ANECが描く原子力教育の新たな地平
東日本大震災後、原子力教育の基盤が弱体化する中、ANECが発足。産学官が連携し、1大学ではカバーしきれないカリキュラムを全国規模で補完する、これまでにない大胆な取り組みを実現した。炉物理の第一線で活躍する教授が、人材育成に情熱を注ぐ背景と思いに迫る。






「文系か理系か」という区分は、学びの入口にすぎない。気候変動やエネルギー問題に挑む人材、ならびに原子力分野を担う人材の育成には、領域横断の“知”が前提となる。本特集は、学校と社会、知識と実践の境界を横断する試みを追うものである。その歩みはSTEAM教育の理念とも響き合う。ANECの産学連携をはじめ、討議型タブレットゲームによる授業の現場、京都大学「Nプロジェクト」の実践、教育の最前線に立つ専門家インタビューなどを通じ、次世代に届くアプローチを照らし出す。鍵は正答の伝達ではなく、問いを立て、対話し、手を動かすことである。“知”のボーダーを越える現場から、未来の学びのデザインを描き出す。
東日本大震災後、原子力教育の基盤が弱体化する中、ANECが発足。産学官が連携し、1大学ではカバーしきれないカリキュラムを全国規模で補完する、これまでにない大胆な取り組みを実現した。炉物理の第一線で活躍する教授が、人材育成に情熱を注ぐ背景と思いに迫る。
『Nプロジェクト』とは
科学を使って社会と語り合う――そんな発想から生まれたのが「Nプロジェクト」。京都大学の中村秀仁助教を中心に、高校生たちはスケッチブックを手に科学を語り、街ゆく人々と対話する。学ぶだけでなく、伝える。教室を越えて世界へ広がるこの挑戦が、未来の科学のかたちを変え始めている。
8月の大阪・関西万博会場。スケッチブックを手にした高校生たちが、来場者に笑顔で話しかける姿があった。テーマは「放射線」。人々が避けがちなテーマを、彼らはわかりやすい言葉と身振りで伝えていく。京都大学の中村秀仁助教を中心に展開される「Nプロジェクト」は、科学を“学ぶ”から“語り合う”へと変える教育活動。その理念が、この夏、国際舞台で現実のものとなった。

大阪府立千里高等学校の生徒たちがこの夏、Nプロジェクトの一環として神戸市の三菱重工業 神戸造船所を訪れた。キックオフ授業に続く第二弾は、原子力産業の「現場」を歩き、耳で聞き、手で確かめる見学会である。
2025/10/31

2025年7月、大阪府立千里高等学校で、公立SSH校としては初めてとなる「Nプロジェクト」が始動した。京都大学・中村秀仁助教の指導のもと、生徒たちは放射線をテーマに、科学を学ぶだけでなく、それを自分の言葉で社会に伝える力を養う。クイズ形式の双方向型授業で知識を深めた後、冬には大阪の商業施設で、市民向けプレゼンテーションに挑む。科学を通じて社会と対話する――STEAM教育の実践例として注目される、千里高校の取り組みの現場をルポする。
2025/10/17
