されているが、審査や規制の効率化について、どのように考えているか」と問われ、金子長官は「先述の中期目標において審査の効率化は大きな柱として掲げた。過去の経験や実績を活かし、確認済み事項については再確認を不要とするなど、事業者と連携しながら効率化は図れるだろう」と述べた。また「規制庁の職員は1000人を超え、大きな組織となっている。職員1人ひとりがやりがいを感じ、積極的に、前向きに仕事ができる環境を整えることも私の重要な役割だ」と働き方改革にも意欲を見せた。
- 07 Jul 2025
- NEWS
-
福島第一 新燃料30体を米国へ輸送
東京電力は7月3日、2025年度の使用済み燃料等の輸送計画について、3月28日に発表した内容に加え、新燃料の輸送を追加すると発表した。3月時点では、使用済み燃料138体(約24トンU)を柏崎刈羽原子力発電所から青森県むつ市のリサイクル燃料貯蔵に搬出するほか、低レベル放射性廃棄物1,800本を、同発電所から青森県六ヶ所村の日本原燃へ輸送する計画を公表していた。一方、新燃料の輸送予定は当初「なし」とされていたが、今回、福島第一原子力発電所6号機(BWR、110.0万kWe)の新燃料貯蔵庫に保管されている新燃料30体(約10トンU)を、製造元である仏フラマトム社のリッチランド工場(米ワシントン州)へ輸送する計画が加わった。輸送は2025年10~12月に実施される見通しで、米国に輸送後は、燃料を解体、精製し、ウランを回収する。6号機の原子炉建屋には、今回輸送が決まった30体を含む計1,884体の燃料(使用済み・新燃料)が保管されていた。このうち1,456体の使用済み燃料は、2025年4月16日までにすべて共用プール(建屋外)へ輸送され、現在は新燃料198体が使用済み燃料プールに、230体が新燃料貯蔵庫に保管されている(2025年7月1日現在)。
- 04 Jul 2025
- NEWS
-
2024年度版 エネルギー白書を閣議決定
日本政府は6月13日、2024年度版のエネルギーに関する年次報告(通称:エネルギー白書)を閣議決定した。本白書は、エネルギー政策基本法に基づく法定白書で、2004年から毎年作成され、今回が21回目となる。同白書は例年3部構成となっており、第1部は、福島復興の進捗と原子力安全対策、各年度のエネルギーを取り巻く動向を踏まえた分析など、第2部は国内外のエネルギーに関するデータ、第3部は前年度に講じたエネルギー政策や支援策の実施状況、を中心にまとめられている。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化しているほか、直近では、イランと米国の間で新たな緊張の火種が生じており、各地で情勢の不安定化が懸念されている。それに伴い、化石燃料の需給バランスが崩れ、以前から日本でも電気・ガス代やガソリン価格が高止まりしているが、回復の兆しは見えない。そして、米トランプ政権は、脱炭素政策を転換し、アラスカ州での資源開発の加速に意欲を示したことにも触れ、「安定供給や価格に影響を与えるリスクが顕在化している」と分析した。そのため、既存の原子力発電所よりも安全性や燃料の燃焼効率が高い「次世代革新炉」の早期実用化や、薄く折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」など、次世代技術の活用を推進し、脱炭素化と電力の安定供給を両立する必要性を強調している。また、発生から14年が経過した東京電力福島第一原子力発電所の事故に関しては、デブリの取り出しや処理水の処分を着実に進めることで「復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていく」と記されている。
- 24 Jun 2025
- NEWS
-
日加原子力フォーラム初開催 福島視察も
日本原子力産業協会とカナダ原子力協会(CNA)は6月19日、東京都港区の在日カナダ大使館で「第1回 日本・カナダ原子力フォーラム」を開催。80名を超す参加者が詰めかけた。両協会は、2021年に協力覚書を締結しており、今回のフォーラムはその活動の一環。両国の原子力産業界のさらなるビジネス交流の促進を図り、協業の在り方を模索するのが目的。カナダ側はCNAのほか、原子力研究所、在日カナダ商工会議所、各州政府在日事務所、原子力関連企業らが参加した。冒頭挨拶に立ち、日本原子力産業協会の増井理事長は、「CANDU炉に象徴されるように、カナダは原子力技術の面で世界をリードし、日本とはウラン供給などにおいて長年協力関係にある。また、西側諸国初のSMR(BWRX-300、30万kWe)実用化計画が進むダーリントン原子力発電所において、日本企業が関与するなど、以前から着目していた国のひとつだ。このフォーラムを通じて両国の新たな連携の芽が育まれる契機となってほしい」と述べた。CNAの一行は翌20日、福島県双葉郡に位置する東京電力廃炉資料館と、福島第一原子力発電所を視察。廃炉資料館では、東日本大震災の発生から原子炉の冷温停止までの経緯や、現在進められている廃炉作業の詳細について、映像や展示物を通じて説明を受けた。また、福島第一では、1~6号機の現状や処理水の海洋放出の流れ、燃料デブリの取り出しに関する取り組みについて、約1時間の構内バスツアーを通じて視察し、理解を深めた。CNAのジョージ・クリスティディス理事長は福島県での視察を終えて、「日本の原子力産業界関係者のレジリエンスに大きな感銘を受けたほか、緻密に計画された工程で廃炉作業に取り組んでいることを学んだ。この事故によって発生した犠牲や痛みを軽んじるつもりは一切ないが、ここで得られた知識や技術には大きな価値がある」と述べ、福島第一での経験が、今後多くの国の廃炉プロジェクトにも活かされるとの期待を示した。
- 23 Jun 2025
- NEWS
-
新潟県 被ばく線量シミュレーションの結果を公表
新潟県は5月16日、柏崎刈羽原子力発電所6,7号機(ABWR、135.6万kWe×2基)において事故が発生した場合の、被ばく線量シミュレーションを公表した。シミュレーションは、原子力規制委員会(NRA)の検討チームが実施した手法をもとに、気象条件など柏崎刈羽地域の実情に合わせて行った。7日後のベント実施や、6・7号機が同時に事故を起こすケースなど、計6通りのシナリオを想定。事故発生後の時間経過に伴う被ばく線量の変化や、防護措置の実施タイミングをそれぞれのケースごとに分析し、IAEAが定める各種基準と比較評価した。今回のシミュレーションでは、発電所から2.5キロメートル圏内では、避難や屋内退避を必要とする100ミリシーベルト/週の実効線量に達する可能性があること、また、4.5キロメートル圏内では、安定ヨウ素剤の服用が推奨される50ミリシーベルト/週に達する場合があることが示された。いずれもフィルタベントを使用した複数のケースで確認されている。一方、発電所から概ね30キロメートル圏内のUPZ(緊急時防護措置準備区域)では、被ばく線量が、IAEAの基準値には達しないことが確認された。屋外にいた場合でも被ばく線量は十分低く、特に鉄筋コンクリート造の施設など屋内退避を行うことでさらに被ばく線量が低減されると分析した。今回の結果は、6月1日、7日に開催する県民への説明会にて説明される予定となっている。
- 19 May 2025
- NEWS
-
迷走する除染土問題 今こそ「課題解決型報道」の出番だ!
二〇二五年四月三日 東京電力・福島第一原子力発電所事故で発生した除染土の再利用をめぐるニュースが目立ってきた。その中で中間貯蔵施設を抱える双葉町の伊沢史朗町長が町内で再利用を検討する考えを表明、停滞打破へ向けて大きな一石を投じた。いまこそ伊沢町長の勇気ある行動を結実させる「課題解決型報道」が必要ではないだろうか。除染土の四分の三は放射線量が低い 福島第一原子力発電所の事故では、放射性物質が周囲の住宅地や農地などに降り積もった。その除染作業で削り取られた土と草木がいま大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に保管されている。その総量は東京ドーム約十一杯分の約一四〇〇万立方メートル。国は二〇四五年三月までに県外で最終処分する計画だが、同時に除染土の四分の三は放射線量が低いため、公共工事に再利用して除染土の総量を減らす方針も決めている。 国は二年前、再利用に向けて東京都新宿区と埼玉県所沢市で実証事業を進めようとしたが、住民の反対に遭い、頓挫してしまった。その後、表立った前進はない。 最終的には福島県外の処分地を確保するとしても、まずは最終処分量を減らすことが必要だ。だが、現状ではその入り口でつまずいている格好だ。再利用とはどんなものか つまずきの要因は何なのか。それには除染土の再利用事業がどのようなものかを知ることが先決だ。環境省は「中間貯蔵施設情報サイト」で再利用の具体案をイラストを交えて詳しく分かりやすく示している。それによると、コンクリートなどで被覆された道路や鉄道、防潮堤などの盛土、廃棄物処分場の覆土、海岸防災林の盛土や土堤、土砂で被覆された農地などに除染土を再利用する。 環境省は除染土の再生利用にあたっては、「放射能濃度が低い土を使用し、分別作業によって草木などの異物を取り除き、品質の良い土に再生してから利用する」と解説する。現に福島県飯舘村の長泥地区では、農地の盛土造成や花、野菜の栽培などを行う実証事業を進めている。そこで収穫される野菜の放射性物質の量は通常の食品と差がないことも分かっている。 再利用先が人の密集する住宅地ではなく、公共的な場所であれば、反対する合理的な理由は見つからず、どの自治体や住民もスムーズに受け入れてもよさそうに思うが、合意を得ることは簡単ではないようだ。放射線量は年間1ミリシーベルト以下 安全性の面はどうだろうか。仮に放射線による健康影響があるなら、反対運動が起きても当然である。しかし、再利用される土は一キログラムあたり八〇〇〇ベクレル(放射性セシウム一三四とセシウム一三七の合計)以下だ。これだと、仮にその土の上で長く作業をしたとしても、健康影響の管理指標値とされる年間一ミリシーベルト(この数値を超えたら健康影響が生じるという意味ではない)を下回る。 日本人は宇宙線や大地、ラドンの吸入や通常の食品から年間平均で二・一ミリシーベルトの自然放射線を浴びている。放射線は人工も自然も同じで、人への健康影響に差はない。日本国内だけでも地域によって線量に高低差があり、年間で最大一ミリシーベルトくらいの差があることを考えると、除染土による年間一ミリシーベルト以下の放射線量であれば、健康への影響はないとみてよいだろう。 私の住む千葉県北端部は、原発事故後に放射線量の高いホットスポットにあたり、事故後の数年間は一ミリシーベルトを超えていた。しかし、周りの住民は特に気にすることもなく生活していたことを思い出す。これと比べると、除染土を再利用した道路や盛土はその上に住むわけではなく、どう考えても健康影響は無視できるレベルだ。 この除染土の健康影響について、日本経済新聞は「CT検査を受けた場合に浴びるのは一回あたり十ミリシーベルト程度で、その十分の一ほどにとどまる」(二〇二五年三月三日付)と形容して報じた。こういう報道を見ても分かるように安全性の面ではクリアできそうだ。今こそ必要な課題解決型報道 ならば、もっとスムーズにことが運んでもよさそうだが、ここで重要になるのがメディアの「課題解決型報道」である。これは先進的な事例となる発言や専門家の提言を紹介しながら、課題を解決していく報道である。この報道には、記者たちが課題をなんとか解決したいと望む意欲と情熱が不可欠だ。 この点で注目したのは、毎日新聞が一面トップ(三月十七日付)で「除染土 停滞打開へ一石」の見出しで報じた記事だ。記事は、伊沢史朗・双葉町長が「県外に持って行ってと言うだけでは国民理解はなかなか進まない」としたうえで「双葉町内で除染土の再利用を考えている」との発言を報じた。毎日新聞は「覚悟を決めたように言った」と形容し、伊沢氏の覚悟が停滞打破の一石になるとの期待を込めた。 伊沢氏のこうした発言は2月下旬にあったことから、毎日新聞は社説(三月三日)で「首都圏などの自治体は、町長の発言をわがこととして重く受け止め、行動に移す時だ」と他の自治体の首長に向けてはっぱをかけた。 この除染土の問題はNIMBY(ニンビー)と似ている。ニンビーは"Not In My Back Yard"(うちの裏庭にはやめてくれ)の略語。ある施設をつくる必要性をだれもが認めていながら、「自分の庭や周辺はイヤだ」という例だ。そのイヤな役目を批判覚悟であえて引き受けた伊沢氏の行動は称賛に値する。であるならば、メディアはもっと伊沢氏の勇気ある熱情と意図を個別のインタビューで紹介し、他の自治体の首長に向けて「あなたたちは見て見ぬふりをしていてよいのか」と迫るくらいの記事がほしいが、そういう迫真の記事はほとんどない。自治体の首長は除染土再生事業を見学せよ ただ、課題解決に向けた意欲を感じさせる記事もあった。読売新聞は三月十一日付朝刊で「除染土進まぬ理解」の見出しで全国の四十六知事に行った意向調査を載せた。新聞社自らが全国の知事に向けて「あなたは解決する気持ちをもっているのか」と尋ねて、知事の意向を調査した意義は大きい。 しかし、残念ながら、除染土の再利用について、「受け入れても良い」と答えた知事はゼロだった。山形、山梨、鹿児島、沖縄の四県は「容認できない」と答え、ほかは「どちらとも言えない」だった。最終処分場の受け入れについても、「条件次第で検討する意向がある」と答えた知事は秋田、千葉、兵庫、奈良、宮崎の五県にとどまった。 読売新聞は伊沢町長のインタビューも載せた。そこで伊沢氏は首都圏の自治体首長に対して次のように述べた。「のど元過ぎれば熱さ忘れるで、自分の所の問題でなければ迷惑施設はいらないということだ。…福島で作った電力が首都圏で使われていたことを、今では忘れられたような気がする」。 この記事を受けて、読売新聞の社説(三月二十四日)は「地元だけに問題を押しつけず、全国の自治体で再利用に協力すべきではないか」と呼び掛けた。 義侠心(ぎきょうしん)とは、正義のために弱い者を助ける行動を言う。今後、伊沢町長の勇気ある行動を生かすも殺すも、自治体首長の義侠心、そしてメディアの報道いかんにかかっている。 現在、環境省は福島県飯舘村で除染土を再利用する環境再生事業を進めている。現状を知ってもらう見学会(連絡先は中間貯蔵事業情報センター)も実施している。少なくとも福島の電気を利用してきた首都圏の自治体首長全員は、一度は見学すべきだろう。
- 03 Apr 2025
- COLUMN
-
人とモノの距離
モノがつなぐゆるい絆「先生、お米をもらってくれませんか」ある日、南相馬で突然お米を10㎏いただく、ということがありました。お聞きしてみると、その方のご家族が急に亡くなったのですが、亡くなる直前に新米を大量に注文してしまっていたのでもったいないから、とのことです。不思議なもので、それ以来お米を見る度にこのエピソードが繰り返し思い出され、お会いしたこともない方なのに偲ぶような気持ちになります。モノを介してつながる、そんなゆるくて温かいつながりが好きです。今、人の距離が近づきすぎている。そう感じることがしばしばあります。今やインターネットで瞬時に人とつながってしまうために、人間関係の距離を取ることが益々難しくなっているからです。ちょっとした行動が一瞬にして炎上する「一億総監視社会」「一億総クレーマー社会」などは、そんな人の近さの弊害とも言えるでしょう。ネオデジタルネイティブ世代と呼ばれる方々は、インターネット上での人と人の衝突も「リアル」と感じる世代です。このため、衝突を回避するための「空気を読む」能力が非常に発達しているように見えます。その鋭敏すぎる共鳴力・共感力ゆえに、彼らは強力な一体感や蜜な関係を単純に楽しいものとは感じられなくなっているようにも見えます。 「中の人」先日、大阪大学に勤める友人からある学生さんの話を聞きました。大阪大学では2016年から「福島環境放射線研修」という実習が行われています。この実習が年々人気を増し、参加者が200人ほどまで増えた結果、2024年には福島県大熊町に「大阪大学福島拠点」が設立されるに至りました。その参加者の一人である学生さんが、ある日「私は大阪大学から来ました」と自己紹介したところ、地元の方に「ああ、あの大熊のね。」と言われたそうです。興味深かったのは、その学生さんの反応です。彼女は「私も福島の『中の人』になっちゃいました。」と、何とも言えない複雑な表情で友人に報告してきた、とのことでした。「中の人」というのは元々ネットスラングで、アニメの配信やアプリの運営・開発を行う人など、サービスにおいて黒子的な役割を務める人を指します。つまり単なる身内ではなくその場に責任も持つ、というニュアンスが含まれているのです。もちろん推測でしかありませんが、この学生さんにとって、遠い場所から訪れる福島は、空気を読むプレッシャーから解放される心地良い距離だったのではないでしょうか。それがいつの間にか「自分事」になっていた。その事実を自覚し、うれしい反面、その責任に戸惑ったのではないかと思います。 距離が生む当事者意識これは決して悪いことではないと思います。なぜなら、学生さんはそれでもこの「自分事」からいつでも逃げることができるからです。近年ますます聞かれるようになった「コミュニティづくり」という言葉は、高齢化・過疎化が進む中、徐々に重く、切迫感のあるものになっていると感じます。人間関係・信頼関係を高めなければ、と言われる度に、すこし後ずさりしたくなる気分になることもあります。コミュニティを自分事として考えるためには、物理的・精神的な距離を取れる少し「無責任な」距離感こそが必要なのではないでしょうか。私自身、コミュニティにコミットする、という重さには抵抗があります。それでもモノを介した薄い縁を繰り返すことで、いつの間にか浜通りが他人事ではなくなっていきました。人のアラは見えないけれども温もりは感じられる程度の距離があって初めて、当事者意識を持つ余裕が生まれる。そんなこともあると思います。大災害の後に社会が分断され、帰還困難が続いた浜通りでは、人を受け入れながらも距離を取ることでむしろ自分たちを「自分事」と思ってもらう、そんな距離の取り方が徐々に発達してきたように感じます。物理的・精神的に遠い方々こそ、改めてその距離の心地よさを経験できるとよいな、と思います。
- 28 Feb 2025
- COLUMN
