キーワード:小型モジュール炉(SMR)
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アツイタマシイ Vol.2 マシュー・メイリンガーさん
コミュニケーションを通じて先入観や思い込みを払拭マシューさんが原子力業界で働きたいと思ったきっかけは何でしたか?マシュー私が9年生、日本でいえば高校1年生の時、国語の授業で小論文(エッセイ)を書くことになり、たまたま選んだテーマが「原子力」、それがきっかけでした。いろいろ調べていくと原子力技術は効率のよい発電方法であると同時に、医療や工業、農業など幅広く社会に貢献し、エネルギー問題や環境問題にも寄与することを知りました。将来的に原子力分野の仕事は意義があり、また安定しているため、キャリアを積み重ねていく価値があると思ったのです。原子力業界に入る前と入った後で、意識などに何か変化はありましたか?マシュー実際に原子力分野で仕事を始めてから感じたことは、原子力が社会に幅広く利用されるためには一般市民の人たちに理解してもらうことが重要だ、ということでした。原子力工学を学んでいた時にはもっぱら技術的なことに取り組んでいましたが、様々な経験を経て、原子力利用の普及のためには技術の問題よりも一般市民に理解されるかどうか、つまりコミュニケーションを通じて先入観や思い込みの部分を払拭していくことが必要だと実感しました。この10年ほどYGNの活動を通じて一般市民の方々との対話を重ねてきましたが、こうした活動をまだまだ今後も続けていくことが重要だと考えています。ウクライナ問題などエネルギー情勢はめまぐるしく変化しています。このような時期にあって、原子力利用の意義と将来性についてどうお考えですか?マシューロシアのウクライナに対する軍事侵攻により、エネルギーや食糧の自給自足がいかに大事かということが明らかになりました。とりわけ各国が発電の手段を確保しておくことは重要です。ロシアのような資源国の状況変化に左右されないよう、発電手段を確保することが必要だと思います。エネルギー不足に直面すると、結局のところ、苦しむのは一般の人々です。特にドイツでは痛感されているのではないでしょうか。ドイツは天然ガスをロシアに依存していたことから、外交のカードとして使われてしまった。ベルギーも同じような状況にあり、脱原子力の立場から見直しを迫られている状況です。まして気候変動問題に真剣に取り組むことが求められている現状では、原子力発電は再生可能エネルギーと並んで最適な選択肢です。ウクライナではロシアの軍事侵攻によって多くの発電設備が破壊され、電力供給が停止していると聞きます。そのような中で、原子力発電所は運転を継続し電力を供給し続けています。安全性や安定供給が原子力発電所の特長といえますが、今後SMRが実現すると、より安全性の高い原子炉が運転を開始することになります。ウクライナ問題は各国政府が原子力発電の特長を再評価するきっかけになるでしょうから、原子力の将来性について国際的な評価が高まると期待しています。カナダの原子力利用の将来を担うであろう小型モジュール炉(SMR)開発について、またそれを支える人材の育成などについて、どのようにお考えでしょうか?マシューSMR開発についてカナダは、世界に先行するトップランナーの位置にあるといえるでしょう。カナダの4つの州、すなわちオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州、およびアルバータ州で覚書を取り交わして導入にむけた共同戦略計画を進めているところです。連邦政府のレベルでSMR開発のロードマップ(工程表)が定められ、それに基づいてアクションプラン(行動計画)が策定されています。アクションプランの中に人材育成やサプライチェーンの構築などの進め方も盛り込まれており、SMRを導入する事業者側の課題も挙げられています。またSMR開発自体については連邦政府が財政的な支援を行う計画です。英モルテックス・エナジー社やテレストリアル・エナジー社、米ウェスチングハウス(WH)社などカナダ国内でSMR建設を進める企業に資金を拠出します。カナダでは主に3つのSMR開発プロジェクトが進められていますが、オンタリオ州営の電力公社オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が建設するマイクロモジュール炉は2026年の運転開始を予定しています。またOPG社が2028年の運転開始を目指し、GE日立のBWRX-300を建設するプロジェクトも進行しています。PAが重要な課題SMRの導入に関して現在、重要な課題は何でしょうか?マシューもっとも重要な課題は一般市民の合意、すなわちパブリックアクセプタンス(PA)だと考えています。そのために継続的に対話活動に取り組んでいく必要があります。カナダ政府としても、「実証されていない」あるいは「投資に見合わない」と国民に思われてしまっているものをわざわざ推進しようとは考えません。例えば気候変動やエネルギー不足への対応、水素供給や地域熱供給への活用、そうしたメリットについて広く理解が進み、一般市民の側からプロジェクト推進の声が寄せられるような状況が望ましいと思います。一方で技術的な課題についてですが、初号機に採用された技術は実証済みのものですので、当面する課題は特にないと考えています。それ以降の、いわゆる第4世代の新技術については、今後の課題として進めていくものだと思います。最初に実現するSMRは実証された確実な技術で進めればよいでしょう。新技術の開発などにあたり、若手の研究者や技術者への期待は大きいと思うのですが、マシューさんから見て、現状や今後への期待などはいかがでしょうか?マシューおよそ10年前の福島第一原子力発電所事故の後、カナダでも原子力に対する世論が厳しくなった時期もありましたが、様々な活動を通じた印象としては原子力利用に将来的な希望を抱く若者は少なくないと思います。日本の状況について詳しくは承知していませんが、原子力に対して希望を抱く若者は、日本よりカナダのほうが多いといえるでしょう。私は、大事なことは彼らに「原子力のメリット」に目を向けてもらうことだと考えています。環境にクリーンな電源であることや、医学や工業、農業などの分野で社会に貢献する多様なメリットを原子力技術が有していることを実感してもらえるような活動が重要です。現在も絶えず技術革新を遂げつつある原子力分野の仕事は、若者に「COOL(クール)」と感じてもらえる側面がありますよね。ですから彼らにもそういった印象を持ってもらえるよう、常日頃から心掛けています。日常的にこなすルーティンな仕事というだけでなく、熱い意欲をもって取り組む価値のある仕事だということを理解してもらえるよう努力したいと思っています。そのために今後も引き続き、原子力の様々なメリットを実感してもらうために、シンポジウムや交流会への参加や、発電所サイトの視察機会を多く作っていこうと考えています。マシューさんが取り組んでいるYGNで、そうした機会を作っていくということですか?マシューはい。YGNの活動を通じて今までも取り組んできましたが、これからも引き続き、様々な機会を作る努力をしていきたいです。実は私、6月から3年の任期でYGNのプレジデント(理事長)に就任します。今後の活動について、私自身、強調していきたいのは国際的な活動の充実です。国を越えて若者同士がお互いのベストプラクティスを共有できればと考えています。今回の来日中に福島第一原子力発電所に訪れ、その後に日本のYGNのみなさんと交流する機会を持つ予定ですので、お互いの活動についても共有し、様々な学びが得られると楽しみにしています。私たちが活動する北米のYGNでは、将来を担う子供たちを対象に、コンテスト形式で絵を書いてもらったり、作文を発表してもらうイベントを開催しているほか、わかりやすい絵本を作って読み聞かせをするといった活動をしています。また政府・関係団体に対して若手の視点から意見を表明する政策的な活動として、州が開催する公聴会に参加して意見を表明するといった活動もしています。さらに幅広いネットワークを活かして地域社会の皆さんとの交流を続けています。YGNのメンバーが地域の皆さんに良い印象を持ってもらえるよう交流の場を作ることは大切な活動ですから、今後も原子力利用に対する理解を深めてもらえるよう努力をしていきたいと考えています。SMRが切り拓く 私たちの未来最近の情勢変化を踏まえ、欧州では原子力発電を脱炭素にむけた主要電源として見直す動きもあるようです。環境問題に対する原子力の役割についてどのようにお考えでしょうか?マシュー環境問題への対応の観点から、SMRを導入することで原子力利用の新たな市場が開拓できるというメリットについてお話ししたいと思います。カナダでは従来の大型の原子炉を導入すると、州によっては電力需要を上回ってしまう状況がありました。その点でSMRは各州の状況に応じて柔軟に対応できるため、新たな市場を切り拓くことになるでしょう。またカナダには遠隔地の電力需要をどのように賄うかという問題があります。冬期には道路が凍結するため、事前にディーゼル発電機用の燃料を備蓄する必要があるわけですが、SMRはより安定した電源であり、かつ脱炭素化が可能になります。同様のことはカナダの主要産業である鉱業部門にもいえます。天然資源採掘の現場にSMRを導入すれば安全で安定した電源というばかりでなく、大幅に脱炭素化がはかれるというメリットが期待できます。さらに水素製造や淡水化への応用、負荷追従運転による電力需要への柔軟な対応など、幅広いメリットを考えれば、SMRの実現によってさまざまな新たな可能性が切り拓けると思います。そして重要なことは、環境問題への対応という面で、従来とは違う観点で原子力をとらえることができるようになるということです。つまり、これからは原子力か再生可能エネルギーか、という対立した選択肢ととらえるのではなく、両者をうまく組み合わせ、原子力が再生可能エネルギーを補うといった新たな考え方が可能になると思うのです。それから、輸送部門への活用もSMRに期待されるメリットのひとつです。船舶の動力に使えば、脱炭素化がかなりスピーディーに実現できるでしょう。現在は原子力潜水艦など舶用の小型原子炉は軍事利用がメインとなっていますが、今後民生用の舶用炉という新たな市場がSMRによって切り拓かれることになると期待しています。
- 16 Jun 2022
- FEATURE
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韓国SKグループの傘下企業が米テラパワー社とSMR協力の覚書
石油精製事業や通信事業を主軸とする韓国の大手財閥企業SKグループは5月17日、持ち株会社のSK社(SK Inc.)とそのエネルギー関係子会社のSKイノベーション社(SK Innovation)が、米国の原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社と包括的な事業協力を実施するための了解覚書を締結したと発表した。ビル・ゲイツ氏が会長を務めるテラパワー社は現在、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と共同で、第4世代の原子力技術であるナトリウム冷却の小型高速炉「Natrium」、および同炉と溶融塩熱貯蔵システムを組み合わせた「ナトリウム電力貯蔵システム」を開発している。SK社らは、無炭素なエネルギーミックスの現実的な選択肢となる小型モジュール炉(SMR)の技術を確保し、その商業化に協力することで韓国における次世代原子力産業の発展を支援。CO2排出量の削減という世界レベルの目標達成にも貢献し、SKイノベーション社が提供するエネルギー商品の脱炭素化も進めていく考えである。今回の発表によると、SKグループは昨年以来、地球温暖化の防止で「2030年までに全世界におけるCO2削減目標量の1%削減に寄与する」ことを目標に掲げている。同グループはCO2を排出しない安全な電源としてSMRの競争力に注目しており、「複雑な安全装置を使わず自然循環方式で原子炉の冷却が可能なほか、設計・建設方法の簡素化により設置と運転にかかるコストも削減できる」と指摘。SMRを前記目標達成の強力な選択肢に位置付けている。今回の覚書に基づいて、SK社らは今後、テラパワー社の次世代SMR技術や放射性同位体(RI)の生産能力を自らの事業領域と結び付け、様々な事業協力を展開していく。特に高い安全性に加えて、放射性廃棄物の排出量を大幅に削減できる燃料技術から、テラパワー社のナトリウム冷却高速炉(SFR)を、次世代SMR技術の中でも主力に位置付けられると高く評価している。SK社らはまた、輸送部門などあらゆる分野で電化が進み電力需要が急速に増加するなか、SMRは間欠性のある再生可能エネルギーを補完するなど、様々な可能性を持っていると表明。テラパワー社の溶融塩熱貯蔵システムが、電力需要に応じて発電量を調節可能な点を特に強調している。SK社らはこのほか、テラパワー社の技術で医療用放射性核種のアクチニウム225を製造できる点にも着目。アクチニウム225は、正常な細胞を傷つけずにガン細胞のみを破壊する「標的アルファ療法」で最も有効なRIと言われており、テラパワー社はアクチニウム225の製造・販売を通じて同療法の商業化加速を計画中である。(参照資料:SKグループの発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 May 2022
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加OPG社、ダーリントン発電所内で建設するSMRとして「BWRX-300」を選定
カナダのオンタリオ州営電力(OPG)会社は12月2日、新たに既存のダーリントン原子力発電所で建設する小型モジュール炉(SMR)として、候補の3設計の中からGE日立・ニュークリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」を選定したと発表した。OPG社とGEH社は今後、SMRの建設に向けた設計・エンジニアリングや計画立案、許認可手続きの実施準備等で協力する。OPG社はまた、関係の各種承認が下りるまでの間、2022年春にも建設工事に必要なサービス業務の手配などサイトの準備作業を開始し、同年末までにカナダ原子力安全委員会(CNSC)への建設許可申請を目指す。早ければ2028年にも、カナダでは初となる商業用のSMRを完成させる計画だ。オンタリオ州南部のダラム地方に立地するダーリントン発電所については2012年8月、OPG社が当LTPS)」を発給した。しかし、オンタリオ州はその後この計画を保留、その一方で、同発電所で稼働中の4基および州内のその他の発電所でも、運転期間の延長計画や大規模な改修プロジェクトが進められている。2020年11月になるとOPG社は、LTPSを取得したダーリントン新設サイトでSMRの建設に向けた活動を開始すると発表した。同LTPSについては有効期限切れが2022年8月に迫っていたため、同社はこれに先立つ2020年6月に更新申請書をCNSCに提出済み。CNSCは2021年10月に同LTPSの10年更新を承認しており、同サイトは現在、カナダで唯一LTPSLが認められている地点となった。OPG社としては、州内に確立されているサプライチェーンを活用しつつ新たな雇用を創出し、ダラム地方をオンタリオ州におけるクリーンエネルギー供給の中心地とする方針である。OPG社のK.ハートウィック社長兼CEOは、「原子力は実証済みの技術を活用したCO2排出量ゼロのベースロード電源であり、2040年までに当社がCO2排出量の実質ゼロ化を達成し、2050年までに経済全体で幅広く脱炭素化を実現するために機能する」と指摘。SMRという革新的技術の建設をGEH社と連携して進めることにより、同社はカナダのみならず国外においても、次世代の原子炉を開発・建設していく道を拓きたいと抱負を述べた。GEH社の「BWRX-300」は電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得した第3世代+(プラス)の同社製設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっている。GEH社の説明によると、「BWRX-300」は自然循環技術を活用した受動的安全システムなど画期的な技術を多数採用しており、設計を大胆に簡素化したことで単位出力あたりの資本コストはその他のSMRと比べて大幅に削減されている。このようなSMRを建設する意義についてOPG社は、オンタリオ州内の輸送その他の部門で広範囲に増加が見込まれる電力需要に対し、クリーンエネルギーを提供する重要な電源となり、同州経済の脱炭素化に幅広く貢献するとした。同社はまた、国際エネルギー機関(IEA)を含む複数の国際機関が、「原子力を電力供給ミックスに含めなければ脱炭素化は達成できない」とはっきり述べている事実に言及。出力約30万kWのSMR一基で、年間30万トン~200万トンのCO2排出を抑制できると強調した。雇用・経済面の効果に関しても、同社はシンクタンクに依頼して実施した調査の結果、建設段階および60年間の運転期間も含めて多大な恩恵が同州にもたらされると指摘。間接的な雇用も含めて、開発期間中に年平均で約700名分の雇用が生み出されるほか、機器の製造期間に約1,600名分、運転期間中に約200名分、廃止措置期間には約160名分の雇用が創出されるとした。OPG社はまた、カナダの国内総生産(GDP)に対するプラスの影響として、25億カナダドル(約2,200億円)以上が見込めるとともに、オンタリオ州経済に対しても8億7,000万加ドル(約780億円)以上の増収が期待できると述べた。OPG社の発表によると、カナダではサスカチュワン州も石炭火力発電所に替えてSMRの建設を検討しており、2030年代初頭に最大4基のSMRのうち最初の一基が同州で運転を開始する可能性がある。国外でも英国や米国、フランス、ポーランド、エストニアなどが同様にSMRの建設に強い関心を抱いており、オンタリオ州は、このような国内外のサプライチェーンに貢献できる有利な立場にあると強調した。(参照資料:OPG社、GEH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Dec 2021
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米エネ省の先進的原子炉開発支援、プエルトリコでのSMR立地調査含め850万ドル提供
米エネルギー省(DOE)は11月18日、原子力局(NE)が2017年から実施している「先進的原子力技術開発のための資金提供公募(Industry FOA)」で、産業界が主導する5件のプロジェクトへの支援金として合計850万ドルを交付すると発表した。「Industry FOA」は有望な先進的原子炉設計や燃料の商業化の加速を目的としており、DOEはこれまでの公募で2億1,500万ドル以上を投資。今回選定した5件は第11回目の募集によるもので、これらのプロジェクトではDOEが開発した最新のモデリング・ツールやシミュレーターを活用して、先進的原子炉設計を海上や離島で利用する場合の可能性の評価やその他の研究活動を実施できる。5件のうち「先進的原子炉設計の実証」分野におけるプロジェクトとして、約163万ドルが「プエルトリコにおける小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉の立地適性調査(第2段階)」のために交付される。この調査は、カリブ海に浮かぶ米国の自治連邦区の島プエルトリコで、これらの先進的原子炉設計の建設に向けた適性サイトを探るというもの。実際の評価作業は、米国の原子力産業界で働くプエルトリコの原子力エンジニア・グループが2015年に設立した非営利団体「Nuclear Alternative Project(NAP)」が実施する予定である。同島では2018年、議会の下院議長がSMRやマイクロ原子炉の建設に向けた実行可能性調査の実施を決議しており、DOE-NEはこれにともない、2019年に予備的な実行可能性調査の経費をNAPに提供した。この時の調査結果は2020年5月に公表されており、NAPがこれから実施する第2段階の調査の結果とともに、DOEが推進する「離島や遠隔地域における原子炉技術の商業化」に活用される。DOE傘下のアイダホ国立研究所(INL)の調べによると、プエルトリコでは1960年代に建設した古い施設で発電しており、使用電力のほとんどを化石燃料発電による輸入電力に依存している。国内の発電施設も今後10年以内に4分の3を廃止しなければならず、発電システムの維持とエネルギーの自給確保はプエルトリコで喫緊の課題である。同島の電力庁はそのための取り組みとして、「統合資源計画」の中で再生可能エネルギーによる電力と天然ガスの供給量を拡大する方針を示しているが、ベースロード用の電力を確保するには間欠性のある風力や太陽光では不十分。この問題の解決に向けた有力候補として、プエルトリコでは小型原子炉の活用が上がっているとINLは説明している。なお、DOE-NEの「Industry FOA」はその他の資金提供プロジェクトとして、テレストリアル・エナジー社の米国法人が実施する「溶融塩炉のオフガス系におけるモデリングの不確実性取り扱いアプローチの開発」(約300万ドル)、ゼネラル・アトミックス社の電磁システム・グループによる「高温ガス炉向け炭化ケイ素製燃料被覆管のモデリングとシミュレーション」(約270万ドル)などを挙げている。(参照資料:DOEの発表資料①、②、③、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 26 Nov 2021
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米ホルテック社、SMRの建設目指し現代建設と事業協力契約を締結
米国のホルテック・インターナショナル社は11月22日、子会社のSMR社(SMR, LLC)が開発中の小型モジュール炉(SMR)「SMR-160」を世界市場で建設していくため、韓国の現代建設(HDEC)と事業協力契約を締結したと発表した。ホルテック社は、同SMRで2025年までに米原子力規制委員会(NRC)から立地建設許可の取得を目指しており、NRCとの関係協議はすでに始まっている。設計認証(DC)審査は未だ申請していないが、初号機の建設候補地としてはニュージャージー(NJ)州のオイスタークリーク原子力発電所の跡地、あるいは南部の2州を検討中。同発電所は2018年9月に閉鎖され、ホルテック社は事業者のエクセロン社から所有権を受け継いでいる。HDEC社は今回の契約に基づき、ホルテック社の主要なEPC(設計・調達・建設)契約企業として「SMR-160」標準設計の完成に協力するほか、同設計を採用した発電所をターンキー契約でグローバルに建設していく。具体的には、発電所BOP(主機以外の周辺機器)の詳細設計を担当し、発電所全体の建設仕様書も作成。SMRの標準設計と建設予定地等で承認が得られた場合は、建設プロジェクトの施工者となり、実際のEPC業務と建設工事を実施することになる。ホルテック社によると、この契約を通じて両社は世界中の顧客の要望に沿って最も競争力のある価格で建設プロジェクトを遂行する。ただし北米市場に関しては、同社が米国の大手建設企業と結んでいた既存の誓約に合わせて、HDEC社の参加持ち分を確保する。ホルテック社は建設プロジェクトのアーキテクト・エンジニアとして、主要機器を米国内の製造施設や国際的なサプライチェーンから調達する一方、計装・制御(I&C)については三菱電機から、燃料は仏フラマトム社からそれぞれ調達する方針だ。ホルテック社の「SMR-160」は、ポンプやモーターなどの駆動装置を必要としない電気出力が最大16万kWの軽水炉型SMRで、受動的安全システムを備えている。同設計はまた、輸送部門で使用する水素や工業利用のための熱を生産することも可能な柔軟な設計であるため、脱炭素化という世界潮流にも適合。ホルテック社は、建設プロジェクトにともなう資金の調達や建設地における部品調達などについても、HDEC社と協力していくとしている。ホルテック社のSMR開発に関しては、米エネルギー省(DOE)が2020年12月に「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における支援対象の一つとして選定した。7年間で合計1億4,750万ドルを投資する計画で、このうち1億1,600万ドルをDOEが負担。残りの3,150万ドルがホルテック社側の負担分であり、初期段階の設計・エンジニアリングや許認可手続き関係の作業が行われている。また、カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、同設計がカナダの規制要件に適合しているかという点について「許認可申請前設計審査(ベンダー審査)」を実施中。2020年8月に同設計は、この審査の第1段階を成功裏に終了している。(参照資料:ホルテック社、現代建設(韓国語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月24日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 25 Nov 2021
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米ニュースケール社、プロディジー社の海洋原子力発電所建設に向け協力覚書
米国のニュースケール・パワー社は11月17日、カナダのプロディジー(Prodigy)・クリーン・エナジー社が開発している「海洋原子力発電所(MPS)」の建設と商業化を支援するため、規制インフラの構築に向けた提案などでカナダのキネクトリックス(Kinectrics)社とともに同社に協力する覚書を3社間で締結したと発表した。プロディジー社のMPSには、ニュースケール社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」が最大で12モジュール組み込まれる予定。MPSは海岸に設置したタービン等の発電構造物に原子炉を統合する発電所で、造船所で製造後に海上輸送され、海岸線の防水仕様の係留地点に据付けられて、そこから海岸の送電網に接続され送電する。短い工期で建設が可能な上、低炭素なエネルギーをベースロード・モードで供給できることから、ニュースケール社はMPSが世界的規模で化石燃料発電に取って替わっていくと強調している。今回締結された協力覚書は、ニュースケール社とプロディジー社が2018年に締結した既存のパートナーシップに基づいており、SMR技術の商業化に向けた重要なステップとなる。同覚書を通じて3社はMPSの潜在的な顧客や、許認可体制など規制インフラに関する当局者との協議に備え、技術仕様書や規制関係文書を作成する。ニュースケール社によると、SMR建設にプロディジー社のMPSシステムを活用する利点は、従来の大型発電所と比べて建設コストを大幅に削減できることと、環境への影響や建設工期が縮減されることにある。このため同社は今回、電力産業界に許認可関係や環境分析、海辺の送電インフラに関するサービスを提供しているキネトリックス社とも協力。再生可能エネルギー源と連結したMPSをプロディジー社が一つだけ建設した場合や、MPSを水素燃料などのクリーンエネルギー製造に活用した場合について、経済性や商業規模などを評価する方針だ。ニュースケール社のNPMを動力源とするMPSは、沿岸部の都市やコミュニティ、臨海工業地帯のみならず、島国に対してもクリーンで持続可能なエネルギーを確実に提供することが可能。ベースロード用電源としてだけでなく負荷追従運転にも対応し、高度に合理化された廉価なクリーンエネルギーの供給手段になるとニュースケール社は強調している。プロディジー社は現在、カナダ原子力安全委員会(CNSC)とMPSに関する協議を始めたところで、許認可手続きの開始に先立ち実施すべき諸活動などを提案中。同社のM.トロジャーCEOはMPSの規制について、「北米での規制案件としては最初のものとなるが、カナダでは連邦政府がSMR開発に意欲的な方針を堅持しているほか、原子力規制当局の経験が豊富。国内の原子力発電所の収益性も高く、安全運転の実施では世界をリードするなど、当社のMPS開発を成功に導く環境は整っている」とした。その上で、「カナダの政策や規制体制に助けられて当社のMPSがスタート地点に立ち、将来的な輸出にも道が開かれることを期待している」と述べた。(参照資料:ニュースケール社、キネクトリックス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Nov 2021
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英ロールス・ロイスSMR社、SMRで設計認証審査を申請
英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社のロールス・ロイスSMR社は11月17日、同社製の小型モジュール炉(SMR)設計を規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にかけるため、申請書を提出したと発表した。これにともなう最初の手続きとして、政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が同社の初期スクリーニングを実施するとしている。初期スクリーニングでは、原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が対象設計の安全・セキュリティと環境影響についてGDAを正式に開始するのに先立ち、設計企業に同審査を受ける能力と資質が備わっているかをBEISが確認する。英国政府から結果が出るまでに、最大4か月を要する。ロールス・ロイスSMR社は、ロールス・ロイス社グループがSMRを始めとする先進的次世代原子力技術の開発と商業化を大規模に進めることを目指して、今月8日に新たな株式を発行して設立したもの。SMRなど先進的原子炉設計の規制承認プロセスについては、BEISが今年5月、GDAの対象に含める方針を明らかにしており、その際、申請ガイダンスも同時に公表。ロールス・ロイス社はその後まもなく、同社製SMRでGDAの実施を申請すると表明していた。ロールス・ロイスSMR社のSMR発電所設計は出力47万kWとなる予定で、これは陸上風力発電のタービン150台分以上に相当するという。少なくとも60年間稼働してベースロード用電源としての役割を果たすほか、間欠性のある再生可能エネルギーを補うことにより、再エネ源の設置容量拡大を支援。同社としては、2030年代初頭にもSMR発電所を国内送電網に接続することを計画している。今回の申請について、同社で規制・安全問題を担当するH.ペリー取締役は「英国製のSMR設計として初めて、規制承認プロセスに入るためのものであり、原子力産業界にとっては重要な節目になった」とコメント。同社は、このプロセスに入る前の段階ですでに同SMRの設計に関わる270件の重要な決定を下しており、「規制当局のGDAチームとは効率的に審査を進める自信がある」と述べた。同取締役はまた、同プロセスへの対応で約300名のスタッフをフルタイムで当たらせる方針だと表明。「原子力産業界と規制当局はともに、これまでのGDAから非常に多くの教訓を学んでおり、当社はそれらを活用して規制当局と共同アプローチを図りたい」としている。なお、BEISは今月9日、ロールス・ロイスSMR社のSMR開発に対するマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約320億円)を提供すると発表した。英国の戦略的政策機関である「UKリサーチ・アンド・イノベーション(UKRI)」が「低コストな原子力の課題(Low Cost Nuclear Challenge)」プロジェクトを進めるのに際し、2019年11月に「産業戦略チャレンジ基金(ISCF)」から1,800万ポンド(約30億円)を同社に提供したのに続く措置。マッチングファンドは、同じISCFから拠出するとしている。(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Nov 2021
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カナダの調査報告書:「同国製の第4世代SMRはカナダ経済に大きな利益もたらす」
カナダのテレストリアル・エナジー社は11月8日、同社製の小型モジュール炉(SMR)など、カナダで開発された第4世代のSMRがオンタリオ州で建設された場合、膨大な利益が同州やカナダ経済にもたらされるとの分析調査結果を発表した。この調査は、同社がオンタリオ州を本拠地とする土木建築・コンサルティング企業、ハッチ社に委託して実施したもの。同州では現在、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社がダーリントン原子力発電所の敷地内で、テレストリアル社の小型モジュール式・一体型溶融塩炉「IMSR」を含む3つのSMR設計の中から、1つを選択して建設することを検討している。ハッチ社によると、オンタリオ州およびカナダ全体でどれほどの規模の利益が得られるかは、この「ダーリントン原子力新設プロジェクト(DNNP)」で選択されるSMR設計にかかっている。カナダで開発されたSMR技術の場合、その設計を世界市場に輸出する可能性も含めて、数十年の間に数千億ドル規模の「触媒効果的利益」が期待できる。一方、カナダ以外の国で開発されたSMR技術では、その国のサプライチェーンが引き続き、開発企業に協力するためそうした可能性は低い。DNNPではIMSRのほかに、米GE日立・ニュクリアエナジー社製の軽水炉型SMR「BWRX-300」、および同じく米国企業のX-エナジー社が開発した小型のペブルベッド式高温ガス炉「Xe-100」が候補設計に選定されている。テレストリアル社が開発したIMSRは電力のほかに熱エネルギーを供給可能で、使用する溶融塩燃料は第4世代設計のなかで唯一、これまで軽水炉に装荷されてきた標準タイプの低濃縮ウランで製造される。同社は今年9月、IMSRと発電機を2基ずつ搭載する電気出力39万kWの改良型発電所設計「IMSR400」を発表しており、カナダで開発されているSMR設計のなかでは最大出力となる。ハッチ社の調査報告書によると、IMSR400発電所をダーリントンで建設した場合、設計・建設段階の9年間に30億カナダドル(約2,700億円)以上の利益がカナダのGDPに追加され、年平均で2,100名以上の雇用を支えることになる。これに加えて、同発電所の運転段階で年間合計45億加ドル(約4,100億円)以上の利益が生み出され、創出される雇用は年間580名分におよぶと予測。設計から廃炉までの全期間で試算した場合は、オンタリオ州のGDPにもたらされる利益は約66億加ドル(約6,000億円)、カナダ経済に対しては79億加ドル(約7,200億円)に達するとしている。ハッチ社はまた、第4世代の原子力発電所はカナダのみならず、世界中の発電システムの中で化石燃料に取って替わる莫大な可能性があると指摘。第4世代の原子炉技術のみが原子力の経済性を改善し、商業用原子力発電におけるカナダのこれまでのリーダーシップを永続させることができるとしている。テレストリアル・エナジー社のS.アイリッシュCEOは、「英国グラスゴーでは各国のリーダー達がCOP26でCO2排出量の実質ゼロ化に向けた方策を話し合ったが、IMSRはカナダの数多くのサプライチェーン・パートナーと協力して開発したカナダの第4世代炉であり、カナダのみならずその貿易相手国でCO2の実質ゼロ化に貢献できる」とコメント。ダーリントン発電所でのSMR建設は、その切っ掛けになるとの認識を示している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Nov 2021
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ニュースケール社、米国内でのSMR建設の可能性評価で新たに公営電力と覚書
米国のニュースケール・パワー社は5月26日、同社の小型モジュール炉(SMR)事業に日本のIHIの出資参加が決まったとする発表に加え、北西部ワシントン州で同社製SMRを建設した場合の性能を評価するため、同州グラント郡の公営電気事業者「グラントPUD」と協力覚書を交わしたと発表した。同社が開発したPWRタイプの一体型SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」は、西部6州の電気事業者48社で構成されるユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が、初号機をアイダホ国立研究所(INL)内で建設することを計画。UAMPSは2023年の第2四半期までに建設・運転一括認可(COL)を申請し、2025年の後半までにこれを取得、その後、直ちに建設工事を開始する方針である。 米原子力規制委員会(NRC)はすでに2020年9月、モジュール1基あたりの電気出力が5万kWのNPMについて、SMR設計としては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給した。工場内での製造・組立を基本とする同設計では、最大12基のモジュール接続で出力を拡大することができ、現時点では米国におけるSMR商業化レースの先頭を走っている。ニュースケール社はまた、7.7万kW版の「NuScale NPM-20」についても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。この「NuScale NPM-20」の出力は、4基接続するオプションの場合30.8万kW、6基で46.2万kW、12基で92.4万kWとなる。今回の覚書でニュースケール社とグラントPUDは、ワシントン州の中心部でNPMが信頼性の高い廉価な低炭素エネルギーの供給ソリューションとなり得るか、その適性の評価作業を協力して進めていく。ニュースケール社によれば覚書の締結は、「革新的な技術を採用したSMRでクリーンエネルギーを地域コミュニティに供給する」という需要の高まりを反映したもの。予定通りに建設されれば、グラント郡の顧客の電力需要に応えるとともに、適正価格による同設計の商業化に向けて、ニュースケール社が希望した通りのスケジュールを厳守することができる。グラントPUDは郡庁所在地のエフラタを本拠地としており、水力発電所など合計約210万kWの再生可能エネルギー源で、無炭素な電力を米国の太平洋岸北西部地域や、グラント郡内の発展著しい産業部門を含む約4万の小売顧客に供給中だ。グラントPUDのK.ノルトCEOは、「原子炉の安全性や革新的技術に対するニュースケール社の真剣な取り組みは当社の価値観とも一致する」と指摘。「太平洋岸北西部地域におけるカーボンフリーな社会実現のため、原子力に重要な役割を持たせるべく協力して取り組みたい」と抱負を述べた。ニュースケール社のSMR設計についてはこのほか、カナダのブルース・パワー社が2018年11月、カナダ市場への導入を目指してニュースケール社と協力覚書を締結。さらに、ヨルダン、ルーマニア、チェコ、ウクライナの国営電気事業者や原子力委員会が同社製SMRの導入を検討中で、実行可能性調査の実施に向けた覚書を締結済みである。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 28 May 2021
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英ロールス・ロイス社、今秋の設計審査開始に向けSMRの出力を増強
英国で小型モジュール炉(SMR)開発の官民企業連合を率いるロールス・ロイス社は5月17日、開発の第一段階が終了した現時点での最新設計を公開。出力を44万kWから47万kWに増強したことを明らかにした。同企業連合は2030年代初頭の初号機完成を皮切りに、2035年までに最大10基のSMR建設を目指している。折しも、英国では先週11日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が包括的設計審査(GDA)の対象として、SMRを含む「先進的原子力技術」まで範囲を広げると表明。このため同企業連合は、今年の後半にも最新設計のSMRでGDAの開始に漕ぎつけたいとしている。ロールス・ロイス社の「英国SMR開発企業連合」には、仏国の国際エンジニアリング企業のアシステム社や米国のジェイコブス社、英国の大手建設エンジニアリング企業であるアトキンズ社、BAMナットル社、レイン・オルーク社などが参加。このほか、英国の国立原子力研究所(NNL)、および英国政府が原子力産業界との協力で2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(N-AMRC)も加わっている。今回の発表によると、第一段階の作業で同企業連合は発電所としての設計を調整・改善しており、200以上の重要項目について設計上の改良を図った。具体的には、機器類の配置見直し等で、追加のコストをかけずに出力を47万kWまでに拡大させた。また新たな設計では、美的なカットを施した屋根で発電所を覆い、周囲の景観とマッチする盛り土が発電所を取り囲んでいる。さらに、床面のレイアウトで一層の合理化を図ったことから、基礎伏図はさらにコンパクトになったとしている。今後もこの開発プログラムを継続するにあたり、英国SMRの開発チームは「共同作業を実施する企業連合」から「独立した法人」に移行する方針である。一群のSMR発電所を、再生可能エネルギーと並んで、英国における低炭素エネルギーの拠点とするほか、これらが世界の低炭素化に資するよう輸出の機会を模索していく考えである。同企業連合のT.サムソンCEOは、「地球温暖化の防止や経済の再生、およびエネルギー供給保証で原子力は中心的役割を果たす」と断言。そのためにも、「原子力は今後も廉価で信頼性が高く、投資の対象に適した存在である必要があり、発電所の製造方法も洋上風力の1MWh当たり約50ポンド(約7,700円)という価格と同程度でなくてはならない」と指摘した。同CEOはまた、「世界の脱炭素化に向けて主要な役割を担うことができ、最終商品とほとんど同じレベルの製品を開発チームがすでに設計済みだ」と指摘。今秋にも同企業連合の設計をGDA申請することを強調した。ロールス・ロイス社の発表によれば、SMRの開発プログラムにより英国内だけでも以下が見込まれている。2050年までに4万人分の雇用創出520億ポンド(約8兆円)の経済的利益発電所を構成する機器の80%は英国内で調達発電所の輸出で新たに2,500億ポンド(約38兆6,600億円)の貿易利益を目指す(エストニアとトルコ、およびチェコとはすでに、輸出に向けた覚書を締結済み)初号機の建設コスト約22億ポンド(約3,400億円)は、5基が完成するまでに18億ポンド(約2,800億円)まで低減可能1基あたり、少なくとも60年稼働(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 May 2021
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英政府がSMRと先進的原子炉設計を設計認証審査の対象に、申請ガイダンスを公表
©BEIS英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は5月11日、包括的設計認証審査(GDA)の対象を小型モジュール炉(SMR)とその他の先進的原子炉設計を含む「先進的原子力技術」に広げると表明し、そのための申請ガイダンスを公表した。新たな原子炉設計を開発中の企業が適切なGDA申請準備を整えられるよう、政府が審査で要求するデータ等について情報提供することが目的である。この中でBEISは、申請書を提出する3か月前に申請の意思を連絡するよう指示。こうしたことを通じて、GDAを柔軟性のある時代に即した審査とする考えを明らかにした。BEISはまた、同じ日に「先進的原子力技術」の開発政策を示した文書を更新し、このような技術は、国内経済を低炭素なものに移行させる上で重要な役割を担うとの認識を改めて表明している。GDAは、英国内で初めて建設される原子炉設計に対して行う事前の設計認証審査。原子力規制庁(ONR)が対象設計の安全・セキュリティ面について、環境庁(EA)が環境保護と放射性廃棄物管理の側面について、英国の基準を満たしているか、約5年かけて評価する。これまでに、フラマトム社製の「欧州加圧水型炉(EPR)」とウェスチングハウス(WH)社製「AP1000」、および日立GE社製の「英国版ABWR」に対し、ONRが設計承認確認書(DAC)を、EAが「設計承認声明書(SoDAC)」を発給済み。ONRらは現在、中国広核集団公司(CGN)を中心とする中国企業が開発した英国版の「華龍一号」設計について審査を行っている。更新した政策文書の中で、英政府は開発中の様々な原子炉設計を意味する「先進的原子力技術」の定義として、「従来の原子炉より小型のもの」で、「工場内で製造した後、設置場所まで輸送が可能なほか、建設リスクやコストを軽減できるもの」と説明。これらの技術は一般的に、①SMR:「第3世代の水冷却炉(軽水炉、重水炉)で規模の小さいモジュール設計」と②AMR:「第4世代以降の先進的モジュール炉で、新しい冷却方式や燃料、熱供給機能等を備えるとともに、大幅なコスト削減の可能性がある設計」に分類されるとした。BEISはまた、B.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」と、BEISが2020年12月に公表した新しい「エネルギー白書」に言及。これらを通じて、英政府は2050年までに国内の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化する方針であり、そのために大型炉に加えてSMRや先進的原子炉を国内で建設するとの方針を強調している。具体的な10項目の重要施策を示した「10ポイント計画」のなかで、英政府は「先進的原子力基金」として最大3億8,500万ポンド(約593億円)を充当すると表明。これには、SMR開発資金の最大2億1,500万ポンド(約331億円)が含まれるとともに、AMR研究開発プログラムに対する最大1億7,000万ポンド(約262億円)の投資が約束された。政府はまた、これらの技術開発にともなう規制枠組みの整備や、これらを市場に送り出すサプライチェーンへの支援で、別途4,000万ポンド(約62億円)を投資する計画。これらを通じて、SMRの初号機とAMRの実証炉を2030年代初頭に完成させたいとしている。(参照資料:英政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 May 2021
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米国務省がSMRの活用支援プログラムを始動
米国の国務省(DOS)は4月27日、地球温暖化を防止するバイデン=ハリス政権の取り組みの一環として、国際支援プログラム「小型モジュール炉(SMR)技術の責任ある活用に向けた基本インフラ(FIRST)」を始動すると発表した。国内で60年以上にわたり蓄積してきた原子力関係の革新的技術と専門的知見に基づき、米国はパートナー国がクリーンエネルギーの利用を拡大する際、同プログラムを通じて国際的に最も厳しい安全・セキュリティ基準や核不拡散基準の下で原子力プログラムが策定されるよう、能力の向上を支援。そのための初期予算として、DOSは同プログラムで実施するプロジェクトの支援に530万ドルを投入する方針である。J.バイデン大統領は4月22日と23日の2日間、40か国・地域の首脳らを招いて気候変動サミットをオンライン開催したが、その中でFIRSTプログラムを初めて紹介。これはクリーンエネルギー増産のための技術革新と、前例のない世界規模の国際協力体制構築に向けた米国の主要な努力活動になると説明していた。今回の発表によると、FIRSTはパートナー国における確実にして安全な原子力基盤の整備を目的に、技術協力も含めた戦略的連携を深めるとともに、エネルギー関係の技術革新を推進する。DOSは具体的に、国際原子力機関(IAEA)の「マイルストーン・アプローチ」に沿って、SMRなど先進的原子力技術の導入をパートナー国で支援する計画。同アプローチではIAEA加盟国で健全な原子力発電プログラムが開発されるよう、フェーズ毎にIAEAがレビュー・ミッションを実施、推奨事項の提示やフォローアップも行っている。SMRに関してDOSは、低価格で設置容量の選択性があり、負荷変動への対応や他のクリーンエネルギーの補完など、柔軟性の高い運転が可能な発電設備だと認識。信頼性の高い発電能力に加えて、海水の脱塩やエネルギーを大量消費する産業プロセスで石炭火力に代わる能力を持っているとした。SMRはまた、輸送その他の部門で脱炭素化を促進する水素の製造も可能なことから、DOSはFIRSTを通じてパートナー国の政府や産業界、国立研究所、学術機関との連携を強化。地球温暖化の防止に向けた取り組みと技術革新の促進のほか、環境保全、地域社会の経済成長に向けて、米国は新しい様々な方策を安全確実なやり方で主導していく考えである。(参照資料:米国務省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 30 Apr 2021
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「SMR技術でカナダが世界のリーダーに」とのFS結果
カナダのオンタリオ州、ニューブランズウィック(NB)州、サスカチュワン州の各首相は4月14日、3州の電気事業者が共同で実施した小型モジュール炉(SMR)開発の実行可能性調査(FS)の結果を公表した。SMR開発が同国の経済成長に大きく貢献すると結論づけている。また、アルバータ州は同日、これら3州が多目的SMRをカナダ国内で開発・建設するため、2019年12月に締結した協力覚書に加わったと表明。これら4州の首相は、地球温暖化とエネルギー需要への取り組み、および経済成長と技術革新を支援するクリーンエネルギー・オプションとして、SMR開発を協力して進めることで合意している。FSの結果報告書によると、出力30万kW以下のSMRはカナダのエネルギー需要を満たす一助となるだけでなく、温室効果ガスの排出量を削減し、SMR技術でカナダを世界のリーダーに押し上げることが期待される。また、既設の大容量送電網のみならず、遠隔地のコミュニティや資源開発プロジェクトで使用する小容量送電網にも組み込むことができると表明している。今回のFSは3州の協力覚書の一環として、各州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー(BP)社、NBパワー社、およびサスクパワー社が州政府の要請を受けて行った。これら3州ではすでに、複数のSMR開発プロジェクトが進められているが、FS報告書はそれらについて3州の州政府が考慮すべき方向性を以下のように提案している。①(オンタリオ州がダーリントン原子力発電所敷地内で進めているSMR計画について)送電網への接続が可能な出力30万kW程度のSMR初号機を2028年までに建設し、これに続くフェーズで最大4基のSMRの最初の一基を2032年までにサスカチュワン州内で完成させる。ここでは複数の地点で早急かつ効率的にSMRを建設できるよう、共通技術を1つに絞り込みSMR群を一まとめに建設する“フリート”アプローチを取る。これに向けて、OPG社とBP社、およびサスク社は協力して、2021年末までに採用技術と開発企業を選定する。②(NB州がポイントルプロー原子力発電所敷地内で進めているSMR計画については)第4世代の先進的SMR実証炉を2種類、建設する。NB州が協力関係を結んでいる2社のベンダーのうち、米ARCクリーン・エナジー社のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」の実証炉を2030年までに完成させる。また、英モルテックス・エナジー社の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」と廃棄物リサイクル施設を2030年代初頭までに稼働可能にする。③遠隔地のコミュニティや鉱山で主に使用されているディーゼル発電機に代わって、超小型SMR(MMR)を導入する。このため、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した電気出力0.5万kWの小型モジュール式高温ガス炉を、2026年までにオンタリオ州のカナダ原子力研究所チョークリバー・サイトで建設する。このMMRに関してはすでに2019年3月、USNC社のパートナー企業であるカナダのグローバル・ファースト・パワー(GFP)社がチョークリバー・サイトで実証炉を建設するため、サイト準備許可(LTPS)をカナダ原子力安全委員会に申請している。FS報告書によると、これら3つの方向性すべてで「カナダに新たな雇用を生み出し経済成長に貢献する」ことが期待できる。地球温暖化など地球規模の課題への取り組みにも資することから、SMR技術とその専門的知見を輸出できる可能性もあるとした。また、すべての方向性において技術面と商業面両方に実行可能性がある一方、重要な点は連邦政府とコストやリスクを共有することだとFS報告書は指摘。これらのSMR技術は、廉価なクリーンエネルギーを提供しつつカナダが2030年までに石炭火力を全廃し、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成する一助になる。また、これらのSMRプロジェクトは原子力産業界の活動に新たなサブカテゴリ―を創出する。カナダは世界中のSMR建設で大きな役割を果たせる有利な立場にあるため、3つの方向性すべてが順調に進展するよう連邦政府からタイムリーな支援を確保することが重要になる。さらに、勧告事項としてFS報告書は、州政府が各州それぞれの経済優先事項や必要性に沿ったやり方で連邦政府と協力し、カナダのCO2排出量削減と経済成長を支援していくべきだとした。SMR開発で得られるビジネス機会を共有しながら、産業界と州政府、および連邦政府は協力してカナダ中で経済成長と雇用を促し、輸出も視野に入れた理想的な事業環境を創出、革新的エネルギー技術の開発を続けるべきだとしている。なお、アルバータ州が新たに加わった3州の協力覚書における次のアクションとして、4州の州政府は共同戦略計画案を策定するとしており、今春中に完成する見通しである。また、これら4州は原子力産業界全体との協力も継続し、原子力技術革新の最前線にカナダが留まれるよう力を合わせる方針。今後の経済成長や雇用の創出、技術革新、低炭素社会の構築に向けて、新たな機会を模索するとしている。(参照資料:オンタリオ州、NB州、サスカチュワン州、アルバータ州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Apr 2021
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カナダ連邦政府がNB州のSMR研究開発を支援
「SSR-W」の構造図©Moltexカナダの連邦政府は3月18日、東部のニューブランズウィック(NB)州が進めている小型モジュール炉(SMR)の技術研究開発を支援するため、総額5,600万カナダドル(約48億7,400万円)以上の資金供与を行うと発表した。その内訳は、NB州内で商業規模の実証炉建設が計画されている2つのSMR設計のうち、「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」を開発した英モルテックス・エナジー社に対して、「戦略的技術革新基金(SIF)」から4,750万加ドル(約41億3,600万円)、大西洋地域開発庁(ACOA)の「技術革新による地域経済成長(REGI)プログラム」から300万ドル(約2億6,000万円)を支出する。これに加えて、SMR実証炉の建設予定地であるポイントルプロー原子力発電所の準備資金として、同炉を所有する州営電力のNBパワー社に約500万加ドル(約4億3,500万円)、NB州内でSMR技術の開発研究を支援しているニューブランズウィック大学・原子力研究センターの能力を拡充するため約56万加ドル(約4,900万円)をACOAから提供する方針である。連邦政府の考えでは、これらの支援を通じてCO2排出量が削減され、カナダがクリーンな経済成長に移行するために役立てることが出来る。連邦政府の「技術革新と能力の増強計画」にも、高度な能力を持つ人材が育ち、将来的な経済成長と技術革新の主要要素となる新しい基盤技術の研究が進展。カナダのSMR技術開発、およびその長期的なビジョンを示した「SMRアクション計画」をも下支えすることになる。今回の決定について連邦政府のF.-P.シャンパーニュ技術革新・科学産業相は、「このような革新的技術の開発利用を連邦政府が支援することで、低炭素なエネルギー源の開発が促進され、世界のSMR開発におけるカナダのリーダーシップが確立される」と強調。「連邦政府は新型コロナウイルスによるパンデミック後の復興も含め、一層豊かで健全なカナダのために基盤を築かねばならないが、今回の資金援助は地球温暖化との戦いやパンデミック後のカナダ経済の安定性を取り戻す上で、重要な役割を担うことが期待される」と指摘した。NB州の「SSR-W」実証炉計画NB州政府が、モルテックス社製「SSR-W」の実証炉を2030年までにポイントルプロー原子力発電所のサイト内で建設すると表明したのは2018年7月のこと。同州政府によれば、先進的なSMR技術の開発は安全・確実かつクリーンで経済的な原子力エネルギーを開発する一助になる。また、エネルギー需要を満たすだけでなく、輸出の機会も得られるようなエネルギー・ソリューションの開発で、同州はカナダのリーダー的立場の確立を目指すとしている。モルテックス社の発表では、出力30万kWの「SSR-W」は既存炉の使用済燃料を低コストで新燃料に転換できるため、NB州内では将来、使用済燃料の処分問題に解決の道筋をつけることができる。同社はポイントルプロー発電所の敷地内でその商業規模の実証炉を建設するほかに、廃棄物を安定塩にリサイクルする施設「WAste To Stable Salt (WATSS)」の建設も計画。2030年初頭にもSMRを完成させて、無炭素な電力をカナダ国内に送りだしたいとしている。モルテックス社はまた、同設計の開発にSIF基金から4,750万加ドルが提供されるのを受けて、自らも同額の資金を拠出する方針である。これらを合計した金額で「SSR-W」と「WATSS」の設計を一層前進させ、カナダ原子力安全委員会が同設計について実施中の「許認可申請前設計審査(ベンダー設計審査)(VDR)」を第2フェーズに進めていく。ACOAからの300万加ドルもWATSS研究のさらなる促進に利用する方針で、このような技術の商業化が急速に進展すれば、カナダでは付加価値の高い数百人規模の雇用が創出される。これらの雇用は15年間で約10億加ドル(約870億円)の国内総生産(GDP)への寄与を生み出し、連邦政府に1億加ドル規模(約87億円)の歳入をもたらすと強調している。(参照資料:カナダ連邦政府、モルテックス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Mar 2021
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ブルガリア、SMR建設の実行可能性調査でニュースケール社と覚書
米国のニュースケール・パワー社は2月17日、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所内で同社製の小型モジュール炉(SMR)を建設する可能性を探るため、コズロドイ原子力発電所増設会社(KNPP-NB)と協力覚書を締結したと発表した。コズロドイ発電所では現在、5、6号機(各100万kWのロシア型PWR=VVER)のみが稼働中だが、これらは同国唯一の原子力発電設備であり、総発電量の約35%を賄っている。ブルガリア内閣は昨年10月14日、欧州連合(EU)が目標に掲げる「2050年までに気候中立(CO2の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロ)を達成」を前進させるためにも、同発電所の設備容量拡大に向けた可能性調査や準備活動を実施すると閣議決定した。内閣はその際、世界の潮流に沿って、将来的にSMRを第3世代+(プラス)の大型炉に代わる選択肢として活用する方針を明示。コズロドイ発電所では設備容量の上限を定めていないため、原子炉の増設に向けて現在進めている活動の範囲を広げることや、様々な原子炉技術を考慮することなどを指示した。また、具体的な措置として、SMRのデベロッパーを含む米国企業と新たな原子炉技術の開発協力で交渉に入るなど、必要なアクションを取るようエネルギー大臣と国営エネルギー持ち株会社(BEH)に命じている。実際、ブルガリア政府は今年1月、頓挫したベレネ原子力発電所のために調達した一部機器を使って、コズロドイ発電所7号機の建設を検討すると発表している。この方法が最も経済的であり、環境面や技術面でも適していると述べた一方、SMRなどの新技術を採用した原子炉を建設する可能性についても調査を継続するとしていたニュースケール社が今回覚書を結んだKNPP-NB社は、既存のコズロドイ発電所サイトに新たな原子炉を建設するために設立された株式会社。閣議決定に沿って、KNPP-NB社は先進的な原子炉技術を同発電所に導入する方針であり、ニュースケール社のSMRについても技術的な適性を評価する。ニュースケール社側もKNPP-NB社のこのような活動に協力するため、様々な分析・調査をサポートする予定。具体的には、実行可能性調査の実施も含めた開発スケジュールの作成や費用見積もり、エンジニアリングや許認可手続きなど、ニュースケール社製SMRの導入で双方が合意した項目を支援していく。ニュースケール社は2016年12月末日、SMR設計としては初の設計認証(DC)審査を原子力規制委員会(NRC)に申請した。その後約4年半の審査を経て、NRCは2020年9月29日付けの連邦官報で、「電気出力各5万kWのモジュール×12基」で構成される同社製SMRに「標準設計承認(SDA)」を発給したと発表した。同設計の初号機については、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)がエネルギー省傘下のアイダホ国立研究所内で建設することを計画しており、ニュースケール社は2027年までに最初のモジュールを納入する考え。また、米国以外では、カナダやヨルダン、チェコ、ルーマニアで同社製SMRの建設可能性調査に関する覚書がニュースケール社と結ばれている。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、コズロドイ原子力発電所増設会社(ブルガリア語)の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Feb 2021
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英国のクリーン・エネ企業、風力とSMRの複合発電所建設を米ニュースケール社と検討
英国で洋上風力発電などのクリーン・エネルギー事業を展開するシアウォーター・エナジー社は1月12日、風力発電と小型モジュール炉(SMR)を組み合わせたハイブリッド・エネルギー・プロジェクトをウェールズで進めていくため、米国のニュースケール・パワー社と協力すると発表した。同社はすでに、このプロジェクトの概要を英国政府のほかウェールズ、北アイルランド、スコットランドの各政府にもオンラインで提案。同社によれば、いずれの政府もこのプロジェクトから経済面で多くの恩恵を得ることができる。このプロジェクトでシアウォーター社は、米国のSMR商業化レースで先頭に立つニュースケール社のSMRを選択した。ニュースケール社のSMRは負荷追従運転にも対応するベースロード用エネルギー源であり、このプロジェクトのためにクリーンなエネルギーの生産が可能。シアウォーター社は今回、ニュースケール社と了解覚書を締結しており、プロジェクトの詳細調査などで両社間の協力を強化する。早ければ2027年にもウェールズ北部のアングルシー島ウィルファで、無炭素なクリーン電力の出力300万kW、CO2を排出しない「グリーン水素」の生産量が年間3000トン以上という風力・SMR複合発電所の運転を開始する。発表によると、今回の覚書で両社は双方の技術を統合し、電力と水素を複合生産する可能性を探る。近年、再生可能エネルギーが世界中で成長しているが、両社の協力は適用性が一層柔軟で信頼性の高い低炭素電源が求められていることを示している。ニュースケール社はプロジェクトに適合したSMRのエンジニアリングや計画立案、許認可手続でシアウォーター社に協力するほか、数多くの英国企業をプロジェクトに参加させる方策を同社とともに模索。ニュースケール社が英国のサプライチェーンを評価した結果、SMRで使用する資機材の75%以上が英国内で調達可能だと結論付けている。シアウォーター社のS.フォースターCEOは今回のプロジェクトについて、「複数の低炭素発電技術を組み合わせれば、高額のコストや長期の建設工事、環境への影響なしで大型火力発電所と同等の性能を得ることができる」と指摘。風力・SMR複合発電所が完成すれば、従来の原子力発電所を建設するコストのほんの一部分で出力300万kWの無炭素電力が得られるほか、グリーン水素の生産により輸送部門を低炭素燃料に移行させるための支援が可能になるとした。同社はまた、英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を達成できるよう、2030年までに洋上風力発電の設備を速やかに拡大するとともに、SMRにも投資すると政府が発表した事実に言及。これらを考慮すると、同社とニュースケール社の風力・SMR複合発電所は、送電網の安定性問題や再生可能エネルギーの間欠性問題にも打ち勝つことができるとした。さらに、この複合発電所が生産するグリーン水素によって、様々な産業の脱炭素化とエネルギー供給保証の価格適性化の達成を後押しすることも可能だとしている。(参照資料:シアウォーター・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Jan 2021
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米貿易開発庁、ルーマニアにおけるニュースケール社製SMR建設に向け技術支援
米国の貿易開発庁(USTDA)は1月14日、オレゴン州のニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)をルーマニアで建設するための技術支援金として、ルーマニア国営の原子力発電会社(SNN)に対し約128万ドルを交付したと発表した。返金不要の同支援金を通じて、SNN社は国内唯一の原子力発電設備であるチェルナボーダ発電所(70万kW級加圧重水炉×2基)とは別に、SMR建設に適したサイトを新たに選定するための予備的評価作業を実施する。SMRはまた、2035年以降のエネルギー生産や関係事業に利益をもたらす可能性があるため、SMRの許認可手続に関するロードマップも作成する方針である。ルーマニアの2020年のエネルギー戦略プロジェクトによると、SMRを採用することにより同国では2035年以降、CO2を排出しないエネルギー源や水素生産源を拡大することが可能になる。このためSNN社は、適切な時期にSMR建設サイトの評価を開始する方針であり、ニュースケール社とはすでに2019年3月、同社製SMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の建設可能性を探る目的で了解覚書を締結。SMRの革新的な技術や関係ビジネスの情報を入手して、この目標の達成に向けた評価を実施するとしている。USTDAのT.アブラジャノ最高執行責任者(COO)兼代表によると、将来のエネルギー需要を満たすために最新鋭の民生用原子力技術を欲するルーマニアにとって、USTDAは理想的なパートナー。その上で同COOは、「今回の支援で両国の原子力産業間に強固な連帯が築かれ、米国の原子力産業界にとっては重要市場で新たな事業チャンスが生み出される」と述べた。また、USTDAはルーマニアのエネルギー戦略にSMRを導入する手助けをすることになり、SNN社がすでにサイト選定やサイト固有の許認可ロードマップ作りで具体的な支援が得られるよう、イリノイ州のサージェント&ランディ社を選択したことを明らかにした。一方、SNN社のC.ギタCEOは、「チェルナボーダ発電所で現在、3、4号機の増設計画を進めているのに加え、当社は国内原子力産業界のさらなる発展に向けた長期的対策として、SMRの建設・評価に高い関心を抱いている」と述べた。同CEOはSMRの特徴であるモジュール方式や運転の柔軟性、発電効率の高さが、ルーマニアにおける2035年以降のエネルギー・システムや関係事業を有利に導くかもしれないと指摘。USTDからの支援に適合するSMR技術について建設サイトを選定し、最終決定につなげられるよう評価作業を始めたいとしている。なお、ニュースケール社のNPMは昨年9月、米原子力規制委員会(NRC)が実施中の設計認証(DC)審査において「標準設計承認(SDA)」を取得。2029年に同SMRで最初のモジュールの運転を開始するため、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)はアイダホ国立研究所敷地内で建設計画を進めている。このほか、カナダやヨルダン、チェコ、ウクライナが国内でNPMの建設を検討中。それぞれの国の担当機関が、実行可能性調査を実施するための了解覚書をニュースケール社との間で結んでいる。(参照資料:USTDAとSNN社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 18 Jan 2021
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米トランプ政権、宇宙探査と国防目的のSMR利用促進で大統領令発令
任期満了まで残すところ約1週間となった米国のD.トランプ政権は1月12日、深宇宙の探査や国家防衛のために、極小原子炉など小型モジュール炉(SMR)技術のさらなる利用促進を目指した大統領令を発令した。大統領令は国内政府機関や職員に対して発せられる行政命令で、議会の承認を得ることなく行政権を直接行使することが可能である。トランプ政権は米国の国家安全保障にとって原子力技術は非常に重要と認識しており、今回の大統領令を通じて国内原子力部門の再活性化と拡大を図る方針。国防長官に対しては同令の発令後180日以内に、原子力規制委員会(NRC)の認可を受けた極小原子炉を国内遠隔地の軍事施設に設置した際のコスト効果や、エネルギー源の柔軟な活用がもたらす効果の実証プランを作成・実行するよう指示した。また、国防総省が1日に消費する燃料は1,000万ガロン以上、民生用電力網から使用する年間の電力消費量も300億kWhに及ぶことから、トランプ政権は先進的原子炉が国防に立つかについては国防長官が判定し、輸送可能な極小原子炉の試用も行うとした。宇宙動力炉の軍事利用や敵対国における利用プログラムについても、同長官が分析を指示すべきだとしている。同政権はさらに、米航空宇宙局(NASA)長官に対しても180日以内に、2040年までのロボット探査や人的探査ミッションに原子力システムを利用する際の要件を特定し、利用にともなう同システムのコストや利点を分析するよう指示した。このほか同政権は、国内の原子燃料サプライチェーンが安全かつ安定的に成長するは、米国の国益にとって重要だと指摘。今後の発展が期待できる燃料サプライチェーンは、国家の安全保障・防衛活動を支えるとともに民生用原子力産業界の発展を保証するとした。ところが、先進的原子炉概念の多くがHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用することから、同政権は国内に商業用のHALEU生産設備が存在しない米国では国産のHALEU燃料確保で対策を講じなければならないと述べた。こうした観点からトランプ政権は、軍用の先進的原子炉で使用するHALEU燃料の生産能力を実証するため、1億1,500万ドルの予算で現在進行中の3年計画を完了させるようエネルギー省(DOE)長官に指示。同計画の予算の範囲内で、HALEU燃料生産技術を成功裏に民間部門の商業利用に移転させるプランを策定するよう促している。これらを踏まえて同政権は、今回の大統領令の中で国務長官、国防長官、商務長官、エネルギー長官、およびNASA長官に対し、2030年までを見据えた共通技術開発ロードマップの作成を指示した。ここでは、開発が望ましい技術を明記するほか、地上設置用の先進的原子炉と宇宙探査用の原子力推進システム等の開発について可能な限り省庁間の調整を行うとしている。なお、大統領令の発令に至るまでの経緯として、トランプ政権は発足した2017年に原子力部門の再生イニシアチブを開始したほか、原子力政策の包括的見直しを指示したと説明。2019年7月に「ウランの輸入が国家安全保障に及ぼす影響と国家原子燃料作業グループの設置」と題する大統領覚書に書名した後、同年8月には宇宙探査を促進するため、宇宙探査機に搭載する原子力発電システムの開発・利用を呼びかける大統領覚書を発出したことも指摘している。また、今回の大統領令は、国内原子力部門の再生と米国の宇宙開発プログラムの再活性化、および国防上必要とされる多様なエネルギー・オプションの開発を目指して、重要な追加施策を取ることが目的だと説明。同令により、米国政府はSMRを国防や宇宙探査に利用することも含め、米国の技術が世界でも優位となるよう原子力の利点を効果的に適用する活動を調整。これにより、トランプ政権が最優先事項とする「研究開発や発明、また先進技術の革新における米国の主導」、およびそれに基づいて米国の国家安全保障ミッションを推し進める上で重要であると表明。また、米国による「エネルギー支配」の原動力としても、最も厳しいレベルの核不拡散に留意しながらこれらの目標をすべて達成する上でも重要だと指摘している。(参照資料:ホワイトハウスの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)。
- 14 Jan 2021
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米国の公営電力事業体、ニュースケール社に同社製SMRのCOL申請準備を指示
米国のニュースケール・パワー社は1月11日、アイダホ国立研究所(INL)敷地内で同社製小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)から、建設・運転一括認可(COL)の申請準備を行うよう指示されたと発表した。西部6州の電気事業者48社で構成されるUAMPSは、SMR建設を柱とする独自の「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を2015年から進めており、同プロジェクトの管理と開発リスク回避のためにニュースケール社と最近締結した協定を、今回実行に移したもの。UAMPSは2023年の第2四半期までにニュースケール社製SMRのCOLをNRCに申請し2025年の後半までにこれを取得、その直後からSMRの建設を開始したいとしている。 ニュースケール社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」はPWRタイプの一体型SMR設計で、出力5万kWのモジュールを12基接続することにより最大で60万kWの出力を得ることができる。同設計が昨年8月、SMR設計としては初めて原子力規制委員会(NRC)の「標準設計承認(SDA)」を取得したのを受け、UAMPSはNMP初号機が生産するクリーンで安全かつコスト面の効率性も高い無炭素電力がUAMPS所属の電気事業者に提供されるよう、今回COLの申請準備を最初の指示としてニュースケール社に通達。同社、および同社の親会社で大手のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約企業でもあるフルアー社は具体的な作業として、建設コストのさらに詳細な見積金額を算出するとともに、SMR建設の許認可手続と製造等で初期作業の計画を立案することになる。ニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社の画期的なSMR技術の商業化に向けて大きな一歩が刻まれた」とコメント。2022年頃にUAMPSからNPMの発注を受けられるよう、慎重に開発を進めていくと述べた。UAMPSのD.ハンターCEOも、「ニュースケール社のSMRを通じて価格の手頃な無炭素エネルギーをUAMPS所属の電気事業者に安定的に提供できる。我々の電力供給区域内で大規模な再生可能エネルギー源を開発し、SMRでその間欠性を補うことも可能だ」としている。今回の発表によると、ニュースケール社とUAMPSが結んだ協定には「実費精算契約」が含まれており、完成したSMRの所有・運転会社となるCFPP社(UAMPSの100%子会社)には、INLを所有するエネルギー省(DOE)から複数年にわたって合計13億5,500万ドルの支援金が支払われる。また、フルアー社もUAMPSと実費精算協定を締結しているため、フルアー社は建設地であるINLサイトに特化した設計・エンジニアリング・サービスの提供コストを見積もる方針。これに対してUAMPSは、CFPPに参加する電気事業者のニーズに合ったSMR発電所の規模(モジュールの連結数)や最適なエネルギー・コストを特定するため、評価作業を続ける考えである。(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 13 Jan 2021
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ロスアトム社、ロシア極東サハ共和国で建設予定SMRの電力売買で合意
ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は12月24日、極東連邦管区のサハ自治共和国内で2028年までにロシア初の陸上設置式・小型モジュール炉(SMR)の完成に向け、同SMRが発電する電力の料金について23日に同国政府と合意に達したと発表した。サハ共和国の北部、ウスチ・ヤンスク地区のウスチ・クイガ村でSMRを建設する計画は今のところ、両者が2019年9月に締結した意向協定の枠組内で進められている。今回の合意により、同共和国政府はロスアトム社の容量4万~5万kWのSMRからの電力購入と、SMR建設用地の確保支援を約束。モジュール方式のロスアトム社製SMRは工期が短く経済的で、高い安全性を維持しつつ少なくとも60年間稼働することから、ウスチ・ヤンスク地区では発電コストが約半分に削減されると同社は強調している。2020年初頭までにウスチ・ヤンスク地区では両者の意向協定の下で現地調査が完了し、現在は準備作業が行われている。ロスアトム社が建設するのは、同社傘下のOKBMアフリカントフ社が原子力砕氷船用に開発した「RITM-200」設計をベースとする(5万kW程度の)低出力SMR発電所。「RITM-200」は熱出力17.5万kWのコンパクトな軽水炉でこれまでに6基建設されたが、このうち2基は今年10月に正式就航した最新式の原子力砕氷船「アルクティカ」に搭載されている。ロスアトム社はまた、海上浮揚式原子力発電所用のSMRついても開発を進めている。出力3.5万kWの小型炉「KLT-40S」を2基装備した「アカデミック・ロモノソフ号」は、今年5月に極東チュクチ自治区内の湾岸都市ペベクで商業運転を開始した。こうした背景から、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁は「新たな世代の陸上設置式SMR原子力発電所を、ロシア国内で初めて建設する重要な一歩が本日刻まれた」と表明。「この建設プロジェクトを実行に移すことで、世界のSMR市場におけるロシアの主導的立場はますます強化される」と述べた。また、「アカデミック・ロモノソフ号」が極東地域で商業運転を開始した事実に触れ、「北極圏の条件下で様々な試験をクリアした「RITM-200」を諸外国のパートナーに提案することは非常に重要だ」と説明。「このように近代的な技術は、現在ロシアのみが保有しており、ロシア国内のみならず世界中で低出力の原子力発電所がもたらす明るい未来が約束された」と強調した。同社はさらに、ウスチ・ヤンスク地区でサハ共和国初の原子力発電所が建設された場合、老朽化した石炭火力発電所やディーゼル発電所が閉鎖されるため、同地区のCO2排出量を年間1万トン削減できるとした。サハ共和国内の金山開発計画にもクリーンエネルギーを安定的に供給することが可能になり、発電所の建設期間だけで最大で800人分の雇用を創出。遠隔地域の住民と地下資源開発業者の両方に対し、信頼性の高い熱電供給を約束するとしている。(参照資料:ロスアトム社(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)
- 25 Dec 2020
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