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原子力発電所の建て替え目標正式決定 原子力政策行動指針改正
政府は7月31日、第14回原子力関係閣僚会議を開催し、2040年代までに大型炉約2~5基分(約220万~550万kW)、2050年代までに同約11~14基分(約1,270万~1,600万kW)の原子力発電所の建て替えを見込んだ、原子力政策の行動指針改正を正式に決定した。今回の改正で、再稼働の加速に向け、運転サイクルの長期化や定期検査の効率的な実施等に関する規制当局との議論を進める。そのほか、再処理・MOX工場の竣工および操業環境整備、プルサーマルや使用済み燃料対策の推進などの核燃料サイクルの推進、海外での市場機会の獲得に向けた官民支援、機器・部素材の供給途絶対策や事業承継支援など、サプライチェーンの実態に即した支援も盛り込まれた。会議に出席した高市首相は、「高市内閣として原子力政策を前に進めていく」と強調。次世代革新炉の早期導入に向け、事業の予見性を高めるため、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の役割を脱炭素エネルギー全般に拡大するとした。また、原子力やフュージョンエネルギーの研究開発への資金供給機能の強化や日本原子力研究開発機構(JAEA)の機能強化、産学官が連携した原子力人材育成強化についても言及した。今回の改正内容は、8月末までに策定予定のエネルギー政策の新計画「エネルギー需給構造強靱化パッケージ」に盛り込まれる予定。
- 03 Aug 2026
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高校生4選手が世界へ挑戦 INSO2026結団式
第3回国際原子力科学オリンピック(INSO2026)サウジアラビア大会に出場する日本代表選手団の結団式・壮行会が7月31日、東京大学で開催された。代表に選ばれた高校生4人に任命状が手渡され、選手団は8月1日に開催地のサウジアラビア・ジェッダへ向けて出発した。INSOは、IAEAが原子力科学教育の推進を目的に創設した国際大会。アジア太平洋地域の20歳未満の学生が参加する。式では、INSO日本代表選手団出場支援委員会委員長の飯本武志先生(東京大学アイソトープ総合センター教授)が大会趣旨を説明。選手団リーダーの角山雄一先生(京都大学環境安全保健機構放射線管理部門准教授)は前回のマレーシア大会の活動成果を、佐藤大樹先生(日本原子力研究開発機構)は代表選手らの大会出場に向けた準備の様子などを報告した。その後、出場する4選手へ任命状が授与された。また、来賓として文部科学省、外務省、千代田テクノル、長瀬ランダウア、関西電力の関係者らが出席し、選手を激励。文部科学省の有林浩二課長(研究開発局原子力課)は、INSOで出題される問題の難易度の高さに触れ、選手らの挑戦を称えた。また、将来的な月面での原子力利用にも言及し、原子力科学の活躍の場が今後さらに広がっていくとの展望を示した。外務省の田中健一郎室長(軍縮不拡散・科学部国際原子力協力室)も、原子力の脱炭素への貢献や、医療・農業分野における放射線利用に触れ、原子力科学への世界的な関心の高まりを強調した。最後に、選手らは一人ひとり大会への抱負を述べ、「4人で金メダルを獲得して帰ってきたい」「世界中の参加者と交流し、新しい知見を得たい」「大会期間中に誕生日を迎えるので、多くの友人をつくりたい」「小学生の頃から興味を持っていた分野で、日本代表として出場できることをうれしく思う」など、それぞれ世界大会への決意を語った。INSO2026は8月2~9日、サウジアラビア・ジェッダで開催され、各国・地域から集まる学生が原子力科学に関する知識や課題解決能力を競う。大会結果は、INSOポータルサイトで随時紹介される予定。
- 03 Aug 2026
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「統合イノベーション戦略2026」閣議決定 原子力強化へ
政府は7月14日、「統合イノベーション戦略2026」を閣議決定した。「統合イノベーション戦略」は、科学技術・イノベーション基本計画に基づき、2018年以降毎年作成されている年次戦略で、環境変化や施策の進捗状況を踏まえて、特に重点を置くべき施策が示される。同計画の6つの柱である、①知の基盤としての「科学の再興」、②技術領域の戦略的重点化、③科学技術と国家安全保障との有機的連携、④イノベーション・エコシステムの高度化、⑤戦略的科学技術外交の推進、⑥推進体制・ガバナンスの改革――に沿って、各府省庁の主要な取組みがまとめられている。その中で、原子力に関連する事項として、日本原子力研究開発機構(JAEA)の強化、基礎・基盤研究や大型研究施設の整備・高度化・利活用促進、ANEC(未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム)の原子力研究基盤強化が記載された。JAEAについては、次世代革新炉実現に向け、イノベーション機能強化が盛り込まれた。さらに、人材育成の拠点としてJAEAの関連施設や設備を最大限活用できるようにし、実習機能の拡大等を図って、産学をつなぐハブ機能強化を目指す。また、ANECは、原子力教育研究基盤強化のため、人材育成対象の強化・拡大、運営体制の強化、産業界との連携促進等を行う。加えて、「フュージョンエネルギー」は「国家戦略技術領域」のひとつに位置付けられ、基礎研究から社会実装まで一気通貫での支援が明記された。
- 17 Jul 2026
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日本代表の舞台裏
国際原子力科学オリンピック(INSO)は、次世代の原子力人材が知識と実践力を競い合う国際大会だ。2025年、日本は初の本格参加でメダル獲得という成果を収めたが、その裏では代表選抜から育成、現地での採点交渉まで、多くの挑戦があった。日本代表の育成を担った京都大学の角山雄一准教授に、INSOの舞台裏と、日本の強み、そして今後の課題について聞いた。
- 22 Jun 2026
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JAEA 英高温ガス炉開発でロールス・ロイスと連携
日本原子力研究開発機構(JAEA)、英国国立原子力研究所(UKNNL)が進めてきた高温ガス炉開発協力に、ロールス・ロイス社が加わることになった。3者は6月14日、高温ガス炉技術及び高温ガス炉燃料技術に係る協力覚書(MOU)を締結した。正式な調印は高市首相の英国訪問に合わせて、英国首相官邸で行われた。<JAEAによる発表はこちら ロールスロイス社による発表はこちら>今回のMOUは英国における高温ガス冷却型先進モジュールの早期社会実装、および被覆燃料粒子の許認可・製造の本格化に向け、研究開発を加速させることが目的。JAEAの小口正範理事長は「我々の高温ガス炉(HTGR)技術に関する専門知識を通じて、この協力が同技術の早期導入につながり、ネットゼロに向けた重要な一歩となることを期待しています」とのコメントを発表した。JAEAは高温工学試験研究炉「HTTR」(熱出力30MW、2021年7月に再稼働)の開発実績があり、英国では脱炭素化に向けた先進モジュール炉(AMR)の開発を進めており、その一つに高温ガス炉が挙げられてる。JAEAとUKNNLはこれまで英国政府の高温ガス炉実証プログラムや燃料開発プログラムに共同で参画してきた。今回のMOU締結で、JAEAは英国での高温ガス炉技術及び高温ガス炉燃料技術の確立・実用化を目指す一方、英国を日本の高温ガス炉実証炉の燃料調達オプションのひとつにし、英国における許認可対応の経験や社会実装の過程で得られる社会科学的知見を日本における高温ガス炉実証炉計画に活かす狙いがある。
- 19 Jun 2026
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JAEA カザフスタン共和国国立原子力センターと高速炉の安全研究を継続 協力覚書を締結
日本原子力研究開発機構(JAEA)は6月3日、カザフスタン共和国国立原子力センター(NNC RK)と、高速炉実証炉のシビアアクシデント対策に関する共同研究計画「EAGLE-4」の実施に向けた協力覚書を締結した。調印はカザフスタン・アルマトイ市で行われ、NNC RKのバティルベコフ総裁とJAEAの小口正範理事長が署名した。次世代革新炉の一つである高速炉の安全性強化に係る試験研究の推進が目的。両機関は2000年代初頭から20年以上にわたり、高速炉の炉心安全性試験「EAGLE計画」を進めてきた。これまで実施した第1期から第3期までの計画(EAGLE-1~3計画)では、シビアアクシデント(原子力施設の設計想定を大幅に超えて炉心の溶融などを伴う過酷な状態に至る事故)時に溶融した燃料が炉心から速やかに排出されることで事故の拡大を回避できることを、NNC RKが保有する試験用原子炉IGR(黒鉛減速型パルス型試験炉)を用いた実験により確認できたという。IGRを用いた試験では、シビアアクシデント時を模擬し、IGR炉心からの中性子照射により試験燃料を溶融させ、排出経路を通じて炉心外へ流出する現象を確認することで、安全機能の有効性を検証している。今回JAEAとNNC RKは、EAGLE-1~3計画に続く第4期目の共同研究計画(EAGLE-4)を実施することに合意し、高速炉の社会実装に向けた炉心安全性試験を着実に進めるために、今後、両機関の連携を一層深める方針だ。EAGLE-4では、試験用原子炉IGRとその関連施設を活用し、高速炉実証炉向けの炉心安全性試験を実施し、実証炉への導入が検討されている「溶融燃料排出機構」の有効性を裏付けるデータや知見の取得を目指す。今後、試験内容の詳細を定める実施取決めを締結し、共同研究を本格化させる方針だ。
- 18 Jun 2026
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日本原子力産業協会 2026年度定時社員総会を開催
日本原子力産業協会は6月12日、2026年度定時社員総会を日本工業倶楽部(東京・千代田区)で開催し、2025年度決算および事業計画、2026年度の事業計画・予算案がそれぞれ報告、承認された。総会には、委任状を含む合計318名の会員が出席した。新理事には三菱重工業の泉澤清次氏、丸紅の市ノ川覚氏、日本原燃の大柿一史氏、中部電力の豊田哲也氏、三菱原子燃料の大和矢秀成氏が就任した。総会の冒頭、日本原子力産業協会の三村明夫会長は、「国際的な地政学リスクが高まる中で、我が国では現在15基、約1,260万kWの原子力発電所が安定的に運転し、電力供給をしっかりと支えている事実は誇るべきことだ」と述べた。その上で、エネルギー安全保障や電力需要の観点から原子力の重要性が一層高まっているとして、業界一丸となって原子力の最大限活用に向けた施策に取組む必要性を強調した。三村会長は、原子力の最大限活用に向けた課題として、①事業予見性向上に向けた事業環境整備、②サプライチェーンの維持・強化と人材育成、③最終処分を含むバックエンド対策、④福島復興への継続的な取組み―の4点を挙げた。特に、先般の総合資源エネルギー調査会原子力小委員会で示された2040年代までに最大5基、2050年代までに最大14基の建て替え目標案に言及し、その早期具体化に期待を示した。また、安全で高品質なプラント建設を実現するためには、サプライチェーンの維持・強化と人材育成が不可欠だと強調。あわせて、日米間の戦略的エネルギープロジェクトに複数の原子力案件が盛り込まれたことに触れ、国内産業基盤や人材確保への波及効果にも期待を示した。さらに、六ヶ所再処理工場やMOX燃料工場の竣工、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組みの重要性を強調した。また、福島復興への取組みについては、今年度の原産年次大会で若い世代から「廃炉は失敗の後始末ではなく、未来への責任をどう果たすかという挑戦だ」との発言があったことを紹介し、「新鮮な感動を覚えた」と述べた。その上で、「これからも福島とともにあり続け、地域の復興に貢献していく」と強調した。また、来賓として挨拶に立った清水真人文部科学大臣政務官は、次世代革新炉の研究開発や人材育成の推進について言及。日本原子力研究開発機構(JAEA)による革新軽水炉や小型モジュール炉(SMR)の安全性・経済性向上に向けた研究開発機能の強化や、ANEC(未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム)を中心とした人材育成機能の強化を進める考えを示した。一方、赤沢亮正経済産業大臣の挨拶を代読した資源エネルギー庁の龍﨑孝嗣次長は、人材育成や産業基盤強化、技術開発支援、海外展開の促進などを通じて次世代革新炉への建て替えや再稼働を後押ししていく考えを示した。また、若い世代の原子力分野への参画が重要との認識を示し、産業界と緊密に連携しながら原子力政策を着実に推進していく方針を示した。
- 16 Jun 2026
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日本から HALEU 輸送 米先進炉向け燃料供給を支援
米国家核安全保障局(NNSA)は5月7日、日本の文部科学省、日本原子力研究開発機構(JAEA)と協力し、日本から米国へ1.7トンのHALEU(高アッセイ低濃縮ウラン)を輸送したことを明らかにした。NNSA史上、最大規模の国際輸送であり、米政権による先進炉の推進とエネルギー安全保障の強化に資するとともに、核拡散防止においても大きな成果とされている。今回輸送されたHALEUは、JAEAにある「高速炉臨界実験装置(Fast Critical Assembly: FCA)」の廃止措置に伴い不要となったもの。テネシー州オークリッジにあるY-12国家安全保障複合施設で、民間利用できる形に再加工され、DOE原子力局のHALEU供給確保プログラムを通じて供給される。HALEU は多くの先進炉で利用が想定されており、高燃焼度化や長期運転サイクルなどを可能にすると期待されている。一部用途では、HEU 使用低減につながる可能性がある。NNSAは、今回の輸送が日米間の長年の核セキュリティと核不拡散協力の延長線上にある取り組みであるとの認識を示した。なお海上輸送にあたっては、英原子力廃止措置機関(NDA)傘下の原子力輸送を専門とするニュークリア・トランスポート・ソリューションズ(NTS)が支援している。NNSAのM. ナポリ防衛核不拡散担当副長官は、「この節目は、安全で独立したエネルギーの未来への進展を加速させ、核拡散防止へのコミットメントを再確認するもの。日本との連携により、次世代原子力を推進し、米国のエネルギー主導権を確固たるものにする」と語った。2025年5月に発令された大統領令「国家安全保障強化のための先進炉技術の導入」では、エネルギー省(DOE)長官に対し、DOEの管理下において民間セクターが使用する20トン以上のHALEUを容易に入手可能な燃料バンクに放出するよう指示。米国では、HALEU 供給の多くをロシアに依存してきた経緯があり、近年は国内サプライチェーン構築が重要課題となっている。
- 19 May 2026
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JAEAとQST 高精度な宇宙線被ばく線量地図の作成に大きく貢献
量子科学技術研究開発機構(QST)と日本原子力研究開発機構(JAEA)は4月13日、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR) ※1が、2月12日に公表した最新の報告書「UNSCEAR 2024年報告書 (Volume.2)」において、JAEAが開発した宇宙線挙動解析モデル「PARMA」が採用されたと発表。あわせて、QSTが同モデルを用いて算出した公衆の宇宙線被ばく線量も同報告書に採用された。高精度な「世界の宇宙線被ばく線量地図」の作成に両機構が大きく貢献し、世界の公衆被ばくにおける影響評価の基礎データへの利用が期待されるという。同報告書によると、自然放射線源からの世界平均年間実効線量は約3.0mSv(ミリシーベルト)と推定される。地球上では、自然放射線による被ばくは日常的に生じており、その線量の把握はリスク評価の基礎となっている。UNSCEARは自然放射線による被ばく線量を最新の科学的知見に基づき、適宜見直しを行ってきた。自然放射線のうち宇宙から飛んでくる宇宙線は、高度や緯度、太陽活動によって大きく変動するため、従来の評価手法では十分に反映しきれず、以前から、世界平均線量が過大に評価される課題が指摘されてきた。しかし、JAEAが開発したPARMAモデルは、大気中での宇宙線の挙動を物理学的に精緻にシミュレーションし、あらゆる条件下での線量を解析的な数式で与えることができるという。この、画期的なモデルを用いることで、地球上のあらゆる地点における高度や緯度・経度、さらには日付に対する宇宙線強度や被ばく線量を導き出すことが可能になった。同報告書はこのPARMAモデルを、「現在利用可能な最も信頼性の高いモデル」と位置付けており、QSTはこれを用いて、地球上の居住地域を1km四方のグリッドで約3,000万地点の宇宙線被ばく線量を解析。人口分布データも組み合わせることで、世界各地の実態に即した線量評価を行った結果、「世界の宇宙線被ばく線量地図」が完成。報告書の基礎データとして全面的に採用された。なお、宇宙線による全世界平均の年間実効線量は、従来の0.38mSv/年から0.30mSv/年へと見直された。今回、日本発の解析モデルが採用されたことで、宇宙線による被ばく線量の評価精度は一段と向上。こうした成果は、日本の放射線科学分野における国際的な存在感を示すとともに、今後の放射線防護や被ばく評価の高度化につながるものとして期待される。※1 1955年設立。日本を含む31の加盟国から任命された科学分野の専門家で構成され、人やその環境が受ける放射線被ばくのレベル、影響、リスクについて評価し報告が任務。
- 23 Apr 2026
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原子力委員会でINSOの成果を報告 「成果はメダルにあらず」
原子力委員会は3月24日の定例会議で、昨年夏にマレーシアのバンギで開催された「第2回国際原子力科学オリンピック(INSO)」について、東京大学の飯本武志教授から報告を受けた。INSOでは日本代表の高校生4名が全員がメダルを獲得した。飯本教授は、INSO創設の背景として、IAEAのアジア太平洋地域技術協力プログラム(TCP)において、多くの国で原子力分野の人材育成体制が十分に整っていないという問題意識があったと説明。2010年代前半から中高生向け教育強化の議論が進み、2024年にフィリピン・クラークで第1回大会が開催されたと述べた。その上で、「成果はメダルではなく、原子力の平和利用への理解深化や国際連携の促進、人材育成にある」と強調。参加者には知識だけでなく、コミュニケーション能力や主体的な発信力の向上を期待する考えを示した。委員からは、全員メダル獲得を評価する声とともに、参加学生の動機が純粋な探究心に基づく点を評価する意見が上がった。質疑では、今後の継続的な運営に向けた課題についても議論が行われた。委員からは「高いレベルの大会に挑戦する高校生の存在自体が大きな発見」との指摘があり、挑戦を支える仕組みづくりの必要性を問う声も上がった。これに対し飯本教授は、認知度向上と裾野拡大が課題であり、現状は関係者のネットワークに依存していると指摘。大学や研究機関にとどまらず、民間も含めた展開が必要との認識を示した。会議には、金メダルを獲得した田中優之介さん(私立東海高等学校3年 ※当時)も出席し、「原子力を知る入り口として取り組みやすく、実物を見ることで理解が深まった」と振り返った。また、海外選手との交流を通じて「多くのつながりが生まれ、大きな財産となった」と述べた。上坂充委員長は、「今回得た経験やネットワークを今後に活かしてほしい」と期待を示し、INSOについて「国際的なネットワーク形成と次世代人材の育成の観点から意義深い」と評価した。
- 10 Apr 2026
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クリアランス金属を公共工事に活用 福井県で全国初の事例
福井県は2月18日、原子力発電所の解体に伴い発生した「クリアランス金属」を加工した鉄筋が、県内2か所で行われている橋梁工事の建設資材に使用されたと発表。同日、その施工現場を報道陣に公開した。クリアランス金属を公共工事の建設資材に活用するのは全国で初めて。同事業のクリアランス金属は、日本原子力研究開発機構(新型転換炉原型炉「ふげん」)が提供している。クリアランス金属とは、原子力発電所の解体などに伴って発生した廃棄物のうち、放射能レベルが極めて低く、人の健康への影響を無視できると国が確認した金属を指す。所定の基準を満たし、国の認可を受けたものについては、一般の金属と同様に再利用や処分が可能だ。今回、クリアランス金属を加工した鉄筋(クリアランス鉄筋)が採用されたのは、敦賀市と南越前町で進む橋梁工事の2つの現場だ。敦賀市松栄町では、松原橋の下部補強工事が進められており、2基ある橋脚のうち1基を対象に約23トンのクリアランス鉄筋が使用されている。一方、南越前町鯖波では「(仮称)鯖波大橋」整備工事の下部工事が行われ、4基ある橋脚のうち2基を対象に約31トン分のクリアランス鉄筋が採用された。福井県ではすでにクリアランス制度の理解促進活動が活発に行われ、同金属を活用した製品が福井大学構内のベンチや若狭サイクリングルートのサイクルラック、福井南高校の防犯灯などで採用されてきた実績がある。また、資源エネルギー庁によると、令和7年8月時点で、全国26都道府県において約6,800個のクリアランス物が再利用されているという。一方で、クリアランス金属の消費は限定的で、これまで、鋳造用途に限定される傾向があった。こうした状況を踏まえ、福井県は国や電力事業者と連携し、制度への理解促進に取り組んでおり、今後は需要規模の大きい建設資材向けの加工・活用はもとより、用途を限定せず一般社会で広く活用できる「フリーリリース」の実現を目指している。
- 24 Feb 2026
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JAEA 超高温下の構造変化を直接観測
日本原子力研究開発機構(JAEA)は1月26日、大型放射光施設「SPring-8」を用いて、3000℃を超える超高温条件下で物質の構造変化をリアルタイムに観測する新たな分析技術を開発したと発表した。原子燃料の安全性評価に不可欠とされながら、これまで実験的な観測が困難だった超高温領域での挙動を直接捉えることが可能となり、安全性の高い燃料開発への貢献が期待される。原子力発電では冷却機能が失われた場合、燃料の温度が急上昇し、周囲の材料を溶かす恐れがある。このため、超高温環境下でも安定性を保つ燃料の開発が重要課題となってきた。しかし、燃料や被覆管が溶融するような3000℃級の超高温領域を実験的に直接観測することは極めて難しく、これまでは理論解析による推定に頼らざるを得なかった。今回、JAEAなどの研究チームは、SPring-8の高輝度X線を活用し、試料を3000℃超の超高温状態に維持したまま照射する分析手法を開発した。模擬燃料を用いた実験では、材料が高温で溶融し、化学反応を経て再び固化するまでの過程を、原子レベルで連続的に観測することに成功した。これにより、安全性の高い原子燃料の開発への貢献に加え、航空宇宙分野などで求められる耐熱材料の研究開発への応用も期待されるという。
- 04 Feb 2026
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千葉大学でHLWに関するディベート授業 NUMOら支援
千葉大学教育学部で開講されている「ディベート教育論」の講義が1月15日、マスメディア向けに公開された。同講義では、高レベル放射性廃棄物の処分という社会的に難度の高いテーマを題材に、学生による本格的なディベートが行われた。同講義を担当するのは、教育学部長の藤川大祐教授。ディベート教育論は、現代的な課題を扱ったディベート実践の経験を通じて、生徒らの論理的思考力等の育成を図ることを目的とし、2012年度から継続して実施されている。今回は「日本は高レベル放射性廃棄物の地層処分計画を撤廃し、地上で管理を義務づけるべきである。是か非か。」を論題に、学生約50人を、1チーム4〜5人の12チームに分け、計6試合(ディベート)を実施。当日はその5試合目が公開された。公平性確保のため、試合順や賛否の立場はくじ引きなどで決定。学生らは事前に、原子力発電環境整備機構(NUMO)や日本原子力産業協会(JAIF)、日本原子力研究開発機構(JAEA)らによる講義を受け、バックエンド事業や高レベル放射性廃棄物に関する基礎知識を習得した上で議論に臨んだ。当日のディベートは、「HLWの地上管理」を主張する肯定側の立論からスタート。その後、否定側の質疑、立論、それに対する肯定側の質疑を経て、それぞれ否定側と肯定側が2回ずつ反駁の機会が設けられた。肯定側からは、地上管理方法の技術改善が進むことで、将来世代が廃棄物の管理・処分方法を選択できる可能性に言及。また、地上管理施設の保守作業等を通じ、地域雇用の創出や産業形成、関連企業の集積につながり、地方創生にも寄与するのではないかと訴えた。それに対し否定側は、地上管理における安全性への懸念や、有事の際の責任の所在について言及。地層処分による管理面や費用面での優位性を主張した。ディベート終了後、聴講していた学生らによる投票が行われ、議論がより優れていたサイドが選定された。同日は肯定・否定側それぞれ18対18の同数となり、藤川教授は「均衡した結果となり、非常に優れた議論であったことの証左となった」とコメントした。また、全体講評として「チームとして十分な準備を感じられ、初めて本格的にディベートに取り組む参加者が多い中でも、難しいテーマに真剣に向き合った点は評価できる」と述べ、両チームの健闘をねぎらった。藤川教授はディベートを振り返り、「肯定側の、将来世代の選択肢の増加や地域の発展の可能性という立案自体は悪くなかったが、最終的に問題になると予想される安全性を上回るほどのメリットを主張できていなかったと感じた。ここが勝敗を分けた要因になった」と総括し、総合的には否定側が優勢だったとの見解を示した。一方で否定側の課題として、将来世代の負担に関するコスト比較については、十分な数値が示されなかった点を挙げた。その上で立論について、「見出しが長く、何の話をしているのか分かりづらい場面があった」と指摘。後の反駁や引用を見据え論点を明確に示すためにも、見出しは簡潔に整理すべきだと強調。特に肯定側のメリットとして掲げていた「地域の発展」という論点が途中で曖昧になった点を課題として挙げ、「相手の議論がずれた場合でも、自ら軌道修正し、一貫した主張を続けることが重要だ」と述べ、論点整理と一貫性の重要性を強調した。藤川教授によると、近年、同授業において生成AIを活用するようになったことで、大きな変化がもたらされたという。以前は準備が不十分なグループも見られたが、現在はAIを活用することで、調査やディベートの構成まで、初期段階から完成度の高い原稿を準備するチームが増えたと指摘し、授業全体の底上げが進んでいると語った。
- 26 Jan 2026
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タイ高専が最優秀賞 第10回廃炉創造ロボコン
日本原子力研究開発機構(JAEA)と廃止措置人材育成高専等連携協議会は12月20日、福島県の楢葉遠隔技術開発センターで第10回廃炉創造ロボコンを開催した。今大会は、日本国内から10校16チームと、マレーシア工科大、タイ高専(KOSEN-KMITL)の計18チームが出場。初出場のタイ高専が最優秀賞である文部科学大臣賞を受賞した。大会の様子はYouTubeで配信され、アーカイブを視聴することができる。廃炉創造ロボコンは2016年に初開催され、今大会で10回目の節目を迎えた。ロボット製作を通じて、若い世代が廃炉作業に関心を持つと同時に、創造性・課題発見・解決能力を養うことが目的だ。優れたロボットやアイデアについては、将来的に現場への適用や関係企業との共同研究につながる可能性を視野に入れているという。開会に先立ちJAEAの小口正範理事長はあいさつに立ち、廃炉が長期にわたる事業であることを踏まえ、次世代人材の育成が原子力産業界にとって極めて重要な課題であると強調した。その上で同大会について、遠隔操作やAIなど、実際の廃炉現場を見据えた技術に触れる実践の場であり、単なる競技にとどまらず、廃炉を支える技術と人材を育む「希望の場」だと位置づけた。今大会の競技課題は、「廃炉ミッション!原子炉格納容器内部を調査せよ」。福島第一原子力発電所2号機の原子炉格納容器(PCV)内部の調査を想定し、X-1ペネトレーションからPCV内部へ進入し、底部に存在する対象物を回収して帰還するまでの一連の作業に挑んだ。最優秀賞を受賞したタイ高専は、参加チームのうち唯一、すべての課題をクリアした。同校は、「日本型高等専門学校の教育制度(KOSEN)」を本格的に導入したタイ初の高専として知られる。日本の国立高等専門学校機構から教員が派遣され、現地教員への指導や研修が行われているほか、日本国内の高専でのタイ人学生の受け入れなども進められている。
- 07 Jan 2026
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JAEA 水素製造技術の確立へ一歩前進
日本原子力研究開発機構(JAEA)は9月26日、高温工学試験研究炉 (HTTR、熱出力3万kW)への水素製造施設の接続に係る原子炉設置変更許可申請書の補正書を、原子力規制委員会へ提出した。 JAEAは、今年3月、HTTRと水素製造施設の接続に必要な許可を得るため、原子炉設置変更許可申請を原子力規制委員会に提出していた。提出後の審査会合では、(今年5月・7月)、原子炉等規制法の適用範囲に関する議論が行われ、その結果、水素製造施設は同法の範囲外とされ、今後の審査を進めることで合意した。水素製造施設が一般産業法規の適用範囲へと認定されたことで、設計・調達の柔軟性が高まり、産業界の参入が促進されることが期待されている。 HTTRは、日本初かつ唯一の高温ガス炉であり、高温工学試験研究の中核を担う原子炉として、大洗原子力工学研究所(茨城県)内に1987年に建設された。以来、高温ガス炉の技術基盤を確立するとともに、原子力エネルギーを利用した水素社会の実現に向けて貴重なデータを取得・蓄積している。高温ガス炉は二酸化炭素を排出することなく高温熱を供給可能であることから、安定的に大量の水素を製造することが可能である。 政府は、2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」の参考資料において、2030年代の運転開始を目標とする高温ガス炉実証炉開発工程が示されるとともに、経済産業省の革新炉ワーキンググループは実証炉建設に向けた技術ロードマップにおいて、HTTRを活用し、2030年までに高温ガス炉を用いた水素製造を行う計画が示されている。 この、HTTRの核となる技術は国産技術であり、例えば、原子力用構造材として世界最高温度の950℃で使用できる金属材料は日本メーカーによるもの。水の熱分解反応による水素製造「ISプロセス」は、水素の製造過程で化石燃料を使用せず、多様な産業利用に期待が寄せられている。 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、製鉄、化学工業等の脱炭素が難しい分野における脱炭素化のためには、水素の利活用が不可欠とされている。
- 16 Oct 2025
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第2回日中原子力産業セミナーを開催 福島県と茨城県への視察も
日本原子力産業協会は9月25日、中国核能行業協会(CNEA)と共催で「第2回日中原子力産業セミナー」を7年ぶりに対面で開催した。中国からは、CNEA、中国核工業集団有限公司、中国広核集団有限公司、中国華能集団有限公司、香港核電投資有限公司、清華大学など関連企業・機関から16名が参加。日本からは、日本原子力産業協会、日本原子力発電、電気事業連合会など、関連企業・機関から43名(オンライン傍聴を含む)が参加した。同セミナーでは「原子力発電所の運転および新規建設」をテーマに、両国の原子力産業界がそれぞれ知見を共有し、対話を通じて一層の交流促進と協業の可能性を探った。特に、中国で次々と進められる新規建設プロジェクトに関する実践的な知見について、日本側の参加者から「多くの学びを得られた」との声が上がった。また、中国の訪問団一行は、日本滞在中に、福島県および茨城県内にある複数の原子力関連機関・施設を訪問した。福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館への視察では、東日本大震災の発生から今日に至る復興への取り組みについて、映像や展示物を通じて説明があり、関係者との質疑を通じて現状理解を深める場が設けられた。東京電力福島第一原子力発電所構内の視察では、バスから乾式キャスク仮保管設備や多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水を保管するタンクなどを見学し、その後、展望デッキにて1~4号機の廃炉作業、さらに、ALPS処理水のサンプルを用いた海洋放出に関する説明が行われた。参加者からは、発電所構内での作業員の安全確保や放射線管理、今後の解体工程などに関する質問が多く寄せられ、現場の細部に至るまで強い関心が示された。福島県の日本原子力研究開発機構(JAEA)楢葉遠隔技術開発センターへの視察では、同センターの設立の経緯や役割、国内外の機関との連携実績や技術実証事例についての紹介があった。そして、VR/AR技術を活用したシステムのデモンストレーションの実施、施設内の試験棟の視察が行われ、関係者との質疑応答の時間には、将来的な技術交流の可能性に関する話があがった。茨城県のJAEA原子力科学研究所の視察では、世界最大級の加速器施設として幅広い研究に利用されているJ-PARCの見学、また、中性子利用研究の中核拠点であるJRR-3の見学が実施された。それぞれの施設の運用体制や、各分野への活用・応用事例が示され、中国出身の研究者による中国語での解説を交えた活発な質疑応答が行われた。〈詳細はこちら〉
- 14 Oct 2025
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JAEA 英国原子力規制局と連携を強化ー高温ガス炉の安全性に関する情報交換の取決め延長に合意
日本原子力研究開発機構(JAEA)は、英国原子力規制局(ONR)との間で締結している高温ガス炉の安全性に関する情報交換の取決めについて、その期間を今後5年間延長することで合意したと発表した。JAEAは、2020年10月に英国国立原子力研究所(UKNNL)との包括的技術協力の取決めを改定し、高温ガス炉の技術開発協力を開始。さらに同年11月には、ONRと安全性に関する情報交換の取決めを締結し、技術開発と規制の両輪で連携体制を構築してきた。英国政府はカーボンニュートラルの達成に向け、非電力分野では革新炉として高温ガス炉を選択しており、2030年代初頭の実証炉の運転開始を目指している。JAEAとUKNNLはこれまで、日英両国における高温ガス炉の導入を目指した研究開発、原子力サプライチェーンの構築、人材育成等、さまざまな活動に取り組んできた。今回の合意により、JAEA・UKNNL・ONRの三者の協力体制がさらに強化され、英国での高温ガス炉導入に向けた取り組みが一段と加速する見通しだ。一方、英国で高温ガス炉を早期に社会実装するには、燃料サプライチェーンの確立が課題とされている。現在、英国民間企業との連携による燃料製造が有力な選択肢として検討されているが、日本の技術に基づく燃料製造を英国で実現するには、規制当局との十分なコミュニケーションが不可欠だ。JAEAは今後、英国での社会実装を推進し、国内の実証炉計画にも活かすためにも、今回の取決め延長をさらなる連携強化の好機と位置付けている。
- 19 Sep 2025
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ポーランド 石炭の町が描く“次の10年”
ポーランドの原子力プロジェクトをめぐるオピニオンリーダーたちが、このほど来日した。顔ぶれの多くは、かつて石炭で栄えた自治体の副市長クラスや議会関係者である。脱炭素とエネルギー安全保障の双方をにらみ、石炭火力の終幕と次の主役探しを同時に迫られる地域が、日本の原子力発電をめぐる非常時対応や廃止措置など、“現場”をその目で確かめに来た——その動機は切実だ。ポーランドは大型炉とSMRの“二正面作戦”を採る。大型炉はポモージェ県ルビアトボ=コパリノでAP1000×3基の建設計画が進み、8月末に県知事から準備作業許可を取得した。今秋から測量・フェンス設置・伐採・整地などの先行作業が順次始まる見込みで、2036~38年の段階的運転開始を見通すという。一方、SMRはGE日立製BWRX‑300を採用し、初号機建設サイトを化学コンビナートの街ブウォツワベクに決定。合弁会社OSGEが独占使用権を持ち、環境影響評価(EIA)と立地調査が進行している。今回来日したリーダーたちは、ベウハトフやコニンなどの石炭・褐炭地域が中心。これに中央政府のエネルギー省担当官が同行した形だ。一行は、日本原子力研究開発機構の「原子力緊急時支援・研修センター(NEAT)」(茨城県)でオフサイトセンターの運用や日本の緊急時システムについて見学した。福島第一サイトでは、工程管理や情報公開の透明性が、どのように社会的信頼を支えるのか、時間軸で追体験。玄海原子力発電所(佐賀県)では多重防護や特重施設、地震津波対策の考え方などを、福井県庁では原子力担当部署より、行政としての原子力との関わり方などを学んだ。4日間で日本各地を、駆け足で回ったことになる。ポーランドの石炭地域が他産業への移行を迫られているのは、欧州連合(EU)加盟後に強化されたEUの環境規制(LCPDからIED/BAT)への適合や欧州排出量取引制度(EU-ETS)の炭素価格上昇といった、規制および市場からの圧力に加え、主力であった褐炭資源の先細りが重なったためである。これに伴う雇用・地域経済の痛みを和らげる政策枠組みとしてJust Transition(公正な移行)が整備されてきた。地域の住民からは、期待と不安が入り混じった声があるという。現実的な移行が目前に迫る中、地域のリーダーたちが語った「次の10年」はきわめて実務的だ。第一に一貫した人材育成の道筋である。初等・中等から大学、工科系へと、地域の若者が段階的に学び、将来の担い手へと育つ道筋を用意する。「学校で論理的に説明すること」を重視し、テクノロジーや安全文化を丁寧に説明していく姿勢が強調された。チョルノービリ事故を知らない若い世代には、「感情的な賛否より、なぜ必要かを自分の言葉で理解してもらうことが効く」という。第二に既存の雇用や産業の連続性だ。鉱山や火力発電所の閉鎖が目前に迫る地域もあり、人口・雇用の大規模な減少への懸念は切実なようだ。20万人だった人口が、すでに5万人に激減している地域もあるという。だからこそ、石炭で培ったスキルを土台に、次の仕事を地元に残す(原子力の運転・建設・保全などへ職能を移す)という発想が中核になる。産業の維持の観点から、BWRX-300への期待が多く寄せられており、「SMRのサプライチェーンへ参画することで、既存の企業や人材の受け皿を広げていきたい」との声もあった。そして第三に、避難計画の策定など行政としての準備である。日本のシステムを学んだ上で、ポーランド版の緊急時システムをどう整えるか、引き続き検討していくという。また、特に日本に対し、施設運用や人材育成などの面で、実務的なセミナーやワークショップをポーランドで開催して欲しいとの要望が上がっていた。原子力産業新聞から「ポーランドの原子力プロジェクトにとっての最大の課題」を問われた、エネルギー省のZ.クバツキ原子力担当参事官は、「時間」と即答した。「許認可のプロセスがとにかく長い。ポーランドの場合、欧州委員会との調整も必要になる。調整を終えた後も着工から運開まで、ほぼ10年かかるだろう。時間が延びれば延びるほど、コストや制度面の前提が崩れやすくなる」。同氏は差額の清算で収入を安定させる仕組み、いわゆるCfDs(差金決済)にも触れ、「市場価格が高いときは事業者が払い戻し、低ければ差額を受け取るという設計は理解している。しかし、これが本格的に効果を発揮するのは運開後だろう。工期が長引けば長引くほど建設コストを吸収し切れなくなる」と懸念を示し、改めて「だからこそ“時間”が最大の課題だ」と強調した。
- 16 Sep 2025
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NEMS2025 海外13か国から計28名が参加
将来の原子力業界を牽引する人材の育成を目指した研修コース、「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2025」が8月19日に開講し、東京大学にて開講式が行われた。NEMSは、2010年にイタリアのトリエステで初めて開催されて以来、延べ2146名(112の加盟国)が参加してきた。日本での開催は今年で13回目。アジアや東欧、中近東など、原子力発電新規導入国等における若手リーダーの育成を主たる目的としている。今年は、海外13か国(ブルガリア、エストニア、インド、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、タイ)から18名、日本からは10名、計28名の研修生が参加した。約3週間にわたる日程で開催され、東京大学本郷キャンパスでの講義やグループワークのほか、東京電力福島第一原子力発電所、東北電力女川原子力発電所とPRセンター、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力科学研究所の原子炉安全性研究炉(NSRR)と原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)、産業交流施設「CREVAおおくま」、「株式会社千代田テクノル大洗研究所」等へのテクニカルツアーを通じ、原子力に関連する幅広い課題について学ぶ。開催に先立ち、組織委員長の東京大学大学院工学系研究科の出町和之准教授は、研修生らを大いに歓迎し、研修生同士の関係性向上が将来の人脈に繋がると、指摘した。また、暑さの厳しい時期であることを鑑み、「体調管理に留意し、実りある時間にしてほしい」と研修生を労った。続いて挨拶に立った日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、IAEAをはじめとする関係各位に謝辞を述べた上で、「グループワーク等では、主体的に、そして積極的に議論に参加してほしい」と期待を寄せた。IAEAからは、原子力エネルギー局計画・情報・知識管理部(NEPIK)部長を務めるファン・ウェイ氏が登壇。同氏は、「世界的に原子力の専門人材やリーダーシップの必要性が高まっている」と指摘し、「各国政府や教育機関と連携し、若手の知識や経験の共有、国際的なネットワークづくりを進めていくことが不可欠だ」と述べた。最後に挨拶に立った上坂充原子力委員会委員長は、「他国の知見や政策を積極的に学び、自国にとって最適な形を模索する上で、IAEAの基準や国際的な取り組みを参考にすることは、皆さんの将来にとって重要な学びになるだろう」とNEMSの意義を強調。また、「今回のプログラムで自身の目で見て理解したことを、帰国後にご家族や友人にも伝えてほしい。知識や経験の共有が、国際社会全体の原子力の未来を形づくることにつながるだろう」と述べた。
- 22 Aug 2025
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高速実験炉「常陽」 RI製造などにも活用へ
文部科学省の諮問機関である科学技術・学術審議会原子力科学技術委員会は8月18日、革新炉の取組や原子力基礎研究支援の在り方について議論する「第26回原子力研究開発・基盤・人材作業部会」を開催した。まず、革新炉の取組について、日本原子力研究開発機構(JAEA)から、高速実験炉「常陽」の現在の状況説明が行われた。「常陽」は、「高速炉」を開発するための小型の実験炉である。事業者のJAEAは昨年9月、茨城県及び大洗町から地元了解を得て、現在、新規制基準に適合するための工事を行っている。2026年度半ばの運転再開を目指しており、実現すれば、国内唯一の高速炉の実験施設として、放射性廃棄物の有害度を低減する研究や、がん治療への活用が期待される医療用RIの製造実証など、さまざまな活用方法が期待されている。同作業部会に委員として参加した日本原子力産業協会の上田欽一委員は、「国内外との連携を強化して、世界最先端の高速炉研究拠点としての役割を発揮してほしい。また、医療用RIの安定供給や先端利用など、社会的価値の高い活用に向けて、学生や若手研究者の関心を高め、研究開発や人材育成を強化する必要がある」と指摘した。また、原子力基礎研究支援の在り方について同作業部会では、原子力をエネルギー源として利用するだけでなく、様々な課題解決につながる総合科学技術として捉える必要性が示され、2050年のカーボンニュートラル実現や、健康・医療、製造業等の産業競争⼒の強化に繋がる可能性を秘めていることが改めて共有された。そして、これまで⼤学・研究機関等を中⼼に、⾼い研究⽔準を維持してきたが、さらに安定的・継続的に原⼦⼒利⽤を推進させていくために、国として中⻑期にわたり支援する必要性が議論された。
- 19 Aug 2025
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