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原子力総合防災訓練、2月上旬に女川発電所を対象に実施
2020年度の原子力総合防災訓練が、東北電力女川原子力発電所を対象として、2月上旬に実施されることとなった。内閣府(原子力防災)が12月2日の原子力規制委員会定例会合で説明したもの。原子力災害対策特別措置法に基づき国が実施するもので、同法施行後、女川原子力発電所が対象となるのは初めてのこと。同発電所では、2号機が新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可に至っており、11月18日に立地自治体の事前了解を得たところだ。前回訓練も新規制基準下では再稼働していない中国電力島根原子力発電所が対象となり、政府機関、自治体、地域公共機関など、約200機関、住民を含め約8,000人が参加し行われた。今回の訓練は、「宮城県沖を震源とした地震、津波が発生。これにより、運転中の女川2号機が手動にて緊急停止。さらに、設備の故障が重なり、残留熱除去機能、原子炉注水機能が喪失する事象が発生し、施設敷地緊急事態、全面緊急事態に至る」ことを想定。自然災害と原子力災害の複合災害を想定し、(1)迅速な初動体制の確立、(2)中央と現地の連携による防護措置実施に係る意思決定、(3)住民避難・屋内退避――などの訓練を実施する。女川原子力発電所の原子力防災に関しては、6月に「女川地域の緊急時対応」が取りまとめられており、移動に海路を要する地理的特性から、牡鹿半島(先端部)および周辺離島については、PAZ(発電所から半径概ね5km圏内)に準じた「準PAZ」として設定し、放射性物質が放出される前の段階から、住民避難などの予防的防護措置を実施することとされた。また、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえ、避難所・車両、屋内退避における感染拡大防止策についても具体化されており、今回の訓練では、これらについても実効性を検証する。
- 02 Dec 2020
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原産協会が「原子力発電に係る産業動向調査」報告書まとめる、コロナの影響も
原産協会は11月20日のプレスブリーフィングで、2019年度の「原子力発電に係る産業動向調査」報告書の概要を説明した。調査対象は、会員企業を含む原子力発電に係る産業の支出や売上、従事者を有する営利目的の企業で、248社(電気事業者11社、鉱工業他226社、商社11社)より有効回答を得た。それによると、2019年度の電気事業者の原子力関係支出高は、「機器・設備投資費」の大幅な減少により、前年度比5%減の2兆155億円。一方、鉱工業他の原子力関係売上高は、同6%増の1兆7,017億円、原子力関係受注残高は同7%増の2兆1,724億円となった。電気事業者と鉱工業他を合わせた原子力関係従事者数は、前年度とほぼ横ばいの4万8,728人だった。原子力発電に係る産業の景況感に関しては、現在(調査を実施した2020年度)を「悪い」とする回答が78%で前回調査から2ポイント減少したものの、1年後(2021年度)は「悪くなる」との回答が27%と3ポイント増加しており、福島第一原子力発電所事故以降、景況感の回復は厳しい状況。原子力発電所の運転停止に伴う影響としては、「技術力の維持・継承」(59%)、「売上の減少」(58%)が依然と上位にあがっている。「技術力の維持・継承」に係る影響の具体例としては、「OJT機会の減少」が最も多く、この他、雇用の確保や企業の撤退に伴う技術・ノウハウの散逸などがあげられた。また、他社の撤退による影響を受けている、または受ける恐れのある主な分野としては、「技術者・作業者」(38%)、「素材・鋼材」(23%)が多かった。一方で、原子力発電所の追加安全対策が受注の増加や、技術力向上につながっているとする企業もあった。原子力発電に係る産業を維持するための課題としては、「政府による一貫した原子力政策の推進」(73%)、「原子力発電所の早期再稼働と安定的な運転」(61%)、「原子力に対する国民の信頼回復」(58%)が引き続き上位にあがっている。今回の調査では、新型コロナウイルス感染拡大による影響についても尋ねており、50%が「既に影響が出ている」と、39%が「今後影響が出る可能性がある」と回答。具体的な影響としては、「受注の減少(業績の下振れ)」が最も多く62%で、「現場での業務に支障」の55%がこれに次いだ(=図)。
- 24 Nov 2020
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原子力機構報告会でトークセッション、コロナを踏まえた今後の期待など
日本原子力研究開発機構は11月17日、研究成果を発表する報告会をオンラインにて開催した。今回の報告会は、「Shaping Innovation ~新たな変革に向けて」と題し、研究成果発表とともに、伊藤聡氏(計算科学技術振興財団チーフコーディネータ)、柿沼志津子氏(量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所副所長)、崎田裕子氏(ジャーナリスト)、高嶋哲夫氏(作家)の登壇によるトークセッションを設定。新型コロナウイルス感染症の拡大、菅首相による2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)実現の表明など、昨今の情勢を背景とした原子力機構への今後の期待に関してディスカッションが行われた。崎田氏市民との対話活動に取り組む崎田氏は、「放射能と新型コロナウイルスは、両方とも目に見えないという共通点がある。社会はゼロリスクを求めようとするが、どのようにリスクと一緒に暮らしていくか」と、将来に向けた課題を提起。その上で、原子力機構の取組に対し、「地球規模で考えると大変重要な分野。自分の研究が社会でどう活かされているのか、イメージを持ちながら思いを語れることが重要」と述べ、社会とのコミュニケーションを軸足とした研究開発が進められることを期待した。柿沼氏新たな研究領域「量子生命科学」に挑んでいるという柿沼氏は、重粒子線がん治療の普及に向け、レーザー、加速器など、装置の小型化を図るための要素技術開発の取組を紹介。量研機構では、放射線分野の他、核融合エネルギーの研究開発も行われており、同氏は、今後も原子力機構と相互に協力していきたいと述べた。伊藤氏また、民間企業の経験から、「ピンチをチャンスに」と強調する伊藤氏は、感染症情勢により増えつつあるイベントのオンライン開催やバーチャルツアーに関し、「情報は伝わっても色々なものが落ちている。香りをどう伝えるのか。これではイノベーションとはいえない」と指摘した上で、研究機関が「総合力」を発揮しイノベーション創出に結び付くよう強く期待した。高嶋氏「首都感染」(強力なインフルエンザのまん延により東京が封鎖される危機を描いたフィクション、2010年)を著した高嶋氏は、ペスト、コレラ、スペイン風邪などにより数千万単位の死者が発生してきた感染症に関わる人類の歴史に言及。阪神淡路大震災を実体験したと話す同氏は、自然災害への対応も振り返りながら、「日本は過去の経験から学ぶことが欠けている。感染症もまた何年か後に新たに起きるだろう。新型コロナウイルス拡大を貴重な経験として活かして欲しい」と述べた。また、学生時代に核融合に魅せられ、かつて日本原子力研究所(原子力機構の前身)で研究に関わった経験にも触れ、「2050年カーボンニュートラルに向けて、世界のどこにもない考え方を示し、若い人たちが夢のあるテーマを見つけるようになれば」と、原子力機構の今後に期待を寄せた。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
- 20 Nov 2020
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内閣府、感染症流行下での原子力災害防護措置でガイドラインまとめる
内閣府(原子力防災)は11月2日、新型コロナウイルス拡大の現状を踏まえ、感染症流行下での原子力災害時における防護措置の実施ガイドラインをまとめ、関係道府県への周知を行った。6月にまとめた基本的考え方の中で、避難所・避難車両における感染者の分離、ソーシャルディスタンスの確保、マスクの着用、手洗いなどの感染対策の実施とともに、原子力災害の特性を踏まえ、自宅での屋内退避については、「放射性物質を避けることを優先し、屋内退避の指示が出されている間は原則換気を行わない」とされた。これを受け、感染症の専門家や関係省庁の助言を得てこのほど取りまとめられたガイドラインでは、避難時の一時集合場所、避難車両、安定ヨウ素剤の配布場所、避難退域時検査・簡易除染場所、屋内退避時・避難場所(UPZ内:緊急防護措置を準備する区域、発電所から概ね5~30km圏内)のそれぞれについて対応方法を具体的に整理。換気に関しては、「原則行わない」ことに加え、人が集まる場所・車両での「3つの密(密閉・密集・密接)を避ける」考えから、自宅や親戚宅での屋内退避以外については、「30分に1回程度、数分間窓を全開にする等の換気に努める」こととした。今回のガイドラインでは、避難用バスの座席レイアウトも例示。運転席後方の座席を空け、濃厚接触者や発熱・咳のある者を乗車させる場合はビニールシートで区切ることとしている。10月31日に実施された北海道電力泊発電所を対象とした道主催の原子力防災訓練でも、感染症対策を講じた避難所運営やバス避難が盛り込まれるなど、昨今の情勢を踏まえた自治体の危機管理意識も高まっている。
- 05 Nov 2020
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合同就職説明会「原子力産業セミナー2022」開催
原子力関係企業・機関の合同就職説明会「原子力産業セミナー2022」(東京会場)が10月31日、新宿エルタワーのサンスカイルームで開催された。大学、大学院、高専を2022年に卒業予定の学生や既卒者などを対象とした就職活動支援、ならびに原子力産業界への理解向上を目的として、原産協会と関西原子力懇談会の主催により毎年度行われているもの。既に10日には大阪でも開催されており、今回セミナーの企業・機関の参加は、両会場とも、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、ブースで担当者が学生たちに直接説明する形式の他、Web会議システムでの質疑応答スペースも設けられた。参加企業・機関数は、大阪会場が26社、東京会場が34社で、両会場の合計(延べ)は前回(2020年2月)の81社より減少。一方で、来場学生数は、大阪会場が193名、東京会場が246名、計439名と、前回の255名を上回った。学生が業界研究を始めるタイミングに合わせ、今回は開催時期を前倒し。感染症対策のためオンラインセミナーも増えつつある状況下、「学生たちが企業担当者と対面できる貴重な機会ととらえている」ことが学生数増加の一因と推察されている。今回、東京会場で取材に応じてもらえた幾つかのブースで採用担当者より話を聞いた。原子力発電環境整備機構(NUMO)では、高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けて、10月には北海道寿都町・神恵内村で文献調査応募に係る判断がなされるなど、注目すべき動きがあるが、担当者によると、「他の企業ブースでNUMOという組織名を聞いた」という学生は多いものの、地層処分に関しては「ほとんど認知されていない」という状況。一方で文科系学生も多く訪れていることに期待感を示し、「若い人たちに頑張ってもらわないと成功しない」と、幅広い分野の人材を確保していく必要性を語った。原子力規制庁では、「技術を活かせる」特徴を掲げ、通常の業務を一定期間離れて教育・訓練に専念させる資格付与制度の独自性など、入庁後にスキルアップしていく人材育成の姿勢を強調。訪れる学生には福島県の出身者も多いことから、「『原子力の安全性は重要』という気概を感じる」と話した。また、東海村の原子力関連企業団体「原子力人材育成・確保協議会」のブースでは加盟する5社が参加。2016年に設立された同協議会では、学生・教員・保護者対象の企業説明会、インターンシップ、出前授業などを通じた人材育成・確保活動を地道に行っており、今回のセミナー参加に際し「まず認知度を上げそれが採用につながれば」と期待を寄せていた。
- 02 Nov 2020
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エネ庁が冬の電力需給見通しまとめる
資源エネルギー庁は10月30日、冬(12~3月)の電力需給見通しをまとめた。全国各地域とも、安定供給に最低限必要とされる予備率3%を確保できる見通し。電力需要の増加が見込まれる夏季・冬季の数値目標を設定した節電要請は、2013年度冬季に北海道を対象とした「2010年度比でマイナス6%以上の節電」が最後となっており、今冬も引き続き行われないこととなる。全国の電力需給に関するデータを取りまとめている電力広域的運営推進機関(OCCTO)の報告書によると、1月の電力供給力で、原子力は、関西地域154万kW、九州地域279万kWの計433万kWが見込まれている。関西電力で再稼働している原子力発電プラント4基のうち、高浜4号機(87万kW)は10月7日から定期検査が行われており、2021年1月下旬に発電再開予定。現在稼働中の大飯4号機(118万kW)は11月3日より約3か月の予定で定期検査に入る。一方、高浜3号機(87万kW)は、定期検査中に確認された蒸気発生器伝熱管損傷への対応が続いているほか、8月3日に新規制基準で求められるテロ対策の「特定重大事故等対処施設」の設置期限を満了。同機の定期検査は2021年1月中旬までの予定となっている。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い当初予定より2月ほど遅れて7月20日に定期検査入りした大飯3号機(118万kW)は、超音波探傷試験で確認された配管損傷への対応のため発電再開の時期は未定。九州電力では、現在、川内1、2号機(各89万kW)の定期検査で「特定重大事故等対処施設」の設置工事が進められており、それぞれ11月26日、12月26日に発電再開予定となっている。9月18日より定期検査中の玄海3号機(118万kW)は12月中にも営業運転に復帰する見通し。なお、OCCTOは、今回の電力需給検証に関し、新型コロナウイルスに伴う影響評価を行っている。それによると、感染症がなかったと仮定した電力量と比較(簡易試算結果)し、4月はマイナス0.8%、5月はマイナス6.7%、6月はマイナス5.1%、7月はマイナス3.1%と、5月の落ち込みをピークに回復の兆しが示された。4~7月の内訳(家庭、業務、産業)で、業務部門が最大マイナス14.7%と大幅な減少となっているのに対し、家庭部門は最大6.9%増加しており、飲食業・宿泊業や娯楽サービスなどの営業縮小や、テレワークや学校休業による在宅増加が影響したものと分析している。
- 30 Oct 2020
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旭硝子財団が環境危機意識調査、ほぼ半数が「気候変動」に不安
旭硝子財団は9月8日、8月にインターネットを通じて実施した日本人の環境危機意識調査の結果を発表した。全国各地の男女1,092名(18~24歳:519名、25~69歳:573名)が回答。それによると、「日本国内の環境問題において、危機的な状態にあると考える」項目として最も多かったのは、「気候変動」(46.6%)で、続く「環境汚染」(13.6%)、「社会、経済と環境、政策、施策」(11.9%)を大きくしのいでいた(図上、旭硝子財団ホームページより引用)。「気候変動」をあげた理由としては、「ここ数年の豪雨災害」、「35度C以上の異常な気温上昇」、「温暖化が年々進行している」など、気候の変化を肌で感じている回答が多く見られた。7月からのレジ袋有料化後の環境問題に関わる意識や行動については、「マイバッグを持ち歩くようになった」とする人が60.7%に達するなど、全体の74.3%が「変化があった」と回答。新型コロナウイルス感染症流行以降の環境問題に関わる意識や行動については、「変化があった」との回答が62.0%で、そのうち、「食品ロスが出ないように気を付けるようになった」(14.3%)や「省エネに気を付けるようになった」(13.5%)など、前向きな変化が全体の43.0%に上っていた。一方、「家庭ごみの量が増えた」(22.2%)、「使用する電力量が増えた」(22.1%)も多く、自宅で過ごす時間が増えた影響によるものと分析している。また、環境危機意識を時刻(0:01~12:00の範囲で針が進むほど深刻)に例えた「環境危機時計」上、現在は、回答者全体で「6時40分」、18~24歳で「6時20分」、25~69歳で「7時00分」にあるとしており、年長者の方がより不安を感じていることが示された。旭硝子財団は、これと合わせて、毎年国内外の有識者を対象に実施している「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の2020年調査結果を発表(送付数:27,925件、回収率6.5%)。世界の「環境危機時計」の時刻は「9時47分」を指し、1992年の調査開始以来、最も高いレベル「極めて不安」の危機意識が持続している(図下、旭硝子財団ホームページより引用)。同調査では、前年に続き、パリ協定採択以降の環境問題への取組に関し、「脱炭素社会への転換の進み具合」について、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、「社会基盤(資金、人材、技術、設備)」の要素から定量的評価を実施。前回の調査と比べすべての要素でプラス側にシフトしており、地域によって差が見られるものの、全体として、「政策・法制度」や「社会基盤」の面は、「一般の人々の意識」ほどは進んでいないという結果だった。
- 09 Sep 2020
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原産協会、海外団体と共同でビデオメッセージ
日本原子力産業協会はこのほど、米国、欧州、英国、カナダの原子力産業団体と共同で、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックからの復興と気候変動・環境対策に関するオンライン・プラットフォーム「Platform for Redesign 2020」にビデオメッセージを提出した。〈原産協会プレスリリースは こちら〉「Platform for Redesign 2020」は、小泉進次郎環境大臣が全体議長を務めるオンラインの閣僚級会合(9月3日開催)に合わせて立ち上げられた「新型コロナウイルスからの復興×気候変動・環境対策」に関する各国の取組状況などを共有する情報プラットフォームで、各国の大臣、国際機関、地方自治体、産業界、市民などからのビデオメッセージの提出を呼びかけている。提出されたビデオメッセージは順次「Platform for Redesign 2020」のサイトに掲載されている。ビデオメッセージに登場するのは、原産協会(JAIF)の新井史朗理事長、米国原子力エネルギー協会(NEI)のマリア・コースニック理事長、欧州原子力産業協会(FORATOM)のイヴ・デバゼイユ事務局長、英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックス理事長、カナダ原子力協会(CNA)のジョン・ゴーマン理事長。COVID-19パンデミックと気候変動という2つの直面する危機に対応するには、持続可能で強靭な社会経済システムの構築が必要であり、それに大きく貢献する原子力の価値について、安定供給、脱炭素、エネルギー安全保障、経済復興などの観点から訴えかけている。今回のオンライン閣僚級会合の立ち上げに際し、小泉環境大臣は、(1)各国の「コロナ復興×気候変動・環境」の知見共有、(2)コロナ禍によりCOP26が延期される中においても気候変動対策を後退させずむしろ世界の気運を高めていく――との目的を示した上で、1997年のCOP3以来の気候変動閣僚級会議における議長国として、「わが国が国際社会にイニシアティブを発揮してきたい」と意気込みを述べている。会合の成果は「Platform for Redesign 2020」にも掲載される。
- 03 Sep 2020
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環境省・経産省、今後の気候変動対策に向け議論開始
地球温暖化対策計画の見直しを含めた今後の気候変動対策について検討する環境省と経済産業省の合同会合が9月1日に行われた。それぞれ、中央環境審議会、産業構造審議会のもとに、有識者らによる新たなメンバーが構成され、「環境と成長の好循環」を回す両輪としてキックオフ会合に臨んだ。〈配布資料は こちら〉日本は2015年7月に「2030年度に2013年度比26.0%減の水準にする」との温室効果ガス排出削減目標を国連に提出し、同12月のCOP21で国際的枠組み「パリ協定」が採択された。これを踏まえ2016年5月に地球温暖化対策計画が閣議決定されている。2020年3月には「日本のNDC(国が決定する貢献)」を国連に提出しており、ここで示された「エネルギーミックスの改定と整合的に、さらなる野心的努力を反映した意欲的な数値を目指す」とする今後の削減目標の検討に向けた方向性や、昨今の新型コロナウイルス感染症が及ぼす経済社会活動への影響もとらえながら、日本における気候変動対策について議論することとなった。経産省の総合資源エネルギー調査会では、7月にエネルギー基本計画の見直しに着手したところだ。合同会合の開始に先立ち挨拶に立った小泉進次郎環境大臣は、(1)NDCに留まらないさらなる温室効果ガスの削減努力、(2)新型コロナウイルス感染症がどのように気候変動に作用するか――を論点に掲げ、特に、コロナ禍による社会構造の変化を認識する必要性を「リデザイン(Redesign)」と強調。委員らに対し、「脱炭素社会、循環経済、分散型社会に移行する必要がある。経済社会の将来像をしっかりと見据え、今までの前提条件にこだわらず議論して欲しい」と訴えかけた。また、松本洋平経済産業副大臣は、「地球温暖化対策は、『制約』ではなく『機会』ととらえることが重要」と強調した上で、経済活動を犠牲にすることなくCO2排出削減を実現すべく、イノベーション、ファイナンス、ビジネス主導の国際展開の3本柱で取り組んでいく考えを述べた。委員からの意見表明で、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会委員を務める伊藤聡子氏(フリーキャスター)は、中小企業向けのセミナーに関わった経験から、エネルギーのコストが企業経営に与える影響を懸念し、「やはり安定的に供給できる原子力は欠かせない」とした上で、国民理解の促進なども含め、より現実的な施策を考えていく必要性を強調。環境省で脱炭素化に向けた石炭火力輸出支援に関する有識者検討会をリードした髙村ゆかり氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授)は、「昨今環境戦略を取り入れる企業が増えてきた」と、2015年の現行エネルギーミックス策定時以降の企業経営スタンスの変化を述べ、民間投資の有効性などを指摘。様々な被災地を取材してきたという山口豊氏(テレビ朝日アナウンサー)は、昨今の豪雨災害の甚大化などに触れた上で、「地産地消と分散型社会」の構築を主張。災害に強い再生可能エネルギーのポテンシャルに関し、「工場の屋根の上など、地方には利用できる資源がまだたくさん眠っている」と述べ、長期的視点から主力電源として活用を検討していく必要性を述べた。また、山下ゆかり氏(日本エネルギー経済研究所常務理事)は、「これまでの延長線上に答えはないことを肝に銘ずるべき」とした上で、中小企業がリードする仕組み、分野・部門を越えた新たなエネルギー供給システム、消費者自らによる行動とリテラシーの向上、成果の正しい評価と可視化などを議論のキーワードとして提示。この他、社会イノベーション、デジタル化、海外への技術的貢献、産業界と金融機関との対話、統計・観測データの整理に関する意見があった。
- 02 Sep 2020
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規制委、新検査制度運用開始で現地事務所長から意見聴取
原子力規制委員会は8月19日の定例会合で、2020年度より運用を開始した新たな検査制度の第1四半期(4~6月)実施状況について、原子力規制庁から報告を受けた。新検査制度は、2016年に受け入れたIAEA総合規制評価サービス(IRRS)による「さらなる実効性を確保すべき」などとする指摘から、事業者の活動全般を、いつでも、どこでも、広く確認・評価し(フリーアクセス)、その結果に応じた措置を講じていくよう従前制度への見直しが図られている。今回の報告によると、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により、本庁の検査官が中心となる「チーム検査」は当初予定されていた18件中、実施は4件に留まった。 複雑な事象への対応は「事業者への刺激」となると強調する山賀氏(インターネット中継)また、事業者の日常的な安全活動を継続的に監視する「日常検査」に関しては、現地原子力規制事務所の所長として、柏崎刈羽の水野大氏(当時)、美浜の山賀悟氏、六ヶ所の服部弘美氏(当時)の3名が所感を述べた。その中で、水野氏は、「検査官の専門知識を活かし、原子力安全を包括した検査ができた」と、一定の評価を示す一方、検査対象の見極めに関し「空振り」よりも「見逃し」の心配をあげ、今後も事例の積み重ねや検査官の知識レベル向上などに努めていく必要性を強調。また、事業者の対応について、「フリーアクセスの実施にも非常に協力的だった」と、新検査制度への理解や考え方の変化を認めた上で、「納得いくものとなるには、まだまだ時間がかかる」などと、規制側・被規制側ともにさらなる継続的改善が図られるべきとした。山賀氏は、美浜3号機の海水ポンプ停止事象に関し事業者自らによる原因分析を深めさせたことに触れ、「スキルアップにつながった」との感触を受けたと評価。服部氏は、所管する核燃料サイクル施設の発電炉との違いに触れ、今後の効率的な検査の維持に向けて「検査官の育成・確保が重要な課題」と指摘した。
- 19 Aug 2020
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原産協会が総会開催、今井会長「温室効果ガスを排出しない原子力発電」の必要性を強調
原産協会は8月3日、2020年度の定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2019年度の決算案および任期満了に伴う役員選任の承認とともに、2020年度の事業計画・予算の報告がなされた。開会に先立ち挨拶に立った今井敬会長はまず、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い深刻さを増した日本の医療や工業の現場における供給不足の現状に触れた上で、「社会を支える重要なインフラの一つである電力供給も同様のリスクを抱えている」として、エネルギー自給率の改善が喫緊の課題となっていることを強調。また、地球温暖化問題への対応も含め、「温室効果ガスを排出せず安定した電力供給が可能な原子力発電の最大限の活用が必要不可欠」として、可能な限り早期に再稼働が進展する必要性を述べた。その上で、政府において今後検討が行われる次期エネルギー基本計画については、「将来にわたる原子力の活用が明確に示されるもの」と期待。さらに、原子力産業界による安全性向上の取組に成果を認める一方、「『もう十分』というゴールはない」と、継続的な改善の重要性を強調し、これにより再稼働、運転期間延長、設備利用率の向上など、既存炉の活用が実現するとした。新たな技術開発による新増設・リプレースや、先般原子力規制委員会より新規制基準に係る変更許可が発出された六ヶ所再処理工場についても核燃料サイクルの完結に向け着実な進展を期待。原子力技術の有望性に関し、今井会長は、「何世代にもわたって人類の動力源となるほか、医療、工業、農業などでも大きな恩恵をもたらす」と強調し、産官学連携を通じた人材育成ネットワークの取組を通じて優秀な若者たちを惹きつける魅力的なイノベーション創出を図っていく必要性を述べた。総会では11名の理事の交替が承認。その中で、副会長には、車谷暢昭氏(東芝取締役代表執行役社長CEO)に替わり、宮永俊一氏(三菱重工業取締役会長)が、理事長には、高橋明男氏に替わり、新井史朗氏(東京電力ホールディングス理事/原子力・立地本部副本部長が就任することとなった。退任する副会長の車谷氏は在任中の2年間における福島第一原子力発電所廃炉に向けた技術開発の取組を振り返り、新任の宮永氏はBWRも含めた再稼働や核燃料サイクルが進展していく必要性を述べるなど、それぞれ今後の原子力産業発展への期待を語った。また、退任する理事長の高橋氏は、5年前の就任当時にまだ再稼働した原子力発電プラントがゼロだったことを振り返った上で、引き続き原子力産業界が抱える課題の解決に向け連携がさらに深まるよう期待。新任の新井氏は、東京電力東通原子力建設所に従事した経験を活かし「力を尽くしていきたい」と抱負を述べた。
- 04 Aug 2020
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エネ庁、福島第一原子力発電所処理水の取扱いで県議会議長他より意見聴取
資源エネルギー庁は7月17日、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する「関係者のご意見を伺う場」を福島市内で開催した。2月に取りまとめられた委員会報告を受け、政府としての取扱い方針決定に資するため4月以降行われているもので、5回目となる。今回は、福島県議会、福島県青果市場連合会、福島県水産市場連合会他より意見を聴取。福島県議会の太田光秋議長は、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う外食産業の営業自粛やイベントの中止により生じた農林水産業・観光業への影響を、被災地として「より深刻なもの」と憂慮。処理水の取扱いに関し、県内市町村議会による海洋放出に反対する決議などを踏まえ、「国民の理解は十分に得られていない」として、(1)風評対策の拡充・強化、(2)幅広い関係者からの意見聴取と様々な観点からの検討、(3)取扱い方針を決定するまでのプロセス公開と丁寧な説明――を要望した。また、福島県青果市場連合会の佐藤洋一会長、福島県水産市場連合会の石本朗会長は、生産・出荷者と小売業の中間に位置する立場から、それぞれ「山菜・きのこ類(野生)が痛手を負っている」、「試験操業から脱せず苦しい思い」と、農産物の出荷制限や水揚量回復の遅れなど、実質的被害が継続している現状を訴えた。県漁業協同組合連合会との協調姿勢から、石本氏は「早急な海の回復が望まれる」と強調した上で、処理水の取扱い決定に際しては慎重を期するよう切望。川俣町在住の菅野氏、トリチウム分離技術の確立や全国レベルでの風評対策を強調(インターネット中継)この他、「福島原子力発電所の廃炉に関する安全確保県民会議」から4名が意見を述べた。その中で、川俣町在住の菅野良弘氏は、福島第一原子力発電所の汚染水を浄化する多核種除去設備(ALPS)では取り除けないトリチウムを巡る課題に関し、「分離技術が確立するまで保管の継続を」と述べ、委員会報告で処理水取扱いの現実的な方法の一つにあげられている海洋放出には反対する考えを表明。また、同氏は、風評被害対策に関し「今海洋放出を行ったらこれまでの努力が水泡に帰す。これは、福島県民皆が持っている不安」とした上で、長期的観点からわが国全体の問題として考える必要性を訴えた。資源エネルギー庁は、福島第一原子力発電所で発生する処理水の取扱いに関する意見募集を、7月31日にまで延長し実施している。
- 20 Jul 2020
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エネ調基本政策分科会、コロナショック踏まえ次期エネ基に向けて議論
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が7月1日に開かれ、新型コロナウイルス感染症拡大を起因とする国内外の情勢変化を踏まえ、次期エネルギー基本計画の検討に向けて意見交換を行った。現行のエネルギー基本計画は2018年に策定されており、間もなくエネルギー政策基本法に基づく「少なくとも3年ごと」の見直し時期を迎える。同分科会の開催はおよそ10か月ぶりで、冒頭、昨今の新型コロナウイルス感染症を起因とする情勢変化と、それを踏まえた課題と方向性について資源エネルギー庁が整理。IMFやIEAによる試算を示し、過去の第一次オイルショック(1973年)、第二次オイルショック(1979年)、リーマンショック(2008年)と異なり、物理的な行動が制限される「コロナショック」により、「2020年は世界的にGDPもエネルギー需要も大きく低下」などと見通した。また、国内においては、例えば電力需給で、4、5月は前年同月と比較し消費量がそれぞれ約3.6%(速報値)、9.2%(同)減少するなど、影響はあったものの、中央給電指令所や発電所での担当班が相互接触しないローテーション業務・バックアップ体制構築により、電力の安定供給に支障は生じていないと説明。その上で、今後の課題として、(1)新たな日常・生活様式・企業活動を踏まえたエネルギー需要高度化・全体最適化に向けた取組の検討、(2)エネルギー転換(電化・水素化など)の支援・推進、(3)資源・燃料の安定的な調達、(4)エネルギー・環境イノベーション投資に向けた環境整備・デジタル化の促進、(5)脱炭素エネルギー供給のさらなる導入、(6)レジリエンスの強化――をあげた。初出席の白石分科会長今回、分科会長として初めて会合に出席した白石氏は、2021年に見込まれるエネルギー基本計画の改定に向けて「大きな視点から方向性を議論して欲しい」と述べ、委員らに意見を求めた。これに対し、化石燃料に関して、豊田正和氏(日本エネルギー経済研究所理事長)は、石炭火力発電でのアンモニア混焼など、脱炭素化に向けた技術導入・国際協力の可能性を披露。原子力立地地域からは、杉本達治氏(福井県知事)が、「総発電電力量に占める比率は現在6%」と、2030年エネルギーミックスの掲げる「20~22%程度」に遠く及ばない状況を指摘し、次期エネルギー基本計画に向けて、MOX燃料の再処理、リプレース、廃炉の進展を踏まえた交付金制度のあり方、電力業界の不祥事なども「真正面から議論していく」必要性を強調。また、市民との対話活動に取り組む崎田裕子氏(ジャーナリスト)は、海洋プラスチック問題やレジ袋有料化など、SDGsを巡る最近の話題に触れたほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による水素社会構築の情報提供事業に対し若年層が高い関心を示していることを述べ、「社会との情報共有の定着化」の重要性を指摘。今回、委員として初出席した隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、官民一体となったイノベーション創出を図るべく「小型モジュール炉(SMR)のような安全性の高い原子力技術についても議論を」と主張した。資源エネルギー庁は「コロナショック」に伴うエネルギー需給への影響の一つとして、人流・物流の変化により「需要が集中型から分散型にシフト」したことをあげた。武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長)は、最近のアンケート調査結果から「コロナ前後で一番の違いは地方中核都市への分散」と、住まい方に変化が生じつつあることを述べた上で、「コロナ以前から日本が抱えていた社会課題への投資、産業育成や雇用創出につなげていくことが重要」として、次期エネルギー基本計画で、生活者の行動変化を見据えながら中長期的方針を示す必要性を強調した。この他、中東の地政学的リスクへの対応、エネルギー教育・技術基盤の強化、原子力規制のあり方などに関する意見があった。
- 02 Jul 2020
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産業構造審が新型コロナ踏まえた今後の政策について議論、エネ計画の着実な実施も
経済産業省の産業構造審議会(会長=中西宏明・日本経済団体連合会会長)総会が6月17日に行われ、新型コロナウイルスの影響を踏まえた今後の経済産業政策のあり方について議論した。「新型コロナウイルス感染症の影響により、世界経済は大恐慌以来の大きな打撃を受けている」との認識のもと、「足下の緊急時対応」、「新たな日常への移行」、「新たな日常への適応」と、時間軸と連続性を意識した政策議論が必要との考えから、同審議会下の各部会長らが参集し意見交換を行ったもの。経産省の説明によると、2020年の世界全体の実質GDP成長率はマイナス5.2%と、リーマンショック時のマイナス0.1%を下回る水準となるものと予測。日本においても、多くの企業で前年同月と比較し売上に落ち込みが生じるなど、産業界や労働市場にもたらされた影響に関するデータを提示した上で、新型コロナウイルスによって「どのようなトレンドが見られ、どういうものが定着するのか」を見極め「新たな日常への移行」を念頭に必要となる政策の方向性を整理した。さらに、日本経済が「新たな日常」を迎えたときに抜本的な取組を強化すべき政策分野として、「医療・健康」、「デジタル」、「グリーン(気候変動への対応・エネルギー安全保障)」と、分野横断的に「レジリエンス」を提示。気候変動・エネルギー問題の関連で、IEAの試算によると、新型コロナウイルスの影響を受けた経済活動の停滞により2020年の世界のCO2排出量は8%減少する見通しだが、パリ協定で掲げる長期目標の達成には、世界全体でこの減少幅が続く必要があると分析。その上で、脱炭素化社会の実現に向けて日本がリーダーシップを発揮すべく、非効率な石炭火力のフェードアウト、さらなる再生可能エネルギーの導入・原子力の活用、需要側の電化、水素やカーボンリサイクルの技術開発などを進めるべきとしている。このほど総合資源エネルギー調査会会長に選ばれた白石隆氏(熊本県立大学理事長)は、「原子力の比率はまったく満たされていない。エネルギー基本計画をきちんと実施する意識が求められている」などと、エネルギー政策に対する意見を述べた。直近の政策課題の一つとして、雇用システム・人材育成のあり方があげられたが、武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長)は、最近の生活者アンケート調査の結果を紹介し、「これまでなかったデジタル化、テレワークの継続」を求める多くの意見があったことを述べた上で、若手の育成や労働需給における分断・格差の問題を指摘。また、高等教育の立場から、益一哉氏(東京工業大学学長)がオンライン講義の有用性、研究開発の強化や公益性を考慮したオープンイノベーションの必要性を、被災地企業の立場から、御手洗瑞子氏(気仙沼ニッティング社長)が「予期せぬことは起きるもの」として、自然災害などのリスクも政策に織り込んでいくことを主張。中小企業政策審議会会長の三村明夫氏(日本商工会議所会頭)は、「大災害を乗り切った日本の強みを明確に示すべき」として、中小企業の活用や地方創生推進の重要性を強調した。
- 18 Jun 2020
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2020年度エネルギー白書が閣議決定
政府は6月5日、2020年度のエネルギー白書を閣議決定した。エネルギー政策基本法に基づき、概ね前年度に講じられたエネルギー需給に関する施策について取りまとめたもの。今回も経済産業省が「一丁目一番地の最重要政策課題」と位置付ける「福島復興の進捗」を筆頭に、「災害・地政学リスクを踏まえたエネルギーシステム強靭化」、「運用開始となるパリ協定への対応」の3件を特集。「福島復興の進捗」では、福島第一原子力発電所の廃炉に係る取組として、リスク低減に向けた1/2号機排気筒解体作業の進捗(2020年5月に上半分約60mの解体が完了)、2020年2月に取りまとめられた処理水の取扱いに関する報告書へのIAEAレビューなど、最近の動きも取り上げている。また、福島復興に関しては、いずれも2020年3月の進展として、帰還困難区域では初めてとなった双葉町・大熊町・富岡町の一部地域の避難指示解除や、「福島ロボットテストフィールド」と「福島水素エネルギー研究フィールド」の開所を紹介。「災害・地政学リスクを踏まえたエネルギーシステム強靭化」では、ホルムズ海峡周辺での日本関係船舶被弾など、中東情勢の緊迫化をもたらす最近の事案や、昨秋の台風15号、19号による大規模停電の発生をとらえ、国際資源戦略やエネルギーレジリエンスの強化を図る重要性を訴えている。また、昨今の新型コロナウイルス感染拡大が及ぼす国際原油価格市場への影響についてコラムで紹介。「運用開始となるパリ協定への対応」では、地球温暖化対策に関する国際的枠組み「パリ協定」が2020年から本格運用されるのを受け、温室効果ガス削減につながる5分野16技術課題の具体的目標を掲げた「革新的環境イノベーション戦略」(2020年1月策定)について取り上げ、「技術開発を進めることで、実効的な温室効果ガス削減に取り組んでいくことが重要」と強調。2050年の確立を目指す「革新的環境イノベーション戦略」の技術課題では、安全性・経済性・機動性に優れた革新的原子力技術や核エネルギー技術を含むエネルギー転換の分野で、約300億トンの温室効果ガス削減が見込まれている。資源エネルギー庁では、今回のエネルギー白書をわかりやすく紹介した「スペシャルコンテンツ」を公開している。
- 05 Jun 2020
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内閣府、感染症流行下での原子力災害避難に関し考え方まとめる
内閣府(原子力防災)は6月2日、昨今の新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、感染症流行下における原子力災害発生時の避難や屋内退避など、防護措置の基本的考え方をまとめた。内閣府(防災)では4月以降、自然災害に伴う避難所の新型コロナウイルス感染症対策について随時情報発信を行っており、原子力災害においても、これを原則適用し感染拡大・予防対策を十分考慮することが第一にあげられている。具体的には、避難する場合、移動中や避難先での感染拡大を防ぐため、避難所・車両における感染者の分離、人と人との距離の確保、マスクの着用、手洗いなどの感染対策を実施すること。また、自宅などでの屋内退避の際は、放射性物質による被ばくを避けることを優先し、屋内退避の指示が出されている間は原則換気を行わないとしている。今回示した基本的考え方について、内閣府(原子力防災)では、各地域の実情を踏まえ、当面の対応、避難計画見直しの参考として欲しいとしている。新型コロナウイルス感染症対策に関し、全国知事会では5月22日に緊急提言を発表し、政府に対し、医療提供・検査体制の充実化や社会経済活動の段階的な引き上げとともに、災害時の避難所体制整備についても所要の予算措置を要望。また、58の学会で構成される防災・減災ネットワーク「防災学術連携体」も同1日、気象災害が多発する時期を前に緊急メッセージを発表し、「感染リスクを考慮した避難が必要」、「熱中症への対策も必要」などと呼びかけている。こうした中、大阪府の吉村洋文知事は6月3日、記者会見を開き、人気アーティストを起用したライブハウス支援策などとともに、新型コロナウイルス感染症対策に応じた「避難所運営マニュアル作成指針」を公表。「3密(密閉・密集・密接)を避ける」、「保健所との連携」、「多様な避難所(学校の教室も含め)の確保」、「避難所における感染防止対策」がポイントに据えられており、今後これを踏まえ職員研修や市町村における運営訓練を行うとしている。
- 03 Jun 2020
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東京電力、「家族で食べよう!福島牛キャンペーン」開始
東京電力は5月28日より、「家族で食べよう!福島牛キャンペーン」を実施している。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外食自粛により、自宅で食事をする機会やインターネット通販での食材購入も増えているようだ。こうした状況をとらえ、同社では福島県産品の美味しさや魅力をさらにPRすべく、特に、家族で食卓を囲むすき焼きにも適した福島牛をメインに、県内約200の生産者らによる県産品の通販サイト「ふくしま市場」での販売促進イベントなどを行い、復興支援につなげる。同キャンペーンでは、特設サイトを開設し、福島牛を始めとする福島県産の農水産物を抽選で2,000名にプレゼントするほか、先着5,000名に割引価格で販売。プレゼントへの応募は6月末までとなっている。特設サイトでは、「ふくしま市場」に出品している食肉加工・惣菜製造業いとうフーズ(郡山市)の伊藤武・代表取締役によるビデオメッセージを紹介。同氏は、「震災から9年が経ち売上げがようやく落ち着いてきたかな、と思った矢先に」と、昨秋の台風19号襲来による工場冠水、倉庫内の食肉被害を振り返る。加えて、最近の新型コロナウイルス感染拡大に伴い売上げが大幅減となる中、年明けに復旧した工場内の映像とともに、福島牛の美味しさを「風味豊かでまろやかな味が特徴」とアピールし、同キャンペーンの開始に際し「全国の皆様に福島牛のPRができる」と抱負を語っている。
- 28 May 2020
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エネ庁が夏の電力需給見通し発表、供給予備率は確保されるもコロナ影響を注視
資源エネルギー庁は5月27日、今夏の電力需給見通しを発表した。全国の各エリアともに、安定供給に最低限必要とされる供給予備率3%が確保できる見通し。国内の電力会社が加入する電力広域的運営推進機関(OCCTO)が取りまとめたデータに基づき、総合資源エネルギー調査会で25日に書面審議が行われたもの。それによると、電力需要がピークを迎える8月の供給力想定で、原子力発電については534万kWが見込まれている。現在、関西電力の高浜4号機(PWR、87万kW)、同大飯3、4号機(PWR、各118万kW)、九州電力の玄海3、4号機(PWR、各118万kW)が稼働中で、これらが織り込まれた格好だ。大飯3号機では、新型コロナウイルス感染防止対策のため、当初5月8日~7月15日を予定していた定期検査が2、3か月延期されることとなったが、同機が供給力から外れる場合でも、中西日本エリアの供給予備率は3%を確保できる見込み。また、火力発電では、運転開始から47年となる東北電力の東新潟港1号機(LNG、34万kW)が昨冬に続き供給力として見込まれている。今夏の電力需給見通しと合わせて発表された昨冬の電力需給結果分析によると、運転開始から40年を経過した火力発電の1、2月の発電電力量は122億kWh(原子力産業新聞の調べで、同期間の原子力発電による発電電力量は104億kWh)。全国的な暖冬の影響もあるが2月以降は、前年同月との比較で、電力需要は落ち込みを見せている。新型コロナウイルス感染拡大防止措置に伴う需要減も考えられ、電力広域的運営推進機関は「わが国の経済活動等に大きな影響を与えている」と懸念。資源エネルギー庁でも、今夏の電力需給見通し取りまとめに際し、「引き続き需給状況を注視していく」と、必要に応じた対応を図る考えを示している。
- 27 May 2020
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川内2号機が定期検査入り 「特定重大事故等対処施設」設置期限満了を迎え
九州電力は5月20日、川内原子力発電所2号機(PWR、89万kW)の定期検査を開始。3月に定期検査入りした1号機(同)と同様に、新規制基準で求められるテロに備えた「特定重大事故等対処施設」の設置期限(プラント本体の工事計画認可から5年)満了を迎えることから、前倒しでの定期検査入りとなったもの。川内1、2号機は、先陣を切って新規制基準をクリアし、それぞれ2015年8月、10月に発電を再開した。川内2号機の定期検査は、約9か月間の予定で、「特定重大事故等対処施設」の設置工事とともに、燃料の取替えや、同じく新規制基準で必要となる常設直流電源設備(3系統目)の設置工事などが行われる。同社の池辺和弘社長は4月30日に2019年度決算報告の記者会見を行い、その中で、新型コロナウイルス感染症の拡大が電気事業に及ぼす影響を懸念し、2020年度業績予想に関しては「リーマンショックのときと異なりデパートも休業」などと、経済活動全体の先行きが見通せない現状を繰り返し強調。その上で、川内1、2号機の停止に伴う代替燃料などによる費用増を概ね250億円程度と見込んだ。電力広域的運営推進機関が5月15日に取りまとめ発表した電力需給検証報告書によると、九州エリアの7、8月の供給予備率は約8%となっており、盛夏の電力需要に必要な供給力は確保できる見通し。「特定重大事故等対処施設」に関しては、今後、関西電力高浜3、4号機も10月までに設置期限満了に伴い定期検査入りとなる。
- 20 May 2020
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東北大学で次世代放射光施設着工、燃料電池開発や創薬での活用に期待
東北大学の青葉山キャンパス(仙台市)で次世代放射光施設の中核となる「基本建屋」の起工式が4月22日に行われた。地上2階、地下1階、延べ床面積約25,000平方mの「基本建屋」には、2021~23年度に加速器(電子エネルギー3GeV、蓄積リング周長約350m)の据付け・調整が行われ、同施設は2024年度に供用開始となる予定。1997年に供用開始した電子エネルギー8GeVの「SPring8」が主に高エネルギー領域のX線(硬X線、5~20keV)を用い「物質の構造を知る」解析を行うのに対し、この次世代放射光施設は、主に低エネルギー領域のX線(軟X線、~2keV)を用い「物質の機能を知る」解析に強みを持ち、燃料電池開発や創薬などの分野での活用が期待されている。軟X線向けの放射光施設については、スイス、フランス、英国、中国、韓国などに続き、近年、米国、台湾、スウェーデン、ブラジルでも新設が進んでおり、文部科学省の有識者委員会では2018年1月に、「諸外国と互角に競争するための環境が整っていない」、「高い産業利用ニーズが見込まれている」との認識から、早期に整備すべきとする報告書を取りまとめている。これを踏まえ、量子科学技術研究開発機構が「整備運用を進める国の主体」として指名され、2018年に9月には、同機構と、一般財団法人光科学イノベーションセンターを代表機関とする、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済団体連合会による地域・産業界パートナーとが連携協力協定を締結し、施設の建設が具体化に向けて動き始めた。東北大学では、2019年3月に次世代放射光施設の敷地造成が始まったのを受け、10月には「国際放射光イノベーション・スマート研究センター」が発足するなど、同施設を活用した国際研究ネットワークの構築や教育・人材育成に向けた準備が進められている。4月20日には、新型コロナウイルス感染症の制圧に関し、有望な放射光利用関連技術を取りまとめた上で、研究課題の募集を開始するとともに、ウェブ会議により「世界主要放射光施設サミット」を開催することを発表した。
- 24 Apr 2020
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