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【第57回原産年次大会】事業環境整備を議論 英仏事例を参考に
大会初日午後のセッション1では、「カーボンニュートラルに向けた原子力事業環境整備」と題し、パネル討論が行われた。原子力発電所の新規建設プロジェクトを掲げる英国およびフランスの、プロジェクト実現に向けた技術開発、資金調達、法規制、サプライチェーン・人材確保面での取り組み事例を参考に、エネルギー基本計画の改定を控えた日本への示唆を検証する内容となった。モデレーターを務めたみずほ銀行・産業調査部次長の田村多恵氏は冒頭、英仏両国の特徴として、政府が原子力の価値・役割を明確にし、新規建設実現に向けたロードマップを明示していることを強調。その上で、英国のRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))やフランスのMatchプログラム((能力開発プログラム))等、海外事例から学ぶことは多いと指摘した。フランス原子力産業戦略委員会(CSFN)のエルヴェ・マイヤール氏は、同国が2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、既設炉の運転期間を60年以上に延長したことや、新型炉であるEPR2を14基新設する計画であること、SMRプロジェクトにも支援していく方針であること等を紹介。そのためにMatchプログラムや原子力専門大学などを通じて、技能者を育成し、必要となる人材のギャップを埋めていく取り組みを示した。またウクライナ戦争、コロナを経て、国民の間でエネルギー安全保障の観点から原子力への肯定的な意見が増えてきているとし、「長期的に電力価格が安定していることが大切」と強調した。英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のマーク・ヘイスティ・オールドランド氏は、今年1月に発表された「2050年に向けた民生用原子力のロードマップ」について紹介。原子力人材の高齢化に伴うスキル継承が、英国最大の課題であると指摘した。そしてサイズウェルC原子力発電所(SZC)建設プロジェクトへの適用が検討されているRABモデルについて、「これまで水道や送電線、洋上風力などのインフラに適用してきた実績があるが、原子力へは初適用のため課題が多い。また各国の事情は異なることから、英国の制度をそのまま他国へ導入してもうまくいくとは限らないが、自由市場における民間事業者による運用に限れば、RABモデルは有効である」との認識を示し、「RABモデルを選ぶか、差金決済(CfD)を選ぶかは目標設定によって変わる」と述べた。また、「エネルギー安全保障、気候安全保障、国家安全保障の観点から原子力は重要であり、原子力があるリスクだけでなく、原子力がないときのリスクも考慮すべきだ」との考えを示した。経済産業省原子力政策課長の吉瀬周作氏は、脱炭素化とエネルギー安全保障を両立させる原子力が世界的に脚光を浴びていると強調。COP28での原子力の位置付けや、原子力3倍宣言、世界初となる原子力サミット(於ブリュッセル)の開催等、国際的な機運が高まっていることに加え、IT産業や製造業など幅広い産業において原子力利用の可能性が拡大していると指摘した。そして国内では、データセンターや半導体工場の増加により、電力需要の増加が予測されており、既設炉の再稼働を加速する必要があるとの考えを示した。また吉瀬氏は、人材育成についても、文科省とも連携して力を入れていく考えを示した。電気事業連合会副会長の佐々木敏春氏は、2024年はBWRの再稼働に力を入れていくと言明。新増設については、「民間事業である以上、株主・金融機関などのステークホルダーに対し、収益性が確保されていることを示さなければならない」とした上で、電力市場自由化後の事業予見性の低下や、安全対策投資の大幅増加など、ファイナンス面が改善されない限り状況は厳しいと強調した。また、日本の原子力損害賠償が無過失無限責任である点にも触れ、「このことが民間事業にとって投資判断やファイナンスにおけるネックとなっている」とし、事業予見性が確保されるよう現行制度の見直しを訴えた。同時に佐々木氏は、「原子力の必要性については国民のコンセンサスが得られていると考えている。むしろ原子力発電設備の規模感が重要だ。電力需要増が予想される中で、既設炉の稼働延長にも限界があることから、新増設が不可欠だ」と強調した。最後に田村氏は、オールドランド氏が指摘した「原子力を活用しないリスク」を踏まえた上で原子力の価値をしっかりと認識していく必要があるとし、「一体何のために事業環境を整備するのかを改めて考え、官民で取り組んでいく必要性を再確認できた」と、セッションを締め括った。
- 10 Apr 2024
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英原子力ロードマップ 2050年までに原子力2,400万kW
英国政府は1月11日、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表。2050年までに国内で合計2,400万kWの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力でまかなうことなどを盛り込んだ、野心的な原子力開発目標への具体策を示した。2,400万kWの原子力発電設備容量は現在の約3倍にあたり、政府が2022年4月に公表した「エネルギー供給保障戦略」の中で掲げられていた。エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)はロードマップについて、あるべき原子力開発の道筋を示し、「原子力産業界や投資家に、政府としての明確なシグナルを送る」ことが目的と説明。「原子力を活用しないかぎり、ネットゼロもエネルギー供給保障も覚束ない」と強調した。そのうえで、2050年までに2,400万kWの新規原子力発電設備を稼働させるべく、建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所(EPR、172万kW×2基)を2020年代に確実に完成させる新しい資金調達方式であるRABモデル((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を適用したサイズウェルC原子力発電所(EPR、167万kW×2基)建設プロジェクトへの、EDFエナジー社の最終投資判断(FID)を年内メドに促す2030~2044年にかけて5年毎に300~700万kWの原子力発電設備の新設を促す新規原子力発電所に関する既存の「国家政策声明書(NPS)」(2011年発行)は、100万kW級の大型炉のみを対象としているため、新たに小型モジュール炉(SMR)も対象としたNPSを策定する原子力サイトとして認可された地点の多くで、今後プラントの廃炉を迎えるため、既存サイト以外にも新たな立地点を模索する──等を実施するとしている。また、新規建設にあたって最大の障壁となる資金調達に関しては、投資家や事業者に対し、差金決済取引(CfD)やRABモデルの適用を検討する原子力第三者賠償制度を強化するために、原子力損害の補完的な補償に関する条約(CSC)への加盟を目指す準備を進めている英国のグリーンタクソノミーに、原子力が含まれるよう働きかける──等、原子力プロジェクトへの投資のインセンティブを高めていくという。英国原子力産業協会(NIA)のトム・グレイトレックスCEOは、ロードマップについて、SMRと並行して大型炉プロジェクトも検討するという政府方針を歓迎。「5年のインターバルで新規原子力プロジェクトを決定することで、将来の予測可能性が高まり、頑健なサプライチェーンが構築される」と指摘している。
- 12 Jan 2024
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英国、HALEU製造を計画
英国政府は1月7日、3億ポンド(約558億円)を投じて、HALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造計画を立ち上げると発表した。欧州では初の試みであり、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のC.クティーニョ大臣は、「国内外のエネルギー安全保障にとって極めて重要」と強調する。HALEU燃料は、現在開発中の次世代原子炉の多くに採用されている新型燃料。現在、HALEUを大規模に製造できるのはロシアだけである。今回資金提供により、英国政府はHALEU燃料の国内製造を支援するとともに、2050年までに民生用原子力発電設備を最大2,400万kWまで拡大し、国内電力需要の約25%を原子力でまかないたい考えだ。加えて、1,000万ポンド(約18.6億円)を投じて英国内において他の新型燃料の製造技術や設備を開発する。これにより、イングランド北西部の核燃料生産拠点を強化し、地元産業と雇用を促進するほか、長期的な国内核燃料供給体制を確立する。海外の需要にも応えることにより国際的な連携に貢献するという。英国では、2030年代初めには先進的モジュール炉(AMR)の運転開始が見込まれている。AMRは小型モジュール炉(SMR)同様に、小型で構成設備の工場生産が可能であり、建設をより迅速かつ安価にする可能性があるため、英国の原子力復活において重要な役割を果たすと考えられている。水素や産業用熱の生産など、低炭素発電以外でさまざまに応用される可能性もある。新型燃料の製造インフラへの支援は英国内外の原子力インフラ整備にも寄与し、世界的なネットゼロ目標の達成に不可欠。CO2排出量実質ゼロ(ネットゼロ)への移行はエネルギーの価格上昇を避けつつ、世界的な燃料供給の不安定性に起因する価格の乱高下から家計を守り、手頃でクリーンな電力の供給に役立つとしている。なお、世界の核燃料市場から、特にウラン転換サービスの市場からロシアを締め出し、2020年代末までに英国にウラン転換能力を取り戻すために、政府と産業界は協働している。ロシアは現在、世界のウラン転換能力の約20%、濃縮能力の約40%のシェアを持つ。DESNZは2023年7月、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、原子燃料基金(NFF)から総額2,230万ポンド(約41.5億円)を拠出すると発表した。NFFは、英国がウランと核燃料の供給源を多様化させようとする中、英国の原子力事業者が自国産で製造された燃料を使用する選択肢を増やすことを目的としている。8つのプロジェクトには、米ウェスチングハウス(WE)社の英スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレードや、HALEU燃料製造の検討を含む多様な燃料製造への支援(1,050万ポンド、約19.5億円)、カーペンハーストにあるウレンコ社のウラン濃縮工場における低濃縮ウランおよびHALEU燃料製造への支援(950万ポンド、約17.6億円)、ニュークリア・トランスポート・ソリューションズ社のHALEU燃料輸送パッケージの開発支援(100万ポンド以上、約1.9億円)、熔融塩炉の国内開発企業のモルテックスFLEX社のAMRであるバーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転の支援(120万ポンド、約2.2億円)が含まれる。なお、COP28で英国はあらためて、G7の原子力パートナーと協力し、ロシア製燃料への世界的な依存を減らすというコミットメントを表明した。
- 11 Jan 2024
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英国 米ホルテック社製「SMR-300」の設計審査開始
英原子力規制庁(ONR)は12月7日、政府のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の要請を受けて、米ホルテック・インターナショナル社製小型モジュール炉であるSMR-300(電気出力30万kW)について、包括的設計審査(GDA)を開始したと発表した。DESNZは同日、ホルテック社の英国法人であるホルテック・ブリテン社に対し、全4段階で構成されるGDAの1、2段階分の補助金として、3,005万ポンド(約54億円)を「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund=FNEF)」から拠出していた。DESNZはホルテック社が提出していたGDA申請書を事前に精査し、同プラントがGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。これを踏まえて、ONRが同プラントの安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)とウェールズ自然保護機関(NRW)が環境影響面について、英国の基準を満たしているか約5年をかけて評価する。ホルテック社は2022年12月、PWRタイプの同社製SMR「SMR-160」(電気出力16万kW)をGDAにかけ、2028年までに英国内で初号機を着工するため、2023年初頭にも申請書を提出すると表明していた。同社はまた、米国でも「SMR-160」の建設を計画しており、米原子力規制委員会(NRC)とは設計認証審査に向けて申請前の事前協議を実施中である。ホルテック社は英国の原子力発電プログラムに対し、25年以上にわたって様々な機器やサービスを提供している。SMR開発にあたっては、エネルギー関係の英国コンサルティング企業であるモット・マクドナルド(Mott MacDonald)社を英国チームに加えたほか、国外では三菱電機や現代E&C社とも協力している。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は今回、「国内原子力産業の再活性化を目指し、過去数十年間で初めて公的基金を活用する」と説明。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1億2,000万ポンド(約217億円)の補助金交付制度である。同相は、「約3,000万ポンドの投資は、英国エネルギー・ミックスのクリーン化とCO2排出量の実質ゼロ化に向けて、最新技術を用いた原子力発電所の建設を迅速かつ低コストで進めていくためのものだ」と強調している。なお、ホルテック社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが今年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。同コンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当しており、ホルテック・ブリテン社は今年10月、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ウェスチングハウス(WH)社の英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定した。2024年に支援対象として選定された場合、ホルテック社は2050年までに複数のSMRで合計出力500万kW以上の設備を建設するため、英国内に主要機器の製造工場を設置する考えだ。(参照資料:ONR、DESNZ、ホルテック社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 15 Dec 2023
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英ロールス・ロイス社 月面基地用マイクロ炉の概念を公表
英国のロールス・ロイス社は12月1日、北アイルランドのベルファストで先週開催されていた「英国宇宙会議(UK Space Conference)」で、将来の月面基地に電力供給するモジュール式マイクロ原子炉の概念モデルを公表したことを明らかにした。同炉は政府の宇宙庁が資金援助する研究プログラムで開発されており、ロールス・ロイス社は今回の概念モデルは、同社の「最新の原子力技術チーム」がこれまでに実施した研究の集大成になると説明。同炉を月に向けて送り出す準備を2030年代初頭にも整えたいとしている。ロールス・ロイス社のマイクロ原子炉開発には、宇宙庁のほかに様々な大学や機関が協力中。これには、オックスフォード大学やラフバラー大学、ウェールズのバンガー大学のほか、シェフィールド大学の「先進製造研究センター (AMRC)」、溶接技術者協会、先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)などが含まれている。英国宇宙庁は今年2月、欧州宇宙機関の「ムーンライト計画」の一環として、月へのミッション用通信・ナビゲーション・サービスの開発で5,100万ポンド(約95億円)を国内企業に提供すると発表した。ロールス・ロイス社との提携はこの一環で、翌3月に月面基地における原子力の活用研究資金として290万ポンド(約5億3,900万円)を同社に支払っている。同社の研究プログラムでは、「熱を発生させる燃料」と「熱の伝達手段」および「熱を電力に変換する技術」の3点に集中的に取り組んでいる。ロールス・ロイス社によると、すべての宇宙探査ミッションの成否は十分な動力を確保できるか否かにかかっており、自給自足型で電力密度が高いマイクロ原子炉は、惑星表面の探査や居住に電力供給するとともに、宇宙船に電力や推進力を与えることも可能。人工衛星では、電力や推進力の継続的な供給によって一層柔軟に動けるようになり、重要な軌道を防御できる。また、マイクロ原子炉はその他の動力供給システムと比べて小型で軽量なため、太陽光が届かないなど悪環境条件下でも継続的に電力の供給が可能である。ロールス・ロイス社は、マイクロ原子炉の活用ポテンシャルは幅広く、宇宙探査ミッションのみならず、軍事利用や商業利用も可能だと指摘。開発の主目的は世界中の複数市場に電力や推進力を提供することだが、同炉は世界中で進められているCO2排出量の実質ゼロ化にも貢献できるとしている。なお、ロールス・ロイス社は、小型モジュール炉(SMR)の開発子会社であるロールス・ロイスSMR社を通じて、英国内の4サイトでSMR発電所の最初の一群(合計出力:約1,500万kW程度)を稼働させることを計画中。ロールス・ロイスSMR社は2021年11月、PWRタイプで出力47万kWの同社製SMRについて、包括的設計審査(GDA)の実施を政府に申請しており、原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)は2022年4月から同審査を開始した。同年8月にはオランダでの同社製SMRの建設に向けて、同社は現地の新興原子力事業者と協力独占契約を締結。同年11月には、英国内の有力な建設候補地としてイングランドとウェールズにある閉鎖済みの原子力発電サイトなど、4地点を選定した。また、今年2月にポーランドで同社製SMRを建設するため、現地企業と協力趣意書(MOI)を交わしたほか、3月には北欧とウクライナでの建設を念頭に、複数の関係企業と協力覚書を締結している。(参照資料:ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 05 Dec 2023
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仏フラマトム社 英国で燃料製造施設の建設を計画
フランスのフラマトム社は11月29日、英国内で現在建設中、および今後新たに建設される原子力発電所向けに、原子燃料の製造施設を英国で建設すると発表した。同社はまた、第4世代の先進的原子炉向け燃料を製造するため、11月28日に米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC社)と合弁事業体を設立することで、正式に合意している。フラマトム社はすでに英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)や、親会社であるEDFの英国法人EDFエナジー社との協力により、既存の原子力発電所や跡地の中から建設候補地として選定したサイトの評価作業を実施中。2024年には原子力規制局(ONR)のガイダンスに基づいて、サイトとしての妥当性を詳細に調査するほか、許認可手続き前の予備調査に入る方針だ。この作業については、DESNZから資金提供を受けている政府外公共機関の 原子力廃止措置機構(NDA)も協力。NDAは英国内で閉鎖済み原子力発電所の廃止措置や管理などを担当している。EDFエナジー社は2018年12月から、イングランド南西部サマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(フラマトム社製・欧州加圧水型炉:EPR×2基、各172万kW)を建設中のほか、イングランド南東部のサフォーク州では、サイズウェルC(SZC)原子力発電所(EPR×2基、各167万kW)の建設を計画している。一方、英国政府は将来的なエネルギー供給保障強化の一環として、革新的な小型モジュール炉(SMR)を2030年代半ばまでに国内で複数建設するため、支援対象とするSMRの選定コンペを実施中。今年10月には、SMR開発企業の中から6社を最終候補として発表している。フラマトム社の今回の原子燃料製造施設建設プロジェクトは、このように新しい世代の原子炉の運転開始に備え、英国での経営規模拡大を目指すという同社戦略の一部。大型PWRや軽水炉方式のSMRにも対応する複数の原子燃料の製造で、英国の将来的な原子力発電開発のみならず欧州全域でのSMR建設を幅広く支援していく考えだ。米企業とは第4世代の原子炉向け燃料製造へフラマトム社とUSNC社が今回設立を決めた合弁事業体は、3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)を商業規模で製造する予定だが、これはUSNC社が開発している第4世代の小型高温ガス炉「モジュール式マイクロ原子炉(MMR)」と、同炉を複数基備えたエネルギー供給システム、およびその他の先進的原子炉での使用を想定したもの。TRISO燃料は、USNC社がMMR用として開発中の「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造に活用される。USNC社はすでに2022年8月、FCM燃料のパイロット製造施設(PFM)をテネシー州のオークリッジでオープンした。合弁事業体はこの技術に基づき、2026年にもTRISO燃料の製造と同燃料を使ったFCM燃料の製造開始を計画。このため、フラマトム社は米国で保有している燃料の製造許可に、USNC社のPFMと同じ実証済みの製造プロセスを組み込めるよう、同許可の修正を2024年の夏に米原子力規制委員会(NRC)に申請する予定である。また申請に先立ち、NRCとは事前の協議を実施している。USNC社のMMRを備えたエネルギー供給システムでは、1万kW~4.5万kWまで様々なレベルの熱出力が設定可能で、コスト面の効率性が高いクリーンで安全な熱と電力を、場所を選ばずにユーザーに提供できるという。カナダでは、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNC社の合弁事業体であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社が2019年3月、カナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトで2028年にもMMR初号機の運転を開始するため、同国の原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。米国ではイリノイ大学が2021年7月、学内でチョークリバーと同じ時期の運転開始を目指してMMRを建設するため、NRCに「意向表明書(LOI)」を提出している。(参照資料:フラマトム社➀、②、USNC社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Dec 2023
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英国 原子炉の建設等で韓国との協力を強化
英政府のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)と韓国の産業通商資源部(MOTIE)は11月22日、民生用原子力分野での協力強化に向け、了解覚書を締結した。両国間でクリーン・エネルギー関係のパートナーシップを新たに結んだことにともなうもので、この覚書を通じて、英韓両国は両国のみならず第三国でも協力して原子力発電所を建設し、関係技術に投資するための基盤を構築する。英国原子力公社(UKAEA)と韓国電力公社(KEPCO)の協力促進のための覚書など、両国の政府機関や原子力関係企業が今回結んだ覚書は合計9件。KEPCOは英国の新規原子力発電所建設事業への参加意思をDESNZに表明しており、これを契機に英国への原子炉輸出に総力を傾けると強調している。DESNZとMOTIE間の覚書調印は、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領と韓国経済視察団の訪英に合わせ、DESNZのC.クティーニョ大臣とMOTIEのパン・ムンギュ(方文圭)長官が行った。両国はこれまでに、原子力の平和利用分野における政府間協力協定を1991年に締結したほか、2013年には韓国MOTIEと英国エネルギー気候変動省(DECC)(当時)が民生用原子力分野における商業面の協力について了解覚書を締結。今年4月には、原子力や再生可能エネルギーなど、クリーン・エネルギーの開発加速やエネルギー供給の確保に向け、これまで以上に緊密に協力していくとの共同宣言を発表している。両国は今回、エネルギー分野の現行協力を継続する重要性や、民生用原子力発電所がエネルギーの供給保障や地球温暖化への対応で果たす重要な役割に鑑み、官民の両面で原子力関係の協力を強化することを確認。従来の大型炉や小型モジュール炉(SMR)、その他の先進的原子炉を建設する意欲が双方にあることから、協力して進めていく考えだ。今回の覚書はMOTIEとDECCが10年前に結んだ覚書に代わるもので、カバー項目は先進的原子炉技術のほかに核融合技術や原子燃料、原子力発電所の新規建設と運転およびメンテナンス、原子力関係プロジェクトへの資金調達、放射性廃棄物管理、廃止措置、安全・セキュリティおよび核不拡散など。両政府はともに、それぞれの産業界が中心的な役割を担うことを認識しており、政府機関同士や民間企業同士の協力も促進。英国からは、原子力廃止措置機構(NDA)や今年7月に原子力発電所新設の牽引役として発足したばかりの政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」、国立原子力研究所(NNL)、英国原子力産業協会(NIA)などが参加。韓国からは、KEPCOとその傘下企業、韓国原子力産業会議(KAIF)、韓国原子力環境公団(KORAD)などが参加し、双方の協力活動を支援するとしている。なお、KEPCOの今回の発表によると、同社のキム・ドンチョル社長一行は20日にウェールズで2015年に閉鎖されたウィルファ原子力発電所を訪れており、同発電所の新規原子炉建設用サイトを視察した。同サイトの諸条件や原子力への地元住民からの支持などを確認したほか、21日には両国原子力産業界の協力に向けたイベントを開催し、双方の政府関係者や関係企業の代表者を前に、韓国製PWR「APR1400」が国内外で成功裏に建設、運転されているとアピール。22日にはビジネス・フォーラムに参加して、ウェールズ原子力フォーラム(Wales Nuclear Forum)や原子力関係の人材センターであるマクテック・エナジー・グループ(Mactech Energy Group)社と協力強化のための覚書を交わした。このほか、韓電原子力燃料(KNF)や韓国プラント・サービス(KPS)なども、英国のエネルギー関係のコンサルティング企業であるモット・マクドナルド(Mott MacDonald)社やAB5コンサルティング社、産業設備メーカーのヘイワード・タイラー(Hayward Tyler)社などと覚書を締結している。(参照資料:DESNZの発表資料①、②、MOTIEの発表資料、KEPCOの発表資料(韓国語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Nov 2023
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日英原子力産業フォーラム 先進技術もテーマに
英国ビジネス・通商省および駐日英国大使館の主催による「日英原子力産業フォーラム」が10月25日に駐日英国大使館で開催され、英国側は15の企業、日本側は電力、大手メーカー、ゼネコン、商社など、31の関係機関・企業から、合わせて約100名が参加し、両国関係者らによる活発な情報・意見交換が行われた。同フォーラムは、英国市場協議会、英国原子力産業協会(NIA)、日本原子力産業協会が後援。7回目となった今回、メインテーマとして、これまでの廃止措置・廃棄物管理に加え、小型モジュール炉(SMR)などの先進原子力技術も取り上げられた。冒頭、歓迎挨拶に立ったジュリア・ロングボトム駐日英国大使は、G7広島サミット(5月19~21日)に際し行われた日英首脳ワーキング・ディナーにて発出の「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」に言及。広島アコードに盛り込まれたSMR、廃棄物管理、技術・多様性、核融合、原子力安全、広報など、原子力エネルギーの重要事項に関する協力姿勢をあらためて述べるとともに、高温ガス炉や福島第一原子力発電所の廃炉における技術的知見共有の可能性を一例に「既存の日英間パートナーシップをさらに深めていきたい」と強調した。また、原産協会の新井史朗理事長は「世界のエネルギー価格が高騰する中、日本の原子力政策では脱炭素への取組や国際協力が進展した」と、NIAのトム・グレイトレックス理事長はビデオメッセージを通じ「英国でも原子力発電は非常に大きな岐路に立たされている。今回のフォーラムが両国の産業界にとって互いに発展する機会となって欲しい」と述べ、有意義な国際間の企業交流が図られるよう期待を表明した。「新規建設と先進原子力技術」のセッションでは、日本ロールス・ロイス社社長の神永晋氏、コア・パワー社CEOのミカル・ポー氏、モルテックスフレックス社商業開発担当ディレクターのトリス・デントン氏、英国原子力公社(UKAEA)RACE((Remote Applications in Challenging Environments:遠隔操作・ロボット技術センター))・JET((Joint European Torus:EUの核融合実験装置))廃止措置担当ディレクター兼責任者のロブ・バッキンガム氏らが登壇。神永氏は、欧州諸国でロールス・ロイス社が開発を進めているSMRについて、低コスト・低炭素で水素製造も可能な他、「再生可能エネルギーとバランスよく既存のインフラ設備に接続できる」メリットを強調。4月の原産年次大会にも登壇したポー氏は、「原子力と海事の融合」と標榜し、船舶の動力源としてクリーンな燃料供給にも貢献する浮体式原子力発電の展望を披露。1兆ドル規模にも及ぶビジネスチャンスを見込み、同氏は、遠隔地・離島へのエネルギー供給の可能性や、「世界の海運業で排出される11億トンのCO2削減に挑む」との意気込みを示し、日本のメーカー・造船業の積極的な参画を期待した。デントン氏、バッキンガム氏は、それぞれ溶融塩炉、核融合における要素技術開発や人材育成の取組について発表。将来の社会実装に向けて、燃料、ポンプ機器、材料開発、コンピューター、ロボティクスなどの諸分野において、サプライチェーンを確保し国際間のパートナーシップを図っていくことの重要性を強調した。フォーラムでは、日英原子力関連企業の連携を促進するため、英国企業によるパネル展示のほか、今回、初となる日英企業による個別面談の機会も設けられた。
- 02 Nov 2023
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英シェフィールド社 米X-エナジー社のSMRに協力
英国政府所有の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社は10月12日、米X-エナジー社が英国内で計画している第4世代の小型モジュール炉(SMR)「Xe-100」の建設に協力するため、同社および英国における同社の開発パートナー企業であるキャベンディッシュ・ニュークリア社と協力覚書を締結した。X-エナジー社の「Xe-100」は小型のペブルベッド式高温ガス炉(HTGR)で、電気出力は8万kW。産業用の高温熱や蒸気、電力を生産できることから、同社は英国内で「Xe-100」の建設機会を探り、最大40基の建設を目指している。今回の覚書では、シェフィールド社が原子力関係の鋳鍛造品製造で数十年にわたり蓄積してきたノウハウを活用し、SMRの主要機器を製造する。シェフィールド社も、同覚書を英国のSMRサプライチェーン構築に向けた足掛かりとしたい考えだ。米国ではエネルギー省(DOE)が2020年10月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」における7年間の支援対象企業の一つとしてX-エナジー社を選定。同社は2022年8月に「Xe-100」の基本設計を完了しており、ワシントン州の2つの公益電気事業者(グラント郡PUDとエナジー・ノースウエスト社)が、「Xe-100」をエナジー・ノースウエスト社が所有するコロンビア原子力発電所サイト内で建設することを計画している。2027年以降に初号機を建設すると見られていることから、英国での建設はそれ以降になる見通しである。英国では、脱炭素化に有効な無炭素エネルギー源として、政府が原子力に注目しており、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)として、2021年12月にHTGRを選択した。政府はまた、2022年4月に新しい「エネルギー供給保障戦略」を発表。原子力開発における方向性として100万kWの大型炉のほかにSMR、およびHTGRなどのAMRを開発する方針を示している。英国ではまた、今年7月に原子力発電所新設の牽引役として発足したばかりの政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が、革新的なSMR技術の開発を促して英国のエネルギー供給保障を強化するため、支援対象の選定コンペを開始。今月2日に発表された最終候補の6社にX-エナジー社は含まれなかったが、英政府は選考に漏れたSMRについても、別ルートでの市場化に向けた協議を今秋から開始すると約束していた。シェフィールド社はすでに、同様の覚書を米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社や英ロールス・ロイスSMR社などと締結済み。米ニュースケール・パワー社とは、同社製SMRのベッセル・ヘッドを共同で実証鍛造する計画を2016年に発表している。シェフィールド社のD.アシュモア戦略・クリーン・エネルギー事業開発部長は、今回の覚書について「SMRの商業化に向けて、当社がこれまでに交わしてきた数多くのSMR開発企業との協力覚書の中で最新のものだ」と説明。同覚書に基づき、今後は「Xe-100」の一層明確なコスト見積もりと建設計画の策定に向けて、同炉に必要な鋳鍛造品を詳細に検討するとした。X-エナジー社のC.タンスリー副社長は、「『Xe-100』の建設に際し、契約総額の約8割を英国企業に発注するなど、英国サプライチェーンの最大限の活用を目指す」と表明。シェフィールド社との覚書はこれに向けた重要な一歩であり、40基の「Xe-100」建設は英国産業界の脱炭素化を促進するだけでなく、英国全土の企業に莫大なチャンスをもたらすと強調している。(参照資料:シェフィールド・フォージマスターズ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 16 Oct 2023
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英国 SMRの支援対象選定コンペで6社が最終候補に
©UK Government英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は10月2日、革新的な小型モジュール炉(SMR)の開発を促し英国のエネルギー供給保証を強化するため、7月に開始した支援対象の選定コンペで6社のSMR開発企業を最終候補として発表した。同コンペの実施は、原子力発電所新設の牽引役として7月に発足したばかりの政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が担当。今回このコンペで次の段階に進むことが決定したのは、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国籍のニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ホルテック・ブリテン社、およびウェスチングハウス(WH)社英国法人の計6社である。これら企業は年内にも、支援契約の締結に向けて英政府招聘の入札に参加する。GBNは6社のSMRの中から、建設に向けた最終投資判断(FID)が2029年頃に下され、2030年代半ばまでに運転開始する可能性が高いものを2024年の春に選定、夏までに支援契約を締結する予定。このコンペは、DESNZが今年3月に公表したクリーン・エネルギーによる長期的なエネルギー供給保証と自給の強化に向けた新しい投資政策「Powering Up Britain」に基づいて行われている。GBNはかつてない規模とスピードで原子力の復活と拡大を進めるもので、コンペを通じてSMRの開発プロジェクトに数十億ポンド規模の官民投資を促す方針である。DESNZによると、SMRは設備が小さいため、工場での製造や迅速で低価格な建設が可能である。その一方で、政府は建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所や、HPC発電所と同型設計を採用するサイズウェルC発電所など、大型炉を備えた発電所の建設計画も引き続き支援。GBNは2050年までに総発電量の4分の1を原子力で供給するという政府の目標達成を下支えし、国内の雇用を維持しながら、欧州で最も低価格な電力卸売価格を実現する考えだ。DESNZのC.クティーニョ大臣は、「SMRなら原子力発電設備の迅速な拡大が可能であり、安価でクリーン、確実なエネルギー供給を実現できる」と指摘。さらに、高給雇用の創出と英国経済の発展も促すとしており、「このコンペで英国は世界中の様々なSMRを呼び込み、原子力技術革新を牽引する世界的リーダーとしてSMRの開発レースを主導する」と述べた。最終候補企業の一つに選定されたロールス・ロイスSMR社のC.コーラトンCEOは、「コンペの次の段階に速やかに移行して政府との契約締結に漕ぎつけるよう取り組み、2050年までに最大2,400万kWの原子力発電設備を確保するという政府の目標達成を支援したい」と表明した。同社はすでに2021年11月、PWRタイプで電気出力47万kWのSMRを英規制当局の包括的設計認証審査(GDA)にかけるため、申請書を提出。翌年3月から英原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が審査を開始したことから、「その他の企業のSMRと比べて約2年先んじている」とも指摘。同社製SMRについては、すでにオランダやポーランドの事業者が関心を示しているが、コーラトンCEOは「世界中に多くのSMRを輸出していくためにも、国内契約の確保が極めて重要になる」としている。WH社は今年5月、中国や米国で稼働実績があるAP1000の電気出力を30万kWに縮小した1ループ式のSMR「AP300」を発表した。WH社は同炉ならAP1000のエンジニアリングやサプライチェーン、機器等を活用できるほか、許認可手続きも合理的に進められるため、2030年代初頭の初号機運転開始に自信を示した。同社のP.フラグマン社長兼CEOは「この機会に『AP300』が英国にとって最良の選択肢となることを実証したい」と述べた。「AP300」の建設は、ウクライナやスロバキア、フィンランドなどが検討中である。(参照資料:英政府、ロールス・ロイスSMR社、WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Oct 2023
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英国 サイズウェルC計画で民間投資募集
©UK Government英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は9月18日、EDFエナジー社がイングランドのサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各167万kW)建設プロジェクトに対し、民間部門からの投資募集プロセスを開始すると発表した。同プロジェクトの実施に必要な資金を調達するため、その第一段階として、潜在的投資家である企業や個人に予め資格審査を受けてもらう方針。EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とSZCプロジェクトを50%ずつ保有する英政府は、EDFエナジー社傘下のプロジェクト企業であるサイズウェルC社(※今年6月にNNB GenCo社から社名変更)への投資に関心を持つ有望な企業らに、関心表明の登録と選定要件の詳細を一定程度盛り込んだ「事前の資格審査用質問票(PQQ)」の入手を要請しており、10月9日までPQQへの回答提出を受け付ける。回答書の評価結果次第で、第2段階としてサイズウェルC社株を入手する入札への参加資格が与えられる。ただし、その参加交渉に入る際も、候補企業らは大規模原子力発電所も含めた大型インフラ建設プロジェクトの実施経験など、いくつかの重要基準を満たしていることを実証するよう求められる。英政府は2022年11月、SZCプロジェクトに最大6億7,900万ポンド(約1,240億円)の直接投資を行うと発表。同プロジェクトの半分を保有した上で、今後は同プロジェクトへの出資を希望する第三者を募る方針を明らかにしていた。当時原子力政策を担当していたビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)によると、同プロジェクトは「規制資産ベース(RAB)モデル」((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を通じて資金調達を行う最初の原子力発電所建設計画。今年2月にBEISから原子力政策を引き継いだDESNZは今回、「RABモデルを通じた民間投資の呼び込みは、電力消費者や納税者にとって価値の高い結果を生む可能性がある」と評価しており、サイズウェルC社のみならず民間投資家側にも、プロジェクトを建設段階に進める自信と意欲をもたらすと強調している。DESNZはSZCプロジェクトを、英国が目指すエネルギー供給保障とCO2排出量の実質ゼロ化の両立において不可欠と考えている。従来の大型炉や新しい技術である小型モジュール炉(SMR)も含め、英国の原子力発電を活性化させることで、低コスト・低炭素な安定した電力供給システムを長期的に確保し、2050年までに英国の総発電量の最大25%を原子力で供給していく考えだ。このため、DESNZは直接投資として投入した約7億ポンドに加えて、建設サイトの準備作業を加速するため、今年7月と8月に追加で合計5億1,100万ポンド(約934億円)を拠出すると発表している。9月にDESNZのトップに就任したC.クティーニョ・エネルギー安全保障・ネットゼロ相は、「SZCプロジェクトで今後の世代にクリーンで価格も手ごろな電力を提供できるだけでなく、数千人規模の雇用が創出され、我が国のエネルギー供給保障を強化する一助になる」と指摘。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相も、「政府による最初の直接投資に続いて、有力な民間投資家が国家インフラの重要部分の実現に向けて、サイズウェルC社に新たな知見や経験をもたらしてくれることを期待する」と述べた。(参照資料:英政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 20 Sep 2023
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日本はドイツよりフランスに学ぶべきではないのか?
仮にフランスの政治的目的が、ドイツが持つとされる経済的優位性を減じ、ドイツを弱体化させるための計画の一部としてユーロを創出したとするならば、結果は明らかに逆のものになっている。ドイツの競争力の向上は、即ちドイツをより強くしているのであり、弱くしているのではない。ある意味ではそれは当然、且つ不可避の帰結なのだ。何故ならば、ユーロ圏において我々は最強の経済だからである。インフレ率は相対的に低く、そして他の(欧州の)国々は、もはや通貨を切り下げることができない。2007年4月号のフォーリン・アフェアーズ誌は、ゲアハルト・シュレーダー元ドイツ首相へのデビット・マーシュ氏のインタビューを掲載していた。同元首相の発言で注目されるのは、このユーロに関する部分だ。シュレーダー元首相の首相在任期間は1998年4月7日から2005年11月22日までの7年7か月であり、その間の1999年1月1日に単一通貨ユーロが導入された。同元首相はまさにユーロ誕生の立役者の一人と言えるだろう。このインタビュー記事のことを後になって思い出したのは2012年春だったと記憶している。当時はギリシャの国家財政に関する粉飾決算が明らかになり、ユーロ危機が深刻化していた。しかし、ドイツは下落したユーロを活かしてユーロ圏外への輸出を大きく伸ばしていただけでなく、強い競争力によりユーロ圏内への輸出も拡大させたのだ。シュレーダー元首相の予言通り、フランスやイタリア、スペイン、ポルトガルなどは通貨調整で対抗することができず、ドイツは独り勝ちの状態となった。ドイツ以外にこの危機を上手く乗り切った欧州の国は、1992年のポンド危機により欧州通貨システム(EMS)からの離脱を余儀なくされ、ユーロ入りを断念した英国だけではないか。英国は怪我の功名だが、ドイツは明らかに意図を持って通貨統合を進めたと考えられる。そのドイツと英国が、足下、揃って景気低迷に見舞われた。国際通貨基金(IMF)によれば、2023年、G7でマイナス成長が想定されるのはドイツの▲0.3%のみだ(図表1)。また、英国も2021、22年の反動があり0.4%と低成長の見込みになった。両国に共通しているのは、足下、エネルギーコストの高止まりに苦しんでいることだろう。 エネルギー価格高騰が直撃したドイツ経済ハンガリーとオーストリアのエネルギー当局がフィンランドのコンサルであるvassaETTに委託して作成されている家計エネルギー価格指数(HEPI:Household Energy Price Index)の7月のレポートを使い、家庭向け電力価格をドル換算すると、英国は1kWh当たり0.47ドル、ドイツは同0.40ドルだった(図表2)。EUの平均は0.28ドルなので、両国の電力料金は欧州のなかでもかなり割高だ。また、日本は0.29ドル、米国は0.16ドルであり、イタリアも含め欧州主要3か国は国際競争力において大きな問題を抱えていると見られる。英国の場合、新型コロナ禍に加えロシアのウクライナ侵攻により、電源として約4割を依存する天然ガスの調達が滞った。また、東欧などからの人材の供給が止まって深刻な人手不足に陥るなど、Brexitの副反応によるマイナスの影響が顕在化している。さらに、国際金融市場としてのロンドンの地盤沈下も著しい。ソフトバンクグループが売却する世界有数の半導体設計会社アームは、英国企業でありながら、上場市場に米国のNASDAQ(ナスダック)を選択した。この件は、ロンドンの黄昏を象徴する出来事と言えるだろう。一方、ドイツの場合、エネルギー政策の柱として再生可能エネルギーを重視してきたことが国際的にも高く評価されてきた。しかしながら、この戦略の大前提はロシアとの緊密な関係に他ならない。ウクライナ戦争で最も重要な前提条件が崩れたことこそ、ドイツ経済を苦境に陥れた最大の要因と言えるのではないか。もちろん、ドイツ政府は手をこまねいて見ているわけではない。ロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー危機の下、2021年に1kWh当たり6.5セントだった再生可能エネルギー法(EEG)に基づく賦課金について、家庭向けは昨年前半に3.72セントへ減額、後半以降はゼロとした(図表3)。同賦課金は今年もそのままゼロで据え置かれている。また、産業用についても、EEG賦課金は家庭用同様に昨年後半から徴収が見送られた(図表4)。その結果、大口向けの電力料金は、2023年後半の0.53ユーロ/kWhから、今年は約半分の0.27ユーロへ低下している。しかしながら、燃料の調達コスト上昇が強く影響して、21年の水準に比べると高止まりの状態だ。ドイツ商工会議所は、8月29日、会員企業3,572社を対象とする『エネルギー転換バロメーター調査』を発表した。「エネルギー転換政策が企業の競争力に与える影響への評価」についての設問では、事業にとてもポジティブとの回答は4%、ポジティブが9%だったのに対し、ネガティブが32%、とてもネガティブは20%に達した。また、「国外への生産拠点の移転、または国内における生産抑制」に関しては、計画中16.0%、既に進行中10.5%、既に実施5.2%、合計31.7%が積極的な姿勢を示している。この比率は昨年と比べて倍になった。エネルギー価格の高騰、そして安定供給への不安が、ドイツの産業界に与える影響は小さくないようだ。 ドイツが抱える問題はコストだけではないドイツは、脱炭素へ向けエネルギーの転換政策を進めており、G7のなかで最も活発な取り組みをしてきたと言えるだろう。再生可能エネルギーの活用を積極的に進めると同時に、2020年7月3日には石炭・褐炭火力発電所を2038年までに全廃する法案を成立させた。この法律にはいくつかの前提条件があるものの、期限を明確にしたことは、国際社会から高く評価されている。また、アンゲラ・メルケル首相(当時)率いる内閣は、2011年6月6日、2022年までに全ての原子力発電所の運転を停止する方針を閣議決定した。東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の重大事故を受けた方針転換だ。同年7月3日には、連邦議会が脱原子量法案を可決した。当時、ドイツでは17基の原子力発電所が稼働しており、2010年は総発電量の22.2%を原子力が賄っていた。この時期を設定して脱原子力の実現を目指す姿勢も、世界の環境団体などの受けが極めて良いようだ。ロシアによるウクライナ侵攻から3日後の昨年2月27日、連邦議会で演説したオラフ・ショルツ首相は、ロシア産天然ガスの依存度を低下させるため、エネルギー転換政策に関し一部を修正する意向を示した。一方、稼働していた3基の原子力発電所は、政府内での議論の末に運転が3か月半延長されたものの、今年4月15日にその全てが停止している。結果として、今年前半の総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は51.7%となり、半期ベースで初めて50%の大台を超えた(図表5)。もっとも、再エネによる発電量は、前年同期に比べ0.7%減少している。景気停滞により総発電量が同10.9%の大幅な落ち込みとなるなか、原子力発電所の停止と共に、石炭・褐炭、天然ガスなど化石燃料による発電量が15.7%減ったことにより、全体に占める再エネの比率が向上したのだった。需要の減少によって、電力不足に陥りかねないリスクが糊塗されたとも言えるだろう。しかしながら、価格高騰を抑止することは出来ていない。ドイツのエネルギー政策が抱える問題は、価格の問題だけではなく、重視してきた温室効果ガス削減の取り組みでも深刻度を増しているのではないか。G7において1kWhの発電量に伴い排出されるCO2の量は、昨年、フランスが最も少なく85グラムだった(図表6)。また、石炭比率の高い日本は495グラムに達している。一方、脱化石燃料で優等生とされるドイツは385グラムであり、意外にも小幅ながら米国やイタリアの後塵を拝する状況だ。再エネにこれだけ注力して国際社会の賞賛を浴びながら、実は現段階におけるドイツの温室効果ガス排出量削減がかならずしも主要国において先行しているわけではない。今後、自動車のEV化が進むことが想定されるなかで、発電時の温室効果ガス排出量の重要性はさらに高まるだろう。ドイツの心中は穏やかではないはずだ。フランスとドイツの最大の違いは、原子力政策に尽きる。昨年、総発電量に占めるドイツの原子力発電の比率は6.0%だ。一方、フランスは62.7%に達していた。同国の再生可能エネルギーは26.3%を占めているので、クリーン電源の比率が総発電量の89.0%に昇る。今も石炭・褐炭に3割弱を依存するドイツとは大きな違いと言えよう。 ドイツを教訓とする日本のエネルギー政策日本ではドイツを脱化石燃料において最も進んだ主要国と捉える風潮がある。しかしながら、率直に言ってそれは間違っているのではないか。ベースロードに安定性の高い原子力を利用し、再エネとの相互補完関係を重視してきたフランスの方が、コスト、効果の面で明らかに先進的と言えるだろう。2021年9月26日の総選挙において、ドイツではショルツ首相率いる中道左派の社会民主党(SPD)が第1党になり、中道右派の自由民主党(FDP)、中道左派の同盟90/緑の党と3党で連立内閣を発足させた。新政権では、反原子力を主要政策に掲げる同盟90/緑の党のロベルト・ハーベック氏が副首相兼経済・気候保護大臣に就任、エネルギー政策は非常に柔軟性を欠く状況になっている。従って、ロシアによるウクライナ侵攻があっても、脱原子力の原則を曲げなかった。その結果、電力価格が高騰して産業競争力に負の影響を及ぼし、IMFによる2023年の経済見通しではG7で唯一のマイナス成長とされている。再生可能エネルギーが極めて重要な電源であることは間違いない。ただし、風力、太陽光は今のところ安定性に欠け、ベースロードとしての活用には限界がある。そうしたなか、原子力発電所を止めたことにより、ドイツは結局のところベースロードを石炭・褐炭、天然ガスに依存せざるを得なくなったと言えよう。再生可能エネルギーの積極活用でEUにおける環境優等生と称賛されていたドイツだが、足下はコストの抑制と脱炭素の両面でエネルギー政策の行き詰まりが隠せなくなった。しかしながら、統一通貨ユーロを採用した以上、景気が落ち込んでも、通貨安を利用して輸出で経済を建て直すことは出来ない。このままだと、少なくとも当面、ドイツは経済の停滞が避けられないのではないか。ちなみに、シュレーダー元首相は、昨年5月20日、ロシアの国営石油会社ロスネフチの取締役を退任、同24日にはガスプロムの監査役就任を辞退したことが伝えられた。連邦議会内に与えられた個人事務所の特権を議会から剥奪されるなど、ドイツ国内において厳しい批判に晒されている模様だ。SPDのシュレーダー元首相、キリスト教民主同盟(CDU)のメルケル前首相、この2人の治世は合計23年1か月に及んだ。所属する政党は異なるものの、ドイツの政権を長期に亘って担った2人のリーダーに共通していたのは、ロシアのウラジミール・プーチン大統領との強い信頼関係に他ならない。従って、再エネ重視、脱石炭・褐炭、脱原子力を基軸とするドイツのエネルギー政策は、ロシアから大量の天然ガスを安価に直接調達することを大前提としていた。だからこそ、ドイツはロシアと同国を結ぶ天然ガスのパイプライン、「ノルドストリーム」及び「ノルドストリーム2」を重視してきたと考えられる。シュレーダー元首相は、政界引退後、ロシアの世界的なエネルギー企業に職を得た。また、2021年7月、任期中における最後の訪米でホワイトハウスを訪れたメルケル前首相は、ジョー・バイデン大統領との会談において、「ノルドストリーム2」の利用開始を米国が容認するよう強く求めたと言われる。この時、バイデン大統領は、メルケル首相に押し切られた形で実質的なお墨付きを与えた。しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻により、この2人の偉大な首相が築き上げたドイツのエネルギー政策に関するシナリオは根本的に崩れた。経済を持続的に回復させるためには、エネルギー政策の立て直しは避けられないだろう。これは、日本のエネルギー政策にとって極めて重要な教訓と考えられる。国家安全保障、経済安全保障、そして経済合理性の観点から、エネルギーの調達を他国に過度に依存するのは極めて危険だ。この点において、日本が参考とすべきはドイツではなく、明らかにフランスなのである。脱炭素は人類共通の課題となった。再生可能エネルギー、原子力の組み合わせを軸として、将来における水素・アンモニアの活用へ準備を進めること、これこそが日本のエネルギー政策が歩むべき王道と言えるのではないか。
- 18 Sep 2023
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JAEA・英NNL 高温ガス炉実証炉で覚書締結
日本原子力研究開発機構(JAEA)と英国原子力研究所(NNL)は9月6日、英国高温ガス炉実証炉プログラムの基本設計に係る実施覚書を締結した。同覚書のもと、日英両国における高温ガス炉の導入を目指した研究開発、原子力サプライチェーン構築、人材育成に関して協力が進められることとなる。調印式は、西村康稔経済産業相の英国訪問を機に、同国クレア・クティーニョ・エネルギー安全保障・ネットゼロ(DESNZ)相の立ち合いのもとで行われた。〈JAEA発表資料は こちら〉英国政府は、カーボンニュートラルの達成に向け、電力分野では軽水炉、非電力分野では革新炉として高温ガス炉を選択し、昨秋より高温ガス炉実証炉プログラムを開始。同プログラムは、フェーズA(事前概念検討、2023年2月終了)、フェーズB(基本設計、2025年終了予定)、フェーズC(許認可・建設、2030年代初期運転開始予定)と、進められる運びで、DESNZは7月に、フェーズBの事業者として、JAEAとNNLによるチームを採択。合わせて、DESNZは高温ガス炉実証炉用の燃料開発プログラムの開始を公表しており、JAEAはNNLと連携し、英国における燃料製造技術開発を進めていく。JAEAは高温工学試験研究炉「HTTR」(熱出力30MW、2021年7月に再稼働)の開発実績を有している。「HTTR」の核となる技術は世界有数の国産技術で、例えば、原子力用構造材として世界最高温度950℃で使用できる金属材料は国内メーカーによるものだ。今後、JAEAは、NNLと連携し、日本の高温ガス炉技術の国外実証、英国での社会実装を進め、国内の実証炉計画にも活かしていく。
- 07 Sep 2023
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英政府 SZC計画の準備加速に3.41億ポンドを追加
英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は8月29日、EDFエナジー社がサフォーク州で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所建設プロジェクトの準備作業を一層加速するため、昨年秋に政府が同計画用に確保した8億7,000万ポンド(約1,632億円)の中から、3億4,100万ポンド(約628億円)を拠出すると発表した。今年7月に、同じくサイトの準備活動や主要機器の調達、労働力の確保等に1億7,000万ポンド(約313億円)を拠出したのに続く措置。同サイトを「いつでも建設工事に取り掛かれる状態」にすることで、英国の原子力設備を迅速に拡大していき2050年までに総発電量の最大25%を原子力で供給。ロシアのプーチン大統領を世界のエネルギー市場から締め出す一助にするとしている。SZC計画では、サマセット州ですでに建設中のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所(欧州加圧水型炉:EPR×2基、各172万kW)と同じく、EPRを2基(各167万kW)建設する。ただし、HPC計画では建設資金の調達方法として差金決済取引(CfD)を適用するのに対し、SZC計画では「規制資産ベース(RAB)モデル」((個別の投資プロジェクトに対し、総括原価方式による料金設定を通じて建設工事の初期段階から、需要家(消費者)から費用(投資)を回収するスキーム。これにより投資家のリスクを軽減でき、資本コスト、ひいては総費用を抑制することが可能になる。))を用いる予定。この方式で民間投資を呼び込み、EDFエナジー社には同計画への最終投資判断(FID)を促す方針だ。同計画ではまた、EDFエナジー社の子会社でプロジェクト企業のNNB GenCo(SZC)社(※今年6月に「サイズウェルC社」に社名変更)が2020年5月、国家的重要度の高いインフラ設備の建設・操業プロジェクトに取得が義務付けられている「開発合意書(DCO)」を計画審査庁(PI)に申請。ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)のK.クワルテング大臣は2022年7月、PIによる審査結果等に基づき、同計画へのDCO発給を決定している。 DESNZによると、今回の追加投資でサイトでは建設工事が始まる前に、従業員1,500名分のサイト内訓練施設の建設や発電プラントの詳細な設計エンジニアリング、地元コミュニティへの直接投資等への支援が行われる。このような方策を通じて、英国は2050年までに原子力関係の政府目標を達成し化石燃料の輸入量を削減、エネルギーの自給に向けてその供給を保証していく。今回の政府発表について、サイズウェルC社のJ.パイク取締役は、「本格的な建設工事の開始に向けて、当社の立ち位置は一層確かなものになった」と指摘。今後数か月以内に、複数の周辺コミュニティと関係業務を始められるとした上で、「地元住民の方々には、建設プロジェクトの恩恵を出来るだけ速やかに提供したいと考えている。主要な工事が始まるはるか以前から、この地域をより良くするための提案を幅広く示していきたい」と述べた。(参照資料:英政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月30日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 01 Sep 2023
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英国 ウクライナ発電所の原子燃料確保で1.9億ポンドの融資保証提供
英国政府は8月23日、ウクライナの原子力発電所における原子燃料確保を支援するため、英国輸出信用保証庁(UKEF)を通じて1億9,200万ポンド(約354億円)の融資保証をウクライナの原子力発電公社であるエネルゴアトム社に提供すると発表した。UKEFとエネルゴアトム社が今回締結した合意文書に基づき、ロンドンを本拠地とするウラン濃縮サービス企業のURENCO社が、ウクライナ国内の原子力発電所向けに引き続き濃縮ウランを供給する。ウクライナが冬季に向けて十分な電力を原子力発電所で確保し、ロシア産燃料への依存から脱却することや、プーチン大統領を国際的な原子力市場から締め出すことが目的である。英国政府はこのほか、ウクライナのエネルギー部門が将来的にクリーン・エネルギーに移行するための協力覚書を同国と締結している。英国政府の今回の発表に先立ち、エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のG.シャップス大臣は22日にウクライナの首都キーウを訪問。ウクライナの副首相やエネルギー大臣など複数の政府高官、エネルゴアトム社のP.コティン総裁を含むエネルギー企業の要人らと、同国の復興に向けた英国の支援について協議。また、ロシアの砲撃を受けて修理中の発電所や幼稚園なども視察した。今回の英国の支援決定は、英国とウクライナの両政府が今年6月、ロンドンで「ウクライナ復興会議」を共催してからわずか2か月後のこと。両政府首脳はその際の共同議長声明で、支援国や機関がウクライナに新たに総額600億ドル(約8兆5,800億円)を拠出することで合意したと表明。英国政府はまた、今年4月に日本政府が札幌で開催したG7気候・エネルギー・環境大臣会合でも、原子力分野におけるロシアへの依存を低減し設備・機器や燃料の供給源を多様化する協力で、参加した英、米、仏、加、日の5か国が合意した事実にも今回触れている。今回の支援が実行されれば、英国がウクライナに提供する民生向け支援金は総額50億ポンド(約9,220億円)に達する見通し。原子力はウクライナの総発電量の半分以上を供給していることから、英国はウクライナが必要とする電力の確保を引き続きサポートし、エネルギー供給保証の強化に協力していく考えだ。DESNZのシャップス大臣は、「プーチンはエネルギーを戦争兵器として利用しているが、その野蛮な侵略に直面するウクライナへの我が国の支援は揺るがない」と強調した。URENCO社のB.シューヒトCEOは、エネルゴアトム社に対する2009年からの濃縮サービス提供など、既存の契約を挙げた上で、「ウクライナ支援で今後も責務を果たす準備は出来ている。このためには、今回のような英国政府との協力が不可欠だ」と指摘している。(参照資料:英国政府、URENCO社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 24 Aug 2023
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加テレストリアル社 WH社製熔融塩炉燃料を調達へ
カナダのテレストリアル・エナジー社は8月3日、同社製の「小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)」で使用する燃料を将来的に調達するため、同燃料の製造・供給契約を米ウェスチングハウス(WH)社の英国子会社と締結した。この子会社「スプリングフィールド燃料会社(SFL)」は、英ランカシャー州のスプリングフィールドにあるWH社の燃料製造工場を運営している。この契約の下で両社は、同工場の様々な既存インフラを活用してIMSR用燃料の試験製造プラントを設計・建設する計画だ。同契約はまた、2030年代に複数のIMSRを稼働できるよう、最終的に商業規模の製造施設建設を想定している。このため、英国政府はこの試験製造プラント建設に「原子燃料基金(NFF)」の中から290万ポンド(約5億2,500万円)の支援を約束。同契約は元々、テレストリアル社とSFL社および英国の国立原子力研究所(NNL)がIMSR用燃料の商業規模の確保に向け、2021年7月に調印した協力契約に基づいていることから、英国政府もこの協力関係を利用して国内エネルギー供給の保証戦略を進めていくとしている。テレストリアル社のIMSRは熱出力40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほか熱エネルギーの供給が可能。使用する熔融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり民生用の軽水炉に装荷されてきた「標準タイプ」の低濃縮ウラン((U-235の濃縮度が5%以下))を熔融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料((U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))を使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用する。この関係で、同社は2022年11月にこの標準タイプ燃料の梱包方法と国境を越えた輸送について、第三者に依頼して規制面の独自評価を行っている。その結果、これまで既存炉に利用されてきた燃料の梱包方法は、新たな種類の燃料梱包に派生するコンテナの設計や製造、許認可等の面でコストや時間がかからず、IMSRの燃料輸送に適していることが実証された。IMSRを主要な市場に速やかに送り出すという商業的側面でも、有利な燃料選択だったと強調している。同炉は今年4月、カナダの規制要件に対する適合性の事前審査で、同国の原子力安全委員会(CNSC)が提供している「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第2段階を完了。CNSCが「カナダで同炉の商業利用を阻むような根本的障害は見受けられなかった」と結論づけたほか、テレストリアル社も、「VDRは熔融塩を燃料として使う先進的原子炉がクリアした最初の規制審査になった」と指摘していた。IMSRについては、カナダのアルバータ州政府が建設に向けた検討を進めており、テレストリアル社と同州の州営非営利企業「インベスト・アルバータ(Invest Alberta)社」は2022年8月、同州をはじめとするカナダ西部地域でのIMSR建設に向けて了解覚書を締結している。(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 07 Aug 2023
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英政府 SZC計画の加速で1.7億ポンドを投資
SZC原子力発電所の完成予想図 ©DESNZEDFエナジー社が英国で計画しているサイズウェルC(SZC)原子力発電所(167万kWの欧州加圧水型炉=EPR×2基)建設プロジェクトの準備を加速するため、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月24日、同計画用資金の中から1億7,000万ポンド(約309億円)を新たに歳出すると発表した。この資金は、サイトでの建設準備活動や主要機器の調達、労働力の確保等に充てられる。同計画では建設ピーク時に英国内で1万人規模の雇用が見込まれるほか、関連契約の約70%が英国内のサプライチェーンにもたらされる見通し。DESNZとしては、新しい資金調達方法として「規制資産ベース(RAB)モデル」を採用した同計画に新たな民間投資を呼び込み、EDFエナジー社に対しては同計画への最終投資判断(FID)を促す方針である。DESNZはまた、同発電所のこの2基を追加することで、2050年までに英国の原子力発電を現在の約4倍の2,400万kWに拡大する政府目標の達成に近づき、英国のエネルギー供給保証を強化できると指摘。ロシアのV.プーチン大統領を、世界のエネルギー市場から締め出す原動力にもなるとしている。DESNZの発表によると英国では7月中旬、原子力発電所の迅速な新設を主導する新しい政府機関の「大英原子力(GBN)」が正式に発足した。GBNでは近年浮上してきた原子炉技術のみならず、SZCやヒンクリーポイントC(HPC)のような従来型大規模原子力発電所の建設プロジェクトも支援していく予定であり、国家経済の成長や電気料金の削減にも貢献すると強調している。SZCプロジェクトついては、EDFエナジー社の下で同計画を担当している子会社のNNB GenCo(SZC)社が2020年5月、計画法に基づいて「開発合意書(DCO)」の発給を計画審査庁(PI)に申請した。この当時、エネルギー政策を担っていたビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、PI審査官の報告書等の結論に基づき、2022年7月にDCOの発給を決定している。BEISはまた、同年11月にSZCプロジェクトに対して総額6億7,900万ポンド(約1,236億円)の直接投資を行うと発表した。EDFエナジー社の親会社であるフランス電力(EDF)とともに同計画に50%ずつ出資する一方、NNB GenCo社と協力して、SZCプロジェクトへの出資者を新たに募る方針。同計画では2015年の合意に基づき、中国広核集団有限公司(CGN)がEDFエナジー社に20%の出資を約束していたが、BEISは英政府が出資することで所有権の買取や税金なども含めて、CGNの撤退を促すことが可能だと指摘した。同計画のFIDに関してはEDFエナジー社が昨年、「うまくいけば2023年中に下すことが可能」と述べていた。今年2月にBEISからエネルギー政策を引き継いだDESNZのG.シャップス大臣は、SZCプロジェクトについて、「すでに実施中のHPCプロジェクトと、国産原子力発電シェアの25%まで拡大という長期目標を橋渡しする役割を担っている」と指摘。その上で、「新しい原子力発電所で信頼性の高いクリーン・エネルギーを安価で提供するだけでなく、英国がプーチンのような暴君にエネルギーの身代金を支払わずに済むようにしていく」との決意を表明している。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 03 Aug 2023
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WH社 英政府補助金で燃料工場を拡張へ
米ウェスチングハウス(WH)社は7月27日、英国スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレード用として、英国政府の「原子燃料基金(NFF)」の中から総額1,050万ポンド(約19億1,200万円)の補助金を獲得したと発表した。2025年3月末までに交付される見通しだ。WH社はこの補助金を次世代原子炉関係の3つの用途に使用する予定で、まず第3世代+(プラス)の同社製PWRであるAP1000、およびその出力縮小版のAP300など、様々な軽水炉に使用する原子燃料を同工場で製造。英原子力産業界が将来にわたって、最新の燃料を供給できるようにする。また、英国での新規炉開発に備え、WH社は同工場でのHALEU燃料((U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン))の製造検討に補助金を活用する。同社はさらに、カナダのテレストリアル・エナジー社および英国立原子力研究所(NNL)との協力に基づき、テレストリアル社製の小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)に使用する4フッ化濃縮ウラン(UF4)燃料と熔融塩燃料の試験製造にも補助金を活用する方針だ。NFFは2022年7月、英国内の原子力部門で高度なスキルを要する雇用を維持しつつ新たな原子力インフラへの投資を促進するため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が発電用原子燃料の国内製造拡大を目的に、7,500万ポンド(約136億5,700万円)の予算で設置した。これは、2050年までに国内の民生用原子力発電設備を2,400万kWまで拡大(現在は653.4万kW)して、英国のエネルギー供給を保証するには、しっかりとした燃料サプライチェーンを国内で確保・維持することが重要との認識に基づいている。英国政府はすでに2022年12月、NFFの7,500万ポンドのうち最大1,300万ポンド(約23億6,700万円)をWH社のスプリングフィールド・サイトに提供すると決定した。英国内で稼働する既存のガス冷却炉(AGR)用として、回収ウランと新たに採掘されたウランの両方を転換する能力の開発を目的としたもの。これにより、現時点でロシア以外の国では不可能な回収ウランの転換を可能にし、国際社会がロシアの燃料供給から脱却することを目指している。今年1月には、英国政府はNFFに残っている約5,000万ポンド(約91億円)の中から、資金提供するプロジェクトの競争入札を開始した。ここでの目的は、SMRを含む軽水炉用として英国産の燃料サプライチェーンを新たに構築するとともに、2030年代以降に運転開始が見込まれる先進的モジュール炉(AMR)用のHALEU燃料など、新しいタイプの燃料製造プロジェクトを支援すること。BEISのエネルギー政策を今年2月に引き継いだエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は7月18日、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、今回総額2,230万ポンド(約40億6,200万円)の補助金をNFFから拠出するすると発表した。WH社の燃料製造工場に交付する1,050万ポンド以外では、カーペンハーストにあるURENCO社のウラン濃縮工場に950万ポンド(約17億3,000万円)を拠出し、低濃縮ウランおよびHALEU燃料の製造を支援。また、AMRの一つである熔融塩炉の国内開発企業であるモルテックスFLEX社に120万ポンド(約2億1,800万円)以上を交付し、バーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転を支援するとしている。(参照資料:WH社、英国政府①、②、③の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 31 Jul 2023
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JAEA 英高温ガス炉の燃料製造技術開発に参画へ
日本原子力研究開発機構(JAEA)と英国国立原子力研究所(NNL)が共同で、英国の高温ガス炉実証炉用の燃料製造技術開発に取り組むこととなった。JAEAが7月19日に発表した。〈海外NEWS 既報 もご覧下さい〉多様な熱利用の可能性や優れた安全性を有する高温ガス炉は、ポーランド、中国、韓国、米国など、各国で開発が進められており、かつて英国でも1960~70年代に実験炉「Dragon」(熱出力20MW)が建設・運転されたことがある。英国では脱炭素化に向けた原子力利用の最有力候補として高温ガス炉に着目。2030年代初頭までの実証を目指している。2022年9月に英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、英国高温ガス炉実証炉プログラムの実施事業者として、JAEA 、NNL他、英国企業からなるチームを選定した。〈JAEA発表資料は こちら〉同プログラムは、フェーズA:事前概念検討(2022年9月~23年2月)フェーズB:基本設計、採算性評価(~2025年3月)フェーズC:許認可、建設、詳細エンジニアリング・運転(2030年代初期)――での3段階で行われる。このほど、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ、2023年2月にBEISの担ってきたエネルギー政策を引き継いだ)は、JAEAとNNLとのチームをフェーズBの事業者として選定し、合わせて、高温ガス炉実証炉用の燃料開発プログラムの開始を発表した。フェーズBとして1,500万ポンド(約27億円)、燃料開発プログラムのステップ1として1,600万ポンド(約29億円)の予算額がそれぞれ投じられる運び。JAEAは、高温工学試験研究炉「HTTR」(熱出力30MW、2021年7月に再稼働)の開発実績を有する。「HTTR」の核となる技術は世界有数の国産技術で、例えば、原子力用構造材として世界最高温度950℃で使用できる金属材料は国内メーカーによるもの。高温ガス炉は国産技術のみで建設可能だ。今後、JAEAは、NNLと連携した燃料製造技術開発を通じ、日本の高温ガス炉技術の国外実証、英国における社会実装を進め、これらの成果を国内の高温ガス炉実証炉計画に活かしていく。
- 20 Jul 2023
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英国 SMRへの官民投資拡大でコンペを開始
©British Government英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のG.シャップス大臣は7月18日、革新的な技術を用いた小型モジュール炉(SMR)の開発を促進するため、支援金の交付対象を選定するコンペを開始した。これにともない、支援金を希望する企業は同日からこのコンペに参加登録することが可能になった。英国で原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」は、同コンペの担当機関として、今秋にも基準を満たした企業の最初の絞り込みを行い、詳細協議の段階に移行する計画だ。このコンペの実施は、今年3月にDESNZが公表したクリーン・エネルギーによる長期的なエネルギー供給保証と自給の強化に向けた新しい投資政策「Powering Up Britain」に基づいている。英国でエネルギーを自給していくため、GBNは前例のない規模とスピードで原子力発電の復活・拡大政策を進めており、このコンペを通じてSMRの開発プロジェクトに数十億ポンド規模の官民投資を促す方針。英国のエネルギー供給保証を強化し、価格が変動しやすい化石燃料の輸入量を削減するほか、原子力の生み出す安価な電力で経済成長や良質の雇用創出を英国全土で実現することを目指している。政府の発表によると、SMRは従来の大型炉と比べて設備が小さいため、工場での製造および迅速で低価格な建設が可能になる。ただし、ヒンクリーポイントC発電所やサイズウェルC発電所など、大型原子炉を備えた発電所の建設計画も引き続き支援する方針で、GBNとともにこれらの発電所に続く大型炉の発電所が英国のエネルギー・ミックスの中で果たす潜在的な役割を考慮していく。GBNも、2050年までに国内の総発電量の4分の1を原子力で供給するという政府目標の達成を下支えし、国内の雇用を維持しながら欧州で最も低価格な電力卸売価格を実現するとしている。DESNZのG.シャップス大臣は今回、「原子力やその他のクリーン・エネルギー源の供給量を急拡大して各世帯の電気代を抑え、プーチンのような暴君に英国がエネルギーの身代金を支払わずに済むようにしていく」と明言。「GBNが最先端のSMR開発でコンペを始めたことは、今後数十年にわたり英国と英国経済をパワーアップしていく原子力ルネッサンスの最初の一歩になった」と指摘している。原子力に1.6億ポンドの助成金交付DESNZはこのほか、政府が同じ日に原子力関係で合計約1億5,700万ポンド(約283億3,400万円)の助成金交付を決定したことを明らかにした。このうち最大7,710万ポンド(約139億1,400万円)が英国内で先進的原子炉の開発事業を進める企業に支払われる予定。次の議会の会期中(2024年~2029年)に出来るだけ多くのSMRや先進的モジュール炉(AMR)を建設するため、これらの原子炉設計が規制手続きに入れるよう支援する。また、最大5,800万ポンド(約105億円)をAMRと次世代型原子燃料のさらなる設計・開発に充てる。AMRはSMRよりも高温で運転されるため、水素製造その他の産業利用に適した高温熱を供給可能。具体的には、米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)の英国法人が進めている第4世代の小型モジュール式高温ガス炉「MMR」の開発促進に最大2,250万ポンド(約40億6,000万円)、国立原子力研究所(NNL)が日本原子力研究開発機構(JAEA)の実績に基づいて進める高温ガス炉の設計開発促進に最大1,500万ポンド(約27億円)、および同炉用の国産被覆燃料粒子の開発継続に最大1,600万ポンド(約28億9,000万円)となっている。さらに、2,230万ポンド(約40億2,200万円)が「原子燃料基金」から、ロシアからの輸入に依存しない新しい燃料の製造能力開発プロジェクト8件に提供される。これには、英スプリングフィールドにあるウェスチングハウス(WH)社の燃料製造プラントへの支援金、最大1,050万ポンド(約19億円)や、英カーペンハーストにあるURENCO社のウラン濃縮工場に対する最大950万ポンド(約17億1,000万円)の支援などが含まれている。(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
- 19 Jul 2023
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