キーワード:再稼働
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経済同友会・新浪代表幹事 柏崎刈羽を視察
経済同友会の新浪剛史代表幹事らは3月22日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所を訪問し、中央制御室、7号機オペレーティングフロア、防潮堤などの安全設備を視察した。〈東京電力発表資料は こちら〉視察後、新浪代表幹事は、「福島第一原子力発電所で発生した問題を、いかにすべて起こらないようにするかの対応がしっかり打たれている。想定される問題について、あらゆる対応がなされていることに、驚きとともに敬意を表したい」と強調。さらに、現場で働く人の意識に関して、「『ワンチームであろう』という努力も相当なものと感じた。そういった意味で、安全面で大変努力し、非常に高いレベルであると感じた」と述べた。経済同友会は2023年12月、「『活・原子力』-私たちの未来のために、原子力活用のあり方を提起する-」を公表。既存炉の再稼働にとどまらず、「中長期的なリプレース・新増設については、安全性の高い革新炉の導入を前提として、既成概念にとらわれずに、新たな規制の整備や立地の選定を行うことが望ましい」との考え方を示している。同会は東日本大震災後、「縮・原発」を提唱。「活・原発」では、2050年カーボンニュートラル実現やエネルギー安全保障の重要性などから、原子力を「活用していく」表現として、見直したものとなっている。新浪代表幹事は、2024年7月の記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所により首都圏が受ける電力供給の恩恵に言及。経済団体として、「きちんと『ありがたい』と思う首都圏にしていかなくてはならない」と述べている。原子力規制委員会による審査をクリアした柏崎刈羽6・7号機の再稼働に関しては現在、地元判断が焦点となっている。
- 25 Mar 2025
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増井理事長 次期エネ基を高く評価
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は2月28日、記者会見を行い、同18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」に対する考え方について説明した。「第7次エネルギー基本計画」の閣議決定を受け、原産協会は2月21日に、 (1)原子力を最大限活用する (2)既設炉最大限活用する (3)次世代炉の開発・設置に取り組む (4)原子力発電の持続的な活用への環境整備――につき、方針が示されたとして、「高く評価する」との理事長メッセージを発表している。今回のエネルギー基本計画決定に際し、記者より「まず何から始めるのか」と問われたのに対し、増井理事長は、産業界として、原子力人材やサプライチェーン維持・強化を見据えた新規建設プロジェクトの必要性に言及。今回エネルギー基本計画を裏付ける電力需給見通しを踏まえ、「2040年までは猶予はあまりない」と述べ、政府による支援についても、早急な支援が図られる必要性を示唆した。また、原子力発電の再稼働をめぐって、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機がBWRとして新たに加わり計14基となった。折しも前日、柏崎刈羽原子力発電所のテロ対策に備えた「特定重大事故等対処施設」の整備延期が発表されたことに関し、増井理事長は、審査期間、地理的要件、設計の問題、工事の量・人手の4点を指摘。原産協会が毎年公表する「産業動向調査」にも触れながら、2040年の電力需給見通しに向け「地元合意を経て再稼働すれば十分達成できる」との見方を示した。
- 04 Mar 2025
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柏崎刈羽6・7号機 特重施設整備時期が変更
東京電力は2月27日、柏崎刈羽原子力発電所6・7号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について、それぞれの工事完了時期を、2026年9月から2031年9月に、2025年3月から2029年8月へと変更する工事工程の見直しを発表した。柏崎刈羽原子力発電所の稲垣武之所長は同日の記者会見で、既に燃料装荷が終了した7号機の特重施設に関し、「これまでに実施したことのない工事であり、かつ非常に大規模な工事であるため、工期について見通すことが難しい状況」と説明。工事物量や人手不足の課題にも言及した上で、「引き続き安全最優先で一つ一つ着実に進めていく」と述べた。新規制基準で要求される特重施設は、「意図的な航空機衝突等による大規模な損壊」で広範囲に設備が使えない事態を想定した原子炉格納容器の破損を防止するバックアップ施設。本体施設の設計・工事計画認可(設工認)から5年間の整備猶予期間が設けられており、6・7号機それぞれ2029年9月、2025年10月が設置期限となっている。特重施設の整備に係る詳細は、セキュリティ上、明らかにされていない。7号機は既に燃料装荷が完了している。稲垣所長は、同機に関し「新規制基準を踏まえた重大事故等対処施設を整え、規制庁の審査に合格していることから、技術的には稼働できる状態」と説明。今後の試運転における機能検査など、安全対策に万全を期すことの重要性を述べた上で、「日本の電力需給は年間を通じて予断を許さない状況が続いており、原子力の稼働が進んでいない東日本エリアは特に夏場の需要期に一層厳しくなる」と、電力安定供給を担う使命を強調。再稼働に関して「地域の皆様の理解があってのことと考えており、引き続き地域の皆様から理解をいただけるよう説明を尽くしていく」と述べた。現在、立地地域の新潟県では、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に向けた知事の判断が焦点となっている。県の技術委員会は福島第一原子力発電所事故の防災対策に係る検証も踏まえ、確認した22項目のうちの大半について「特に問題となる点はない」とする報告書を知事に提出。3月中には県議会による関係行政機関からのヒアリングが見込まれている。
- 28 Feb 2025
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NEAマグウッド事務局長が来日 都市大で講演
OECD/NEA(原子力機関)のマグウッド事務局長がこのほど来日し、東京都市大学で講演した。講演会は同大とNEAが人材交流を目的にMOUを締結したのにあわせて開催された。マグウッド事務局長は、「次代を担う原子力:新たなチャンスと取り組むべき課題」と題し、次世代炉や小型モジュール炉(SMR)導入の展望に加え、原子力利用の加速に向けた資金調達や、規制の在り方、政策支援、市場環境、インフラ整備における課題と対策について、1時間ほど講演した。事務局長は、「2050年のカーボンニュートラル、世界の原子力発電設備容量を現在の3倍にするために、既存炉の長期運転、SMRの建設拡大、原子力の非電化用途の拡充など、同時並行で実施する必要がある。そのためには大きく4つの課題(サプライチェーン、法規制、政策と市場、インフラ整備)をクリアしなければならない」と述べた。特に今日の電力市場は、「長期的な環境対策とエネルギー安全保障が十分に考慮されておらず、出力調整可能なエネルギーに大きな価値がある」と指摘した。また、「各国政府がFOAK(初号機)リスクに対処するための政策の立案、新規原子力建設の資金調達を支援するための政府保証が重要であり、世界銀行のような国際金融機関が大きな役割を果たさねばならない」と語った。そして、「NEAでは、学生を対象としたさまざまなワークショップを各国で開催し、関係省庁や機関、そして産業界の専門家と科学技術について議論する機会を提供している。この講演に参加されている東京都市大学の学生の中にも、良いアイデアをお持ちの方がいるかもしれない」と述べ、学生の参画を促した。事務局長は、「長年にわたり原子力の仕事をしてきたが、原子力の評価は時代とともに変化してきた。私がこの世界に踏み入れた頃は、原子力は経済的に成り立たず廃れていく産業だと考える人が多くいたが、のちに原子力ルネサンスと呼ばれる時代が訪れた。しかし、福島第一原子力発電所の事故のような、業界内に大きな影響を与える出来事があり、そこから多くの教訓を学び、今に至っている。近年では多くの国が、原子力をエネルギーミックスの一部として取り入れるようになっており、今こそ原子力が本領を発揮する好機だ」と強く訴えた。
- 26 Feb 2025
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新潟県知事が柏崎刈羽再稼働に言及 エネ庁説明会終了受け
新潟県の花角英世知事は2月12日の定例記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に言及した。県の次年度予算案他について説明した上で、記者団からの質問に応えたもの。資源エネルギー庁では、昨年12月10日の十日町市を皮切りに、柏崎刈羽7号機の審査進捗をとらえ、「THINK!ニッポンのエネルギー」と題し、日本の未来のエネルギーについて考える地元説明会を行った。同機の新規制基準に係る審査は2017年12月に原子炉設置変更許可に至っている。その後に発覚した核物質防護事案に伴う追加検査および東京電力に対する適格性判断の再確認も2023年12月に完了した。2024年に入ってからは、IAEA専門家チームによる視察、東京電力や新潟県による説明会が開催されており、再稼働に向けて、現在、県の判断が焦点となっている。会見の中で、花角知事は、県内28市町村で開催されたエネ庁による説明会が、2月7日の湯沢町で終了し、今後の対応について問われたのに対し、「報告を逐次受けているわけではないが、国が前面に立って地元の理解を得ようとすることの現れ」と、一定の理解を示した。一方で、「時間と場所を限定した説明会はやはり難しい」とも述べ、住民理解を集約していくことの困難さを示唆。再稼働の判断材料ともされる県の技術委員会からは、間もなく最終報告書が提出される見込みだが、「受け取ってからしっかり話を聞く」と、予断を持たない姿勢を示した。知事は、住民避難の課題に関し、先に原子力規制委員会の検討チームで取りまとめられた報告書案にも触れ、「順次、国との協議の中で示されていく」と述べた上で、再稼働の判断について具体的な時期は示さなかった。住民避難に関しては、資源エネルギー庁、内閣府(原子力防災)、国土交通省、新潟県による「原子力災害時の住民避難を円滑にするための避難路の整備促進に向けた協議の枠組み」会合が昨秋より行われている。
- 12 Feb 2025
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国内原子力発電 2024年の設備利用率は30.6%
原子力産業新聞が電力各社から入手したデータによると、2024年(暦年)の国内原子力発電所の平均設備利用率は30.6%、総発電電力量は888億7,031万kWhで、それぞれ対前年比2.6ポイント増、同9.6%増となった。いずれも新規制基準が施行された2015年度以降で最高の水準。2024年は、東日本大震災後、新規制基準をクリアし再稼働したプラントは、これまでPWRのみだったが、BWRとして、東北電力女川原子力発電所2号機(11月発電再開)、中国電力島根原子力発電所2号機(12月発電再開)が加わり、計14基・1,325.3万kWとなった。女川2号機は12月26日に営業運転に復帰しており、島根2号機も1月10日にこれに続く見込み。2024年は、関西電力高浜発電所1号機の50年超運転入りが特筆される。最も高い設備利用率を記録したのは、同3号機で105.8%。年内フル稼働したのは同機1基のみだった。
- 10 Jan 2025
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島根2号機が発電再開 BWRとして2基目
中国電力の島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kW)が12月23日13時、発電を再開した。同社では今後、「安全性を確認しながら原子炉の出力を上昇させ、安定して連続運転できることを確認していく」としている。原子力規制委員会による使用前確認証交付を経た営業運転再開は2025年1月10日の見込み。2012年1月の定期検査入り以来、およそ13年ぶりの戦列復帰となる。〈中国電力発表資料は こちら〉2013年の新規制基準施行以来、原子力発電プラントの発電再開は、これで14基目。BWRについては、11月15日の東北電力女川原子力発電所2号機に続き2基目となる。島根2号機は、2011年3月の東日本大震災後も稼働し続け、2012年1月の定期検査入りに伴い停止。その後、2013年12月に新規制基準に係る審査が申請され、2021年9月に原子炉設置変更許可に至った後、地元の了解を得て、2024年12月7日に原子炉を起動させた。今回の島根2号機の発電再開について、中国電力の中川賢剛社長は、関係者および地元への謝意を表した上で、「中国地域を中心とした電力の安定供給を支えるとともに、カーボンニュートラルの達成や電力料金の安定化に不可欠」と、その意義を強調。さらに、環境負荷の少ない低廉な電気を安定供給していくという電力事業者としての使命をあらためて述べ、緊張感を持って営業運転を再開し、その後の安定運転継続に向け、設備健全性の確認を着実に進めていく姿勢を示した。*理事長メッセージは こちら
- 23 Dec 2024
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米政府 2050年原子力3倍化に向けたロードマップを発表
ホワイトハウスは、アゼルバイジャンのバクーにおける第29回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29、11月11日~24日)会期中の11月12日、今後の同国の原子力発電拡大に向けた目標と行動を示した「米国の原子力を安全かつ責任を持って拡大する:展開目標と行動に向けた枠組み(Safely and Responsibly Expanding U.S. Nuclear Energy: Deployment Targets and a Framework for Action)」を発表した。同資料によると、米国が2050年までに温室効果ガス排出量をネットゼロにするためには、出力規模でおよそ15億~20億kWのカーボンフリー電力が必要であり、このうちの約30~50%は原子力発電などのクリーンで安定した電源が必要、と分析。現在約1億kWが運転中の原子力発電については、2050年までにさらに2億kWを新規導入する目標を掲げ、これらを大型炉や小型モジュール炉(SMR)、マイクロ原子炉のさまざまなカテゴリーの、第三世代+(プラス)および第四世代原子炉の新規建設や既存炉の運転期間延長、出力増強、経済性を理由に閉鎖された原子炉の再稼働などでまかなうとしている。米政府はまた、より近い将来の目標として以下の、導入に向けた「時間軸」と「規模感」も併せて明記した。2035年までに3,500万kWの新規設備容量を稼働または着工し、原子力導入を活発化させる。2040年までに導入のペースを年間1,500万kWに拡大し、原子力導入能力を加速、国内外のプロジェクト展開を支援する。これらをふまえ米政府は、野心的な導入目標の達成に向け、国内の原子力導入を加速、拡大するための「9つの分野((①新規大型炉の建設、②SMRの建設、③マイクロ原子炉の建設、④許認可の改善、⑤既存炉の延長/拡大/再稼働、⑥労働力の育成、⑦コンポーネントサプライチェーンの開発、⑧燃料サイクルサプライチェーンの開発、⑨使用済み燃料管理))」を特定、個々の分野における「具体的な行動」を詳述した。具体的には、「新規大型炉の建設」や「SMRの建設」の分野では、①発電事業者に対する技術中立的クリーン電力生産税額控除とクリーン電力投資税額控除など、税額控除による原子力納入コストの削減、②エネルギー省(DOE)融資プログラム局(LPO)による、革新原子力プロジェクトや、閉鎖された化石燃料発電所を原子力発電所に転換するような、資産・インフラ転換への融資や融資保証の促進、③新規プロジェクトに対して電力会社とリスク分担が可能な電力需要顧客との連携――などを挙げた。そのほか、「既存炉の延長/拡大/再稼働」の分野では、2回目の運転認可更新(80年運転)申請に係る審査の効率化や、構造材料の継続的な健全性確保のための研究など、100年運転に向けた長期運転への備えを挙げている。さらに、経済性を理由に閉鎖した原子炉の再稼働の可能性を追求するなどとしている。
- 25 Nov 2024
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女川2号機が発電再開 新規制基準施行後BWRで初
東北電力の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)が11月15日、再稼働(発電再開)した。東日本大震災後、2013年の新規制基準が施行されてから、BWRの再稼働は初となる。今後、原子力規制委員会による総合負荷性能検査を経て、12月中にも営業運転復帰となる見通し。同機の発電再開は、2010年10月の定期検査入りから、およそ14年ぶり。2011年3月の東日本大震災時、起動作業中であったが、発災により自動停止した。女川2号機の新規制基準適合性に係る審査は2013年12月に申請。6年以上におよぶ審査期間を経て、2020年2月に原子炉設置変更許可に至り、同年11月には、宮城県知事他、立地自治体が再稼働への同意を表明。海抜29m高の防潮堤建設など、安全対策工事は、2024年5月に完了した。10月29日に原子炉起動となったが、11月3日に設備点検に伴い一旦停止。11月13日に再度、原子炉を起動し、11月15日18時に発電を再開した。東北電力では、今回の発電再開に際し、これまで自然ハザードに対処してきた経験を振り返りつつ、「発電所をゼロから立ち上げた先人たちの姿に学び、地域との絆を強め、福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わるという決意を込めて『再出発』と位置付ける」と、コメント。東日本大震災の教訓を踏まえ、原子力発電所のさらなる安全性の向上を目指し取り組んでいくとしている。これに関し、武藤容治経済産業相は、東日本の電力供給の脆弱性、電気料金の東西格差などの観点から、「大きな節目であり、重要な一歩」とした上で、エネルギー安定供給を所管する立場から、立地自治体の理解・協力に謝意を表し、引き続き安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めていくとの談話を発表した。また、電気事業連合会の林欣吾会長は、11月15日の定例記者会見で、「長期間、停止していた発電所が再稼働を果たすということは、業界としても、大変感慨深く感じている」と、女川2号機発電再開の意義を強調した上で、今後、立地地域の理解を得ながら、中国電力島根原子力発電所2号機など、電力業界を挙げて早期の再稼働に取り組んでいく姿勢を示した。〈電事連コメントは こちら〉日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、メッセージを発表し、「わが国の原子力サプライチェーン維持・強化や人材育成にとっても極めて大きな意義を持つもの」と強調している。〈理事長メッセージは こちら〉
- 19 Nov 2024
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島根2号機 特重施設の原子炉設置変更許可取得
原子力規制委員会は10月22日、中国電力島根原子力発電所2号機について、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)に係る原子炉設置変更許可を発出した。同機については、2021年9月に新規制基準適合性審査をクリア。本体施設の設計・工事計画認可日から起算し、5年を満了する2028年8月29日が特重施設の設置期限となっている。今後の再稼働に向けては、現在、10月28日の燃料装荷開始、12月上旬の原子炉起動、同月下旬の発電開始を予定し、使用前事業者検査などが進められている状況だ。今回の原子炉設置変更許可を受け、中国電力では、「引き続き特重施設等の設置工事を進める」として、その設計・工事計画認可申請に係る審査に適切に対応し、発電所の安全確保に万全を期していく、とのコメントを発表した。現在、再稼働している12基のプラントは、いずれも特重施設の運用が開始している。一方で、新規制基準施行後、再稼働に至っていないプラントで、特重施設に係る原子炉設置変更許可が発出されているのは、島根2号機の他、日本原子力発電東海第二(特重施設の原子炉設置変更許可:2021年12月)、東京電力柏崎刈羽6・7号機(同2022年8月)、東北電力女川2号機(同2023年10月)で、いずれもBWRだ。
- 24 Oct 2024
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米政府 パリセード発電所再稼働に向けた資金支援を最終決定
米政府は9月30日、バイデン大統領の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、米エネルギー省(DOE)および米農務省(USDA)を通じて、同国中西部において信頼性が高く、安価なクリーン電力供給を支援するため、総額およそ28億ドル(4,100億円)の支援を発表した。内、DOEは融資プログラム局(LPO)を通じて、ミシガン州のパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kWe)の復旧と再稼働に係る資金調達を支援するため、同発電所を所有するホルテック・パリセード社に対し、最大15.2億ドル(約2,225億円)の融資保証を最終決定した。今回の融資保証は、2022年に成立したインフレ抑制法(IRA)のエネルギーインフラ再投資(EIR)プログラムに基づくもので、今年4月、DOEは同発電所の再稼働に向けた融資保証としてLPOを通じて同額を上限とする条件付きの資金支援を発表していた。ホルテック社は現在、2051年まで運転できるよう大規模なバックフィットを実施中で、2025年第4四半期の送電開始をめざしている。今回の融資保証の決定は、米国の原子力発電所を再稼働させるためのDOE初の取組みであり、カーボンフリーの発電およびミシガン州の雇用拡大とともに、米国の原子力発電部門の強化に資するもの。パリセード発電所の再稼働により、ミシガン州で最大600名の常勤の高スキル、高サラリーの雇用が維持または創出される見込みで、さらに定検期間中には1,000名もの雇用も支えるという。また、同発電所の再稼働により、年間447万トンのCO2排出の削減に寄与し、これは、ガソリン車97万台以上による年間排出量にほぼ相当する。またUSDAは、IRAの一部である、エンパワリング・ルーラル・アメリカ(New ERA)プログラムの一環として、農村地域にある2つの電力協同組合のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)とフージャー・エナジー(Hoosier Energy)に合計約13億ドル(1,900億円)を交付すると発表した。同プログラムは、農村地域の家庭や中小企業が安価な電力を利用できるようにし、農村地域の労働力やエネルギー、教育インフラに投資することで、農村地域のより豊かな未来を支援することを目的としている。ホルテック・パリセード社は、ミシガン州、イリノイ州、インディアナ州の農村地域に電力を供給する、これら2つの農村電力協同組合と長期電力購入契約を既に締結している。バイデン政権の気候政策担当上級顧問のJ. ポデスタ氏は、「閉鎖済みの原子力発電所を米国史上初めて復活させ、ミシガン州、ウィスコンシン州、インディアナ州、イリノイ州の農村地域に、信頼性が高く、安価なクリーン電力を供給する。インフレ抑制法が中西部のコミュニティをいかに活性化させているかを示している」と強調した。パリセード発電所は、1971年に営業運転を開始。その後、2022年5月に経済性を理由に永久閉鎖され、翌6月には同発電所は所有者・運転者のエンタジー社から、廃止措置を実施するホルテック社に売却された。近年、各国がCO2排出の抑制に取り組み、原子力のように発電時にCO2を排出しないエネルギー源が重視されるなか、ホルテック社は同発電所を再稼働する方針に転換、2023年10月、米原子力規制委員会(NRC)に運転認可の再交付を申請している。
- 04 Oct 2024
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米国で閉鎖炉が再稼働へ TMI1号機
米国電力大手のコンステレーション・エナジー社は9月20日、同社が2019年に閉鎖したスリーマイル・アイランド (TMI)1号機を、再稼働させる方針を明らかにした。米マイクロソフト社と20年間の売電契約を締結し、同社のデータセンター向けに原子力による高品質な電力を供給する。再稼働時期は2028年を見込んでいる。TMI1号機は電気出力89万kWのPWR。安価なガス火力に押されて経済性が悪化し、2034年までの運転認可を残したまま2019年に閉鎖された。なお同2号機は、1979年に炉心溶融事故を起こし、廃止措置が進められている。コンステレーション社によると、1号機の再稼働に向け、今後、タービン、発電機、冷却システムなど、プラント設備の更新に16億ドル(約2,300億円)を投資するほか、米原子力規制委員会(NRC)および関連する州や地元当局への許認可申請を進める。加えて、同機の運転認可を少なくとも2054年まで延長する申請も行う予定。 同発電所が立地するペンシルベニア州の建設労働組合協議会の調査によると、1号機の再稼働により、3,400人以上の直接的・間接的な雇用が創出され、州内総生産は160億ドル(約2兆3,000億円)増加、州税および連邦税も30億ドル(4,300億円)以上収入が増加するとみられている。コンステレーション社のJ. ドミンゲス社長兼CEOは、データセンターなどの米国の経済的かつ技術的競争力にとって極めて重要な産業には、カーボンフリーで安定した大容量の電力の供給が必要であると指摘した上で、「原子力発電所は、それを実現できる唯一のエネルギー源である」と強調している。 7月に発表された国際エネルギー機関(IEA)の報告書でも、データセンターによる世界的な電力需要増で原子力発電に対する注目が集まりつつあると指摘されている。同報告書では、TMI1号機と同じくペンシルベニア州にあるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターの米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社による買収例など、原子力の活用をめざす事例が紹介されている。
- 27 Sep 2024
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IEA報告書 世界的な電力需要増で原子力に注目
国際エネルギー機関(IEA)は7月19日、電力の需給予測に関する最新報告書「Electricity Mid-Year Report」を公表した。堅調な経済成長、熱波、電気自動車などの電化の普及拡大により、世界の電力需要はここ数年で最も速いペースで増加しており、2023年の成長率が2.5%だったのに対し、2024年には約4%となる見通しだ。報告書によると、この需要の伸びは、金融危機やコロナ禍後を除いて過去20年間で最高レベルであり、2025年もこの傾向は継続し、再び4%前後の成長が見込まれるという。報告書は、再生可能エネルギーによる発電量は今後2年間で急速に拡大し、発電シェアは2023年の30%から2025年には35%に上昇すると予測。太陽光と風力だけで、2024年の発電電力量は7,500億kWh増。25年には9,000億kWh増となると予測した。また、再エネによる発電量が2025年に初めて石炭火力による発電量を上回るとの見方を示す一方、石炭火力の発電量は、特に中国とインドの需要増により、2024年に減少する可能性は低いと見ている。その結果、電力部門のCO2排出量は、2025年までほぼ横ばいで推移する見通し。IEAの貞森恵祐エネルギー市場・安全保障局長は、「今年から来年にかけて、世界の電力需要は過去20年間で最も急速に伸長する見込みで、電力が果たす役割の重要性と深刻化する熱波の影響を浮き彫りにしている」と指摘。「電力ミックスに占めるクリーンエネルギーの割合が増え続けていることは心強いが、エネルギー・気候目標を達成するためには、クリーンエネルギーの導入をより迅速に進める必要があると同時に、送電網の拡大・強化および、より高いエネルギー効率基準の導入が不可欠」との認識を示した。原子力発電については、世界の原子力発電量が過去最高を記録した2021年を上回り、2025年には2兆9,150億kWhに達し、記録を更新する見通し。報告書は、保守作業中だったフランスの原子力発電所の再稼働や日本の再稼働、中国、インド、韓国、欧州などでの新規原子炉の運転開始により、原子力発電量は2024年には1.6%、2025年には3.5%増加すると予測している。また、報告書は、人工知能(AI)の台頭により、データセンターによる電力消費が注目されているなか、安定した低排出電源の必要性などから、原子力発電が地熱発電とならんで、魅力的な存在になりつつあると指摘。具体的な動きとして、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社によるサスケハナ原子力発電所(BWR、133.0万kW×2基)に隣接するデータセンターの買収のほか、オンサイトの小型モジュール炉(SMR)の活用例として、不動産・プロジェクト開発企業の米グリーン・エナジー・パートナーズ(GEP)社によるSMRと水素発電設備を備えたデータセンター・キャンパスの建設計画、ノルウェーの原子力プロジェクト会社のノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社によるデータセンター向けのオフグリッドのSMR建設計画などを挙げた。そのほか、米マイクロソフト社と米ヘリオン社の核融合発電に関する電力購入契約(PPA)締結の事例なども紹介。その一方で、IEAは、SMRや核融合発電などの活用をめざす動きは今後の技術開発に勢いを与えるものとしつつも、技術的成熟度から言えば未だ初期段階と指摘。供給スケジュールに関しては、大きな不確実性が存在する点に留意する必要があるとし、今後の動向に注視する必要性に言及している。
- 29 Jul 2024
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規制委・審査会合 敦賀2号機の敷地内断層の評価めぐり議論
原子力規制委員会(規制委)は6月28日、原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合を開き、日本原子力発電(原電)の敦賀2号機(PWR、116万kW)敷地内に認められたK断層の連続性に関して議論した。規制委の審査チームは、K断層の活動性と連続性(K断層と原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性)の観点から同断層を評価する方針で、原電の説明および規制委が実施した現地調査の結果を踏まえて検討を進めている。この日の会合で原電は、ボーリング調査結果等をもとに同断層を分析したところ、破砕帯との連続性は認められないと説明した。審査チームは同社の説明に関する指摘事項や確認事項を示し、7月に開催予定の次回審査会合において説明するよう求めた。また審査チームは、次回会合でK断層評価に関する審議をしめくくり、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する方針を示した。原電は、次回会合において断層の活動性に関する同社の見解を改めて説明する。これまでに、原電は現地ボーリング調査の結果分析等を踏まえて断層の活動性、連続性はいずれも認められないと説明したが、活動性に関して審査チームは、前回の審査会合(5月31日開催)において、活動性を否定する科学的根拠に乏しいとの見解を示していた。K断層の活動性と連続性をどう評価するかが、敦賀2号機の新規制基準への適合性を判断する重要なポイントになっているため、規制委がどのような技術的判断を示すかに注目が集まっている。なお、原電が敦賀2号機の再稼働にむけた新規制基準の適合性確認申請を行ったのは2015年11月5日。その後、2023年8月末に補正申請しているが、敷地内断層の評価を中心に議論が進められ、審査はおよそ9年にもおよんでいる。
- 01 Jul 2024
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2022年度エネルギー需給実績 最終消費が2年ぶり減少
資源エネルギー庁は11月29日、2022年度のエネルギー需給実績(速報)を発表した。それによると、最終エネルギー消費は11,897PJ((ペタ〈10の15乗=千兆〉ジュール)))で、対前年度比2.9%減。部門別にみると、企業・事業所他部門は物価上昇や海外景気悪化などで生産活動が鈍化したことにより減少、運輸部門はコロナ禍からの回復により2年連続で増加、家庭部門は微増となった。2022年度、一次エネルギー国内供給は18,283PJで同2.3%減。そのうち、化石燃料は同1.9%減となった一方、再生可能エネルギー(水力を含む)は10年連続で増加。原子力は同21.7%減で、非化石燃料の同4.4%減に大きく影響した。同年度内は、計10基の原子力発電プラントが稼働。新たな再稼働プラントはなかった。また、関西電力大飯3・4号機、九州電力玄海3・4号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」の設置期限が年度内に到来。それぞれ同施設整備のための停止期間があった。発電電力量は1兆82億kWhで同2.5%減。非化石発電率は27.3%で同0.1ポイント増となった。発電電力量の構成は、再生可能エネルギー(水力を含む)が21.7%で同1.4ポイント増、原子力が5.6%で同1.3ポイント減、火力(バイオマスを除く)が72.7%で同0.1ポイント減。また、エネルギー起源CO2排出量は9.6億トンで、同2.9%減、2013年度比22.5%減と、1990年度以降で最少となった。CO2排出量は、リーマンショック後の経済回復と東日本大震災後の原子力発電所停止などの影響で2013年度まで4年連続で増加したが、その後のエネルギー消費減、再生可能エネルギーの普及や原子力発電所の再稼働により減少傾向にあった。2021年度は対年度比2.0%増となったが、2022年度は企業・事業所他のエネルギー消費減が影響して2年ぶりに減少した。電力のCO2原単位は、0.46kg-CO2/kWhで、同1.8%減となった。
- 04 Dec 2023
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高浜2号機が本格復帰 3基目の40年超運転
運開当時の高浜2号機(左)、隣接の1号機とともに現在は事故時環境線量低減のため鉄筋コンクリート造のドーム型屋根が設置されている(原産新聞1975年11月20日号より)関西電力の高浜発電所2号機(PWR、82.6万kW)が10月16日、原子力規制委員会による最終検査を終了し、およそ12年ぶりに営業運転を再開した。同社、美浜3号機、高浜1号機に続き、国内3基目の40年超運転となる。高浜2号機の再稼働に向けては、同1号機、美浜3号機とともに、2015年3月に規制委員会への新規制基準適合性に係る審査が申請された。運転開始から60年までの運転期間延長については、高浜1・2号機合わせて2015年4月に認可申請がなされ、本体審査は両機並行の格好で進捗。2016年4月に揃って審査合格となった。その後、安全対策工事、地元の了解を経て、テロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」については、それぞれ2023年7月14日、8月31日に整備を完了し運用開始。1号機は先行して、8月2日に発電を再開し、同28日に営業運転に復帰。2号機も9月20日に発電を再開した。高浜2号機の営業運転再開により、関西電力では原子力発電プラント7基体制(美浜3、高浜1~4、大飯3・4)が確立。これについて、同社・森望社長は、「原子力発電所を最大限活用していくことは、S+3E(安全確保、エネルギーセキュリティの確保、経済性、地球環境問題への対応)の観点から、非常に有意義である」とコメント。今後も安全・安定運転の実績を着実に積み重ねていく考えをあらためて述べた。高浜2号機は、同1号機からちょうど1年後となる1975年11月14日に、国内10基目の商業炉としてデビュー。これにより日本の原子力発電設備容量が500万kWを超えた。当時、国内では13基の商業炉が建設中にあった。
- 17 Oct 2023
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米国 閉鎖したパリセード発電所の再稼働を申請
米ホルテック・インターナショナル社は10月6日、ミシガン州で2022年5月に閉鎖されたパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)の再稼働を目指し、運転認可の再交付を米原子力規制委員会(NRC)に申請した。同社は既存の規制の枠内で再稼働に向けた道筋を固めるため、事前にNRCスタッフと複数回にわたり協議を重ねていた。今回の申請は、同発電所を全面的に復活させるための正式手続きの端緒となる。米国では市場設計の失敗により、自由化市場環境下で運転する発電所の経済性が悪化。パリセード原子力発電所を最後に所有・運転していたエンタジー社は2022年5月に同発電所を閉鎖した後、6月には廃止措置を実施するため同発電所を運転認可とともにホルテック社に売却していた。一方で、同発電所には運転開始後50年以上安全に稼働した実績があり、閉鎖直前には577日間の連続運転を記録するなど、NRCは同発電所を「最も高い安全性を有する原子炉」のカテゴリーに分類。原子力産業界でも高パフォーマンスの発電所として評価されていた。ホルテック社は、近年はCO2の排出に起因する環境の悪化等から、各国が炭素負荷の抑制に取り組んでおり、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となったと説明。このため同社は、米エネルギー省(DOE)が原子力発電所の早期閉鎖を防ぐために2022年4月に設置した「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」に同発電所の適用を申請。この時は他のプラントへの適用が決定したためパリセード発電所への適用は認められなかったものの、同社は今年2月、再稼働に必要な融資を求めて同プログラムに再度申請している。ホルテック社が進めるパリセード発電所の再稼働方針については、ミシガン州のG.ホイットマー知事も2022年9月に支持を表明。今年7月には、同発電所の再稼働に1億5,000万ドルの支援を盛り込んだ2024会計年度の州政府予算法案に署名した。ホルテック社も、同発電所が発電する電力を州内のウルバリン電力共同組合(Wolverine Power Cooperative)に販売するため、今年9月に子会社を通じて長期の電力売買契約(PPA)を締結している。ホルテック社の予測では、パリセード発電所の再稼働が実現した場合、ミシガン州では無炭素なエネルギーの供給量が大幅に増大するため、送電網の信頼性向上につながるほか輸入エネルギーへの依存度が低下する。同発電所が雇用する600名以上の従業員には総額8,000万ドルの給与が支払われる予定で、州内にもたらされる2次的経済活動は5億ドル以上の規模。また、閉鎖前に同社が毎年支払っていた同発電所の固定資産税は1,000万ドルにのぼり、地元最大の納税者として立地エリアの学校や警察、消防署、公園、図書館などに貢献していたという。ホルテック社のJ.フレミング副社長は、「米国のエネルギー・ミックスの中で原子力は重要な役割を果たしており、ミシガン州においても安全で信頼性の高い無炭素電力を供給している」と指摘。パリセード原子力発電所では機器・システム等が現在も良好な状態で管理されていることから、「規制基準を満たしながら高い安全性を維持し、供給区域の経済成長やエネルギー供給に持続的に貢献するよう可能性を模索する」としている。(参照資料:ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Oct 2023
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米国 閉鎖済み原子炉を再稼働方針
米国のホルテック・インターナショナル社は9月12日、ミシガン州で2022年に永久閉鎖となったパリセード原子力発電所(PWR、85.7万kW)を再稼働させるため、子会社を通じて、同原子力発電所が発電する電力を州内のウルバリン電力協同組合(Wolverine Power Cooperative)に長期にわたり販売する契約を締結した。ホルテック社は今年2月、同発電所の再稼働に必要な融資依頼を米エネルギー省(DOE)に申請している。米原子力規制委員会(NRC)のスタッフとは、すでに複数回の公開協議を通じて、同発電所の運転再認可に向けた規制手続について議論を重ねており、「パリセード発電所は閉鎖後に再稼働を果たす米国初の原子力発電所になる」と強調。再稼働を必ず実現させて、ミシガン州の各地に無炭素エネルギーによる未来をもたらしたいと述べた。また、長期停止中の原子力発電所を数多く抱える日本や脱原子力を完了したドイツでも、同様の流れになることを期待するとした。米国では、独立系統運用者が運営する容量市場取引きの台頭など、電力市場の自由化が進展するのにともない、電力事業者間の従来通りの電力取引をベースとしていたパリセード発電所の経済性が悪化。2007年に同発電所をコンシューマーズ・エナジー社から購入したエンタジー社は2022年5月、当時の電力売買契約が満了するのに合わせて、合計50年以上安全に稼働していた同発電所を閉鎖。その翌月には廃止措置を実施するため、同発電所を運転認可とともにホルテック社に売却していた。ホルテック社は、原子力発電所の廃止措置のほか、放射性廃棄物の処分設備や小型モジュール炉(SMR)の開発など、総合的なエネルギー・ソリューションを手掛ける企業。同社によると、近年CO2の排出に起因する環境の悪化から各国が炭素負荷の抑制に取り組んでおり、原子力のようにクリーンなエネルギー源が重視される時代となった。パリセード発電所の購入後、ホルテック社は、DOEが既存の原子力発電所の早期閉鎖を防止するため実施中のプログラムに同発電所を対象に申請書を提出。これを受けてミシガン州のG.ホイットマー知事は2022年9月、この方針を支持すると表明していた。ホルテック社が今回結んだ電力売買契約では、パリセード発電所が発電する電力の3分の2をウルバリン電力協同組合が買い取り、同組合に所属する他の電力協同組合を通じてミシガン州主要地域の家庭や企業、公立学校等に配電する。残りの3分の1は、ウルバリン協同組合が協力中のフージャー・エナジー(Hoosier Energy)社が買い取る予定。なお、今回の契約では、ホルテック社がパリセード原子力発電所敷地内で、出力30万kWのSMRを最大2基建設するという契約拡大条項も含まれている。これらを追加建設することになれば、ミシガン州では年間約700万トンのCO2排出量が削減される見通し。ホルテック社の説明では、パリセード発電所の再稼働に対する地元コミュニティや州政府、連邦政府レベルの強力な支持は、CO2の排出削減における原子力の多大な貢献に基づいている。ホルテック社で原子力発電と廃止措置を担当するK.トライス社長は、「パリセード発電所を再稼働させることで、ミシガン州は今後のエネルギー需要を満たしつつ地球温暖化の影響を緩和できるほか、高収入の雇用を数百名分確保し地方自治体の税収を拡大、州経済の成長にも貢献できる」と指摘している。(参照資料:ホルテック社、ウルバリン電力協同組合の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Sep 2023
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設備利用率が新規制基準施行後初の3割超え
原子力産業新聞が電力各社から入手した毎月のデータによると、国内原子力発電所の設備利用率は2023年8月、33.2%となり、2013年7月の新規制基準施行後、初めて30%を超えた。国内の原子力発電所は、2011年3月の福島第一原子力発電所事故後、順次停止し、一部政治判断による再稼働はあったものの、2013年9月~15年8月のおよそ2年間にわたり全基停止の状態が続いた。新規制基準の施行後は、九州電力川内1・2号機が先陣を切って、それぞれ2015年8、10月に再稼働。その後、2018年にかけて、関西電力高浜3・4号機、同大飯3・4号機、四国電力伊方3号機、九州電力玄海3・4号機が新規制基準をクリアし運転を再開。以降、新たな再稼働は滞り、司法判断や新規制基準で要求されるテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の設置期限満了に伴う停止も加わり、設備利用率の低迷する時期がみられた。一方で、2021年6月には、3年ぶりの新規再稼働となる関西電力美浜3号機が国内初の40年超運転として発電を再開。2023年8月には同高浜1号機が、これに続いて40年超運転入り。同2号機も3基目の40年超運転に向け9月15日に原子炉を起動した。各プラントの特重施設整備も進んでおり、今春以降、設備利用率が徐々に回復してきている。これまでに再稼働(発電再開)したプラントは、計11基・1,078.2万kWで、いずれもPWR。今後、BWRについても、近時では、東北電力女川2号機、中国電力島根2号機の、それぞれ、来春、来夏の再開が見込まれている。*月ごとの原子力発電所運転状況は、こちら をご覧ください。
- 15 Sep 2023
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高浜1号機が発電再開 国内2基目の40年超運転
関西電力の高浜発電所1号機(PWR、82.6万kW)が8月2日15時、およそ12年半ぶりに発電を再開した。国内の40年超運転としては同社・美浜3号機(新規制基準施行後、2021年6月に原子炉起動、同7月に営業運転再開)に続き2基目。新規制基準をクリアし再稼働したプラントとしては11基目となる。高浜1号機は、日本が高度経済成長期の真っ只中にあった1969年に建設が開始され、1974年11月14日に、国内では8基目、関西電力では美浜1・2号機に続く3基目の原子力発電プラントとしてデビュー。出力82.6万kWは、当時、国内最大級だった。1年後の1975年11月14日には高浜2号機(PWR、82.6万kW)が運転を開始。高浜1・2号機は、その後、同社で、美浜3号機、大飯1・2号機へと続く大型プラントの先駆けとなった。高浜1号機は2011年1月に定期検査に伴い停止した後、東日本大震災を経て、2015年3月に同2号機、美浜3号機とともに新規制基準適合性に係る審査が開始。2号機とともに、2016年4月に原子炉設置変更許可となり、2021年4月までに再稼働に対する地元の「理解表明」を得た。一方で、高浜1・2号機は、新規制基準で要求されるテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の設置期限(プラント本体の設計・工事計画認可から5年)を2021年6月9日に満了。整備期間を経て、1号機については、2023年7月14日に特重施設が運用を開始し、同28日に原子炉起動となった。今後、定期検査の最終段階となる国の総合負荷性能検査を経て、8月28日に営業運転に復帰する見通しだ。原産協会の新井史朗理事長は、コメントを発表し、関西電力のこれまでの再稼働実績にも言及した上で、「安全・安定運転の積み重ねが、地元を始め、国民の皆様の原子力への信頼を深めてもらうためにとても大切」と強調。今後、高浜2号機やこの他のBWRプラントの再稼働に向けても、引き続き安全最優先で作業が進められることを期待した。
- 02 Aug 2023
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