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規制委 法令報告を改善 10月から関係規則の解釈変更
原子力規制委員会は9月17日、定例会合を開催し、原子炉等規制法第62条の3に基づく事故故障等の報告(法令報告)に関する関係規則の解釈を変更することを了承し、10月1日から施行することに合意した。規制委は2025年8月の定例会合で、解釈の改善の方向性について既に了承しており、今回はそのうち、規則改正を伴わないものを先行して施行することとした。一方、規則改正を伴うもの、すなわち核燃料施設等の故障に関する報告要件や、原子力災害対策指針において原子力災害対策重点区域の設定を要しない施設に関する法令報告に関する改善については、引き続き検討を行う。今回の解釈変更は大きく分けると、①管理区域内における放射性物質の漏洩の報告要件について、試験研究炉と使用施設について実用炉等と同じ基準に統一する、②福島第一原子力発電所において、汎用品の交換等で復旧できる不具合は法令報告が不要であることを明確化し、また法令報告のタイミングについて、他施設で削除済みの事項を同様に削除する、③被ばく線量が線量限度を「超えるおそれ」に関する解釈の統一、④条文引用の表記整理――の4点。今回の変更は、解釈の改正や記載の適正化に当たることから、意見公募は行わず、10月1日に施行する。規制委は、国際原子力機関(IAEA)が今年実施した総合規制評価サービス(IRRS)の勧告で、グレーテッドアプローチ(リスクや重要度に応じて規制の厳しさを調整する)の規制プロセス全体への適用について指摘を受けている。今後、こうした規制制度に関する検討と法令報告との関係を整理し、規則改正を伴う見直しについて引き続き検討する。
- 18 Sep 2026
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2026年版「レッドブック」 ウラン生産は2割増 探鉱・開発投資は4割増 将来供給へ投資不可欠
経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)は9月14日、46か国の国別報告を基に、ウラン資源、探鉱、生産および需給状況をまとめた「2026年版 ウラン:資源・生産・需要」(Uranium 2026: Resources, Production and Demand:通称「レッドブック」)を共同で刊行した。2023~24年の世界のウラン鉱山生産量は2021~22年比で約20%増加。報告書は、2050年以降の需要を満たすのに十分な資源が存在する一方、将来の供給確保には新規生産に向けた適時かつ継続的な投資が欠かせないと強調している。レッドブックは1965年からほぼ隔年で刊行され、今回で通算31冊目。2026年版には46か国の国別報告が収録され、2023、24年のデータを中心に、一部2025年、26年の情報も含まれている。 2025年1月1日時点で、回収コストが260ドル/kgU未満の既知資源量((鉱床の規模・品位・形状が明らかな「確認資源」と、データが不十分な「推定資源」の合計))は810万4,500トンUで前版比2.1%増加。130ドル/kgU未満では、586万4,500トンUとほぼ横ばいだった。世界のウラン鉱山生産量は2023~24年の2年間で11万6,487トンUとなり、2021~22年の9万6,851トンUから約20%増加。2024年単年では6万1,924トンUと、2016年の約6万3,000トンUに迫る水準まで回復した。増加を押し上げたのは、カナダの鉱山の本格生産への復帰や、カザフスタンでの新規生産能力の立ち上がり、そして2030年までに生産量を3,500トンUから7,000トンUへ倍増させる大統領令を受けたウズベキスタンの増産など。2024年には鉱山生産で、世界の原子炉所要量の約96%を賄った。ウラン価格の回復などを背景に、探鉱・開発投資も回復している。2023~24年の世界の探鉱・開発支出は約18億ドルと、2021~22年比で46%増加した。ウラン価格は2021年初頭の1ポンド当たり30ドル(U3O8)から2024年1月に106ドルまで上昇した後、2025年3月には約64ドルまで下落、2026年1月には再び約94ドルへ戻している。ウラン需要も大きく伸びる見通しだ。世界の原子力発電設備容量は、2024年の3億9,800万kWから2050年には5億6,500万kW~9億1,600万kWに増加すると予測。これに伴い、年間ウラン需要量も現在の約6万4,500トンUから約8万4,800~14万3,900トンUに拡大する見通しで、特に中国を中心とする東アジアで大幅な増加を見込む。 現在確認されている資源量はこうした需要を満たすのに十分なものの、NEAとIAEAは、鉱山開発には長いリードタイムを要すると指摘。将来の供給制約を回避するには、短・中期的に新規プロジェクトを具体化し、開発を進めるとともに、継続的な探査を支える十分なウラン価格と投資が不可欠としている。
- 18 Sep 2026
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IAEA総会 分断した時代においても「共通の献身の精神」を
国際原子力機関(IAEA)の第70回通常総会が9月14日から18日の日程で、オーストリアのウィーンで開催されており、各国政府、国際機関、NGOなどから168か国・3,200人以上が参加している。開会の冒頭にスピーチしたIAEAのR. グロッシー事務局長は、IAEA創設から70年を迎えた今も、原子力安全、保障措置、がん治療支援、災害時の緊急支援などを通じ、各国がIAEAを通じて協力する姿を日々、目の当たりにしていると述べ、IAEAが果たす幅広い役割を強調した。IAEAは発電のみならず、医療、農業、環境など幅広い分野で原子力科学技術へのアクセスを世界に広げ、新興加盟国では安全で信頼性の高い原子力発電の導入支援を続けている。グロッシー事務局長は、国際情勢が分断と緊張に直面する中においても、IAEA初代事務局長W. スターリング・コールが1957年10月の第1回総会で表明した原子力の平和利用に向けた「共通の献身の精神」に立ち返り、国際協力を継続することの重要性を訴えた。また、世界的な原子力発電への関心の高まりを反映し、着工・運転開始に至る基数が着実に増えていると指摘。IAEAが本総会に合わせて公表した最新予測では、電力需要の増加や脱炭素化、産業・運輸の電化、デジタル経済の拡大などを背景に、世界の原子力発電設備容量が2060年までに、現在の3倍以上になる可能性があるとの予測を紹介した。特に、IT大手企業が原子力発電への投資を進めていることに注目。原子力は、低炭素で信頼性の高い電力を安定して供給できるため、AIやデジタルインフラとの親和性が高く、両者の結び付きは偶発的なものではなく、構造的な連携になっているとの認識を示した。また、原子力発電の導入を検討する国が増えるなか、IAEAは現在、「マイルストーン・アプローチ」に基づき43か国の新規導入を支援し、さらに20か国が導入を検討していることに言及。小型モジュール炉(SMR)への世界的な関心の高まりについては、国際的な普及に向け、各国で異なる規制手法の調和や設計の標準化が必要だと指摘。IAEA主導の原子力の調和および標準化イニシアチブ(NHSI)を通じ、複数国の規制当局が参加する事前許認可のパイロット事業などを紹介した。また、世界貿易の約80%を担う海運の脱炭素化における原子力の役割を強調。今年8月に海洋分野における原子力技術の応用(ATLAS)イニシアチブを立ち上げたほか、国際海事機関(IMO)とも協力し、海洋におけるSMR利用に関する法的、規制的、技術的および保障措置上の課題を検討していくとした。さらに、World Fusion Energy Groupを通じて、核融合発電の研究、開発、実証、展開の加速を支援していくとしている。こうした原子力利用拡大の機運は「確かなもの」だとする一方、野心的な目標と実際の設備容量の伸びのギャップを埋めるためには、資金調達の抜本的な変革が必要だと強調。世界銀行が原子力への融資を認める方針に転換したことを歓迎し、国際金融機関の原子力プログラムに対する理解促進に向けた能力開発事業を進めていると紹介した。これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本代表として、小野田紀美科学技術政策担当大臣が登壇。日本がIAEAとの協力を通じ、原子力の平和利用と核不拡散を推進する決意を表明した。また、日本はエネルギー安全保障と脱炭素に貢献する原子力発電について、安全性を最優先に最大限活用するとした。そのうえで、今年7月に閣議決定された「日本成長戦略」の下、海外の原子力発電所建設プロジェクトへの日本企業参画の促進や次世代革新炉の開発・導入を進め、さらに、2030年代のフュージョンエネルギーの発電実証に向けて、IAEAとの連携を強化すると述べた。福島第一原子力発電所の廃炉では、使用済み燃料の取出しや燃料デブリの試験的取出しなどの進展を説明し、ALPS処理水の海洋放出についても計画通り安全に実施されており、IAEAによる安全性確認が継続していると強調した。加えて、IAEA保障措置の強化、追加議定書の普遍化、人材育成と技術開発にも取組むと表明。北朝鮮やイランの核問題、ウクライナの原子力安全・セキュリティへのIAEAの関与を支持し、NPT体制の維持・強化と核兵器のない世界の実現に向け、日本としてIAEAを最大限支援していく考えを示した。 ◇ ◇例年通りIAEA総会との併催で加盟国等による展示会も行われている。 日本のブース展示では、「クリーンエネルギー、イノベーション、レスポンシビリティ」をテーマとし、革新軽水炉やSMRなどの次世代革新炉開発、フュージョンエネルギー社会実装への道筋、核セキュリティや緊急被ばく医療分野における能力構築を目指した国際協力、放射性医薬品の開発・製造・利用を取り上げた内容を展示するとともに、福島第一原子力発電所の最新の廃炉進捗状況も紹介している。 展示会初日には、日本政府代表の小野田紀美科学技術政策担当大臣がブースのオープニングセレモニーに出席し、挨拶の中で日本政府がエネルギー安全保障と脱炭素に寄与する原子力の最大限の活用を方針としていることをあらためて強調するとともに、ブース展示については有益で魅力的な内容を備えているとアピールした。 福島復興をアピールする観点から日本ブース展示に参加している復興庁は福島産の農産物や民芸品を多数提供するほか、ブース・オープニングでの日本原子力産業協会の増井理事長による乾杯でも福島県産の日本酒が用いられブース来訪者に振舞われた。 一方、翌日にはIAEAのグロッシー事務局長が初めて日本ブースを訪問した。同局長は、IAEAの協力イニシアチブに対するこれまでの日本の貢献を評価し、日本と加盟国の強い連帯の表れであると述べるとともに、ブースで提供されている福島県産食品を試食するよう来訪者に勧めるなど、今総会での日本ブースは従来以上に福島復興を後押しする機会となっている。
- 16 Sep 2026
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IAEA 原子力予測を初めて2060年まで延長 ― 退役・新設の見通し示す
国際原子力機関(IAEA)は9月14日、ウィーンで開催中の第70回IAEA総会で、最新報告書「2060年までの世界のエネルギー・電力・原子力発電予測」(第46版)を公表した。 IAEAは高・低の2ケースで今後の原子力発電設備容量を予測し、世界の原子力発電設備容量は2060年までに、高予測ケースで2025年末の約3.4倍にあたる12億8,400万kWe、低予測ケースでもほぼ倍増の6億9,600万kWeに達する見通しを示した。 予測は6年連続で上方修正された。 なお、報告書のエネルギー・電力予測はネットゼロへの経路を示すものではなく、1.5℃・2℃目標と整合するシナリオでもないとしている。今回の版では、2010~2025年版で2050年までとしてきた予測の対象期間が、2060年まで10年延長された。 現在運転中の設備容量の67%は運転開始から30年以上の炉、46%は40年以上の炉によるもので、今後の退役や運転期間延長の動向が長期的な設備容量の見通しを左右する。 IAEAが同報告書で2050年より先の見通しを示すのは、今回が初。2060年までの退役と新設を比べると、高予測ケースでは1億2,800万kWeが退役する一方で10億1,700万kWeが加わり、純増は8億9,000万kWe。 低予測ケースでは退役が2億2,000万kWeに増える一方、新設は5億2,100万kWeにとどまり、純増は3億100万kWeまで縮小する。 低予測ケースの退役規模は2025年末の設備容量の約6割、新設容量の約4割に相当する。 IAEAは、既設炉の運転期間延長は、実行可能な場合、低排出のベースロード電源を確保するうえで最も費用対効果の高い選択肢の一つであり、高経年化した原子炉群を抱える地域ではとりわけ重要だと指摘。 長期運転に向けた経年化管理プログラムの実施例が増え、自由化された電力市場で既設炉の競争力を支える政策措置も導入されつつあるとした。 IAEAのR. グロッシー事務局長は「この潜在力を実現するには、新規建設への投資と既設炉の運転期間延長が不可欠になる」と強調している。見通しが上方修正される一方、実際の世界の原子力発電設備容量は、前版の起点となった2024年末の417基・3億7,700万kWeと今回の起点となる2025年末の413基・3億7,710万kWeで、ほぼ横ばいだった。 2025年は12基・1,430万kWeが着工したものの、送電開始は3基・300万kWe、閉鎖は7基・280万kWeで、設備容量ではほぼ相殺された。 発電電力量は前年比1.1%増の2兆6,891億kWhと増えたが、世界の総発電電力量が2.7%増とこれを上回るペースで伸びたため、原子力の占める割合は2024年の8.7%から8.4%へ低下している。低予測ケースでは世界全体の設備容量が増える一方、北・西・南欧は8,100万kWeの退役を3,400万kWeの新設で補えず、主要地域で唯一、4,700万kWeの純減となる。 これに対し、中央・東アジアは低予測ケースでも2025年の1億1,380万kWeから2060年に2億7,900万kWeへ拡大する。 日本もこの地域に含まれるが、報告書は国別の将来見通しを示していない。2060年までの新設容量に占める小型モジュール炉(SMR)の割合は、世界全体で高予測ケース28%、低予測ケース23%となる見通し。 地域別では北米で両ケースとも約60%と世界全体の割合を大きく上回り、東南アジアと中南米・カリブ海地域では約40%を占める一方、中央・東アジアでは約10%にとどまるなど、導入割合には大きな地域差がある。2060年の原子力発電設備容量の拡大が見込まれるなか、原子力発電電力量は高予測ケースで2025年の約3.9倍の約10兆kWh、低予測ケースでも2倍超の約5.7兆kWhとなる。 IAEAは、世界の総発電電力量も同期間に2.5倍に伸びると推計している。 このため報告書では、原子力のシェアは、高予測ケースでは現状の8.4%から13.2%へ上昇する一方、低予測ケースでは7.2%へ低下するとしている。
- 16 Sep 2026
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規制委 技術系の高齢化に対応 採用含む人事戦略を策定
原子力規制委員会は9月2日の定例会合で、新たな人事戦略を策定した。従来の「職員の人材育成の基本方針」を見直し、新たに採用の方向性を盛り込んだ。採用から育成、配置、評価までを一体的に進める。 規制委では、一般行政職技術系の50代以上が約55%を占めるなど、職員の高齢化や中堅層の不足が課題となっている。特に検査分野では、職員178人のうち約7割が50代以上を占める。審査・検査分野では今後、多くの定年退職が見込まれる。 こうした状況を踏まえ新戦略では、採用面の具体策として、Web広告などの活用や大学・学会を通じた採用活動の強化を盛り込んだ。また、炉物理、原子燃料、機器耐震など、専門性の継承が課題となる分野を中心に、採用・育成を進める。 戦略策定には、国際原子力機関(IAEA)が今年実施した総合規制評価サービス(IRRS)の勧告も反映した。IRRSは、職員の流動性を維持・促進するための措置や、人事の柔軟性を高めることを求めた。今回の戦略では、独立性を担保しながら人材の流動性を確保する観点から、原子力規制庁職員を原子力利用の「推進」に関係する行政組織へ異動させない「ノーリターンルール」や再就職等規制に関する課題を整理することが盛り込まれた。 また、2027年度の機構・定員要求では、規制庁の体制強化に向け60人の増員を要求した。内訳は、再処理施設の本格稼働や福島第一原子力発電所の廃炉などへの対応が24人、新技術への対応が14人、DXの推進や専門人材の確保などが22人となっている。
- 04 Sep 2026
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英コアパワーが米海事当局と連携 2028年に原子力商船の建造開始をめざす
海洋分野の原子力利用プロジェクトを進める英国のコアパワー社は8月24日、米国ワシントンD.C.で米運輸省海事局(MARAD)と協力覚書(MOC)を締結した。米国籍の原子力商船の実用化に向け、商業、産業、規制面での取組みを加速することが目的で、連邦機関と民間企業の協力としては初。同社は準備が整えば、2028年にも米国で原子力推進商船の初建造開始をめざしている。本MOCは、米政府主催で8月26日~27日にワシントンD.C.で開催された「海洋分野における原子力技術の応用(Atomic Technologies Licensed for Applications at Sea, ATLAS)」発足に向けたIAEA閣僚級会合に先立って締結された。米トランプ政権は2026年2月、「海事行動計画」を公表。米国の海洋分野の衰退を食い止め、民間投資を動員し、経済および国家安全保障の要と位置づける 海事産業の再建と米国の造船能力の強化をめざしている。こうした中、小型モジュール炉(SMR)などの先進炉を活用した原子力推進は、商業海運の復興の一翼を担う重要な存在になると期待されている。原子力推進船舶は、長期間の連続航行が可能で、従来の舶用燃料への依存を減らし、推進時の炭素排出がないことが利点とされる。原子力商船の活用は重大な商業的機会である一方で、安全かつセキュリティを確保し、投資可能な環境を整備する必要がある。両者は今回のMOC締結を受け、政府、産業界、その他利害関係者が、規制承認、港湾運営、労働力の資格認定、燃料およびライフサイクルサービス、保険・資金調達、建造・運用面での産業側の能力、連邦政府による将来的な需要創出の仕組みなどについて協議する場を設ける。こうした取組みを通じて不確実性を低減し、船舶、造船所、関連インフラへの民間投資が可能な環境を整備していく方針だ。コアパワー社のM. ボー氏CEOは、中国が世界の商用造船市場を席巻し、原子力推進の商船開発も積極的に進めるなか、戦略的な対応が急務となっていると指摘。同社は、米国の70年にわたる海軍での原子力運用実績と次世代の原子力専門知識を活用し、米国内に原子炉の搭載、初期燃料装荷、試験、試運転、燃料交換・取出しなどを担う専用の「原子力統合・ライフサイクル造船所」の整備を計画している。船体の建造は通常の商業造船所や世界トップレベルの造船能力を有する日本や韓国などの同盟国が担い、米国内の専用造船所では、原子力関連の工程・保守に必要な専門能力を重点的に構築することを想定している。原子力商船の就航を支援すると同時に、原子力資格を有する人材、サプライヤー、重工業の生産能力を拡大し、米国の海事産業基盤の強化につなげたい考えだ。さらに、コアパワー社は8月19日、米テキサス州のコーパスクリスティ港湾局と同港の「海事原子力対応能力(maritime nuclear readiness)」を調査するMOCを締結。調査では、同港に浮体式原子力発電所を設置し、港湾や周辺地域に安定した電力を供給する拠点として活用することや、将来の原子力商船の寄港地とする可能性を検討する。これとは別に、MARADも同日の8月19日にコーパスクリスティ港湾局とMOCを締結した。SMR技術の統合、耐障害性の高い港湾マイクログリッド、陸上電源システム、次世代船舶推進システムに対応可能なインフラ、人材育成などを検討し、海洋エネルギーシステムの発展に向けた取組みを共同で進めていく。同港は米国最大の石油輸出港であり、国内有数の液化天然ガス輸出拠点でもある。本協力は、今年7月のカリフォルニア州ロングビーチ港湾局とのMOC締結に続くもの。MARADは2026年5月、海上輸送システムへのSMR導入支援について業界から意見を募った情報提供要請(RFI)を実施しており、今回の協力もこれを受けたものである。米国では海運・造船の再建政策に加え、国際海事機関(IMO)が掲げる2050年頃までの国際海運の温室効果ガス(GHG)排出ネットゼロ目標や、SMRなどの先進炉開発の進展を背景に、原子力船の実用化に向けた動きが活発化している。こうしたなか、IAEAを中心とするATLASが、海洋における民生用原子力利用を国際的な規制・制度面から支える構図が形成されつつある。
- 01 Sep 2026
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IAEA 海上におけるSMR利用促進に向けてATLASを発足
国際原子力機関(IAEA)は8月26日、民間船舶や浮体式原子力発電所への小型モジュール炉(SMR)などの原子力技術利用を安全・セキュリティ・平和利用の観点から国際的に支援する新たな枠組み「海洋分野における原子力技術の応用(Atomic Technologies Licensed for Applications at Sea, ATLAS)」イニシアチブを立上げた。ATLASは、特定の原子炉を開発・導入するプロジェクトではなく、原子力推進船舶や浮体式原子力発電所を商用化するための国際的な安全・規制・制度面の土台づくりを目的とした、原子力分野と海運分野を国際的に結びつける初の協調的な取組みである。米政府がワシントンD.C.で主催したIAEA閣僚級会合(8月26日~27日)でATLASイニシアチブが発表された。同会合には50か国以上から政府、規制当局、原子力・海運業界、港湾関係者など約600名が参加。28か国((アルゼンチン、バングラデシュ、ベルギー、ブラジル、カナダ、デンマーク、ドミニカ、エクアドル、フィンランド、フランス、ギリシャ、インド、イタリア、日本、韓国、マルタ、オランダ、ノルウェー、パラグアイ、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、トルコ、UAE、英国、米国))が共同声明に参加した。原子力の海洋用途を現実化するには、国際的な原子力・海事コミュニティが協力し、原子力技術の安全かつ確実な導入を確保、海上における民生用原子力利用に対する保障措置の効果的かつ効率的な実施の強化が不可欠。そのためIAEAは今後、運営委員会のほか、各国や産業界などからなる6つの専門プロジェクトグループを設置し、原子力安全、核セキュリティ、保障措置、規制などを検討する。特に、原子炉を船舶や海上施設に搭載する場合に必要となる国際的なルールや規制、港湾インフラ、責任分担など、陸上の原子力発電所とは異なる実務上の課題への対応を進めていくとしている。IAEAは、1962年に運転を開始した世界初の民間原子力貨物船「NSサバンナ」から60年以上を経て、次世代の民間海洋原子力利用に向けた国際的なルール作りを本格化させる方針。ATLAS発足の背景には、世界の貿易の約80%を海上輸送が担い、海上貿易が年間約2%拡大する一方で、長距離輸送のエネルギー安全保障や脱炭素化が課題となっていることがある。特にSMRなどの先進炉は海洋用途において安全かつ実現可能な選択肢となり得る。頻繁な燃料補給を必要としない高速海上輸送を可能とし、コンテナ船、バルク船、タンカー、クルーズ船、砕氷船、オフショア支援船などへの利用が期待されている。また、浮体式原子力発電所は、送電網などのインフラが整っていない沿岸・遠隔地の産業に、電力、熱、淡水、非常用電源などを供給する用途も見込まれる。IAEAは設計、燃料、海洋工学の進展により、一部の原子力推進船舶は2030年代にも導入可能になると予測している。IAEAのリーダーシップの下、ATLAS参加国や産業界の間で海事分野における革新的な民生用原子力技術の開発と導入が促進され、あらゆる活動が最高水準の原子力安全、核セキュリティ、および不拡散に根差した協力の継続が期待されている。
- 31 Aug 2026
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シンガポールと中国が原子力協力の覚書を締結
シンガポール貿易産業省(MTI)と中国国家原子能機構(CAEA)は8月17日、中国・北京で原子力技術の平和利用に関する協力覚書を締結した。MTIのS. タン・エネルギー・科学技術担当大臣とCAEAのZ. シャン主任の立会いの下、A. リー・エネルギー・貿易担当事務次官と J. リウ副主任が覚書に署名した。MTIは同覚書締結を、最近の米国、フランス、韓国を含む様々な国際パートナーとの協力と同様、原子力導入の可能性について客観的かつ技術的な評価を行うための自国の能力構築を支援するものと位置付ける。今回、中国と締結した覚書では、能力構築パートナーシップの対象となる主要分野として、原子炉技術の安全性および技術的評価人材育成および専門家の相互訪問市民への啓発、広報、および関与活動原子力安全、保障措置、および核セキュリティー原子力技術の応用を掲げている。シンガポールは、これら海外関係機関との協力による能力構築の取組みを2027年に予定されている国際原子力機関(IAEA)の「統合原子力基盤レビュー(INIR)」フェーズ1ミッションへの準備にも活かす方針である。INIRフェーズ1ミッションでは、将来的な原子力発電導入について「十分な情報に基づいて意思決定できる能力」が国内に整備されているか、能力構築の取組みが正しい方向に進んでいるかを確認するためIAEA専門家が評価する。同ミッションは、原子力導入を決定するための手続きではなく、シンガポールは原子力分野の人材・制度・技術基盤の整備状況を国際的な基準で確認したい考え。国際的に認められた評価フレームワークであるIAEAのマイルストーン・アプローチに基づき、原子力安全規制、放射性廃棄物管理、緊急時対応など19の分野にわたり包括的な評価を受ける。フェーズ1の完了後、安全性、信頼性、経済性、環境の持続可能性を慎重に考慮し、実際に導入を進める場合には、フェーズ2で建設入札を進める準備状況、フェーズ3で初号機を安全に運転できる準備状況についての評価となる。シンガポールが原子力を検討する背景には、電力の約95%を輸入天然ガスに依存し、国土が狭く再生可能エネルギーの拡大余地も限られていること、2050年ネットゼロに向けて安定した低炭素電源が必要なことがある。特に、小型モジュール炉や安全機能が強化された先進炉に注目している。2012年にも原子力導入の技術的可能性が調査されたが、当時の利用可能な原子力技術は同国での展開に適していないと結論付けられた。以後、シンガポールは将来の原子力の技術進歩に備えて能力強化をめざし、IAEAが原子力発電プログラムを確立するために必要とする19の主要分野の能力構築に取組んできている。
- 28 Aug 2026
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NEMS Japan 2026開講 海外14か国と日本から28名が参加
将来の原子力業界を担う人材の育成を目指す研修コース「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2026」が8月19日に開講し、東京大学で開講式が行われた。NEMSは、国際原子力機関(IAEA)が各国・関係機関との協力の下で展開する、若手の原子力専門人材を対象とした研修プログラム。 原子力発電の新規導入・拡大を検討する国などを主な対象に、こうした国々の原子力プログラムを支えるマネジメント・技術能力を高め、将来のリーダー・管理者を育成することを目指す。 日本版 NEMSは、日本原子力人材育成ネットワーク、東京大学、日本原子力研究開発機構(JAEA)、日本原子力産業協会、原子力国際協力センターがIAEAと協力して運営している。日本での開催は今回が14回目となった。日本版NEMSでは、IAEAや国内外の専門家による講義、グループワーク、原子力関連施設の見学を組み合わせ、技術だけでなく、リーダーシップ、組織運営、関係者との対話に必要な能力向上を図る。 テクニカルツアーでは、福島第一原子力発電所の見学を予定し、事故の教訓を踏まえた安全原則を現地で学ぶ機会を設けている。今年は、海外14か国(ブルガリア、チェコ、エストニア、ガーナ、ハンガリー、インドネシア、マレーシア、モンゴル、フィリピン、シンガポール、スロバキア、スロベニア、タイ、ウズベキスタン)および日本から、男性18名、女性10名の計28名が参加した。 研修生は9月3日まで、東京大学本郷キャンパスでの講義やグループワーク、テクニカルツアーを通じ、原子力に関する幅広い課題を学ぶ。各国の原子力事情を共有し、異なる専門分野・背景を持つ参加者が議論することで、修了後も続く国際的な人的ネットワークの構築を促す。開講式では、NEMS2026の実行委員長を務める村上健太・東京大学大学院工学系研究科准教授が研修生を歓迎した。 同氏は、講義内容がIAEA加盟国間で合意された基本原則に基づくものだと説明し、講師に積極的に質問して研修に参加するよう求めた。 特に海外からの参加者には、日本人参加者に先んじて講師に質問を投げかけることにも期待を示した。続いて、日本原子力産業協会の増井秀企理事長が挨拶を行い、 研修を成功させる要素として、プログラム(Program)、人(People)、参加(Participation)の「3つのP」を提示した。 「参加とは教室に座って講義を聞くだけではない」と述べ、発言、質問、互いの見解や経験の共有を呼びかけた。IAEA原子力エネルギー局計画・情報・知識管理部(NEPIK)のファン・ウェイ部長は、NEMSが、技術的知識とマネジメントの間をつなぎ、安全・核セキュリティ・持続可能性を踏まえた原子力プログラムを担う次世代リーダーの育成に重要な役割を果たしてきたと強調。 また、日本政府、東京大学、原子力人材育成ネットワークなど、開催に協力する関係機関への謝意を示し、研修生には主体的に取り組み、互いの経験から学ぶよう期待を寄せた。最後に、上坂充原子力委員会委員長が、日本開催のNEMSはこれまで500人を超える卒業生を送り出してきたと紹介した。 IAEAでの会合や、各国と原子力政策について協議する場で卒業生と出会う機会があると述べ、NEMSのネットワークが各国の政策・技術を担う人材のネットワークへと広がっていると強調した。 研修生に対しては、研修期間中に強固なネットワークを築き、修了後も交流を続けるよう呼びかけた。
- 21 Aug 2026
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第3回国際原子力科学オリンピック 日本代表4選手全員がメダル
サウジアラビア・ジェッダで開催された第3回国際原子力科学オリンピック(INSO2026)で、日本代表として出場した高校生4人全員がメダルを獲得した。8月2日から行われていた大会は、すべてのプログラムを終えた。メダルを獲得したのは、灘高等学校3年の長田知樹さん、麻布高等学校3年の本田弘徽さん、攻玉社高等学校2年の入山哉太さん、広島大学附属高等学校2年の霜崎洸我さん。長田さんと霜崎さんが金メダル、本田さんと入山さんが銅メダルを獲得した。INSOは、IAEAが原子力科学教育の推進を目的に創設した国際大会で、アジア太平洋地域の20歳未満の学生が参加する。日本代表の4選手は、国内選考や大会に向けた研修などを経て、8月1日に開催地のジェッダへ向けて出発していた。日本代表選手団出場支援委員会は9月27日、東京大学本郷キャンパス内で報告会と解団式を開催する予定。
- 10 Aug 2026
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高校生4選手が世界へ挑戦 INSO2026結団式
第3回国際原子力科学オリンピック(INSO2026)サウジアラビア大会に出場する日本代表選手団の結団式・壮行会が7月31日、東京大学で開催された。代表に選ばれた高校生4人に任命状が手渡され、選手団は8月1日に開催地のサウジアラビア・ジェッダへ向けて出発した。INSOは、IAEAが原子力科学教育の推進を目的に創設した国際大会。アジア太平洋地域の20歳未満の学生が参加する。式では、INSO日本代表選手団出場支援委員会委員長の飯本武志先生(東京大学アイソトープ総合センター教授)が大会趣旨を説明。選手団リーダーの角山雄一先生(京都大学環境安全保健機構放射線管理部門准教授)は前回のマレーシア大会の活動成果を、佐藤大樹先生(日本原子力研究開発機構)は代表選手らの大会出場に向けた準備の様子などを報告した。その後、出場する4選手へ任命状が授与された。また、来賓として文部科学省、外務省、千代田テクノル、長瀬ランダウア、関西電力の関係者らが出席し、選手を激励。文部科学省の有林浩二課長(研究開発局原子力課)は、INSOで出題される問題の難易度の高さに触れ、選手らの挑戦を称えた。また、将来的な月面での原子力利用にも言及し、原子力科学の活躍の場が今後さらに広がっていくとの展望を示した。外務省の田中健一郎室長(軍縮不拡散・科学部国際原子力協力室)も、原子力の脱炭素への貢献や、医療・農業分野における放射線利用に触れ、原子力科学への世界的な関心の高まりを強調した。最後に、選手らは一人ひとり大会への抱負を述べ、「4人で金メダルを獲得して帰ってきたい」「世界中の参加者と交流し、新しい知見を得たい」「大会期間中に誕生日を迎えるので、多くの友人をつくりたい」「小学生の頃から興味を持っていた分野で、日本代表として出場できることをうれしく思う」など、それぞれ世界大会への決意を語った。INSO2026は8月2~9日、サウジアラビア・ジェッダで開催され、各国・地域から集まる学生が原子力科学に関する知識や課題解決能力を競う。大会結果は、INSOポータルサイトで随時紹介される予定。
- 03 Aug 2026
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セルビア 新規原子力発電導入のロードマップが明らかに
セルビアのD. ハンダノヴィッチ鉱業・エネルギー相は7月13日、IAEAの支援を受けて開催された原子力計画実施国家機関(NEPIO)の役割と責任に関するワークショップの開会にあたり、2024年11月の原子力発電所建設モラトリアム撤廃後の、本格的な原子力導入に向けた工程を明らかにした。2035年までに同国初の原子力発電所の建設を開始し、2040年以降の運転開始をめざす。同大臣は、セルビアが国際原子力機関(IAEA)の19項目からなる「原子力発電のための国家インフラ開発におけるマイルストーン」アプローチの基準に従い、段階的に原子力プログラムを推進中と紹介。工程では、2027年半ばまでに原子力発電開発の実施可否について判断を下すために必要なすべての情報を揃える、マイルストーン(フェーズ1)の完了を想定。併せて、基本的な法的・規制的枠組みの確立と、原子力プログラムの実施を担う専任機関(NEPIO)を設立し、2032年までに、制度面、規制面、技術面のすべてにおいて準備を整えた上で、炉型の選定を開始(フェーズ2)。2040年以降に同国初となる原子力発電所を導入すべく、2035年までに建設を開始する考えを示した。なお、フランス電力(EDF)が実施した予備的技術調査の結果が2025年7月にセルビア側に提出されている。現在市場にある大型炉や小型モジュール炉(SMR)について、その技術・商業面での成熟度やサプライチェーンの信頼性、国家的ニーズとの整合性などを分析したという。また、最も懸念されていたセルビアの電力システムと原子力施設の統合に問題はないと評価され、2045年以降にはセルビアが電力の純輸出国となる可能性も指摘。なお、原子力プログラムのフェーズ1と2の完了に5~7年を要し、推計約3,000万ユーロ(55億円)が必要になると示されている。鉱業・エネルギー省は、フェーズ1でさらに4件の調査の実施をEDFに依頼し、残りの14件の調査については、他国での原子力プログラムに参画・開発の実績があり、セルビアの原子力プログラムに関心を表明した様々な企業と協議して委託先を検討するとしている。こうした中、セルビア政府は7月29日、EDFとフランス開発庁(AFD)とパートナーシップ協定を締結。AFDは、セルビアの原子力プログラムへの初の支援として50万ユーロ(約9,200万円)の助成金を供与し、フェーズ1と2の実施に係わる原子力人材の育成(行政・規制当局・技術者の能力強化)、安全文化の醸成などを支援する。セルビア政府は、電力需要の増加やエネルギー安全保障、脱炭素化への対応には原子力の活用が不可欠との認識を示しており、国内産業と地域経済の発展や原子力人材の育成に相乗効果を生み出したい考えだ。初となる原子力発電所の建設は、国家戦略「セルビア2035」のインフラ開発計画の中に位置づけられており、約30億ユーロ(5,500億円)が割り当てられている。
- 31 Jul 2026
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原子力白書を公表 「次世代に向けた核燃料サイクルの展望」を特集 原子力委員会
原子力委員会は6月23日、令和7年度版の「原子力白書」を公表した。白書冒頭の「特集」では「次世代に向けた核燃料サイクルの展望」をテーマとし、核燃料サイクルの意義や技術、国内外の動向等が記された。テーマの選定理由について原子力委員会は、エネルギー安全保障への関心の高まりを挙げ、核燃料サイクルの実現は①海外資源への依存度を低減、②高レベル放射性廃棄物の減容化と有害度低減の2つの効果があると強調。原子力委員会は「国民に正しく理解していただくことが重要」と説明した。また、核燃料サイクルに対する国民理解について、「仕組みが複雑で分かりにくい側面がある」と説明。全体像や各工程の役割を理解するには一定の知識が必要であり、今回の白書ではできるだけ平易な表現で情報を整理することを心掛けたという。原子力委員会は、核燃料サイクルの確立はエネルギー安全保障の強化や将来世代の負担軽減につながる重要な取組みであると強調。その上で、安全確保と平和利用を大前提に、国際原子力機関(IAEA)の保障措置や透明性の高い情報発信を通じて国際社会への説明責任を果たしながら、国際協力の下で取組みを着実に進める必要があるとした。また、核燃料サイクルの将来像を見据えた長期的な戦略のもとで研究開発を推進するとともに、人材育成や技術継承を通じてサプライチェーンを含む技術基盤を維持・発展させることの重要性も指摘した。なお、白書の本文は9章立てとなっており、令和7年度の原子力利用を巡る幅広い分野の最新動向を取り上げている。また、15本のコラムを収録し、AI活用、放射線の宇宙利用、STEAM教育など、多様なテーマを紹介。本紙も多く引用されている。
- 26 Jun 2026
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経済産業省とIAEAが協力深化へ SMR導入支援や人材育成で連携
経済産業省は6月23日、国際原子力機関(IAEA)との間で、小型モジュール炉(SMR)を含む原子力エネルギー開発およびキャパシティビルディング(能力構築)に関する協力覚書(MoC)に署名した。署名式には赤沢亮正経済産業大臣とラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長が出席し、原子力分野における協力強化を確認した。両者は今後、SMRなど原子力導入を検討する国々に対するインフラ整備や人材育成などで連携を進める。会談の冒頭、赤沢大臣は、昨年のグロッシー事務局長による柏崎刈羽原子力発電所の視察について言及し、今年4月の同発電所の再稼働が東日本の電力需給の安定化や供給力の強化につながっていると強調。安全性を最優先に既設炉の最大限活用や次世代革新炉の開発、バックエンド対策を進めていく方針をIAEAに説明した。そして、福島第一原子力発電所の廃炉については、ALPS処理水の海洋放出を含め、安全性の確保と丁寧な情報発信を継続していく重要性を強調し、IAEAによる継続的な支援と協力を要請。また、グロッシー事務局長が2023年7月の福島訪問時にALPS処理水について、「最後の一滴まで安全に放出されるまでIAEAは現地にとどまる」と述べたことに触れ、「非常に心強く、印象深い言葉だった」と振り返り、改めて謝意を表した。さらに、六ヶ所再処理工場の竣工に向けた取組みに言及し、国際的な信頼確保に向けて、保障措置体制の強化等、IAEAとの連携を引き続き進めていく考えを表明した。これに対しグロッシー事務局長は、日本との原子力分野における協力関係について「極めて重要で戦略的な意義を持つ」と評価。今回の協力覚書についても、原子力分野の将来に関する共通のビジョンと相互の信頼を反映したものであり、日本だけでなく世界の原子力産業の発展にも資する、との認識を示した。また、福島第一原子力発電所をめぐっては、廃炉作業やALPS処理水の海洋放出に関する日本とIAEAの協力体制を高く評価。「日本政府、経済産業省、東京電力による透明性確保の取組みは国際的な模範となるものだ」とコメントした。
- 24 Jun 2026
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日本代表の舞台裏
国際原子力科学オリンピック(INSO)は、次世代の原子力人材が知識と実践力を競い合う国際大会だ。2025年、日本は初の本格参加でメダル獲得という成果を収めたが、その裏では代表選抜から育成、現地での採点交渉まで、多くの挑戦があった。日本代表の育成を担った京都大学の角山雄一准教授に、INSOの舞台裏と、日本の強み、そして今後の課題について聞いた。
- 22 Jun 2026
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WENRA 原子力商船の規制枠組み整備を提言
西欧原子力規制者協会(WENRA)は5月13日、原子力推進を利用する商船について、各国で一貫した安全審査を可能にする国際的な規制枠組みが必要だとする声明を発表した。国際海事機関(IMO)が「原子力商船の安全コード(Code of Safety for Nuclear Merchant Ships)」の改定に着手する方針を示したことを歓迎しつつ、国際原子力機関(IAEA)との緊密な連携を求めた。同コードは1981年に策定されたもので、当時の主流であった加圧水型炉(PWR)を前提としている。その後、気候変動対策への関心の高まりや、小型モジュール炉(SMR)、高温ガス炉、熔融塩炉など先進炉の開発が進展したことから、現行コードでは新技術への対応が十分ではないとの指摘が出ている。IMOは2025年6月、同コードが時代遅れとなっており、先進的な原子力技術の船舶利用に向けた障害となっているとして、改定を進めることで合意している。一方、IAEAは、商船や浮体式原子力発電所など海上での民生用原子力技術の安全・セキュリティ・保障措置に関する枠組みづくりを目的とした「ATLAS(Atomic Technologies Licensed for Applications at Sea)」プロジェクトを立ち上げる予定。WENRAは、IMOによるコード改定とIAEAのATLASの整合性は不可欠とし、改定後のコードを最新のIAEA安全基準に沿ったものとするよう求めている。WENRAは、海上での原子力利用には、陸上の原子力施設とは異なるリスクが伴うと指摘。特に、開発中の炉型には技術成熟度に差があることから、原子炉設計、安全解析、事業者の能力が十分に成熟していることが確認されない限り、海上利用を認可すべきではないとの考えを示した。そして、商船は国境を越えて運航されるため、各国ごとにばらつきのある規制ではなく、国際的に調和した安全要件の整備が不可欠だとしている。そのうえでWENRAは、IMOに対し、IAEAと連携しながら安全目標を明確化し、各国当局が原子力推進船の航行認可を判断する際に活用できる、包括的で詳細な安全要件をコードに盛り込むよう促した。WENRA加盟国も、それぞれの専門分野でコード改定に協力していく方針を示している。
- 25 May 2026
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日本代表決定 第3回国際原子力科学オリンピック
2026年8月2~9日にサウジアラビアで開催予定の、第3回国際原子力科学オリンピック(INSO:International Nuclear Science Olympiad)に出場する日本代表選手が、4月21日に発表された。選ばれたのは、本田弘徽さん(私立麻布高等学校3年)、入山哉太さん(私立攻玉社高等学校2年)、長田知樹さん(私立灘高等学校3年)、霜崎洸我さん(広島大学附属高等学校2年)の4名。15歳から20歳未満を対象に、大学入学前で、高校または高専の在学生または卒業生という条件の元、出場者が一般公募され、44名の応募があった。その後、日本語と英語を使用した2回の筆記試験と日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)での選手育成合宿を経て、代表選手が決定した。本番の大会で出題される問題は、5時間の理論部門と3.5時間の実験部門で分かれており、原子と原子核の構造、放射線、核分裂と核融合などの基礎のほか、環境、歴史や安全などの応用も含む幅広い分野が出題される。実験部門の多くは模擬実験形式で提示され、実験の実施そのもののほか、データ解析に関する理解も試される。設問は高等学校で学ぶ数学や物理を軸としつつ、「到達可能だが高難度」というバランスが重要視されている。INSOは国際原子力機関(IAEA)が企画し、2024年から始まった試み。単なる競技の場を超えた、アジア太平洋地域の原子力科学技術分野の人材育成に重要なものと位置付けられている。今大会には25か国から約100名が参加する見込み。昨年7月に行われた第2回大会では、日本代表4名全員がメダルを獲得した。
- 21 May 2026
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IAEA ALPS処理水放出の安全性を改めて確認 6回目の安全性レビュー
国際原子力機関(IAEA)は16日、ALPS処理水の海洋放出について、国際安全基準に沿って実施されていることを確認したと発表した。安全性レビューは5月11日から15日にかけて実施され、今回で6回目。過去5回の報告と同様、今回も問題は指摘されなかった。レビュー期間中、日本政府や福島県、東京電力は、発電所構内および周辺海域で実施しているモニタリングの概要や実績について説明した。IAEAタスクフォースは、これらが国際安全基準と整合しているかを中心に議論を行った。また、5月13日には、IAEAタスクフォースが福島第一原子力発電所を訪問し、発電所構内の「ブルーデッキ」から廃炉作業の進捗状況を確認したほか、ALPS処理水移送建屋や放水立坑など、ALPS処理水の海洋放出に関連するモニタリング設備を視察。さらに、タンク解体が進むエリアの現場確認も行ったという。安全性レビューは、2021年に日本政府とIAEAの間で署名された「ALPS処理水の取扱いの安全面のレビューに関する付託事項(TOR)」に基づき実施されている。IAEAは、自ら定める「IAEA安全基準」に則り、人と環境の保護の観点から、ALPS処理水の放出計画やモニタリング体制などについて確認・評価を実施している。こうしたレビューを通じ、IAEAタスクフォースは、海洋放出の安全性や透明性に関する国際社会の理解醸成に向けた役割を担っている。日本政府は、ALPS処理水の海洋放出について国際社会の理解を得る上で、IAEAによる独立したレビューが重要との認識を改めて示した。その上で、今後も中立性を重視するIAEAと緊密に連携しながら、ALPS処理水の海洋放出に関する理解醸成に取り組んでいく考えを強調した。
- 20 May 2026
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10年ぶりのIRRSミッション報告書を公開 規制体制を評価
原子力規制委員会は5月13日、今年1月26日から2月6日に行われた、IAEAによる総合規制評価サービス(IRRS)ミッションの報告書を公開した。日本では2016年にIRRSミッション、2020年にそのフォローアップ・ミッションが実施され、今回はおよそ10年ぶりの実施となる。報告書で日本の規制の枠組みは、包括的で堅固と評され、IAEAの安全基準との高い整合性が確認された。規制委が実施する緊急事態への準備及び対応訓練の評価が良好事例として挙げられた。その一方、改善のための24件の勧告、19件の提言が示された。原子力規制委員会の、独立性、人材計画および戦略、内部監査、マネジメントシステムなどが勧告の対象となった。更に、グレーデッドアプローチ(リスクや重要度に応じて規制の厳しさを調整する)を規制プロセス全体に適用することで、規制システムの全体、特に許認可プロセスの実効性を高められると指摘した。また、5月14日に行われた、全国原子力発電所所在市町村協議会の年次総会に原子力規制庁の児嶋洋平次長が登壇。今回のIRRSミッションでの勧告に触れ、提言を踏まえて、規制委は安全のレベルを下げることなく、グレーデッドアプローチに基づく規制制度の改善に取り組むと述べた。IRRSは、IAEAが加盟国の要請に基づき原子力利用の安全確保に向け実施しているレビューサービスの一つ。専門家で構成されるレビューチームにより、対象国の原子力規制に関し、その許認可・検査に係る法制度、関係組織も含む幅広い課題について、規制当局や被規制者へのインタビュー、原子力施設への訪問などを通じた総合的レビューを実施し助言・勧告を行う。今回のチームは18名の専門家と5名のIAEAスタッフからなり、日本の原子力及び放射線安全に関する政府、法的、及び規制の枠組みをレビューした。レビュー範囲は、政府の責任と機能、規制機関の責任と機能、許認可など多岐に渡り、11の項目にまとめられた。なお報告書は、ミッション期間中に実施された政策に関する議論を含む12項目で構成されている。
- 19 May 2026
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IAEA ALPS処理水の「第6回安全性レビュー」を開始
国際原子力機関(IAEA)の職員と専門家で構成されるIAEAタスクフォース※1がこのほど来日し、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に関する安全性及び規制面のレビュー(安全性レビュー)を、5月11日に開始した。また、同日、外務省にてオープニングセッションが開かれ、日本側から、外務省、原子力規制委員会、経済産業省、東京電力の関係者が出席した。安全性レビューは5日間の日程で実施され、今回はALPS処理水に関連するモニタリング活動に重点を置いたレビューが行われるという。2023年8月のALPS処理水の海洋放出開始後、IAEAタスクフォースによる「安全性レビュー」はすでに5回(2023年10月、2024年4月、2024年12月、2025年5月、2025年12月)実施されており、今回で6回目となった。オープニングセッションでは冒頭、外務省の松本恭典氏(軍縮不拡散・科学部審議官)が、「ALPS処理水の海洋放出が安全かつ着実に進められていることを、大変心強く感じている。また、IAEAが中立的かつ客観的な立場で継続的にレビュー活動を実施していることに対し、深く感謝申し上げる」と述べ、改めて謝意を表明した。また、経済産業省の宮﨑貴哉氏(大臣官房福島復興推進グループ原子力事故災害対処審議官)は、今後もIAEAによる同レビューを通じ、国際安全基準に沿ったALPS処理水海洋放出の安全確保に万全を期す考えを改めて表明。あわせて、IAEAと連携しつつ、国内外に向けた透明性の高い情報発信を継続し、理解促進に努めていく方針を示した。東京電力の佐藤学執行役員は、「2023年8月以降、計19回のALPS処理水放出を実施してきたが、いずれも安全かつ計画通りに進めてきた」と説明。また、IAEAによる同レビュー活動に加え、SNSを通じた情報発信や、IAEA常駐検査官・職員による監視活動が「透明性向上につながっている」と述べた上で、客観性と透明性の維持に向け、今後も常に改善に努めていく姿勢を強調した。同レビューを総括しているIAEAのグスタヴォ・カルーソ調整官は、今後もIAEAがALPS処理水の放出に関する独立した監視機関の中心的役割を担うと説明。モナコやオーストリア・ザイバースドルフ、ウィーンのIAEA環境研究所およびIAEA福島ALPSラボにおいて、各種試料(処理水、希釈水、海洋環境サンプルなど)に関する分析、検証を継続し、分析・検証結果を国内外へと発信すると述べた。またカルーソ調整官によると、2025年から海洋環境、地下水、気象条件に関する追加モニタリングも開始しており、2026年には追加措置プログラムも本格化すると説明した。カルーソ調整官は、「IAEAは今後も、独立性、科学的根拠、透明性に基づくモニタリングを継続していく」と述べた上で、福島で行われているALPS処理水の放出が関連するすべての国際安全基準と整合していることを、引き続き検証していく考えを示した。※1 IAEAタスクフォースには、IAEAからは独立した立場で参加するアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、英国、米国、ベトナム出身の11名の専門家が含まれる
- 13 May 2026
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