キーワード:小型モジュール炉(SMR)
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原子力小委 原子力の見通しや将来像を示す
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長)が6月24日に開催され、第7次エネルギー基本計画を踏まえた原子力政策の具体化に向けて議論された。同委員会では、次世代革新炉の開発・導入や既設炉の最大限活用、サプライチェーンと人材の維持、SMRの国内実証、投資環境の整備などについて、どのような観点や仮定の下であれば定量的な見通しを示せるかが議論され、「第7次エネルギー基本計画は決定されたものの、再生可能エネルギーと並ぶ脱炭素電源として原子力を活用するには、具体化すべき課題が数多く残されている」といった意見が多くの委員から示された。委員の日本エネルギー経済研究所の山下ゆかり氏は、フランスを例に挙げ、「同国では2022年2月に、2050年までに6基から14基の大型原子炉と数基のSMRの新設計画を発表し、原子力の延長に必要な技術開発の準備を進めている。ただ、需要側供給側の双方に様々な不確実性があるため、原子力発電の目標数字を示すことが困難で、リスクとなることも理解する」と述べた。また、同じく委員のみずほ銀行の田村多恵氏は、「今後、革新炉の開発が進めば、炉型ごとに違ったサプライチェーンが必要になるかもしれない。定量的な見通し、将来像の設定は難しいが、実効性のある数値が示されることに期待する」と述べた。他にも、委員のSMBC日興証券の又吉由香氏は、「原子力発電設備容量の見通しと将来像を定量的に示すことは重要だが、一方で年限を定めた見通しの提示には不確実性が伴う。何年で何基の市場投入ペースといったベンチマーク議論から発展させていくプロセスも重要だ」と述べ、発電事業者、業界団体、規制当局らをまたいだ統合的な推進をつかさどる司令塔を作り、機能させることの重要性を訴えた。専門委員として出席している日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、原子力が「どれだけの容量がいつまでに必要か」という長期にわたる時間軸と開発規模の明示、そして、資金調達・投資回収制度の検討、サプライチェーンの課題解決、の3点を訴え、今後も政府と産業界が連携して継続的に取り組むことが重要であると述べた。〈発言内容は こちら〉黒﨑健委員長は、第7次エネルギー基本計画で「2040年度の電源構成に占める原子力発電比率を2割程度とする」という方向性が示された中で、「実効性がある具体的な計画を出すのは大きな宿題だ」と述べたほか、福島第一原子力発電所の廃炉対応や六ヶ所再処理工場の審査延期問題を指摘し、竣工後を見据えたバックエンド事業の議論の重要性を強調した。また、今回の会合では、原子燃料サイクルの推進に向け小委の下に作業部会を新設することが決定した。
- 27 Jun 2025
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2024年度版 エネルギー白書を閣議決定
日本政府は6月13日、2024年度版のエネルギーに関する年次報告(通称:エネルギー白書)を閣議決定した。本白書は、エネルギー政策基本法に基づく法定白書で、2004年から毎年作成され、今回が21回目となる。同白書は例年3部構成となっており、第1部は、福島復興の進捗と原子力安全対策、各年度のエネルギーを取り巻く動向を踏まえた分析など、第2部は国内外のエネルギーに関するデータ、第3部は前年度に講じたエネルギー政策や支援策の実施状況、を中心にまとめられている。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化しているほか、直近では、イランと米国の間で新たな緊張の火種が生じており、各地で情勢の不安定化が懸念されている。それに伴い、化石燃料の需給バランスが崩れ、以前から日本でも電気・ガス代やガソリン価格が高止まりしているが、回復の兆しは見えない。そして、米トランプ政権は、脱炭素政策を転換し、アラスカ州での資源開発の加速に意欲を示したことにも触れ、「安定供給や価格に影響を与えるリスクが顕在化している」と分析した。そのため、既存の原子力発電所よりも安全性や燃料の燃焼効率が高い「次世代革新炉」の早期実用化や、薄く折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」など、次世代技術の活用を推進し、脱炭素化と電力の安定供給を両立する必要性を強調している。また、発生から14年が経過した東京電力福島第一原子力発電所の事故に関しては、デブリの取り出しや処理水の処分を着実に進めることで「復興に向けた道筋をこれまで以上に明確にしていく」と記されている。
- 24 Jun 2025
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日加原子力フォーラム初開催 福島視察も
日本原子力産業協会とカナダ原子力協会(CNA)は6月19日、東京都港区の在日カナダ大使館で「第1回 日本・カナダ原子力フォーラム」を開催。80名を超す参加者が詰めかけた。両協会は、2021年に協力覚書を締結しており、今回のフォーラムはその活動の一環。両国の原子力産業界のさらなるビジネス交流の促進を図り、協業の在り方を模索するのが目的。カナダ側はCNAのほか、原子力研究所、在日カナダ商工会議所、各州政府在日事務所、原子力関連企業らが参加した。冒頭挨拶に立ち、日本原子力産業協会の増井理事長は、「CANDU炉に象徴されるように、カナダは原子力技術の面で世界をリードし、日本とはウラン供給などにおいて長年協力関係にある。また、西側諸国初のSMR(BWRX-300、30万kWe)実用化計画が進むダーリントン原子力発電所において、日本企業が関与するなど、以前から着目していた国のひとつだ。このフォーラムを通じて両国の新たな連携の芽が育まれる契機となってほしい」と述べた。CNAの一行は翌20日、福島県双葉郡に位置する東京電力廃炉資料館と、福島第一原子力発電所を視察。廃炉資料館では、東日本大震災の発生から原子炉の冷温停止までの経緯や、現在進められている廃炉作業の詳細について、映像や展示物を通じて説明を受けた。また、福島第一では、1~6号機の現状や処理水の海洋放出の流れ、燃料デブリの取り出しに関する取り組みについて、約1時間の構内バスツアーを通じて視察し、理解を深めた。CNAのジョージ・クリスティディス理事長は福島県での視察を終えて、「日本の原子力産業界関係者のレジリエンスに大きな感銘を受けたほか、緻密に計画された工程で廃炉作業に取り組んでいることを学んだ。この事故によって発生した犠牲や痛みを軽んじるつもりは一切ないが、ここで得られた知識や技術には大きな価値がある」と述べ、福島第一での経験が、今後多くの国の廃炉プロジェクトにも活かされるとの期待を示した。
- 23 Jun 2025
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原産協会 定時社員総会を開催
日本原子力産業協会は6月13日、定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2024年度決算および事業計画、2025年度の事業計画・予算案がそれぞれ報告、承認された。総会には、委任状を含む合計322人の会員が出席した。新理事には安藤康志電気事業連合会副会長、竹内努東芝エネルギーシステムズ取締役パワーシステム事業部長CNO、中西宏典発電設備技術検査協会理事長の3氏が就任した。総会の冒頭、日本原子力産業協会の三村明夫会長は、「今年は第7次エネルギー基本計画が閣議決定し、原子力の最大限活用が明確に打ち出され、ファイナンス、サプライチェーン、人材確保・育成といった課題への対応が盛り込まれた。原子力政策がようやく正常化し、力強く前に進みはじめたことは、原子力産業界全体にとって心強いかぎりだ」とコメント。その上で、原子力最大限活用の課題として、1.既設炉の再稼働と建設中プラントの早期完成2.新規建設の具体化3.原子燃料サイクルの確立と高レベル放射性廃棄物の最終処分を挙げた。そして、既設炉の再稼働と建設中プラントの早期完成について、「昨年の女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kWe)と島根原子力発電所2号機(BWR、82.0万kWe)の再稼働により、BWRのサプライチェーンにも動きが見られた一方で、全国には運転開始に至っていないプラントも多く、再稼働の加速が求められる」と指摘。「次世代に安心感と使命感を伝えるには、早期再稼働と現場の安定運営が必要だ」と語った。新規建設の具体化については、「持続可能な技術力の活用やサプライチェーン、人材の確保を支えるためにも、新設計画の着手は喫緊の課題」と述べ、政府に対して、「資金調達や投資回収の事業環境整備を早急に進めるよう求めていきたい」と語った。原子燃料サイクルと高レベル放射性廃棄物の最終処分については、「原子燃料サイクルの確立は、原子力の安定的な活用の前提条件」とした上で、関係者の連携によるさらなる前進を呼びかけた。また、来賓として挨拶に立った加藤明良経済産業大臣政務官は、「世界的に原子力の導入・再稼働が加速する中で、日本も脱炭素・エネルギー安定供給の柱として原子力を最大限活用するために、再稼働や新設、次世代革新炉の開発が重要」と強調。国内原子力産業の基盤・人材の維持強化、海外展開支援にも取り組む意向を示した。政府は政策と予算面で環境整備を進め、産業界には具体化と加速を期待。官民連携で原子力政策の実行を進める必要性を訴えた。同じく来賓の赤松健文部科学大臣政務官は、文部科学省として、次世代革新炉の研究開発や人材育成を強化していく方針を示し、高速実験炉「常陽」や、高温ガス炉のHTTRを活用した実証、核融合エネルギーの官民連携に言及した。さらに、先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)を軸とした産学連携による人材育成の取り組みを重視する考えを強調。産業界の協力を求めつつ、同分野での今後の連携強化に期待を寄せた。
- 16 Jun 2025
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規制委 女川と高浜での乾式貯蔵施設設置を許可
原子力規制委員会(NRA)は5月28日、東北電力女川原子力発電所2号機(BWR、82.5万kW)と関西電力高浜発電所構内における、使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置計画を許可した。東北電力は2024年2月に、関西電力は2024年3月に、乾式貯蔵施設設置に向けた原子炉設置変更許可をそれぞれ申請していた。乾式貯蔵施設とは、プールで一定期間冷却した使用済み燃料を、「キャスク」と呼ばれる金属容器に収容し、空気の自然対流によって冷却する方式の貯蔵施設である。水や電源を用いないため、維持管理が比較的容易であり、米国やスイスをはじめとした海外で多くの実績がある。日本では貯蔵はあくまで一時的なものであり、使用済み燃料の再処理を前提に行われているが、燃料の搬出先となる日本原燃の再処理工場の完成が延期(2026年度竣工予定)となっており、使用済み燃料の保管能力の確保は各電力会社にとって喫緊の課題であった。日本国内では、すでに日本原電東海第二発電所で乾式貯蔵が実施されているほか、東京電力と日本原電が共同出資したリサイクル燃料備蓄センター(青森県むつ市)にも昨年、使用済み燃料の搬入が開始されている。また、今回認可を受けた女川および高浜は、発電所構内の乾式貯蔵施設としては新規制基準施行後、四国電力伊方発電所、九州電力玄海原子力発電所に続き、3、4か所目の合格となった。
- 03 Jun 2025
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原産協会・増井理事長 年次大会を総括
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は5月30日、定例の記者会見を行い、4月に開催された「第58回原産年次大会」の総括をはじめ、最近の海外出張の報告や今後の取組みについて説明した。増井理事長はまず、4月8日、9日に開催された原産年次大会の総括が30日に公表されたことを受け、その概要を報告。「原子力利用のさらなる加速―新規建設の実現に向けて」を基調テーマとして掲げた同大会について、「安定したサプライチェーンと人材確保、国による明確なビジョンと戦略が不可欠という認識が改めて共有された」と総括した。さらに、海外登壇者を招いたセッションでは、海外の成功事例や教訓を踏まえた課題と対応策の議論を通じて、「新規建設の重要性を改めて発信する機会となった」と振り返った。記者から、「国内外の若手技術者による講演や、学生パネリストを交えたグループディスカッションに特に大きな盛り上がりを感じたが、この熱気をどのように一般の人に伝えていくか」と問われたのに対し、増井理事長は、「当協会が長年実施している出前授業が果たす役割は大きい。エネルギー問題への関心が高まるような施策を、これからも進めていきたい」と今後に意欲を示した。 また、増井理事長は、4月15日~17日にカナダ・オタワで開催されたカナダ原子力協会(CNA)の年次大会に参加。さらに、4月29日~30日に韓国・ソウルで開催された「第40周年記念韓国原子力産業協会(KAIF)年次大会」にも出席し、それぞれの参加概要を報告した。韓国では、日本の原子力発電の現況を発信するとともに、国際展開を志向する会員企業を海外企業に紹介したことなどを説明した。このほか、中国核能行業協会(CNEA)主催の「中国原子力開発フォーラム―2025年国際サミット春(CNESDS)」や、同時開催された「第16回中国原子力産業国際展示会(CIENPI)」にも参加。JAIFブースの出展に加え、CNEA協力のもと、中国の原子力関係施設への視察を行ったことも明らかにした。
- 02 Jun 2025
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IHIがSMR向け鋼製構造物を公開
IHIは5月27日、神奈川県横浜市の自社工場で、原子炉建屋の壁として使われる鋼製構造物の試作品を報道陣に公開した。これは、米国のニュースケール社がルーマニアで建設予定のSMRプロジェクトに使用されるもの。SMRは従来の原子炉よりも小型で、1基あたりの電気出力が30万kW以下。機器やシステムは工場で製造し、モジュール化して立地サイトに搬送することで、プレハブのように現地で組み立てることができる。そのため、量産化が容易で、工期短縮やコスト削減が期待されている。データセンターの急増などで電力需要が高まる中、CO₂を出さない脱炭素電源として世界的に注目されている。同社はこれまでの原子炉圧力容器の製造などで、高い技術を保有しており、同社はこうした海外案件を通じて技術継承や人材育成を図る狙いがある。また、国際的な原子力サプライチェーンの構築にも取り組む。同社は「これらの事業を通じて、技術力の維持・強化や、国内サプライチェーンの拡大にも貢献していきたい。さらに次世代革新炉に対するグローバル展開を推進し、国内外の原子力の安全・事業の発展と、2030年代には売上1,000億円を目指していく。」とコメントを発表している。
- 30 May 2025
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加NB州 合計60万kWのSMRを建設へ
カナダ北東部のニューブランズウィック(NB)州政府は12月13日、安価なエネルギーを提供しつつ、同州経済の成長とクリーン・エネルギー化の促進を目指した新しいエネルギー戦略「Powering our Economy and the World with Clean Energy -- Our Path Forward to 2035 」を公表した。クリーン・エネルギーへの移行に向け、2035年まで12年間のロードマップも盛り込まれており、原子力に関しては同年までに州内のポイントルプロー原子力発電所(カナダ型加圧重水炉、70.5万kW)内で合計60万kWの小型モジュール炉(SMR)を建設すると表明している。同戦略のなかでNB州政府は、手頃なエネルギー価格と信頼性の高いエネルギー供給、新たなエネルギー技術や発電戦略等に合せたエネルギー市場改革、および州経済の成長という4点に重点を置いた。その結果、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと、無炭素なベースロード用電源としてSMR等の原子力利用を大幅に拡大する方針を明示。これらを使って、ピーク時の電力需要に十分応えられる発電設備を州内で確保するほか、水素やバイオ燃料などの新しいエネルギー源を輸送部門に適用、さらなる省エネ対策やエネルギーの効率化を進めていく産業部門の電化は温室効果ガスの排出量削減で主要な役割を担うが、州政府の試算によると、NB州では2022年の年間電力需要の145億kWhが、2035年には234億kWhに拡大するため、発電設備を約60%増強する必要がある。カナダでは商業炉がNB州とオンタリオ州のみで稼働しており、NB州唯一の原子力発電所として州内の発電設備容量の15%を占めるポイントルプロー発電所は、過去40年以上にわたり同州の主要なベースロード用電源だった。NB州は2022年、オンタリオ州とサスカチュワン州、およびアルバータ州とともに、SMRを開発・建設していくための共同戦略計画を策定。NB州は、小型でモジュール式のSMRは従来の大型炉と比べて建設コストが低いだけでなく、太陽光など間欠性のある再生可能エネルギー源を補える柔軟なエネルギー源と認識しており、州営電力のNBパワー社と協力して、同社が運転するポイントルプロー発電所にSMRを2035年までに60万kW分新たに建設する。差し当たり2030年頃までに、最初の15万kW分の運転を開始して電力需要の増加に応えるほか、2035年までに残りを完成させて発電部門の脱炭素化を促す方針である。NBパワー社はすでに今年6月、ポイントルプロー発電所に米ARCクリーン・テクノロジー(ARC)社製の先進的SMR「ARC-100」(電気出力10万kW~15万kW)を建設するため、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。2030年頃に送電開始し60年にわたって運転していく計画で、この「ARC-100」も含めた60万kW分のSMR建設によって、同州の原子力発電設備は2035年に現在の約2倍に拡大する見通し。これと同時に、同州政府は既存のポイントルプロー発電所の運転効率や信頼性を向上させる考えで、NBパワー社がパートナーらと協力してこれを進めていくとしている。(参照資料:NB州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Dec 2023
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英国 米ホルテック社製「SMR-300」の設計審査開始
英原子力規制庁(ONR)は12月7日、政府のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の要請を受けて、米ホルテック・インターナショナル社製小型モジュール炉であるSMR-300(電気出力30万kW)について、包括的設計審査(GDA)を開始したと発表した。DESNZは同日、ホルテック社の英国法人であるホルテック・ブリテン社に対し、全4段階で構成されるGDAの1、2段階分の補助金として、3,005万ポンド(約54億円)を「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund=FNEF)」から拠出していた。DESNZはホルテック社が提出していたGDA申請書を事前に精査し、同プラントがGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。これを踏まえて、ONRが同プラントの安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)とウェールズ自然保護機関(NRW)が環境影響面について、英国の基準を満たしているか約5年をかけて評価する。ホルテック社は2022年12月、PWRタイプの同社製SMR「SMR-160」(電気出力16万kW)をGDAにかけ、2028年までに英国内で初号機を着工するため、2023年初頭にも申請書を提出すると表明していた。同社はまた、米国でも「SMR-160」の建設を計画しており、米原子力規制委員会(NRC)とは設計認証審査に向けて申請前の事前協議を実施中である。ホルテック社は英国の原子力発電プログラムに対し、25年以上にわたって様々な機器やサービスを提供している。SMR開発にあたっては、エネルギー関係の英国コンサルティング企業であるモット・マクドナルド(Mott MacDonald)社を英国チームに加えたほか、国外では三菱電機や現代E&C社とも協力している。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は今回、「国内原子力産業の再活性化を目指し、過去数十年間で初めて公的基金を活用する」と説明。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1億2,000万ポンド(約217億円)の補助金交付制度である。同相は、「約3,000万ポンドの投資は、英国エネルギー・ミックスのクリーン化とCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、最新技術を用いた原子力発電所の建設を迅速かつ低コストで進めていくためのものだ」と強調している。なお、ホルテック社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが今年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。同コンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当しており、ホルテック・ブリテン社は今年10月、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ウェスチングハウス(WH)社の英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定した。2024年に支援対象として選定された場合、ホルテック社は2050年までに複数のSMRで合計出力500万kW以上の設備を建設するため、英国内に主要機器の製造工場を設置する考えだ。(参照資料:ONR、DESNZ、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Dec 2023
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ポーランド 6地点の米社製SMR建設計画にDIP発給
ポーランドで米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は12月7日、国内6地点における合計24基の「BWRX-300」建設計画に、気候環境省が原則決定(decision-in-principle=DIP)を発給したと発表した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりこれらのプロジェクトは国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今回の発表はOSGE社のR.カスプローCEOが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」の場で発表した。OSGE社は今年の4月中旬、数十の候補地点の中からSMRの建設サイトとして最も有力な7地点を選定。今回はこのうち、首都ワルシャワを除いた6地点─北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)とドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)それぞれの近郊地点、タルノブジェク(Tarnobrzeg)の特別経済区─で「BWRX-300」の建設が認められた。同社はこれらのいずれかで2030年にも初号機の完成を目指しており、カスプローCEOは今回、「世界的に見てもポーランドはCO2の排出量が多いため、複数の『BWRX-300』で国内産業や暖房部門にエネルギーを安定供給しながらCO2排出量を実質ゼロ化し、ポーランド経済の脱炭素化を促していきたい」と述べた。OSGE社は、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資して、2021年12月に設立した合弁事業体。同社は4月下旬、6地点の建設計画についてDIPの発給を気候環境省に申請した。同じ時期に、米ニュースケール・パワー社製SMRの建設計画でDIPを申請していた鉱業大手のKGHM銅採掘会社に対しては、気候環境省が今年7月にDIPを発給した。また、同じく7月に気候環境省は、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉(ウェスチングハウス社製AP1000)建設についてDIPを発給。11月には、同省はPGE社傘下のPGE PAK原子力エネルギー(PGE PAK Energia Jądrowa)社が同国中央部ポントヌフのコニン地区で計画している韓国製大型炉「APR1400」の建設プロジェクトに対しても、DIPを発給している。なお、OSGE社は11月9日、欧州諸国の石炭火力発電所をSMRに転換しクリーン・エネルギーへの移行を直接支援するという米国務省(DOS)の新しいイニシアチブ「プロジェクト・フェニックス」で、同社が支援対象に加えられたことを明らかにした。「プロジェクト・フェニックス」では同社のほかに、スロバキア政府が34%出資するスロバキア電力(SE社)とルーマニア国営原子力発電会社(SNN社)にも、SMR建設計画の実行可能性調査や技術支援等で資金が提供される予定である。(参照資料:OSGE社の発表資料(ポーランド語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 11 Dec 2023
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米国務省と輸出入銀行 SMR等の輸出に財政支援
米国務省(DOS)は12月5日、CO2排出量の実質ゼロ化に向けた世界的な動きの中で、小型モジュール炉(SMR)など米国製の先進的原子炉システムの輸出・建設を促進するため、米輸出入銀行(US EXIM)を通じて一連の財政支援策を講じると発表した。DOSはまた、米、英、加、仏、日の5か国の共通認識として、原子燃料の製造能力拡大により原子力発電の導入を支援するとの方針を明らかにしている。SMRの輸出支援策は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されている国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で、DOSのB.ジェンキンス特命大使・軍備管理・国際安全保障次官とEXIMのR.J.ルイス総裁が表明した。US EXIMは政府系の輸出信用機関として米国企業の輸出事業促進を目的に、国際市場でこれらの企業が競争力を持ち大規模なプロジェクトを受注できるよう支援するほか、対象国には低金利融資を提供している。米国製SMRのシステム・機器の輸出申請に資金を提供するという決議は、EXIM理事会が11月30日付で承認していた。EXIMによると、同決議とそれに付随する一連の支援策は、EXIM独自の資金調達方策で米国製の安全・確実なSMRの輸出をサポートし、大規模で柔軟な資金調達を提供するためのもの。地球温暖化への対応とエネルギー供給保障という重要目標を達成するため、世界中が米国製のSMR導入に関心を示すなか、EIXMにはこうした動きへの対応として、適格な輸出申請の承認を加速する用意がある。このため、EXIMは新しく柔軟な複数の融資ツールを通じて、多くの借り手やプロジェクト関係者がプロジェクトの将来性を明確に見通せるようにする考え。具体的には、SMRの機器製造段階における輸出前支払い金の提供や利息に関する支援、融資保証や直接融資の返済期限を最大22年まで拡大することなどを挙げている。DOSの2件目の発表は、原子燃料サプライチェーンの確立に向けた多国間協力に関するもので、今年4月に札幌で先進7か国の気候・エネルギー・環境相会合が開催された際、原子力発電の重要性を強調した原子力フォーラムの米、英、加、仏、日の5か国――いわゆる「サッポロ5」の方針として、今回示された。これら5か国では今後3年間に、信頼性の高いサプライヤー全体でウランの濃縮・転換能力を拡大するため、政府が主導する投資や民間投資で少なくとも42億米ドルの投入を計画。世界的規模でウランのサプライチェーンが確保されるよう、趣旨に賛同する国々すべてを受け入れるとしている。(参照資料:米国務省、EXIMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Dec 2023
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UAE SMRやマイクロ炉の導入に向け米国ベンダー3社と覚書
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを担当する首長国原子力会社(ENEC)は、連邦内での小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の導入に向けて、12月3日から5日にかけて、これらを開発している米国ベンダーのGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社とテラパワー社、およびウェスチングハウス(WH)社の3社と、相次いで協力覚書を締結した。これらの覚書は、11月30日から12月12日までUAEのドバイで開催されている「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」の会期中に結ばれた。ENEC社はその開幕の前日、先進的な原子炉技術を通じて連邦の脱炭素化を加速するという「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を始動しており、3件の覚書締結は同プログラムの一環ということになる。UAEでは現在、連邦初の原子力発電設備となるバラカ発電所(韓国製の140万kW級PWR×4基)の建設が順調に進展中。連邦原子力規制庁(FANR)は11月17日に同発電所の4号機に運転許可を発給しており、2024年の起動が見込まれている。ENEC社によると、すでに営業運転を開始した1~3号機はアブダビ首長国におけるクリーン電力の80%以上を賄うなど、UAEの発電部門や重工業などエネルギー多消費産業の脱炭素化は大幅に進んでおり、2050年までにCO2排出量を実質ゼロ化するというUAEの目標達成に大きく貢献している。ENEC社は「アドバンス・プログラム」でこのような大型炉の建設経験と国際的な先進的原子炉サプライヤーのネットワークを統合、エネルギー多消費産業の脱炭素化を一層加速して、世界のクリーン・エネルギーへの移行を主導していく方針だ。同プログラムでは、SMRやマイクロ原子炉など最新の原子力技術を評価し、国内関係者や国際的なパートナーらとともにこれらの原子炉の建設に向けた具体的な道筋を決定付けるとしている。ENEC社はまず、12月3日にGEH社と協力覚書を締結しており、同社製SMR「BWRX-300」をUAEのみならず、中東地域やアフリカで建設する機会を共同で模索するとした。「BWRX-300」は電気出力30万kWの軽水炉型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証を取得した同社製原子炉「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」の技術や機器を最大限に活用している。両社は「BWRX-300」のように小型で経済的、かつ柔軟性の高い運転が可能な原子炉で安価なクリーン電力を生産し、エネルギーの持続可能性や脱炭素化を追求する世界の潮流に歩調を合わせていく。この協力はまた、UAEが米国と進めているクリーン・エネルギーの促進イニシアチブ(U.S.-UAE Partnership for Advancing Clean Energy=PACE)の目標を達成する一助にもなるとのこと。ENEC社はまた、4日にテラパワー社と協力覚書を締結、署名式にはテラパワー社のビル・ゲイツ会長が同席した。同社が開発した電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉「Natrium」で、送電網の安定化やクリーン・エネルギーへの移行促進に向けた共同評価を行う方針。「Natrium」は溶融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを組み合わせることにより、発電所のピーク時の電気出力を50万kWまで拡大して5時間以上稼働できるなど、コスト面の競争力が高いという。「BWRX-300」と同じく、「Natrium」を中東地域やアフリカ、南アジア地域でも建設することを目指し、両社が結んだライセンシング契約や「PACE」イニシアチブに基づいて「Natrium」の商業化を世界規模で進めていく。ENEC社はさらに、5日にWH社と協力覚書を締結しており、同社製のマイクロ原子炉「eVinci」をUAEやその他の国で建設し、CO2排出量実質ゼロ化に貢献する可能性を共同で研究する。「eVinci」は電気出力が最大0.5万kW、熱出力は1.3万kWで、遠隔地や鉱山等での熱電併給が主な目的だが、エネルギー供給保障や地球温暖化の対策としても解決策になり得るという。ENEC社はアドバンス・プログラムの牽引役としてSMRやマイクロ原子炉の技術を評価し、今後の建設につなげる考えだ。ENEC社のM.アル・ハマディCEOは、COP28 に向けたUAEのメッセージとして「原子力はCO2排出量の実質ゼロ化に不可欠のエネルギー源であり、UAEのクリーン・エネルギー化戦略においても中心的役割を担っている」と強調した。(参照資料:ENEC社の発表資料①、②、③、④、WH社、テラパワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Dec 2023
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英ロールス・ロイス社 月面基地用マイクロ炉の概念を公表
英国のロールス・ロイス社は12月1日、北アイルランドのベルファストで先週開催されていた「英国宇宙会議(UK Space Conference)」で、将来の月面基地に電力供給するモジュール式マイクロ原子炉の概念モデルを公表したことを明らかにした。同炉は政府の宇宙庁が資金援助する研究プログラムで開発されており、ロールス・ロイス社は今回の概念モデルは、同社の「最新の原子力技術チーム」がこれまでに実施した研究の集大成になると説明。同炉を月に向けて送り出す準備を2030年代初頭にも整えたいとしている。ロールス・ロイス社のマイクロ原子炉開発には、宇宙庁のほかに様々な大学や機関が協力中。これには、オックスフォード大学やラフバラー大学、ウェールズのバンガー大学のほか、シェフィールド大学の「先進製造研究センター (AMRC)」、溶接技術者協会、先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)などが含まれている。英国宇宙庁は今年2月、欧州宇宙機関の「ムーンライト計画」の一環として、月へのミッション用通信・ナビゲーション・サービスの開発で5,100万ポンド(約95億円)を国内企業に提供すると発表した。ロールス・ロイス社との提携はこの一環で、翌3月に月面基地における原子力の活用研究資金として290万ポンド(約5億3,900万円)を同社に支払っている。同社の研究プログラムでは、「熱を発生させる燃料」と「熱の伝達手段」および「熱を電力に変換する技術」の3点に集中的に取り組んでいる。ロールス・ロイス社によると、すべての宇宙探査ミッションの成否は十分な動力を確保できるか否かにかかっており、自給自足型で電力密度が高いマイクロ原子炉は、惑星表面の探査や居住に電力供給するとともに、宇宙船に電力や推進力を与えることも可能。人工衛星では、電力や推進力の継続的な供給によって一層柔軟に動けるようになり、重要な軌道を防御できる。また、マイクロ原子炉はその他の動力供給システムと比べて小型で軽量なため、太陽光が届かないなど悪環境条件下でも継続的に電力の供給が可能である。ロールス・ロイス社は、マイクロ原子炉の活用ポテンシャルは幅広く、宇宙探査ミッションのみならず、軍事利用や商業利用も可能だと指摘。開発の主目的は世界中の複数市場に電力や推進力を提供することだが、同炉は世界中で進められているCO2排出量の実質ゼロ化にも貢献できるとしている。なお、ロールス・ロイス社は、小型モジュール炉(SMR)の開発子会社であるロールス・ロイスSMR社を通じて、英国内の4サイトでSMR発電所の最初の一群(合計出力:約1,500万kW程度)を稼働させることを計画中。ロールス・ロイスSMR社は2021年11月、PWRタイプで出力47万kWの同社製SMRについて、包括的設計審査(GDA)の実施を政府に申請しており、原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)は2022年4月から同審査を開始した。同年8月にはオランダでの同社製SMRの建設に向けて、同社は現地の新興原子力事業者と協力独占契約を締結。同年11月には、英国内の有力な建設候補地としてイングランドとウェールズにある閉鎖済みの原子力発電サイトなど、4地点を選定した。また、今年2月にポーランドで同社製SMRを建設するため、現地企業と協力趣意書(MOI)を交わしたほか、3月には北欧とウクライナでの建設を念頭に、複数の関係企業と協力覚書を締結している。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Dec 2023
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仏EDF カナダ、チェコ、インドの事業者やサプライヤーと協力協定
フランス電力(EDF)は11月28日、フランス製の大型原子炉や小型モジュール炉(SMR)の新規建設を通じて世界的なクリーン・エネルギーへの移行を促進していくため、カナダ、チェコ、インドの発電事業者や機器サプライヤーとそれぞれ戦略的協力協定を締結した。これらの協定は、フランス原子力産業協会(GIFEN)が主催する民間原子力コミュニティ最大のマーケットプレイス「世界原子力展示会(WNE)」がパリで開幕したのに合わせて結ばれた。フランス政府も同日、民生用原子力分野における協力の強化で、カナダ政府と共同声明を発表している。今回のWNEでは地球温暖化対策としての貢献が期待される原子力について、十分な工業力や人的資源を確保する重要性が強調されており、EDFはこの機会を捉えてフランスが開発した複数の原子炉技術やサービス、ノウハウ等をアピール。クリーン・エネルギー社会への移行にともない、欧州や世界中の将来的なエネルギー・ミックスの中で原子力の果たす役割について同社の展望を国外パートナーと共有し、相互利益や社会経済的価値の創造を目的とした長期的な協力を通じて、欧州およびその他の国々で原子力開発を加速するとの意欲を改めて表明している。今回の協力協定への調印には、EDFのR.レモン会長兼CEOが同席。これらの協定が目指すものとして、EDFは傘下のフラマトム社が開発した第3世代+(プラス)のPWR設計「欧州加圧水型炉(EPR)」や、EDFが中心となって開発中のSMR「NUWARD」を欧州その他の国々で建設していくため、現地の産業界やサプライチェーンと確固たる協力関係を築くことなどを挙げている。今回EDFと協力協定を結んだ各国の企業は以下の通り。カナダ: EDFは今回、オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と基本合意書(LOI)を交わしており、EPRを同州あるいはカナダの他の州で建設する際、このLOIに基づいて包括的な評価を共同で行うことになる。新規建設に関する両国間の協力には大きなポテンシャルが見込まれることから、EDFは翌29日にWNEの枠内で「仏加サプライチェーン・ワークショップ」を開催すると表明。これにはOPG社のほかに、カナダの建設大手エーコン(Aecon)グループや発電事業者のブルース・パワー社、フランスの大手ゼネコンであるブイグ(Bouygues Travaux Publics)社、フランスを拠点とする国際的な原子力エンジニアリング企業のアシステム(Assystem)社、EDF傘下のフラマトム社など20社以上が参加を予定。米国のBWXテクノロジーズ(BWXT)社や、GE社の電力・エネルギー事業を統合したGEベルノバ(Vernova)社((2024年初頭に上場企業として独立・分社化が予定されている。))もこれに加わるとしている。チェコ:チェコでは現在、ドコバニ原子力発電所5号機の建設入札が行われており、EDFはEPRの出力を120万kW級に縮小した「EPR1200」を提案中。このため、落札した場合に備えて、EDFは同国のエンジニアリング関係企業で構成されるチェコ・エネルギー産業連合(CPIA)やクレーン会社のADAMEC社、世界シェア第一位の産業用蓄電池メーカーのEnerSys社、ポンプ機器メーカーであるISH Pumps社などと協力協定を結んだ。インド:インド南西部のジャイタプールでは、合計6基のEPR(160万kW級)建設が計画されているため、EDFは今回、インド政府が世界の研究開発・製造ハブとなることを目指して掲げている国家産業政策「メイク・イン・インディア」に沿って、インドのバーラト重電公社(BHEL)がプロジェクトに最大限参加できるよう同社と了解覚書を締結。両社はEPR建設でさらなる協力や、「NUWARD」関係の協力の機会も模索していく考えだ。このほか、フランスとカナダの両政府が今回発表した民生用原子力分野の共同声明では、両国は安全・確実なエネルギー供給システムと世界経済のためのビジョン共有を表明している。世界が現在直面している課題を考慮すると、民生用原子力エネルギー分野で志を同じくするパートナー同士の協力の強化はこれまで以上に重要になると指摘。ロシアのウクライナに対する不当な侵略と気候変動の影響の増大により、世界のエネルギー情勢は根本的に変化しているため、同盟国間で協力する必要性は大幅に加速しているとした。両国はまた、原子力発電は廉価な低炭素エネルギーを提供すると同時に、信頼性の高いクリーン・エネルギー源としてエネルギー供給の安全性に貢献すると指摘。SMRなどの新型原子炉(ANR)は、CO2排出量を削減しつつエネルギー需要を満たすために、両国は大型原子炉やANR、SMR などのプロジェクトにとって極めて重要な、研究開発関係の協力を強化していく。このほか、ANRや SMR などの原子炉技術の利用促進が世界の安定的な発展に役立つことから、核不拡散関係の義務事項に沿ってこれらが確実に行われるよう、両国は経験共有や研究開発協力を進めていくとしている(参照資料:EDF、カナダ政府、OPG社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Dec 2023
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加オンタリオ州 サスカチュワン州のSMR建設へ協力拡大
カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は11月20日、100%子会社のコンサルティング企業であるローレンティス・エナジー・パートナーズ(Laurentis Energy Partners=LEP)社とともに、サスカチュワン州の州営電力であるサスクパワー社の小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクトへの協力を強化すると発表した。OPG社はカナダで稼働する全19基の商業炉のうち18基を所有しており、原子力発電所が立地しないサスカチュワン州のSMR導入計画を引き続き支援するため、これまで実施してきた原子力関係の協力を拡大。LEP社とサスクパワー社が今回締結した5年間有効な「マスター・サービス協定(MSA)」を通じて、OPG社が原子力発電所の運転で蓄積した経験や専門的知見、技術的資源などをサスクパワー社と共有するほか、今後協力の可能性がある分野としてプロジェクト開発や発電所の運転などを挙げている。3社の発表によると、この協定はサスカチュワン州におけるSMR開発の効率化を目的としたもので、両州間の長期的な戦略協力の基盤になる。LEP社は具体的に、建設プログラムの管理や許認可手続き、発電所の運転に向けた準備活動等に集中的に取り組むとしており、両州の産業サプライヤーを調整してカナダで複数のSMR建設を可能にするほか、両州の大学や職業訓練校とも協力して技術力を改善。サスカチュワン州がクリーンで信頼性の高い原子力を電源ミックスに加えられるよう、サポートしていく考えだ。OPG社は2021年12月、オンタリオ州内のダーリントン原子力発電所で建設するSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」を選定。今年7月には追加で3基建設すると表明しており、2028年末までに初号機を完成させた後、2029年末までの運転開始を目指している。サスクパワー社は2022年6月、同州で建設する可能性がある初のSMRとして同じく「BWRX-300」を選定したが、これはオンタリオ州の方針に追随することで初号機建設にともなうリスクの回避を狙ったもの。現在、建設候補地を選定中で、2029年に建設実施の判断が下れば、2030年代半ばまでに最初のSMRの運転を開始する。3社の今回の発表に同席したオンタリオ州エネルギー省のT.スミス大臣は、「OPG社が培ってきた知見やサプライチェーンを活用し、サスカチュワン州のみならずカナダ全土や世界中でSMRの建設計画を支援する準備ができている」と表明。サスカチュワン州のD.ダンカン・サスクパワー社担当大臣は、「今回の協定は両州にとって有益なだけでなく、今後数十年にわたりカナダのエネルギー供給保障を持続的に支えていく」と強調している。カナダでは2019年12月、オンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州が「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」を締結しており、2021年4月にアルバータ州もこれに参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた「共同戦略計画」を策定している。(参照資料:OPG社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 22 Nov 2023
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ロシア ノリリスク地方の金属採鉱事業にSMRの利用を検討
ニッケルやパラジウムなど非鉄金属の採鉱で世界的大手企業であるロシアのノリリスク・ニッケル(Norilsk Nickel)社は11月13日、ノリリスク産業地区における電力供給源として小型モジュール炉(SMR)の利用可能性を探るため、ロシアの原子力総合企業ロスアトム社と合意文書に調印した。ロシア北部のノリリスク-タルナフ地域に位置する同産業地区は、ロシアの主要送電網から離れているため、安定したエネルギー供給システムが強く求められてきた。今回の合意に基づき、ノリリスク社は独自の戦略開発計画に沿ってSMRが導入可能か調査する方針。ロスアトム社が開発した最新の陸上設置式SMR「RITM-400」を最有力候補に、複数のオプションを比較評価するほか、立地に最も適した地点をロスアトム社とともに選定。必要となるインフラ設備なども確認する。候補炉である「RITM-400」は電気出力8万kW~9万kWとなる予定だ。ロスアトム社はこれまでに傘下のOKBMアフリカントフ社を通じて、海上浮揚式原子力発電所(FNPP)に搭載するSMRとして「KLT-40S」(電気出力3.5万kW)や「RITM-200M」(電気出力約5万kW)、陸上用として「RITM-200N」などを開発。極東のチュクチ自治区では、世界初のFNPPとして「KLT-40S」を2基搭載した「アカデミック・ロモノソフ号」が、2020年5月から同地区内のペベクに電力を供給中である。同地区ではまた、バイムスキー銅鉱山プロジェクト用として、鉱山近郊のナグリョウィニン岬に「RITM-200M」を2基搭載した「最適化・海上浮揚式原子炉(OFPU)」の配備が進められている。 このほか、ロシア北東部に位置するサハ共和国ウスチ・ヤンスク地区では、陸上用の「RITM-200N」を2028年までに完成させる計画があり、連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)は2021年8月、ロスアトム社の国際事業部門としてこの計画を担当するルスアトム・オーバーシーズ社に、建設許可を発給している。(参照資料:ノリリスク・ニッケル社、ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Nov 2023
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ノルウェー ハルデンでのSMR建設で3者が可能性調査実施へ
ノルウェー南部のハルデン自治体と新興エネルギー企業のノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社、およびエストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社は11月10日、かつて研究炉が稼働していたハルデンで小型モジュール炉(SMR)建設の実現可能性を探るため、共同でハルデン・シャーナクラフト社(Halden Kjernekraft AS)を設立した。同社の調査結果に基づき、後の段階で建設の是非を決定する方針だ。3者の発表によると、オスロ特別市や近隣のアーケシュフース県、ハルデンなど18の自治体を含むエストフォル県では目下、160億kWhの電力不足に陥っているという。国内送電網を所有・運営する国営企業のスタットネット社は、この地域で新たな発電・送電容量を追加しない限りこの需要を満たせる設備はなく、現行計画のままでは2035年までこうした設備の追加は望めないと警告している。ハルデンでは1950年代から2018年6月まで、60年以上にわたりエネルギー技術研究所(IFE)がハルデン研究炉(BWR、最大熱出力2.5万kW)を運転。この実績に基づいて同自治体は前日の9日、SMRの立地調査を行なう新会社の設立構想を決定した。同自治体は、「エストフォル県における電力不足の解消策としてSMRを加えるべきか、あらゆる可能性を模索すべき時が来た」と表明している。新たに設立されたハルデン・シャーナクラフト社にはハルデン自治体が20%出資するほか、ノルスク・シャーナクラフト社とエストフォル・エネルギー社がそれぞれ40%ずつ出資。ノルスク・シャーナクラフト社は近年、同国初の商業用原子力発電所となるSMRの建設計画を独自に進めており、この計画についてフィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)のコンサルティング子会社から支援を得るため、今年6月にこの子会社と基本合意書を交わした。ノルスク社はすでにノルウェー国内で複数の立地候補地を特定しており、これらの自治体と結んだ協定に基づき、今月2日には候補地の一つで調査プログラムの実施を石油・エネルギー省に申請している。ノルスク・シャーナクラフト社のJ.ヘストハンマルCEOは、「ハルデンでは原子炉が長期間稼働していたため、適切な判断を下すだけの専門的知見があり住民も抵抗がない」と指摘。長期的な雇用の創出も見込まれることから、原子力が同自治体の電力需要に貢献するか徹底的に調査することは、意義があると述べた。エストフォル・エネルギー社は、エストフォル県の全自治体、および同県が所在するヴィーケン地方の議会が共同保有するエネルギー企業で、ハルデン自治体も7.67%出資している。水力を中心に太陽光や風力など、様々な再生可能エネルギーで電力を供給中だが、同社のM.バットネ取締役は「原子力は再エネの代替エネルギーというより、再エネを長期的に補完していくエネルギーになり得る」と強調。「最新の原子力発電所は、敷地面積が小さく運転時間が長いなど有利な点も多いが、十分な解決策を要する課題も多いため、今回の調査も含めて様々な議論を行うべきだ」としている。(参照資料:ハルデン自治体、ノルスク・シャーナクラフト社、エストフォル・エネルギー社の発表資料(すべてノルウェー語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月10日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Nov 2023
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オランダでのSMR建設計画 3社が合意
オランダのULCエナジー社が同国内で進めている英ロールス・ロイスSMR社製小型モジュール炉(SMR)の建設計画に、同国の建設企業BAMインフラ・ネーデルランド社が加わった。3社はそのための基本合意書に11月7日付で調印しており、ロールス・ロイスSMR社のSMRを標準設計としてオランダで複数基建設し同国のクリーン・エネルギーへの移行を促すなど、長期的に協力していくことを確認した。原子力プロジェクトの開発企業であるULCエナジー社は、2022年8月にオランダ国内でロールス・ロイスSMR社の技術を使用する独占契約を同社と締結。実証済みの技術に基づく最新鋭のモジュール式原子炉の建設を通じて、信頼性の高い安価なエネルギー供給システムを構築することになる。ロールス・ロイスSMR社は、英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社として2021年11月に設立された。同社によると、同社製SMRは既存のPWR技術を活用した出力47万kWのモジュール式SMRで、少なくとも60年間稼働が可能。ベースロード用電源としての役割を果たすほか、不安定な再生可能エネルギーを補い、再エネ電源の設置容量拡大にも貢献できるという。2022年4月からは、英原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同炉について「包括的設計審査(GDA)」を開始している。また、英政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)は2021年11月、民間部門で行われている投資支援のため、同社に2億1,000万ポンド(約391 億円)を提供すると約束。ロールス・ロイスSMR社はすでに英国内の建設候補地として、閉鎖済みの原子力発電所サイトなど4地点を選定しており、2030年代初頭にもSMR発電所を送電網に接続することを目指している。国外ではポーランドやウクライナ、スウェーデン、フィンランド等での建設に向けて、協力覚書を結んでいる。BAMインフラ・ネーデルランド社は、欧州の建設大手であるロイヤルBAMグループの傘下企業で、オランダでは150年以上にわたり様々なインフラ設備を建設してきた。ロールス・ロイスSMR社のSMRは、1基でオランダ国内の140万世帯に十分なクリーン・エネルギーを供給できるほか、工場で製造したモジュールを現地で組み立てることで従来の大型炉と比べて工期が短くなり、世界中で幅広く利用が可能と高く評価している。BAMインフラ・ネーデルランド社のS.デンブランケン商業事業開発理事は今回、「戦略的パートナーとなったロールス・ロイスSMR社、ULCエナジー社とともにクリーン・エネルギーへの移行に向けた長期計画を作成する」と表明。「SMRという強力な解決策を通じて、迅速かつリスクを最小限に抑えながらオランダにイノベーションをもたらし、一層持続可能な国にしたい」と抱負を述べた。ロールス・ロイスSMR社サプライチェーン・グループのR.エベレット・グループリーダーは、「ロイヤルBAMグループとは英国子会社のBAMナットル社を通じてすでに協力関係にあるので、今回の合意に基づいて事業機会を模索していく」と表明している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社、BAMインフラ・ネーデルランド社(オランダ語)、ULCエナジー社(オランダ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 14 Nov 2023
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米ニュースケール社のSMR初号機建設計画が打ち切り
米国のユタ州公営共同事業体(UAMPS)とニュースケール・パワー社は11月8日、エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所(INL)でニュースケール社製小型モジュール炉(SMR)の初号機建設を目指した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を打ち切ると発表した。UAMPSの100%子会社であるCFPP社が進める同プロジェクトでは、電気出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)で、最初のモジュールを2029年までに完成させることを計画。これに向けて、CFPP社は今年の7月末、建設・運転一括認可(COL)申請の最初の部分となる「限定工事認可(LWA)」を米原子力規制委員会(NRC)に申請しており、2024年1月にはCOL申請の残りの部分を提出するとしていた。今回の発表で両社は、プロジェクトの継続に十分な資金が得られる可能性が低いことが判明したと述べており、協議の結果、最も賢明な判断としてプロジェクトを打ち切ることで合意したと説明している。ニュースケール社は2020年9月、出力5万kWの「NPM」について、SMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」をNRCから取得しており、2023年1月には「設計認証(DC)」を取得した。同じ月に同社は、出力7.7万kWの「NPM」を6基備えた設備についてもSDAを申請したが、NRCは同社に補足資料の追加提出を要求。今年3月から補足資料を必要としない部分について安全関係の審査を開始したものの、同申請を正式に受理したのは7月末のことである。SDA審査はA~Dまで4フェーズで構成されているが、現時点ではニュースケール社からの資料提出待ちの部分が多く、最初のフェーズAも完了していない。UAMPSは、米国西部7州の電気事業者約50社で構成される公共電力コンソーシアム。域内の高経年化した化石燃料発電所を原子力等のクリーン・エネルギーで段階的にリプレースし、クリーンな大気を維持するという独自の「CFPP」を2015年から推進していた。2016年2月にDOEから、INLにおけるSMR建設を許可されており、2020年10月には、NPMを複数基備えた発電設備の建設・実証を支援する複数年の補助金として13億5,500万ドルを獲得している。CFPP社の「VOYGR-6」の建設については、ニュースケール社が2022年12月に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注。原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器の配管等を調達するとしていた。ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOは今回、「過去10年以上にわたるCFPPのお陰で、当社の技術は商業炉の建設段階まで到達した。今後は国内外のその他の顧客とともに当社の技術を市場に届け、米国における原子力製造基盤の成長や雇用の創出に貢献したい」と述べた。UAMPSのM.ベイカーCEOは、「当社も含めた関係各位のCFPPに対するこれまでの努力を思うと、この決定は非常に残念だが、CFPPで我々は多くの貴重な教訓を学んでおり、UAMPS会員の将来のエネルギー需要を満たすため、今後の作業を進めていく」としている。米国内ではこのほか、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合が2022年2月、供給区内でニュースケール社製SMRの建設可能性を探るため、了解覚書を締結した。国外では、ポーランドの鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が2022年2月、「VOYGR」設備の国内建設に向けてニュースケール社と先行作業契約を交わしている。また、ルーマニアでは同年5月、南部のドイチェシュティで「VOYGR-6」を建設するため、国営原子力発電会社とニュースケール社、および建設サイトのオーナーが了解覚書を結んだ。(参照資料:ニュースケール社、UAMPSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Nov 2023
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スウェーデン リングハルス増設に向け地元自治体に計画申請
スウェーデン国営のバッテンフォール社は11月1日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR×2基、各約120万kW)の西側に小型モジュール炉(SMR)を少なくとも2基建設するため、詳細計画の策定申請書を地元ヴァールベリ市に提出すると発表した。同社はすでに同半島で約1km2の土地を確保済みだが、9月からは建設準備に向けて追加分の土地購入手続きを開始。建設の最終投資判断(FID)は、必要な許認可をすべて取得した後に下す予定で、初号機の運転開始は2030年代初頭を目指している。今回の申請書では、現時点の計画として「運転エリア」に原子炉建屋や補助建屋を建設するほか、「諸活動エリア」で作業工場や貯蔵所、事務スペース、食堂などを設置する青写真を提示。今後はリングハルス発電所の既存インフラを、新規SMRとどの程度共有できるか調査していく。スウェーデンでは2022年9月の総選挙で中道右派連合の新政権が発足し、同年10月のティード城における政策協議で、環境法に記されている原子力発電関係の禁止事項(新たなサイトでの原子炉建設禁止、同時に運転できる原子炉の基数は10基まで、閉鎖済み原子炉の再稼働禁止)を撤廃すると決定。2040年までにエネルギー供給システムを100%非化石燃料に変更するため、2026年までに合計4,000億クローナ(約5兆5,000億円)の投資を行い、原子炉の建設環境を整えるとした。今年1月には、U.クリステション首相が環境法の改正を提案しており、政府は9月末に同法の改正法案を議会に提出、2024年1月初頭にも同法案が成立・発効することを目指している。バッテンフォール社は2022年6月から、リングハルス発電所でSMR建設に向けた諸条件の予備調査を始めており、急速な増加が見込まれる電力需要を非化石燃料電源で賄えるか調査中。リングハルス発電所では2020年末までに1、2号機が永久閉鎖されたことから、従来の大型炉やSMRであっても、既存の環境法の規定範囲内でリプレース用原子炉としての建設が可能である。また、送電インフラが整っており新設炉との接続が容易であるなど、同社は複数の理由から建設に適していると判断、この予備調査は年末までに完了する見通しだ。同社はこのほか、今春から環境影響声明書(EIS)の作成に向けて地盤調査などのフィールドワークを開始。夏以降は、原子炉ベンダーへの要求事項に関する作業も開始したことを明らかにしている。なお、政府の気候・ビジネス省は11月2日、エネルギー供給システムの100%非化石燃料化に向けて、原子炉建設に関する許認可手続きの迅速化と簡素化に向けた分析調査を開始した。大型炉やSMRの建設加速の条件整備には、規制の枠組みや申請審査等の効率化が欠かせないとの判断によるもの。これにより、安全保障の基本要件でもある盤石なエネルギー供給システムを確保するとしている。(参照資料:バッテンフォール社の発表資料(スウェーデン語)①、②、スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 08 Nov 2023
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