キーワード:小型モジュール炉(SMR)
-
スウェーデン首相 原子炉の新設に向け法改正を提案
昨年10月にスウェーデンで発足した中道右派連立政権のU.クリステション首相は1月11日、環境法に記されている原子力関連の制限事項の撤廃を提案した。多くのサイトで原子炉の新設を可能にすることが目的。現行法では、新たなサイトでの原子炉建設が禁止されているほか、同時に運転できる原子炉の基数も10基までに制限されている。これらを撤廃することで、クリステション政権は中道左派の前政権が提唱していた「2040年までに100%再生可能エネルギーのエネルギー供給システムに移行」を、「(再エネのみに限定しない)非化石燃料100%のシステム」に変更。小型モジュール炉(SMR)も含めた数多くの原子炉を国内で建設することにより、CO2を排出せずに安価な電力を潤沢に発電し、産業界や輸送部門の電化を進めていく。また関係雇用を創出しスウェーデンの競争力を強化、グリーンなエネルギーシステムへの移行を促進する。原子力発電は堅固なエネルギー供給システムを構築するインフラとして、同国のエネルギーミックスに必要だと強調している。クリステション首相は今回、この提案を気候・企業省で気候・環境問題を担当するR.ポルモクタリ大臣とともに発表した。同提案については、今後3か月にわたり一般から幅広く意見を募集し、今年の夏以降に正式に法改正を提案、2024年3月にも改正法を発効させたいとしている。クリステション政権は右派勢力である穏健党などの3党、および閣外協力するスウェーデン民主党による連立政権で、原子炉の新設と維持に関する今回の方針は、2022年10月にティード城における4党の政策協議で合意されていた。この「ティード合意」では、2045年時点の電力需要が少なくとも3,000億kWhになることを見込んでおり、現在の倍の規模となるこの需要を安定的に満たすため、原子炉の新設を含め、合計4,000億クローナ(約4兆9,400億円)の投資を実施する。具体的な方策として同首相は今回、規制当局であるスウェーデン放射線安全庁(SSM)の予算を拡充し、既存炉や新設炉に関する許認可手続きを規制の見直しで迅速化すると表明。原子力の研究開発予算も増額する。また、より多くの事業者が原子炉を建設できるよう門戸を開き、SMRの建設と運転に向けた条件整備として関係規制を制定。SMRでは発電のみならず、水素や高温熱の製造にも利用を広げる方針である。スウェーデンでは現在、6基の商業炉で総発電量の3割を発電するなど、原子力は水力と並ぶ主力電源だが、1980年には前年のTMI事故とその後の国民投票の結果を受け、2010年までに脱原子力を達成するという政策を施行した。1999年と2005年にバーセベック1、2号機を閉鎖したものの代替電源の確保が進まず、2006年に発足した中道右派政権は2010年に脱原子力政策を見直し、当時運転中だった原子炉10基に限り建て替えを認める法案を議会に提出、同年6月に可決された同法案は2011年1月に発効した。しかし、2014年9月に社会党を中心とする中道左派連立政権(前政権)が発足。政権内の政策協議で、「原子力は将来的に再生可能エネルギーとエネルギーの利用効率化で代替する」、「原子力発電所の安全要件を厳格化し、放射性廃棄物基金の徴収額を増額する」などの方針を打ち出し、再び原子力利用を制限する方針に傾いていた。(参照資料:スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jan 2023
- NEWS
-
米ニュースケール社 出力7.7万kWのSMRで設計承認申請
米ニュースケール・パワー社は1月4日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」のうち、単基の電気出力が7.7万kWのモジュール設計について、1日付で原子力規制委員会(NRC)に「標準設計承認(SDA)」を申請したと発表した。NRCはすでに2020年9月、出力5万kWのNPMに対してSDAを発給済み。ニュースケール社は2018年6月にモジュールの出力を20%増強して6万kWとし、さらに2020年11月には先進的試験のデータやモデリング・ツールによる分析結果から、出力を25%増強した7.7万kW版を設計していたもの。今回の申請は、顧客が希望する出力レベルに応じて、同NPMを6基搭載した原子力発電設備「VOYGR-6」(出力46.2万kW)の建設を念頭に置いている。7.7万kW版も基本的な安全性能は5万kW版と同じであり、この出力増強によってNPMの経済性はさらに改善されると強調している。ニュースケール社によると現時点でNRCの承認が得られたSMRはNPMのみであり、このことは同社のみならず原子力産業界全体にとって重要な節目となった。最初の1件が承認されたことで、2件目の審査は一層効率的かつ効果的に進むと同社は指摘。7.7万kW版のNPMについては、すでにNRCが申請前から予備的協議と申請の準備状況に関するレビューを進めていたという。NRCがNPMの安全性を認めたことで、「VOYGR」の建設を目指すルーマニアやポーランドの計画が過去2年の間に大きく進展した。ルーマニアでは2022年5月に、国営原子力発電会社(SNN)が建設サイトのオーナーとともにニュースケール社と了解覚書を締結。SNNは同年10月、民間のエネルギー企業と共同でプロジェクト企業を設立した。ポーランドでは2021年9月、鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社らがニュースケール社と協力覚書を締結。採掘事業に必要な電力や熱エネルギーを石炭火力発電所ではなく、SMRで供給することを検討している。2022年2月には、両社は「VOYGR」の建設に向けて先行作業契約を締結した。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jan 2023
- NEWS
-
サムスン重工 海上浮揚式原子力発電所の概念設計を完了
韓国のサムスン重工業(SHI)は1月4日、デンマークのシーボーグ(Seaborg)社製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式の原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計を完了したと発表した。また、アメリカ船級協会(ABS)から、初期段階の実行可能性を認証したことを意味する「原則承認(AIP)」を取得したことを明らかにした。SHI社の造船技術と溶融塩炉の開発企業であるシーボーグ社の技術を融合した「CMSRパワー・バージ」は、電気出力10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能。船体には蒸気タービン発電機や陸上の送・配電施設と接続する設備も備わっており、設置点まではタグ・ボート等で曳航されるためサイト選定上の制約が少ない。また、製造期間が約2年と短いことから、コストも大幅に軽減されると指摘している。今後は同バージの設備について詳細設計を進め、2028年までの商業化を目指す方針だ。同バージは化石燃料発電所を代替する熱電併給設備として需要が見込まれるだけでなく、水素製造や海水脱塩、産業用の熱供給施設にも幅広くエネルギーを供給できるとしている。SHI社はすでに2021年6月、溶融塩炉(MSR)技術に基づく小型モジュール炉(SMR)で海上浮揚式原子力発電所や原子力船を開発するため、熱電併給可能なSMR「SMART」(電気出力10万kW)の開発実績を持つ韓国原子力研究院(KAERI)と協力協定を締結した。その際KAERIは、MSR内部で異常信号が発生した場合、液体燃料の溶融塩が凝固するよう設計されているため重大事故の発生を抑制できると説明。このような固有の安全性に加えて、MSRには電力と水素を効率よく生産できるという利点があり、次世代のグリーン水素製造など様々な分野で活用が可能である。2022年4月には、SHI社は溶融塩炉の技術についてシーボーグ社と戦略的技術協力の覚書を締結した。この覚書に基づき、両社は「CMSRパワー・バージ」をターンキー契約で製造・販売し港湾に係留するほか、陸上の送電施設と接続することを計画。協力オプションとして、同バージの近くに水素やアンモニアの製造プラントを共同建設し、同バージから安全かつクリーンな電力を安定的に供給するとしている。SHI社の開発担当者は、「引き続き海上浮揚式原子力発電所の開発を進め、将来的に新たな市場を開拓していきたい」と述べた(参照資料:サムスン重工業、シーボーグ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Jan 2023
- NEWS
-
フィンランドのフォータム社 スウェーデンでのSMR建設に向け地元企業と覚書
フィンランド政府が株式の過半数を保有するエネルギー企業のフォータム社は12月15日、スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設機会を探るため、スウェーデンのプロジェクト開発企業であるシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社と了解覚書を締結したと発表した。フォータム社は今年10月、フィンランドとスウェーデンの両国で、大型炉やSMRなど新たな原子力発電所の建設に向けた実行可能性調査(FS)を2年計画で実施すると発表。KNXT社との覚書はその一環であり、スウェーデンで商業面や技術面、社会面の新設要件を特定するFSの実施に協力して取り組んでいく。両社の発表によると、スウェーデン初のSMRを稼働させる時期については、現状では禁止されている新たなサイトでの原子炉建設や10基までに制限されている運転中原子炉の基数など、法制面や許認可関係の制限事項がどの程度撤廃されるかにかかっている。地球温暖化への対応策として、フォータム社はクリーン電力への需要が今後数十年間で大幅に高まると予想。スウェーデン政府が掲げた温暖化防止目標を達成するには、CO2を排出しない電源の大規模な拡大が求められており、産業界からはSMRの持つ可能性に期待が高まっていると指摘している。フォータム社は、SMRであれば産業界や各自治体に価格の安定した無炭素な電力や熱、水素を提供できると考えており、新たな原子力発電所を風力発電設備とともに建設していくことは、地球温暖化への対抗手段になると強調。同社とKNXT社の異なる能力を生かし、互いに補い合ってSMR建設を進めていきたいと述べた。なお、フォータム社は今回の発表に先立つ今月8日、同FSにおける活動の一部として、フランス電力(EDF)と協力するための枠組み協定を締結した。EDFは2019年9月、原子力・代替エネルギー庁(CEA)などとの協力により、実証済みのPWR技術とモジュール方式を取り入れたSMR「NUWARD」(電気出力34万kW)を開発したと発表。仏フラマトム社らが開発した欧州加圧水型炉(EPR)の建設を欧州全土で進めつつ、NUWARDについても2030年から実証プラントの建設に取り掛かる計画である。フォータム社は先進的原子炉建設に関するEDFのこのようなアプローチも取り入れて、北欧で新たな原子力発電所の建設機会を探る方針である。フォータム社はまた、このFSの一環で先月、ヘルシンキ市が保有するエネルギー企業のヘレン社と、SMRの建設に向けた協力の可能性を模索すると発表した。ヘレン社は同市内のプラントで熱や電力を生産・供給しており、無炭素な熱電併給が可能なSMRは注目に値すると述べている。一方のKNXT社は今年3月、スウェーデンで複数のSMRを可能な限り迅速に建設するため、米国でSMRを開発中のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と了解覚書を締結している。KNXT社は、環境保全技術のスタートアップ企業であるシャーンフル・フューチャー(Kärnfull Future)社の100%子会社であり、KNXT社のC.ソーランダーCEOはフォータム社について、「稼働率の高いロビーサ原子力発電所を運転するなど、原子力関係の優れた知見を幅広く有している」と評価。同社との協力を通じて、安価でより良い総合的な解決策を顧客に提案できるとしている。(参照資料:フォータム社、シャーフル・ネキスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Dec 2022
- NEWS
-
米ThorCon社 インドネシアで溶融塩炉搭載バージの建設検討へ
フランスの検査認証企業であるビューロー・ベリタス(Bureau Veritas)社の12月14日付発表によると、同社と米国の原子力技術デベロッパーであるThorCon社は、インドネシアでThorCon社製溶融塩炉「ThorCon」(電気出力25万kWのモジュール×2基)を搭載したバージ(はしけ)の実証・建設に向けて協力することになった。具体的にビューロー・ベリタス社は、同炉に適用される安全基準やコードなどを特定し、その適用にともなうリスクの評価と取り組み方法等についてThorCon社を支援。少なくとも約3年をかけて、技術の認定プロセスを完了する。その後は実際に建設する可能性を探るため、さらに2年間で産業利用に関する実行可能性を評価するとしている。ThorCon社はこのバージの実証を行い最終的に設置する地点について、すでにインドネシアの国営電力(PLN)と原子力規制庁(BAPETEN)、およびスマトラ島の東方沖に位置するバンカ島とビリトゥン島(バンカ・ビリトゥン州)の州政府と協議中。船体に溶融塩炉を組み込んだバージは設置点の浅瀬まで引き船で曳航され、そこで送電網に接続、主に近隣地域の電力需要を満たすことになる。インドネシアは同炉で多量の電力を発電し、信頼性の高い低炭素エネルギーへの移行を図る考えだ。インドネシアでは電力需給のひっ迫等を理由に、1980年代に原子力発電の導入が検討されたが、建設予定地における火山の噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、100万kW級大型炉の導入計画はこれまで進展していない。一方、初期投資の小ささや電力網への影響軽減等の観点から、中小型炉への関心は維持されており、インドネシア原子力庁(BATAN)は2018年3月、大型炉導入の前段階として小型高温ガス炉(HTGR)を商業用に導入するため、熱出力1万kWの実証試験炉の詳細工学設計を開始している。ThorCon社は世界第4位の人口を擁するインドネシアについて、電力需要が今後も大幅に増加すると予想。このため、低コストで出力調整可能な無炭素エネルギーが緊急に必要な東南アジアで、同社の技術を最初に実現する国としてインドネシアを選定した。電力需要の増加を満たす実用的な対策を東南アジアに提供し、世界的な温暖化問題の解決に貢献したいとしている。ThorCon社の資料によると、同社は2018年にインドネシアのエネルギー省と覚書を交わし、出力50万kWの溶融塩炉の実証炉建設に関する実行可能性調査の実施で合意している。エネ省は2019年に国営電力会社とともにこの調査を完了し、実証炉の安全性と経済性および送電網への影響等を検証済みである。同社はまた、今年2月にインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)と原子力分野の研究開発と技術革新、中でもモジュール式溶融塩炉の開発に関する協力で覚書を締結。7月には、将来の溶融塩炉建設に向けて両者が合意したことを明らかにしていた。(参照資料:ビューロー・ベリタス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Dec 2022
- NEWS
-
米ニュースケール社 SMR関連機器の設計をフラマトム社に発注
米ニュースケール・パワー社は12月5日、同社製の小型モジュール炉(SMR)である「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の燃料取扱い装置と貯蔵ラックの設計契約を仏フラマトム社に新たに発注したと発表した。将来的にはこれらの機器をフラマトム社が製造することになっており、ニュースケール社は「SMRの機器製造とサプライチェーンの構築に向けた重要な一歩」と評価。これらの契約を通じて、ニュースケール社は顧客のスケジュールに沿って、2020年代末までにNPMを複数基備えた発電設備VOYGRの建設が可能になるとしている。ニュースケール社のNPMはPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、1モジュールあたりの出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。同社はまた、2021年12月に出力7.7万kWの「NPM」を複数搭載したSMR発電設備の呼称を「VOYGR」に決定。搭載基数に応じて、出力92.4万kWの「VOYGR-12」、46.2万kWの「VOYGR-6」、30.8万kWの「VOYGR-4」と名付けている。ニュースケール社によると、フラマトム社との協力関係は2014年にさかのぼり、フラマトム社はNPMのSDA取得に向けて、エンジニアリング・サービスの提供や許認可プロセスの分析等でニュースケール社を支援してきた。今回の協力拡大により、両社はVOYGRの建設と商業化をさらに進める考えだ。フラマトム社は今回の契約業務を遂行するのに際し、米ペンシルベニア州の起重機企業であるアメリカン・クレーン社、および仏オラノ社と連携する方針。これらの機器の既存設計をVOYGR設備の仕様に適応させて合理的な設計・製造方法を開発し、VOYGRの建設スケジュールを順守可能にする。燃料取扱い装置については、同社は本格的な遠隔操作機能を追加して性能強化を図るとした。また、高密度・使用済燃料貯蔵ラックの設計では、VOYGR設備独特の要件を満たすため関係技術を有するオラノ社とチームを組み、原子力産業界全体で培ってきた経験を活用するとしている。今回の契約を通じて、両社はこれまでの協力関係を一層強化しVOYGR設備の建設工事に至るまでこれを継続。世界中の多様なエネルギー需要に応えられるよう、VOYGR設備で柔軟性の高い発電オプションを売り込んでいく。また、フラマトム社としてはSMR機器の設計・製造能力をさらに向上させて、SMRを含む将来の先進的原子炉への機器・サービス提供でシェアを拡大したいとしている。(参照資料:ニュースケール社、フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Dec 2022
- NEWS
-
チェコ テメリン発電所でSMR初号機建設の地質調査を実施
チェコの国営電力(CEZ社)は12月2日、既存のテメリン原子力発電所で計画している同国初の小型モジュール炉(SMR)の建設準備作業として、初期の地質調査を完了したと発表した。建設サイトは正確には、テメリン発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の敷地南西部の外端に位置しており、複数の専門家が地盤のタイプや健全性を見極めるため、その状態を詳細に調査中。特別な振動発生機を使って地震波の到達速度や電気抵抗値などを計測するほか、深さ30mの調査抗も掘削して初期の調査結果を検証、地盤底土の組成なども分析する。CEZ社は現在、2015年5月の「国家エネルギー戦略」とこれをフォローする「原子力発電に関する国家アクション計画」に基づいて、既存のドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で大型原子炉の増設計画を推進中。ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)は今年3月、最初の増設1基(120万kW級)についてベンダーの競争入札を開始しており、11月30日には招聘した3社から最初の入札文書を受領している。CEZ社は大型炉とSMRの建設計画を並行して進めている。テメリン発電所におけるSMRの初号機建設は、他の場所でSMRを建設する際のモデルケースとなる予定で、国内の老朽化した火力発電所をSMRでリプレースとすると強調している。CEZ社は、テメリン発電所が立地する南ボヘミア州の「原子力パーク」プロジェクトとしてSMR建設を推進しており、同社と傘下の国立原子力研究機関(UJV Rez)、および南ボヘミア州政府は今年5月、共同で同プロジェクトを始動すると表明。これら3者は、プロジェクトの準備作業を調整する「南ボヘミア原子力パーク会社」の株主となり、SMR分野の研究開発と建設準備を実施している。採用するSMRについて、CEZ社はこれまでに米国のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、ホルテック社のほか、英国のロールス・ロイス社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)とSMR関係の協力覚書を交わした事実に言及。米ウェスチングハウス社とは、同プロジェクトについて集中的な協議を実施中であることを明らかにしている。CEZ社のT.プレスカッチ理事は、「(地質調査を実施中の地点が)SMR建設に最適だとの確信はあるが、建設前に地盤の状態やその他の影響ファクターを正確に把握しておかねばならない」と表明した。南ボヘミア州のM.クバ知事は、SMRについて「単にクリーンで安全な電力や熱を生産できるだけでなく、欧州の将来的なエネルギーミックスを支えることは確かだ」と指摘。SMRに加えて、人材の訓練センターも設置する機会にしたいと抱負を述べた。(参照資料:CEZ社の発表資料(チェコ語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Dec 2022
- NEWS
-
カナダNB州の港湾当局 SMR導入を目指す
米ARCクリーン・テクノロジー社の11月28日付発表によると、カナダ・ニューブランズウィック(NB)州の北部に位置するベルドゥーンの港湾管理局(BPA)がグリーン・エネルギー・ハブ化を目指し、ARC社製小型モジュール炉(SMR)の導入でプロジェクト開発企業のクロス・リバー・インフラ・パートナーズ社(CRIP)と協力することになった。BPAとCRIPはARC社カナダ法人による提案を受け入れたもので、同社が開発したナトリウム冷却・プール型高速中性子炉のSMR「ARC-100」(電気出力10万kW)で、電力と熱を生産する方針。ARC社は、BPAがNB州北部地域の経済成長を促す目的で計画しているクリーンエネルギーの特別開発地区「グリーン・エネルギー・ハブ」で同炉の建設を進め、同地区の様々な産業ユーザーのエネルギー源として活用する。今後の実行可能性調査や環境影響面の承認、カナダ原子力安全委員会(CNSC)による許認可手続き等を経て、2030年~2035年頃の商業運転開始を目指している。「グリーン・エネルギー・ハブ」構想は、BPAが最近公表した「2022年~2052年のマスター開発計画」における主要部分であり、BPAとCRIPはすでに今年8月、同地区で輸出用のアンモニア燃料を水素から製造する施設の建設で合意した。この施設ではCO2を排出しないエネルギーを動力として用いる予定であり、SMRの建設を加えることで同地区には地元やカナダ、および世界の市場にも貢献する新たな能力が備わる。同SMRはまた、水素の製造能力拡大や先進的製造業、金属製造業など、ベルドゥーンを本拠地とする産業のエネルギー源としても活用される。NB州では州営電力であるNBパワー社が2018年、同社のポイントルプロー原子力発電所敷地内で第4世代のSMRの実証炉を2種類建設するというプロジェクトを開始。この計画は、同州を含むカナダの4州が今年3月に策定した「カナダのSMR開発・建設の共同戦略」にも明記されており、ポイントルプローでの「ARC-100」建設は2種類のうちの1つ。2029年の運転開始が見込まれている。一方、ARC社が今回ベルドゥーンで提案した建設プロジェクトはNB州の経済規模拡大に貢献するだけでなく、同社のSMR技術が産業用エネルギー源として直接利用が可能であることを示す規範にもなる。同社のカナダ法人のB.ラベーCEOは、「ARC-100」が実証済みの技術と固有の安全性を備えているほか、モジュール式の低コストな建設と運転が可能である点を強調。その上で、「ベルドゥーンでの採用、および産業用として選定されたのは当然のことであり、NB州は『ARC-100』でカナダやその他の国のSMR建設でリーダー的地位を獲得する」と指摘した。 NB州のM.ホランド天然資源・エネルギー開発相も、同様の可能性を表明しており、「第4世代のSMR開発を牽引する当州としては、ARC社がベルドゥーンの『グリーン・エネルギー・ハブ』で、産業用のクリーンエネルギーを生産するSMRをカナダで初めて建設するのが楽しみ」としている。(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Dec 2022
- NEWS
-
米ニュースケール社 SMRで新たな水素製造を共同研究へ
米国で小型モジュール炉(SMR)を開発しているニュースケール・パワー社は12月1日、SMRを活用したクリーン水素の新たな製造コンセプトを共同で開発・実証するため、石油化学大手のシェル・グループに属する研究開発サービス・コンサルティング企業のシェル・グローバル・ソリューションズ(Shell Global Solutions)社、アイダホ国立研究所(INL)およびその他の関係企業と共同研究協定を結んだと発表した。協定に参加したのは同シェル社のほか、米国内でニュースケール社製SMRの初号機建設を計画しているユタ州公営共同事業体(UAMPS)と、その建設予定地であるINL、燃料電池開発企業のフュエル・セル・エナジー(Fuel Cell Energy)社、発電分野のコンサルティング・サービスを提供しているFPoliSolutions社とGSEソリューションズ社である。UAMPSは米国西部6州の地方自治体と共同組合48機関による卸売電力サービスの共同活動組織で、近年独自の「脱炭素化プロジェクト」を推進中。SMRの建設は同プロジェクトの一部であり、UAMPSは出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」発電所(出力46.2万kW)の建設で、2029年までに最初のモジュールの完成を目指している。今回の研究協定では、同プロジェクトが地方経済に与える影響についても評価が行われる予定で、エネルギーの需給管理がリアルタイムで行われる「インバランス市場」の影響もこれに含まれるとしている。ニュースケール社によると、同社のSMRは応用性に富んだ技術であるため、様々な再生可能エネルギー源に接続された電力網を安定させる可能性がある。電力需要が高いにも拘わらず再エネの発電量が低い場合、ニュースケール社はSMRで製造したクリーン水素は貯蔵エネルギー源や、高需要時の最終製品として活用できると考えている。今回の共同研究により、プラントの熱を有効活用する「水素製造の統合エネルギーシステム(IES)」を開発する方針である。IESは熱、電力、それらの貯蔵システムを統合することで、エネルギー効率の向上と、温室効果ガスの排出低減を目指している。まさに柔軟性を有するSMRに適したシステムと言われている。ニュースケール社は「固体酸化物形電解セル(SOEC)システム」で水素を製造し、SOECの逆動作である「可逆型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)」を用いて、貯蔵した水素から発電を実施する。これにより、変動する再エネをバックアップし、電力網の脱炭素化を目指す。このため同社は、まずSMR制御室のシミュレーターを改造してIESの動作を評価、その後モデル化したSOECと可逆型SOFCを導入するとしている。ニュースケール社の説明によると、SOECで水素を製造し発電用に一定量貯蔵するには複数のNPMが必要になる。同社のJ.ホプキンズCEOは、「世界規模で脱炭素化を進めるには水素の活用が欠かせない」とした上で、「当社製SMRによる低炭素水素でその達成に貢献したい」と述べた。シェル社で研究戦略を担当するD.スミット副社長は、今回の協定について「低炭素エネルギーへの移行支援と脱炭素化技術の模索という点で、当社の目標にも合致する」と評価している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 02 Dec 2022
- NEWS
-
ルーマニアのSMRプロジェクト企業 鉄鋼メーカーと協力覚書
ルーマニア初の小型モジュール炉(SMR)建設を計画している国営原子力発電会社(SNN)は11月15日、そのプロジェクト企業として設立したロパワー・ニュークリア(RoPower Nuclear)社が、国内鉄鋼メーカーのドナラム(Donalam)社と協力覚書を交わしたと発表した。ドナラム社は、欧州の鉄鋼産業界で100年以上の実績を持つイタリアの大手企業AFVベルトラム・グループ(AFV Beltrame Group )の傘下。この覚書を通じて、同社はルーマニア初のSMR建設に向けた協力と投資の機会をロパワー社とともに模索し、温室効果ガスの発生量が極めて少ない方法を用いた「グリーン・スチール」を通じて、電力集約型産業である鉄鋼業の課題解決を目指している。一方のSNN社は、国連環境計画(UNEP)の「(2022年版)CO2排出ギャップ報告書」にも示された通り、既存の温暖化防止対策ではパリ協定の目標達成に不十分と認識しており、CO2排出量を効果的かつ持続的に削減していくには原子力が不可欠と考えている。SNN社はドナラム社との協力により、SMRや太陽光が生み出すクリーンエネルギーで最初の「グリーン・スチール製造施設」の構築を支援し、業界内で同様の協力を促進していく考えだ。SNN社はルーマニア南部ドゥンボビツァ県のドイチェシュテイ(Doicesti)にある閉鎖済み石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのSMRを6基備えた米ニュースケール・パワー社製のSMR発電所「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設することを計画。今年9月には、この計画を進めるため、建設サイトのオーナーである民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁でロパワー社を設立した。今回の覚書への調印は、エジプトで開催されていた国連気候変動枠組条約・第27回締約国会議(COP27)の、国際原子力機関(IAEA)のパビリオンで映像中継の形で行われた。この調印と同時に、SNN社とドナラム社は国連の「24/7カーボンフリー電力同盟(CEC)」に参加する意思を表明。CECでは、一日24時間365日間、クリーンエネルギーを100%活用して、地球温暖化の影響を緩和できるような電力供給システムの構築促進を原則としている。この件についてロパワー社の社長を務めるSNN社のC.ギタCEOは、「後の世代に持続可能な未来を残すことは当社の使命であり、CECの原則とも完全に一致している」と説明。大小両方の規模で原子力発電所を国内で建設することでエネルギーの供給を保証し、CECが求める電力供給システムの脱炭素化を進めていく考えを強調した。SNN社によると、ルーマニアのSMR建設は大型原子炉や再生可能エネルギーと互いに補い合う役割を担っており、SMRのエネルギー生産施設に太陽光設備を加えることも念頭に置かれている。原子力と再エネを統合することにより、出力を自在に変えられる発電能力を確保するねらいだ。ルーマニアにおける原子力発電開発については、現在米国が協力の度合いを深めており、SNN社は国内でのSMR建設に向けて、2019年3月に米ニュースケール・パワー社と最初の協力覚書を締結した。翌2020年10月には、ルーマニア国内で建設工事が停止中のチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画と、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化に向けて、ルーマニアと米国の両政府が原子力分野における政府間協力協定(IGA)に調印している。2021年1月になると、ルーマニア国内でのSMR建設サイト選定に向けて予備的評価作業を行うため、米貿易開発庁(USTDA)が約128万ドルの技術支援金をSNN社に交付。今月9日には、チェルナボーダ3、4号機の完成計画に米国側からプロジェクト準備等のサービスを提供する契約について、米輸出入銀行(US EXIM)が最大で30億5,000万ドルの融資をSNN社に提案している。(参照資料:SNN社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Nov 2022
- NEWS
-
英カンブリア州の新興企業 ロールス・ロイス社のSMRを選択
英ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は11月11日、イングランド北西部カンブリア州の新興デベロッパー「ソルウェイ・コミュニティ電力会社(Solway Community Power Company)」が同社製SMRを選定したと発表した。ソルウェイ社は今年9月に同州で設立されたばかりの非公開有限責任会社で、最高責任者は、英国最大の原子力複合施設セラフィールド・サイトの管理運営を担うセラフィールド社のCEOを2000年まで務めたP.フォスター氏。ロールス・ロイス社はこの数日前の11月9日、同社製SMRの建設候補地点として、セラフィールド・サイトの近隣区域を含む4地点を選定しており、2030年代初頭にも英国でSMR発電所の最初の一群を稼働させたいと述べていた。ソルウェイ社の建設計画は、セラフィールド・サイトが立地する同州コープランド市のT.ハリソン市議の主催イベントで公表された。同市議は、「当市には敷地のほかに労働者のスキルと経験、独自のサプライチェーンもすでに備わっており、クリーンで信頼性が高く実証済みの技術を用いた原子力発電所の立地点としては、おそらく世界でも最も適している」と強調した。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは今回、「原子力廃止措置機構(NDA)がカンブリア州西部で所有する敷地を活用して2030年にも新しい原子力発電所を稼働させ、業界でも最強の地位を確保する」と表明。同州内で新たな原子力発電所の建設計画を推進するデベロッパーが設立され、同社のSMRが採用設計に選定されたことを歓迎した。ソルウェイ社のフォスター最高責任者は、原子力について「当社のアイデンティティの中心であるとともに西カンブリアに受け継がれた遺産でもある」と説明。ロールス・ロイス社のSMRを建設・操業することで、コープランド市には新しい雇用とサプライチェーンを生み出す大きなビジネス・チャンスがもたらされるだけでなく、新たな産業や投資も呼び込まれると期待を表明した。ロールス・ロイスSMR社によると、同社製SMRは既存のPWR技術を採用した設計で電気出力は47万kW。少なくとも60年間ベースロード電源として稼働が可能で、再生可能エネルギー源の間欠性を補えることから、その設置拡大を支援することにもつながる。今年4月からは英国原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同設計について「包括的設計審査(GDA)」を開始した。ロールス・ロイスSMR社に対しては、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約350 億円)を提供すると約束している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Nov 2022
- NEWS
-
COP27:「途上国への原子力輸出がカギ」IEA指摘
COP会場内の原子力パビリオンで11月9日、「新規原子力へのファイナンス」をテーマとするセッションが開催された。世界原子力協会(WNA)の主催で、国連欧州経済委員会(UNECE)、国際エネルギー機関(IEA)、および原子力関連団体のアナリストらが出席し、原子力の新設に向けた投資課題を議論した。IEAのクリストファー・マクリード氏は「ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を回避するための各国政府の危機対応が注目される」とし、米国のインフレ抑制法、EU の Repower EU、日本でのグリーン・トランスフォーメーション(GX)、中国やインドでのクリーンエネルギー技術の導入を挙げ、これらの政策の結果として、計2兆ドルという巨額の投資が実施されると指摘。そして「原子力だけでなくさまざまなテクノロジー全体へ投資される」と分析。「気候変動問題ではなく、むしろエネルギー・セキュリティ問題」によってクリーンエネルギー分野への投資が促進されるとの認識を示した。一方で、IEAの2050年ネットゼロに向けたロードマップによると、依然としてネットゼロ達成は難しいと指摘し、原子力発電設備容量の大幅増加によってのみネットゼロ達成が可能との見方を示した。またその場合に必要な投資額は4兆ドル規模になるとし、現時点で各国が示す政策だけでは、必要な原子力発電設備容量に達することは難しいと断言。途上国での需要も高まっていることから、先進国から途上国への原子力輸出によって達成が可能になるのでは、との見方を示した。そのほかUNECEのダリオ・リグッティ氏は、「運転開始までのリードタイムが15年もの長期ではファイナンスを受けるのは難しい」と指摘。モジュール方式で工期短縮が見込まれ、初期投資額も小さいSMRへ期待を寄せた。また投資家は単一の電源に投資するのではなくエネルギー全体のポートフォリオに投資し、リスクを分散させるため、投資先の選択肢として常に原子力を堅持しておくことが何よりも大切、と助言した。欧州原子力産業協会(Nucleareurope)のジェシカ・ジョンソン氏は、新規建設はリードタイムが長いため、足元の現実的な解決策は「既存の原子力発電所をできるだけ長期に運転させること」であるが、長期運転で時間稼ぎをし、2035年までに各国が「新規の原子力発電所を運転開始させるべき」との考えを示した。
- 15 Nov 2022
- NEWS
-
COP27:「長期運転こそ影のヒーロー」グロッシー事務局長
COP会場内にある原子力パビリオンで11月9日、国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長と、ブルームバーグのエネルギー担当編集主幹ウィリアム・ケネディ氏との対話セッションが開催された。ケネディ氏からの、原子力は低炭素かつベースロードを支える電源だが、完成するまで15年もかかるのでは遅すぎるとの指摘に対し事務局長は、「リードタイムが15年以上というケースは、プロジェクトマネジメントや規制体制に原因があった。振り返ると1970年代の原子力導入期のプラントは、極めて短期間で運転開始にこぎつけている。最近でもUAEのバラカ原子力発電所のように、同国初の原子力プラント導入であったにもかかわらず、わずか7年で運転開始を達成したケースもある」と答えた。その上で事務局長は、原子力産業界全体での炉型や規制の標準化といった取り組みを早急に進めていく決意を表明した。また小型モジュール炉(SMR)にも言及し、「SMRは(技術面でも規制面でも)既存炉よりもはるかにグローバル化が進んでおり、リードタイムは短縮されるだろう」と各国で進むSMR導入の動きに大きな期待を寄せた。ただし、「国ごとに求めるスケールは違う」として大型炉が相応しいケースも多いと指摘。SMRはどちらかというと開発途上国向けの選択肢になるとの考えを示した。事務局長は、1970年代に運転を開始したプラントが50年を迎えつつあることから、その老朽化について問われ、「気候変動対策のアンサング・ヒーロー(影のヒーロー)は長期運転だ」と断言。長期運転にかかるバックフィット等のコストは初期コストの半分以下であり、50年どころか80年近く経過しながらも安全なプラントもあることに言及し、「私は100年の運転も可能と考えている」と強調した。そして、「欧州の一部の国では拙速な脱原子力政策により非常に脆弱なエネルギー供給状況に置かれている」ことに言及し、個人的な見解としながらも、「気候変動と戦う上で原子力を閉鎖することは誤りだ」と強調。「政治の世界では2+2=4ではないとわかってはいるが、科学的観点から見ると馬鹿げたことが多すぎる」と懸念を示した。そしてこれからのIAEAの使命として、原子力コミュニティから外へ出て、原子力について反対意見を持つ政治家とコミュニケーションをとっていくとの決意を語った。また、10年後のCOP37時点での世界の原子力発電規模を問われた事務局長は、「倍増する必要があるが、実際はそこまで行かないだろう。それでも現在よりはるかに大きくなる」との見通しを示した。
- 14 Nov 2022
- NEWS
-
英ロールス・ロイス社 SMR建設の候補4地点を選定
英国ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は11月9日、同社製SMRの立地評価作業を終え、有力な建設候補地としてイングランドとウェールズにある閉鎖済みの原子力発電サイトなど、4地点を選定したと発表した。これは英国でSMR発電所の最初の一群(合計出力:約1,500万kW程度)を稼働させるための重要な一歩であり、同社はそれらのSMRを通じて英国がCO2排出量の実質ゼロ化を達成し、確実なエネルギー供給を可能にするとしている。今回特定された4地点は、原子力廃止措置機構(NDA)が管理しているイングランド・カンブリア州のセラフィールド原子力複合施設の近隣区域とグロスタシャー州にあるオールドベリー・サイト、およびウェールズ北部のトロースフィニッド・サイトとアングルシー島にあるウィルファ・サイトである。これらはかつて、旧式のガス冷却炉(GCR)が稼働していた地点であり、NDAはこのようなGCRサイトも含め、新たな原子力発電所の立地用に指定されている17サイトをすべて所有している。このため、ロールス・ロイス社はNDAチームと共同で、建設プログラムを進めていく第一段階の作業として、複数の候補地の地質工学的データや送電網との接続状況、および複数のSMR建設に十分なスペースが確保できるか等を調査。また、NDAの所有サイト以外の地域についても、同社はSMRの建設可能性のほかに、地元との協力の機会や同社製SMRが提供する社会経済的利益などを評価した。こうした作業は、NDAが使命としている「英国初期の原子力発電サイトを安全・確実かつコスト面の効果も高い方法で浄化し、その他の用途用に提供する」とも矛盾しないことから、ロールス・ロイス社は地元のコミュニティが得る利益や環境面の利点に重点を置いたと表明。ただし、NDAが所有する土地の活用で正式な許諾と支援を得るには、NDAを管轄するビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の承認が必要になるとしている。ロールス・ロイス社のSMRは、既存のPWR技術を採用した設計で電気出力は47万kW。少なくとも60年間ベースロード用電源として稼働が可能だと同社は述べており、今年4月からは英国原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同設計について「包括的設計審査(GDA)」を開始した。同SMRについてはまた、BEISが2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約350 億円)を提供すると約束している。ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「かつて原子力発電設備を受け入れていたイングランドとウェールズのコミュニティに、新たな原子力発電所の建設について理解してもらう支援をしてくれたNDAのチームとD.ピーティ総裁には、深く感謝している」と表明。サイトで進める作業の開始が早ければ早いほど、SMRの無炭素な電力を安定的かつ確実に提供する機会も早まると述べた。BEISで気候問題を担当するG.スチュアート大臣も、「SMRは英国が目標とする『2050年までに2,400万kWの原子力発電設備を建設』という目標の達成を促し、消費者が支払うエネルギー料金の削減とCO2排出量の実質ゼロ化にも貢献する」と指摘している。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 10 Nov 2022
- NEWS
-
英NDA 閉鎖済みサイトでのSMR建設に向け覚書
英国で原子力関係施設の廃止措置や放射性廃棄物の管理を担当する原子力廃止措置機構(NDA)は10月11日、ウェールズ北部にある閉鎖済みのトロースフィニッド原子力発電所で小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているエギノ社(Cwmni Egino)を支援するため、同社と了解覚書を締結したと発表した。NDAは英国内で閉鎖された旧式のガス冷却炉(GCR、通称マグノックス炉)サイトなど、原子力発電所の立地用に指定されている17サイト、950ヘクタールの土地をすべて所有している。一方のエギノ社は、ウェールズ政府がトロースフィニッド・サイトの再開発と周辺地域における社会経済の再活性化を目指して、2021年に設立した開発企業である。今回の覚書で、NDAは同サイトの特性に関する情報や専門的知見をエギノ社と共有し、子会社のマグノックス社が実施している廃止措置作業を新規のSMR建設計画と調整。このプロジェクトから影響を受ける利害関係者との協議や社会経済開発計画の策定についても、エギノ社をサポートする。エギノ社は現在、2027年にSMRの建設工事を開始できるよう、事業提案を作成中だ。採用炉型は未定。英国ではビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が今年4月、英国のエネルギー自給を長期的に改善していくという新しい「エネルギー供給保証戦略」を公表。CO2の排出量を実質ゼロ化する観点から、2050年までに安全でクリーン、低価格な原子力で現在の約3倍に相当する最大2,400万kWの発電設備を確保し、国内電力需要の最大25%を賄う方針を明らかにした。NDAとエギノ社は翌5月、この戦略の実行を支援する活動の一環として、新規原子炉の建設計画を提案するため、協力協定の締結に向けた作業を開始すると表明。今回の覚書締結はこれに続くものとなる。NDAのD.ピーティ最高経営責任者は、「我々が所有するサイトの有効利用に向けて、現在複数の関係者と協議している」とコメント。「エギノ社への支援提供が正式なものになったことは重要な一歩であり、このプロジェクトが成功すれば、ウェールズ北部に社会的利益をもたらすだろう」と述べた。ウェールズ政府のV.ゲッチング経済相も、エギノ社を設立した理由について「トロースフィニッド・サイトのポテンシャルを最大限に活用することにより、地元コミュニティのみならずウェールズ北部の幅広い地域に雇用やスキルの習得機会を与えるなど、経済的利益を提供することにある」と説明している。英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックス理事長は同日、「ウェールズではかつて2サイトで原子力発電所が稼働しており、そのうちの一つであるトロースフィニッド発電所サイトは今後もクリーンな電力の生産で大きな役割を果たし天然ガスの利用量を削減、英国のエネルギー供給保証を強化していくだろう」と述べた。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 12 Oct 2022
- NEWS
-
米バージニア州のエネ計画、原子力イノベーションのハブを目指す
米バージニア州のG.ヨンキン知事は10月3日、最新の「2022年版エネルギー計画」を公表し、州内で増加するエネルギー需要を満たすには、原子力や天然ガス、再生可能エネルギー、新しいエネルギー源など、利用可能なエネルギー技術をすべて活用するという「全方位的アプローチ」を取るべきだと表明した。この中でも、原子力利用を拡大し同州を原子力技術革新の主要なハブとする考えを明らかにしている。同州では、ドミニオン・エナジー社がサリー(87.5万kWのPWR×2基)とノースアナ(約100万kWのPWR×2基)の両原子力発電所を運転しており、サリー発電所については原子力規制委員会(NRC)が2021年5月に、運転期間の延長に向けた同社の2回目の申請を承認。これら2基はそれぞれ2050年代まで、80年間運転を継続できることになった。また、ノースアナ発電所についても、NRCは同社が2020年9月に提出した2回目の運転期間延長申請を審査中である。バージニア州のエネルギー省はこの計画を策定するにあたり、州政府はエネルギー需要を満たすのみならず既存のエネルギー供給源をクリーンエネルギー源に移行させるため、あらゆるオプションを検討。今後新たに浮上するクリーンエネルギー技術をすべて採用することにより、柔軟に移行を進めることができると指摘している。新しいエネルギー計画ではまず、同州におけるエネルギー経済の現状を分析、その上で今後の政策決定の基盤となる実用的なアプローチや様々な勧告を、州議会や州内の産業界が直ちに採用できる形で提示。同計画が提唱する全方位的アプローチは、エネルギー供給における信頼性や価格、技術革新、競争、環境影響等に関する同州の基本理念に基づき、同州のエネルギー需要量拡大に対応する柔軟性の高い道筋を示しているとした。このエネルギー計画では具体的な勧告事項として、州内のエネルギー需給の現状や進展状況を把握できるよう、同州のエネルギー構成を定期的に再評価すべきだとした。また、責任を持ってエネルギーの移行を進めるには、将来のエネルギー需要量の予測とそれを踏まえての対策立案で、実行者に真摯な謙虚さが求められると指摘している。さらに、同州内で将来的にクリーンエネルギーを豊富に確保するため、同州は革新的な技術に戦略的な投資を行うべきだとしており、具体的には水素製造やCO2の回収・貯留、有効利用(CCSU)、小型モジュール炉(SMR)を挙げた。商業用SMRを同州南西部で10年以内に建設するという目標の設定に向け、財政支援の必要性を支持するとしている。州内の原子力事業に関しては、同エネルギー計画は米BWXT社と仏フラマトム社が同州のリンチバーグに拠点の一つを置いている事実に言及。ノーフォークの海軍基地では、軍事造船企業のハンティントン・インガルス社が原子力潜水艦や空母のメンテナンスとアップグレードを受け持っており、これらの「バージニア原子力企業連合」が、同州や米国の原子力産業に参加する82社の関係プログラムや資源を州内で調整しているとした。バージニア州はまた、全米の大学に設置されている30ほどの原子力工学科のうち2つが存在するなど、原子力関係の人的資源についても米国のリーダー的地位にある。州内にある複数のコミュニティカレッジでは原子力関係の労働者を支援するコースが設けられており、同州の「エネルギー関係労働力企業連合」は次世代のエネルギー専門家を育成中である。こうした原子力研究開発の最先端に位置する立場を生かし、バージニア州はSMRの技術開発でも米国を牽引すべきだと今回のエネルギー計画は表明。州の南西部で米国初の商業用SMRを建設し、使用済燃料のリサイクル技術を開発すべきだと提唱しており、それによってCO2を排出せず、使用済燃料の量も最小限というエネルギーシステムを確立することを訴えている。(参照資料:バージニア州知事の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 06 Oct 2022
- NEWS
-
ルーマニア原子力公社、SMR建設でプロジェクト企業設立
ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN)は9月27日、国内で米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を建設するため、民間エネルギー企業のノバ・パワー&ガス社と合弁で、同計画のプロジェクト企業「RoPower Nuclear社」を設立したと発表した。計画では、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された石炭火力発電所の跡地に、出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」(合計出力46.2万kW)を建設する。2028年頃の完成を目指す。同発電所ではまた、出力約8万kWの再生可能エネルギー源も併設する予定である。SNNとノバ社が折半出資するRoPower社は今後、米国のJ.バイデン大統領が今年6月にルーマニアへの提供を約束した支援金1,400万ドルを使って、この計画の予備的な基本設計(FEED)調査を実施する。具体的には、設計・エンジニアリング活動や建設サイトの詳細な技術分析、国内外の基準に適合する許認可活動を行うとしており、その際は国際原子力機関(IAEA)が今年8月に実施した「立地評価・安全設計レビュー(SEED)」の勧告事項も適用する方針である。 設立の記念式には、米国務省のJ.フェルナンデス経済成長・エネルギー・環境担当次官やルーマニア・エネルギー省のV.ポペスク大臣が同席した。同大臣は、ルーマニアで建設されるSMR初号機が欧州においても初のものになるとした上で、「この建設計画は、原子力分野における米国とルーマニアの連携協力の成功例だ」と指摘。この協力により、ルーマニアは最も重要な経済面の安定やエネルギーの供給保証という恩恵を被ることから、ルーマニア政府も同計画が近隣諸国を含めたエネルギーの自給に有効との認識から、支援していると強調した。この計画に関しては米国政府も積極的に後押ししており、2019年3月にSNNとニュースケール社が最初の協力覚書を結んだ翌年の10月、ルーマニアと米国の両政府は、ルーマニアでチェルナボーダ3、4号機を完成させる計画を米国が支援するだけでなく、同国の民生用原子力発電部門の拡充と近代化にも協力するため、「原子力分野における政府間協力協定(IGA)」に調印した。これと同じ日に米輸出入銀行(US EXIM)は、ルーマニアのエネルギー・インフラ分野等に対して、最大70億ドルの財政支援を行うための了解覚書を同国政府と結んでいる。2021年1月になると、米貿易開発庁(USTDA)がSMR建設サイトの選定に向けた予備的評価作業のため、約128万ドルの技術支援金をSNNに交付。この調査が完了した今年5月には、建設に適した候補地が複数特定されており、最有力候補であるドイチェシュティで詳細調査を行うことになった。同月24日には、SNNとニュースケール社、およびドイチェシュティの石炭火力発電所オーナーで、ノバ社を傘下に置くE-Infra社グループが了解覚書を締結、SMR初号機の建設について分析評価を行うと表明している。(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 04 Oct 2022
- NEWS
-
“行動するIAEA”へ支援求める IAEA総会でグロッシー事務局長
国際原子力機関(IAEA)の第66回通常総会がウィーンで、9月26日から5日間の日程で始まった。R.M.グロッシー事務局長は、世界的なエネルギー危機への対応やウクライナでの原子力安全確保など、現在のIAEAに課せられている新たな使命を強調。各国からのより一層の支援を求めた。初日プレナリーセッションの冒頭、開会挨拶に立ったグロッシー事務局長は、感染症対策、気候変動対策、安全な食糧および水の確保、がん撲滅、海洋汚染対策ーーなどといった従来からのIAEAの取り組みを取り上げるだけでなく、世界を取り巻く情勢としてエネルギー危機やウクライナでの紛争に言及。こうした情勢の変化により、カバーする範囲や作業量など「IAEAが果たすべき役割」がこれまでにないレベルに拡大しているとの認識を示した。事務局長は世界規模のエネルギー危機に関し、安全で信頼性が高く低炭素なエネルギー供給体制を確立するには原子力が欠かせないと指摘。今後30年で原子力発電設備容量が倍増すると見込まれる中で、IAEAの原子力安全および核セキュリティ活動が量的にも質的にも増大し、ますます重要性が高まると強調した。またウクライナの紛争に関しては「IAEAは懸念を表明するにとどまらず、原子力安全とセキュリティの確保に向けて状況を改善するために行動している」と、これまでの支援活動を紹介。今回の紛争中に4度に渡って派遣したIAEAの調査ミッションなど、ウクライナでの原子力事故を未然に防止するためにIAEAが果たしてきた役割に言及した。そしてロシアを名指しで非難することは避けながらも、ウクライナの原子力施設周辺に「原子力安全/セキュリティ保護エリア」を早急に設定すべく、両国と詳細な協議を開始したことを明らかにした。続く各国代表による一般演説では、日本は7番目に登場。ビデオ録画ではあったが高市早苗内閣府科学技術政策担当大臣がスピーチ。ウクライナの原子力施設周辺でのロシアの軍事行動を強く非難し、IAEAの取り組みを高く評価した。その上でウクライナでの「原子力安全/セキュリティ保護エリア」早期設定に向け、200万ユーロの拠出を表明した。また高市大臣はALPS処理水について、IAEAがこれまで実施してきたレビューやモニタリングについて言及。今後もIAEAの協力のもと、国内外の安全基準に従い透明性を高めた形で、「科学的に」海洋放出を実施していくことを強調した。そのほか日本のエネルギー政策に関し高市大臣は、「エネルギーの安定供給に向けてあらゆるエネルギーオプションを堅持する」決意を表明。今後は高速炉、高温ガス炉、SMR、核融合炉など次世代炉技術の研究開発にも力を入れていく方針を明らかにし、国際社会に強く印象付けた。♢ ♢日本原子力産業協会・新井理事長とブースで談笑する上坂委員長(右) ©︎JAIF例年通りIAEA総会との併催で展示会も行われている。日本のブース展示では、「脱炭素とサステイナビリティに向けた原子力イノベーション」をテーマに、高温ガス炉やナトリウム冷却高速炉、中・小型炉、水素貯蔵材料等の開発、ALPS処理水に関するQ&Aなどをパネルで紹介している。展示会初日には、上坂充原子力委員長がブースを訪れ、出展関係者より展示内容の説明を受けた。
- 27 Sep 2022
- NEWS
-
英ロールス・ロイス社、オランダでのSMR建設に向け現地企業と独占契約
英国ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は8月25日、オランダで同社製SMRの建設に向けて協力していくため、オランダの新興原子力事業者であるULC-エナジー社と独占契約を締結したと発表した。ULC-エナジー社は昨年アムステルダムで設立された企業で、オランダ国内で原子力発電所の建設プロジェクトを進め、同国の脱炭素化を促進することを使命としている。確証済みの技術に基づく近代的で最新鋭のモジュール式原子炉の建設を目指しているため、同社はSMRの供給者としてロールス・ロイスSMR社を選択。両社はともに「原子力発電こそ、オランダがクリーンで安価、かつ信頼性の高いエネルギー・システムへ移行するのを加速できる」と考えており、今回の正式な連携協力契約に基づき、今後数年間にわたりオランダでSMR建設を準備する。ロールス・ロイスSMR社の発表によると、同社製SMRはPWRタイプで出力は47万kW。これは陸上風力発電のタービン150台以上に相当し、少なくとも60年間はベースロード用電源として稼働が可能。再生可能エネルギーの間欠性を補えることから、その設備拡大を支援することができる。同社のSMRはまた、機器の90%が工場で製造されるため、設置場所での作業は主に既製の試験済みモジュールを組み立てるだけ。これによりプロジェクトとしてのリスクが著しく軽減され、工期も大幅に縮減される可能性がある。ULC-エナジー社のD.ラベリンクCEOは今回、「エネルギー市場の中でも特に西欧の状況が厳しくなるなか、信頼性の高い安価なエネルギー・システムの重要性が浮き彫りになった」と指摘した。「オランダ政府は原子力が国内で有意な役割を果たせること、また果たすべきだと確信しており、出力47万kWで設備利用率が95%を超えるロールス・ロイスSMR社のSMRは正に理想的。これを効率的に建設していくことで、電力の供給や産業用の熱電併給が可能になる」としている。ロールス・ロイスSMR社のSMRについては、英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約339億円)を提供すると発表した。ロールス・ロイスSMR社も、同じ月に同社製SMRについて包括的設計審査(GDA)の実施を申請しており、BEISによる初期スクリーニングを経て、今年4月から原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が審査を開始。英国内では2030年代初頭にも、最初のSMRが運開する計画だ。また、国外ではトルコとチェコ、およびエストニアに対して、輸出のための覚書が締結済みである。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社、ULC-エナジー社(オランダ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Aug 2022
- NEWS
-
米ニュースケール社、企業戦略をSMRの納入・顧客サービスにシフト
米国のニュースケール・パワー社は6月20日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の商業化を一層加速していくため、同社の戦略をSMRの開発と製造から、今後はNPM納入後のライフサイクルを通した顧客満足の重点化にシフトすると発表した。新しい事業組織「VOYGRサービシズ&デリバリー(VSD)」を設置し、NPMを複数備えた「VOYGR」発電設備の製造と販売、納入および商業運転にともなう機器・サービスの提供など、顧客との協力に特化した対応を取る方針。VSDの社長には同社のT.マンディCOO(最高商務責任者)が就任する予定で、J.ホプキンズCEOの直属組織となるVSDの堅実な運営について、全面的な責任を担うことになる。米原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、1モジュールの出力が5万kWの同社製「NPM」に対し、SMRとしては初の「標準設計承認(SDA)」を発給した。これを受けてニュースケール社は、「VOYGR」発電設備の建設に向け、プラントとしての設計標準化やサプライチェーンの確保といった長期的視点での活動の在り方を検討している。同社はまた、今年5月に特別買収目的企業(*未公開会社の買収を目的として設立される法人)であるスプリング・バレー社(Spring Valley Acquisition Corp.)との合併を完了し、SMRの設計・開発企業としては初めて株式を公開。今回の戦略シフトと併せて、同社製SMR技術の商業化を長期的観点から促進・強化していく考えだ。「NPM」初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」をアイダホ国立研究所内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。SMRを通じて、UAMPSは2015年に開始した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を推進する方針で、すでにSMRの長納期品発注に向けた活動を実施中。このため、顧客を中心に据えた組織改革となるVSDの設置は、世界で急速に進展している脱炭素化への需要に、同社のクリーンエネルギー技術で迅速に対応する非常に重要なステップになると同社は指摘している。「VOYGR」発電設備についてはまた、ポーランドとルーマニアで建設する計画があり、これらの計画で効率的かつ効果的にSMRを納入するには事前の組織改革が必要だと同社は強調。ホプキンズCEOも、「設備の納入とその後に目を向けた組織改革は、当社が次の段階に進む上で自然なことだ」と指摘した。同CEOによると、ニュースケール社のSMRは、クリーンで信頼性の高い安全なエネルギーの生産に新たな時代を開く画期的な技術。「その建設で顧客と緊密に連携していくことは、当社の重要な使命の一部でもある」と述べた。VSDの社長に就任するマンディCOOは、「他にも数多くの国家や電気事業者がグローバルな繁栄を維持しつつ地球温暖化の影響を緩和する主要な取り組みとして、VOYGR発電設備の導入を検討している」と指摘。その上で、「あらゆる人々の将来のエネルギー利用による恩恵を究極的に改善・拡大するため、今こそ組織的な準備を進めるべき時だ」と強調している。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 21 Jun 2022
- NEWS