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原文財団「原子力に関する世論調査」2025年度版を公表
日本原子力文化財団(原文財団)は3月23日、2025年10月に実施した「原子力に関する世論調査」の結果を公表。原子力に対する肯定的評価は2018年度以降おおむね横ばいで推移している一方で、否定的イメージは2017年度以降、低下傾向が続いていることが分かった。また「信頼できない」との回答も減少し、福島第一原子力発電所事故前と同水準(12.0%)まで回復した。同調査は、全国の15〜79歳の男女1200人を対象に実施。2006年度から同一手法で継続している全国規模の調査で、今回で19回目。世論調査を経年的・定点的に実施し、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握し、原子力に関する知識普及活動のあり方などを検討するのが目的だ。エネルギー政策や社会動向の変化に対応するため、適宜新たな設問の追加や内容の見直しを行い、継続性と時勢の変化への対応の両立を図っている。なお、原文財団のウェブサイトでは、2010年度以降の報告書データを全て公開している。例年通り同調査は、原子力や放射線に対するイメージ、関心、情報保有量、信頼、再稼働や利用に対する考え方など多岐にわたる項目で構成されているが、今年度はいくつかの新設項目が追加された。具体的には、「今後の原子力発電の利用に対する考え」といった将来のエネルギー選択に関する設問や、「核燃料サイクル・バックエンドに関する情報保有量」など、より専門的な領域に踏み込んだ設問がその例で、最新の世論動向を的確に把握できる設計となった。同調査によると2025年度に、最も関心が高かった原子力/エネルギー関連ニュースは「地球温暖化」で、70.3%に上った。これに「電気料金の値上げ」(56.4%)、「自然災害による停電」(53.9%)、「電力不足」(48.3%)が続いた。さらに「巨大地震・津波と原子力」(37.8%)、「ロシア情勢などとエネルギー安定供給」(33.8%)、「再生可能エネルギー拡大の影響」(33.1%)といった項目が上位に並び、「暮らしに直接的に影響する可能性」が高いテーマとなった。一方、原子力業界に関する個別テーマへの関心は相対的に低く、「女川原子力発電所の再稼働」が13.9%、「AI普及に伴う電力需要増加」が11.4%、「原子力発電所のリプレース」が10.8%、「第7次エネルギー基本計画」が4.5%にとどまった。経年で見た場合、「暮らしに影響を与える身近なニュース」に対する関心は低下傾向にあるものの、生活に密接に関わるテーマへの関心の高さと、業界個別テーマとの間に乖離がある実態が浮き彫りとなった。また、今後の原子力発電の利用に関する意識では、「使っていく」「どちらかといえば使っていく」を合わせた肯定的意見が42.0%、「やめていく」「どちらかといえばやめていく」を合わせた否定的意見が35.0%となり、肯定的意見がやや上回った。また、「わからない」は22.6%だった。属性別では、男性で肯定的意見が多く、女性では否定的意見が多い傾向が見られた。年齢別では25〜44歳で肯定的意見が比較的高い一方、24歳以下では「わからない」とする回答が目立った。また、原子力に関する情報保有量が多い層ほど肯定的意見が多く、保有量が少ない層では「わからない」とする割合が高い傾向が確認されるなど、情報量の差が意識形成に影響を与えている実態が浮き彫りとなった。また、経年変化では、再稼働に対する不安を背景とした否定的選択肢は減少傾向にあり、必要性や規制基準への適合といった観点から再稼働を評価する動きが増加しているが、「原子力発電をやめていく」とする層ほど、「災害対策」や「防災体制」、「大事故への不安」、「高レベル放射性廃棄物」、「福島第一原子力発電所の廃炉」といった項目に強い関心を示している。特に、高レベル放射性廃棄物への懸念が顕著となっていることがわかった。これらの結果から、再稼働に対する理解を得るためには、不安や否定的認識に関わる項目に対する情報提供の充実が重要であることが示唆された。原文財団では継続的な調査を通じて原子力を巡る社会認識の変化を把握し、今後の情報発信の在り方の検討に生かす考えだ。
- 25 Mar 2026
- NEWS
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去り行く「よそ者」の意味
2011年の原子力災害から15年が経ちました。相馬市に居住していた4年間も含めた10年以上もの間、私は「よそ者」として福島県相双地区と関わり続けています。ここでいうよそ者というのは、コミュニティから疎外される者、というネガティブな意味ではありません。むしろあるコミュニティにコミットしながら良くも悪くも地域に染まらない・あるいは染まれない者という意味合いと考えていただければと思います。このようなよそ者はコミュニティとの距離感が日々変化し続ける存在とも言えます。そんな自由度を持った彼らは、コミュニティに何かをもたらすだけでなく、その地域から去ることにも大きな意味があるのではないか。この15年の経験を経て、そう感じています。よそ者への期待と差別災害後の被災地では、よそ者に寄せられる期待は平時以上に大きいように思います。先行きを見失った被災地では、現状を打破するための「何か」を強く待ちわびているからです。被災地を訪れる方々もまた、その期待に応えるべく、異文化や新しい視野をもたらそうと一生懸命努力される方が多いと思います。しかしそれは一方で、コミュニティへの貢献度によって来訪者に優劣をつけるかのような風潮も生みえます。この10年あまりの間に、私と同じような多くのよそ者が福島を訪れ、そして去っていきました。その中には「自分は貢献できなかった」「感謝を得られなかった」「地域に染まれなかった」という後悔や失望を抱えながら被災地を去った方も少なくありません。ではその方々の来訪は、地域にとって意味がなかったのでしょうか。私は、被災地への訪問者には必ずしも善意や志や技能が必要だと思いません。なぜなら災害後には、コミュニティにとっての「非自己」であるよそ者がいること自体に必要性があるからです。そしてその方々が「非自己」のまま立ち去ることもまた、復興のためには意味があるのだ、と思います。災害時の心理と他者の存在発災の衝撃が抜けた後、被災者の心理状態は以下のように移り変わるといわれています。自己犠牲的に他者を助けようとする「英雄期・ヒロイック期」ボランティアや公的支援に感謝し、他者との連帯感が生まれる「ハネムーン期」過労と復興の停滞、記憶の風化により社会の負の側面が顕在化する「幻滅期」災害前には戻らないという事実を受容し、真の意味の復興が始まる「再建期」特に福島県浜通りでは、地震・津波災害、原子力発電所事故、大量避難、風評被害など、それぞれの事象ごとにこの心理が循環したため、再建期に至るまでのフェーズに大きな格差が生じ、混沌とした状態でした。振り返ってみれば、この格差は主に、「身近にどれだけ他者がいたか」にかかっていたように思います。というのも、再建期に至るまでの3つのフェーズにおいて、地域の人々の幸・不幸は多分に他者の存在に依存しているからです。たとえば英雄期の自己犠牲には救うべき他者だけでなく、その英雄的行為を観察してくれる明確な他者が必要です。「ハネムーン期」の幸福感もまた、自分(たち)が本来関わることのなかった他人に忘れられていない、支えられている、という点に満足感があります。そこで生じた過剰な期待と同調圧力が負の方向へ働けば、分断を生み、その後の他者への幻滅期へと移行するといえるでしょう。福島県において、よそ者と関わり続けてきた人や地域ほど復興が早かったのはこの為ではないかと思います。よそ者がもたらす安定そう考えれば、幻滅期に幻滅されることは、その対象となる人の責任ではなく、コミュニティが復興期に移るための自浄作用であると言えるのではないでしょうか。同じような自浄作用は、ハネムーン期がなくとも起きえます。人は災害時のモヤモヤ感やイライラ感を他者の中に押し込め、自己の日常を守ろうとするからです。たとえば関東大震災後の異国人の排斥や原子力発電所事故後の「フクシマ」差別など、自分以外の人間に「諸悪の根源」のレッテルを貼り、強力に排斥しようとする心理は、上に示す「英雄期」「ハネムーン期」の裏返しといえるでしょう。いずれにおいても攻撃の対象となった方々に何か落ち度があったわけではないのです。ではなぜそこによそ者が関わる必要があるのでしょうか。期待にしても、幻滅にしても、もしその対象がコミュニティの中の誰かであった場合、「幻滅期」「再建期」には村八分状態が生じる可能性があります。このためにいずれ排斥されうる英雄はコミュニティの外にあることが望ましい、という心理が、コミュニティの中で無意識に働いているのかもしれません。つまり、いざというときに「形代(かたしろ)」として排除することが可能なよそ者は、外から刺激を与える者であると同時に被災地の心理的安定のバッファーとしても存在しうるのではないでしょうか。多くの人類学者が「まれびと論」「周辺論」などで述べていることですが、それは被災地のよそ者にも当てはまるのではないか──それが10年あまりの福島を見てきた私の感想です。離れて行った方々へもちろん災害時に必ずよそ者が去らなければならないわけではありません。コミュニティに溶け込んだ方や、重要な職に就いた方々もたくさんいらっしゃいますし、私のように長々とよそ者を続けている人間もいるでしょう。それでも、被災地に関わり、「何もできなかった」「最後に決裂してしまった」と去っていった方々もまた、被災地にとって必要だった──そのことを、これまでに被災地を去っていかれた方々、これから被災地に関わる方々に改めて知っていただきたいと切に願います。
- 25 Mar 2026
- COLUMN
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2045年まで19年
福島第一原子力発電所事故の除染作業により発生した土壌を「除去土壌(復興再生土)」と呼ぶ。除去土壌の総量は1,400万㎥で、東京ドーム11杯分超の容量だ。2045年3月までに福島県外で最終処分することが決まっているが、その場所はまだ決まっていないのが実情である。県外での最終処分に向けては、除去土壌等のボリュームを減らすこと(減容化)が重要となる。減容化の方法としては、放射能濃度が比較的低い除去土壌等を道路整備等で盛土(下地材)として利用することなどが挙げられる。除去土壌等の約4分の3を占める8,000ベクレル/kg以下の土に関しては、再利用できると考えられている。
- 10 Mar 2026
- STUDY
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規制委 山中委員長が川内原子力発電所を視察 地元首長らと意見交換
原子力規制委員会の山中伸介委員長は2月14日、九州電力川内原子力発電所を視察。その後、同発電所の近隣9市町村の首長や九州電力関係者との意見交換会に臨んだ。山中委員長は冒頭、同日午前中に同発電所の特定重大事故等対処施設や緊急時対策棟、および乾式貯蔵施設の建設予定地を視察したと説明。そして、現場での実際の運用状況や職員の業務の様子を確認したとし、「重大事故への対策が整ったことを改めて確認できた」と述べ、堅牢な施設の完成により「安全性が向上した」との受け止めを示した。さらに、川内原子力発電所の立地について、「非常にフラットでゆったりとした敷地に建設されており、自然ハザードに対する備えも行き届いている」との認識を示した。また、同行した規制委の神田玲子委員は、「特定重大事故等対処施設についてこれまで議論を重ね、学んできたが、実物を目の当たりにすることで、その大きさや堅牢さ、各種設備の状況を実感することができた」と語った。一方、鹿児島県の塩田康一知事は、山中委員長らに対し同発電所1号機(PWR、89.0万kWe)が2024年7月4日から、2号機(同上)が2025年11月28日から運転開始後40年を超える期間に入っていることに言及。県としては常に事故の発生を念頭に置き、「県民の生命と暮らしを守る観点から、安全対策・防災対策の充実強化に取り組んでいく」と述べた。そのうえで塩田知事は、規制委員会に対し以下の6項目を要請した。 ①乾式貯蔵施設昨年10月、九州電力が川内原子力発電所の使用済み燃料乾式貯蔵施設の設置に係る原子炉設置変更許可を申請したことに触れ、規制委による厳格な審査を求めたほか、県民に分かりやすい情報発信を行うよう要請した。②六ヶ所再処理工場川内原子力発電所の乾式貯蔵施設は、青森県六ケ所村の再処理工場へ搬出するまでの間の一時貯蔵施設の役割を担っているが、六ヶ所再処理工場の稼働延期が続き、現在も規制委の審査が行われていることから、着実な審査と分かりやすい状況説明を求めるとともに、今後の見通しについても説明を求めた。③運転期間延長2023年7月に鹿児島県が規制委に提出した10項目の要請について、県の原子力専門委員会で規制庁から対応状況の説明を受けているが、継続的な取り組みや将来の知見拡充に関する事項が多いとして、今後も対応を継続し、その内容を県民に分かりやすく説明するよう求めた。④屋内退避の運用昨年、一部改正された原子力災害対策指針において、屋内退避中でも生活維持に必要な範囲での一時外出や、民間事業者の活動が可能とされた点に言及し、引き続き分かりやすい情報発信と説明を求めた。⑤次世代革新炉設計段階から新たな安全メカニズムを組み込む次世代型の革新軽水炉について、今後の規制上の取り扱いに関する見通しを問い合わせた。⑥中部電力の不正行為への対応中部電力浜岡原子力発電所の基準地震動策定に関する不正行為について「安全・安心の観点から大変遺憾」と述べたうえで、原子力施設の安全確保に一義的責任を負うのは事業者であるとしながらも。規制委に対しても安全規制に万全を期すよう求めた。 要請を受けて山中委員長は、乾式貯蔵施設については、既に他の発電所で実績のある堅牢な方式であり、リスクの小さい施設と説明。規制側の審査実績も多く、「特段大きな懸念はない」としつつ、住民への丁寧な説明に応じる考えを示した。六ヶ所再処理工場の審査状況について、現在は設工認審査(分割二回目)の最終段階に来ており、今後、保安規定の審査や事業者・規制側それぞれの使用前検査などを経て稼働に至ると説明。なお、同工場の稼働の正式な時期は明確にしていない。同発電所1・2号機の40年超運転については、10年ごとに劣化状況を確認する長期施設管理計画制度の下で、40年運転から50年運転までの基準適合性を確認済みと説明した。そして、屋内退避の運用については、継続判断を「概ね3日目」に行う方針を示し、原子力災害対策指針は改定済みだが、より具体的な運用方策を示す関連文書について、近く発行する予定だという。また、次世代革新炉(規制側は建替原子炉と表現)については、ATENA(原子力エネルギー協議会)と規制上の取り扱いや課題整理を進めており、建替原子炉の申請があれば迅速に審査できる体制を整えるとコメント。また、中部電力のデータ不正については「極めて深刻」と指摘し、再発防止策の強化に取り組む考えを示した。また、同発電所が立地する薩摩川内市の田中良二市長は、原子力発電所の立地自治体として規制委と直接、意見交換できることは「市民の安全・安心の醸成において極めて重要」と評価。そのうえで、両機の40年超運転、そして昨年10月、九州電力が使用済み燃料の乾式貯蔵施設設置に関する原子炉設置変更許可を申請したことに触れ、「市民の関心は非常に高い」と述べた。特に乾式貯蔵施設については、安全性や審査状況に関する丁寧で分かりやすい説明を求めるとともに、審査体制の強化と高い独立性・透明性の確保を要望した。さらに、2月7日に実施された県の原子力防災訓練にも言及し、防災体制の不断の見直しと改善が不可欠だと強調。事故やトラブル時の迅速な情報共有を含め、継続的な助言を求めた。また、いちき串木野市の中屋謙治市長からは、川内原子力発電所のすぐ南に同市が位置するため、冬場の季節風が強い時期に発電所で事故があった際、立地する薩摩川内市よりも被害が大きいのではないかと懸念する住民が一定数いることを明かし、規制委による専門的・科学的見地に基づく厳格な審査が何より重要だとコメントした。その他、電源三法交付金制度について「立地自治体に極めて偏った制度ではないか」との認識を示し、市民が納得していない状況が見受けられると述べた。その他、阿久根市の西平良将市長からも、地域の防災拠点や避難経路の整備、また、電源三法交付金の増額など財政的な支援が要望され、いちき串木野市の中屋市長同様、同件すべてが規制委の所管でないことを理解しながらも、立地自治体が置かれている現状や課題について理解を深めてほしい旨が伝えられた。
- 02 Mar 2026
- NEWS
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柏崎刈羽6号機 原子炉を起動 臨界を確認
東京電力は2月9日、柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)の再稼働に向け、午後2時に制御棒を引き抜き、原子炉を起動したと発表。そして、午後3時過ぎ、臨界を達成した。現在作業中の工程は原子炉起動・昇圧の段階にあたる。この後、タービン起動・発電機並列を経て、一度「中間停止」を挟み、再び原子炉起動・昇圧の工程から再開する。中間停止をする理由について同社は、前半(出力が20〜50%)の試験で得られたデータやプラントの挙動を、一旦詳細に評価・確認するためだとしている。連続して出力を上げるのではなく、一度原子炉を停止して慎重に評価を行うことで、更なる安全性を確認してから、定格出力(後半)工程へ進む計画だ。同社は総合負荷性能検査を3月18日に予定。同検査に合格後、営業運転を開始する。
- 09 Feb 2026
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岩手県一関市で除染土の埋め立て工事が開始 岩手県内で初
岩手県一関市は1月8日、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の影響を低減するための除染作業で発生した、除去土壌(以下:除染土)の埋め立て処分工事を開始した。除染土の埋め立ては、岩手県内で初の事例となる。一関市ではこれまで、公園、スポーツ施設、教育施設など公共施設366か所の敷地内に除染土を埋設保管してきた。しかし2025年3月、国が「福島県外における除去土壌の埋立処分に係るガイドライン」を策定したことを受け、同市は同ガイドラインに基づき、除染土を恒久的に埋め立て処分する方針を決定。昨年12月には、市のウェブサイトで工事の実施概要を公表していた。今回の埋め立て処分では、市内の花泉運動公園多目的競技場と室根支所資材置場の2か所を処分場所に指定。工期は2026年3月まで、事業費は544万円(2025年度)とされている。来年度以降は、教育施設など子どもが日常的に利用する施設から優先的に、除染土の移動と処分を進める方針だ。除染土をめぐっては、2025年7月、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で保管されていた除染土が、首相官邸の前庭や霞が関の省庁敷地内の花壇などで再利用され、社会的な関心を集めた経緯がある。国が定めた同ガイドラインでは、福島県外で発生した放射性セシウム濃度が比較的低い除染土については、地下水汚染防止の観点から、容器への封入や遮水工といった特別な対策は原則不要とされている。一方で、埋め立て作業中の粉塵の飛散や流出を防ぐため、散水やシート養生などの抑制措置を講じることが求められるほか、悪臭、騒音、振動によって周辺の生活環境に影響が生じないよう配慮することも規定されている。また、埋め立て場所には囲いを設け、除染土の埋め立て場所であることを明示する表示を行う必要がある。作業終了後は、開口部をおおむね30センチ以上の土壌などで覆って閉鎖するとともに、敷地境界で空間線量率を定期的に測定し、除染土の量や放射能濃度などの記録を作成・保存することが義務付けられている。
- 13 Jan 2026
- NEWS
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“脳みそを他人に渡さない”
「自分で脳みそを使っていないと、専門家のせいにする」。福井南高等学校(福井県福井市)の教室に静かに響いた一言に、生徒たちは一瞬息をのんだ。2025年10月29日、同校で開かれた特別授業「災害とリスクに強くなるための放射線の知識」である。講師は、医師であり本紙のコラムニストでもある越智小枝氏。放射線を入り口に、災害や情報の不確実性とどう向き合うかを問う90分間となった。
- 07 Nov 2025
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柏崎刈羽6号 今月中に技術的な準備が整う見込み
東京電力柏崎刈羽原子力発電所の稲垣武之所長は10月23日の定例会見で、柏崎刈羽原子力発電所6号機(ABWR、135.6万kWe)で実施されている健全性確認が、早ければ今月中に完了する見通しだと発表した。健全性確認とは、燃料装荷を行った後、主に「止める」「冷やす」「閉じ込める」機能に問題がないか、また、正しい位置に配置されているか等を確認するもの。今後実施される原子炉建屋気密性能検査を経て、同6号機は技術的に再稼働ができる状態が整う。6号機は今年6月に燃料装荷を開始。同月中に、使用済み燃料プールにあった872体の燃料を、すべて装荷した。今月17日には、全ての制御棒についての「制御棒駆動機構の機能確認」を実施した。一方、同23日、新潟県の花角英世知事は定例記者会見で、同発電所の再稼働に関する県民意識調査について、インターネットで追加調査を実施する方針を示した。再稼働を巡って新潟県は、今年6月から8月末にかけて、県内5か所で県民公聴会を実施しているほか、9月には1万2千人を対象に意識調査を実施している。花角知事は「UPZ(緊急防護措置を準備する区域)全体の意見傾向をより丁寧に見るべきだ」という議会での意見を受け、「UPZ全体の傾向を把握するためには、サンプルの取り方を変更し、人口に比例した調査を行う必要があるため、現在、実務的に調査の設計準備を進めている。インターネット調査のためそれほど時間はかからないだろう」と述べた。
- 24 Oct 2025
- NEWS
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第2回日中原子力産業セミナーを開催 福島県と茨城県への視察も
日本原子力産業協会は9月25日、中国核能行業協会(CNEA)と共催で「第2回日中原子力産業セミナー」を7年ぶりに対面で開催した。中国からは、CNEA、中国核工業集団有限公司、中国広核集団有限公司、中国華能集団有限公司、香港核電投資有限公司、清華大学など関連企業・機関から16名が参加。日本からは、日本原子力産業協会、日本原子力発電、電気事業連合会など、関連企業・機関から43名(オンライン傍聴を含む)が参加した。同セミナーでは「原子力発電所の運転および新規建設」をテーマに、両国の原子力産業界がそれぞれ知見を共有し、対話を通じて一層の交流促進と協業の可能性を探った。特に、中国で次々と進められる新規建設プロジェクトに関する実践的な知見について、日本側の参加者から「多くの学びを得られた」との声が上がった。また、中国の訪問団一行は、日本滞在中に、福島県および茨城県内にある複数の原子力関連機関・施設を訪問した。福島県の東日本大震災・原子力災害伝承館、東京電力廃炉資料館への視察では、東日本大震災の発生から今日に至る復興への取り組みについて、映像や展示物を通じて説明があり、関係者との質疑を通じて現状理解を深める場が設けられた。東京電力福島第一原子力発電所構内の視察では、バスから乾式キャスク仮保管設備や多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水を保管するタンクなどを見学し、その後、展望デッキにて1~4号機の廃炉作業、さらに、ALPS処理水のサンプルを用いた海洋放出に関する説明が行われた。参加者からは、発電所構内での作業員の安全確保や放射線管理、今後の解体工程などに関する質問が多く寄せられ、現場の細部に至るまで強い関心が示された。福島県の日本原子力研究開発機構(JAEA)楢葉遠隔技術開発センターへの視察では、同センターの設立の経緯や役割、国内外の機関との連携実績や技術実証事例についての紹介があった。そして、VR/AR技術を活用したシステムのデモンストレーションの実施、施設内の試験棟の視察が行われ、関係者との質疑応答の時間には、将来的な技術交流の可能性に関する話があがった。茨城県のJAEA原子力科学研究所の視察では、世界最大級の加速器施設として幅広い研究に利用されているJ-PARCの見学、また、中性子利用研究の中核拠点であるJRR-3の見学が実施された。それぞれの施設の運用体制や、各分野への活用・応用事例が示され、中国出身の研究者による中国語での解説を交えた活発な質疑応答が行われた。〈詳細はこちら〉
- 14 Oct 2025
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エネ庁 革新炉ワーキンググループを1年ぶりに開催
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(以下WG、座長=斉藤拓巳・東京大学大学院工学系研究科教授)が10月3日、約1年ぶりに開催され、次世代革新炉の開発の道筋の具体化に向けた議論が行われた。前回のWG開催後に策定された第7次エネルギー基本計画では、原子力を脱炭素電源として活用することが明記され、次世代革新炉(革新軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合)の研究開発を進める必要性が示された。今回のWGでは、実用化が間もなく見込まれる革新軽水炉と小型軽水炉に焦点を当てた議論が行われ、開発を進める各メーカー(三菱重工・日立GEベルノバニュークリアエナジー・東芝エネルギーシステムズ・日揮グローバル・IHI)から、安全性への取り組み、技術の進捗、今後の見通しなどの説明があった。三菱重工のSRZ-1200は、基本設計がおおむね完了しており、立地サイトが決まれば詳細設計に進む段階で、すでに原子力規制庁との意見交換も5回実施済み。規制の予見性向上に取り組んでいるとの報告があった。日立GEベルノバニュークリアエナジーからは、開発中の大型革新軽水炉HI-ABWRや小型軽水炉BWRX-300の説明があり、特にBWRX-300はカナダのオンタリオ州で建設が決定しているほか、米国やヨーロッパでも導入・許認可取得に向けた動きがあると述べた。東芝エネルギーシステムズは、開発中の革新軽水炉iBRに関して、頑健な建屋と静的安全システムの採用で更なる安全性向上を進めながら、設備・建屋の合理化を進め早期建設の実現を目指すと強調した。IHIと日揮ホールディングスは、米国のNuScale社が開発中の小型モジュール炉(SMR)について、米国では設計認証を取得し、ルーマニアで建設に向けた基本設計業務が進められていると伝えられた。両社は、経済産業省の補助事業を活用し、原子炉建屋のモジュール化や要求事項管理、大型機器の溶接技術、耐震化などの技術開発に取り組んでいるという。その後、参加した委員から多くの期待感が示されたが、同時に課題点の指摘があった。例えば、革新炉開発の技術ロードマップの定期的な見直しの必要性や、日本特有の自然条件への適合に関する議論の進展、また、各社が進める新型炉の開発状況に応じた規制要件や許認可プロセスの予見性向上の必要性など挙げられた。また、エネルギー安全保障の観点や立地地域との信頼の醸成など技術開発以外で取り組むべき事項についても意見があった。産業界の立場から参加している大野薫専門委員(日本原子力産業協会)は、ロードマップには技術開発だけでなく、投資判断の際に重視される事業環境整備やサプライチェーン、人材の維持・強化についても明示的に盛り込むよう要望。また、環境影響評価や設置許可などの行政手続きについては、標準的なタイムラインの提示が必要だと指摘した。 小型軽水炉のロードマップに関しては、国内での開発動向や新たな知見を反映したアップデートに加え、日本企業が参画する海外の小型軽水炉プロジェクトの導入可能性も視野に、ロードマップで取り上げることを提案。またGX関連支援では、革新技術だけでなく、サプライチェーンを支える製造基盤の維持に対する支援継続も不可欠と訴えた。
- 07 Oct 2025
- NEWS
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原子力小委 電力需給を見据えた将来像を議論
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長)が10月1日に開催され、第7次エネルギー基本計画を踏まえた原子力発電の将来像と見通しが議論された。同委員会では、次世代革新炉の動向や立地地域との共生、燃料サイクル、サプライチェーン・人材確保、国際動向などさまざまな課題が示され、委員から幅広い意見が出された。特に、電気事業連合会(電事連)がまとめた資料には、運転期間60年を前提とした場合、2030年代半ば以降に廃止措置に入る原子炉が増えるため、2040年代に約550万kWのリプレースが必要との試算が示され(既報)、これを中長期議論の出発点とすべきといった提案がなされた。黒﨑委員長は、脱炭素電源不足を避けるため将来像を提示する意義を強調し、定量的見通しの重要性、そして、電事連が示した試算を議論の出発点とする妥当性を確認した。他の委員からも、「リプレースに必要なリードタイムを考慮すると、時間的な猶予はあまりないため早期に議論に着手すべき」との声や「2040年以降のシナリオも、海外事例を参考に、政府と産業界が共同で計画を検討すべきだ」との声が上がった。この試算について多くの委員が支持した一方で、電力需要の伸び方など、DXやGXの進展次第で大きく変わる不確実性を考慮し複数シナリオを提示する必要性や、安全文化の確立、規制の予見性向上に関する指摘があがった。専門委員として出席している日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、電事連が示したリプレースに関する試算について「電力需要の見通しと原子力比率に基づいた試算であり穏当と受け止めた」と評価し、国が将来像を策定するに当たって、「中期・長期の二段階で見通しを提示すべき」との意見を示した。また、原子力産業の基盤維持・強化の取組みに関して、①原子力産業への就業確保②産業内での人材定着③シニアの活用、の3点を挙げ、原子力産業界全体の生産性向上に向け、省人化技術を積極的に活用することの重要性を訴えた。また、これらの課題について、「産官学の協力が必須であり、協会としても当事者意識をもってしっかり取り組みたい」と意欲を示した。〈発言内容はこちら〉
- 03 Oct 2025
- NEWS
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増井理事長会見 IAEA総会や原子力産業セミナー2027など紹介
日本原子力産業協会の増井秀企理事長は9月26日、定例の記者会見を行い、「第69回IAEA総会」と「第3回新しい原子力へのロードマップ会議」への参加報告や原子力産業セミナー2027東京会場の速報、また、記者からの質疑に応じた。 増井理事長はまず、第69回IAEA総会に参加し、IAEAの幹部ら(ラファエル・グロッシー事務局長、ミカエル・チュダコフ事務局次長)と面会したことや、日本ブースの展示を政府や民間関係機関と共同で取りまとめたことについての所感を述べた。 グロッシー事務局長との面会においては、ALPS処理水放出や福島第一原子力発電所の国際社会への理解促進におけるIAEAの貢献に感謝の意を示し、引き続きIAEAと同協会の関係を深め、さらなる協力可能性等について意見を交わしたことを報告した。また、日本ブースの展示においては、次世代革新炉を中心とした原子力技術開発の展望や福島第一原子力発電所の状況などを紹介し、来訪者が計780名と昨年を100名以上も上回る盛況ぶりであったと伝えた。その他、オープニングセレモニーには日本政府代表である城内実科学技術政策担当大臣から挨拶を頂戴したことや、復興庁の協力により福島県浜通りの銘酒が来訪者に振舞われ、福島の復興をアピールする良い機会となるなど、ブース全体の充実ぶりを伝えた。 次に、OECD原子力機関(NEA)と韓国政府が主催した「第3回新しい原子力のロードマップ会議」に参加し、他国の原子力関係機関とともに共同声明を発表したこと、そして、毎年秋に同協会が実施している「原子力産業セミナー2027」の東京会場での速報を報告した。 原子力産業セミナー2027の東京会場では、来場者数と出展企業数が昨年より増加し、参加者アンケートにおいても全体的にポジティブな回答が多かったと述べた。この後、開催される大阪(9/27に開催済み)と福岡(10/18開催予定)会場においても、同じような盛り上がりが見られることに期待を寄せた。 その後、記者から、「原子力産業セミナーに来場した学生の関心等傾向は年々変わってきているのか」と問われ、増井理事長は、「同セミナーの現場に立ち会ったのは昨年が初めてだが、採用する企業側の熱意があふれていると感じた。学生らは、仕事の面白さや手ごたえ等キャリアアップに関する点を重視していると同時に、転勤の有無や住宅補助等の実利的な面にも着目しているという印象を受けた」と述べた。 また、記者から「原子力工学以外を専攻する学生への訴求や、今後、原子力人材の育成や確保に向けて、どういった手立てが考えられるか」と問われ、増井理事長は、「原子力発電所の運営には、土木、機械、電気、化学やその他事務系等、総合的な人材が必要であるため、原子力産業セミナーの意義について、今後さらに説明を重ね、幅広い学生に原子力産業の入口としての理解を促していく。また、当協会が実施している人材育成活動をさらに強化し、原子力産業界が人材を引き付けて長く留まってもらうための方策を考えていきたい」と課題と抱負を述べた。
- 30 Sep 2025
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東京電力 英社と廃止措置分野の情報交換協定延長
東京電力は9月12日、英国のセラフィールド社との情報交換協定を延長したと発表した。同日、締結式が執り行われ、東京電力の小野昭副社長とセラフィールド社のユアン・ハットン最高経営責任者(CEO)が協定に署名した。セラフィールド社は、英国原子力廃止措置機関(NDA)の傘下にあり、同国中西部に位置するカンブリア州にて広大な原子力施設を運営している。両社は、2014年9月に情報交換協定を初めて締結。東京電力にとって、廃止措置作業の経験を持った海外事業者と相互に知見を共有することは、安全で着実な福島第一原子力発電所の廃炉措置を進める上で重要な一歩となった。以来、両社は随時内容の見直しを行いながら協定を延長し、この度、2回目の協定延長の合意に至った。今後も、両社が共通して取り組んでいる課題を解決すべく、活発で開かれた情報交換を目指す。すでに、2018年度から東京電力の社員をセラフィールド社へ派遣するなど、福島第一原子力発電所の廃炉作業に向けて先進的かつ有用な知見の習得に取り組んでいるという。この度の協定延長を受けて東京電力の小野明副社長は「セラフィールド社と約11年間にわたり、廃炉分野において良好な協力関係を続けてこられたことを喜ばしく思う。すでに、確実で安全な廃炉プロセスの構築に資する成果を上げている。今回の延長合意は、両社の関係をさらに深化させ、発展させる新たな出発点となる」と期待を示した。
- 26 Sep 2025
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「原子力産業セミナー2027」昨年を上回る盛況 大阪 福岡でも開催予定
原子力産業界の人材確保支援と理解促進を目的とした「原子力産業セミナー2027」(主催:日本原子力産業協会・関西原子力懇談会)が9月20日、新宿NSビル地下1階大ホールにて開催された。同セミナーは、原子力関連企業や関係機関が一堂に集う企業説明会で、今年で20回目の開催。9月27日には大阪市、10月18日には、福岡市内でも開催される。主に、2027年に卒業予定の大学・大学院生・高専生、既卒の学生らが対象。東京会場の出展企業・機関数は52社と、昨年の46社を上回ったほか、来場者数も239名と、昨年の223名を上回る結果となった。また、文系学生が全体の25%を占めるなど、専攻学科を問わず、原子力産業に対して熱意のある学生の姿が多く見られた。採用する企業側も人柄や意欲を重視した柔軟な採用活動、各々の個性に応じたキャリア支援を打ち出し、学生らに熱心に自社紹介をする様子が見られた。人口減少に伴ない人材獲得競争が激化している原子力産業界の現状について、主催者である日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、「ここ数年、各企業の採用意欲の高さを感じているが、当協会が毎年実施している産業動向調査の結果を見ても、希望採用人数に到達していない会員企業が多い」と述べ、「人口減少に対応するためには、原子力産業界全体の省人・省力化が必要になるだろう」とコメントした。9月1日より「日本中で考えよう。地層処分のこと。」をテーマとした新CMを公開している原子力発電環境整備機構(NUMO)の担当者は、「CMを見て興味を持った」と話す学生が来場したことを踏まえ、地道な広報活動が採用活動にも良い影響を与えていると実感したと語った。また、NUMOのここ数年の採用人数は増加傾向にあり、「特に技術系の職種の採用を強化し、国内外の研究機関等との共同研究への参加を通じて若手人材の育成に力をいれている」と強調した。「地層処分事業の社会貢献性の高さに共鳴し、課題に誠実に向き合えるプロフェッショナルな人材を育んでいきたい」と、今回のセミナーで得た手応えと意欲を語った。今回、初出展したゼネコンの株式会社安藤・間は、茨城県つくば市に放射線実験室「安藤ハザマ技術研究所」を保有し、厚さ100cmの遮蔽扉を備えた高レベル実験室にて、各種材料の遮蔽性能試験や、がん治療などに用いられる医療施設の設計・施工のための技術開発を進めている。先般行われた「日本原子力学会 2025年秋の大会」に出展し、中性子の遮蔽性能を向上させた独自のコンクリート建材などを紹介したという。セミナーには、前述の「安藤ハザマ技術研究所」での採用を見越して出展したが、想定以上に文系学生がブースに多く来場したことを明かし、「当社は文系出身者が技術職に挑戦できる体制を整えており、そうした強みも採用活動にて発揮したい」と意欲を述べた。同じく初出展となった日本核燃料開発株式会社は、原子燃料や、原子炉を構成する材料等の研究・開発を行っている企業だが、担当者によると「3年ほど前から潮流が変わり、インターンシップや企業研究会に来場する学生数が増えた」と述べた。「決まった製品を作るのではなく、さまざまなニーズに合わせて研究や試験を行う会社であるため、自ら探究心を持って試行錯誤しながら取り組める人材を採用したい」と初参加に際しての意気込みを語った同じく初出展の西華産業株式会社は、エネルギー分野に強みを持つ総合機械商社として、関西エリアに拠点を多く構え、主に三菱重工グループの原子力発電関連設備の販売代理店の役割を担っている。同社の担当者は、「想定を上回る来場があり、大きな手ごたえを得た。来年度以降、新卒採用者数を増やす計画でいる。原子力事業は、当社が扱っている商材の一部ではあるが、関西エリアで原子力新設・リプレースのニュースを受け、当社としても良い潮流の中にあり、今後の採用活動に繋げていきたい」と意気込みを語った。
- 24 Sep 2025
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復興庁 福島復興局の新拠点を双葉町に設置
伊藤忠彦復興大臣は9月2日、福島復興局の体制を強化するため、来年度のできるだけ早い時期に、福島県双葉町の産業交流センターに新たな拠点を設けると発表した。福島復興局は2012年に設置された復興庁の地方機関で、福島市の本局以外に富岡町と浪江町に支所がある。しかし、この度の体制強化の一環として富岡支所と浪江支所を統合し、双葉町の新拠点にて一本化することとなった。また、新たに福島復興局副局長のポストを設けて新拠点のトップとして常駐させるほか、職員数も増やすという。新拠点では、地域住民の医療、福祉、学校などの生活環境の改善、営農の再開、事業者支援など多岐にわたる課題の解決に取り組む。同日の会見で、今回の統合でどのようなメリットが生まれるかを問われた伊藤大臣は「限られた職員数で、効果的・効率的に復興を推進していくために、新拠点で新たに一元的に業務を遂行することが適当だと考えた」と述べ、「両支所が担っていた業務は新拠点が担う。支援体制を縮小したわけではない」と強調した。また、新拠点を双葉町に置くことにした理由を問われた伊藤大臣は「来年度なるべく早い時期に新拠点を発足させたかったため、すでに地域の中核施設として機能する産業交流センターのある双葉町を選定した」と述べた。同センターは2020年10月にオープンし、貸会議室や貸事務所のほか、フードコートやレストラン、土産物店等の商業施設が入る複合施設となっている。
- 12 Sep 2025
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NEMS2025 海外13か国から計28名が参加
将来の原子力業界を牽引する人材の育成を目指した研修コース、「Japan-IAEA 原子力マネジメントスクール(NEMS)2025」が8月19日に開講し、東京大学にて開講式が行われた。NEMSは、2010年にイタリアのトリエステで初めて開催されて以来、延べ2146名(112の加盟国)が参加してきた。日本での開催は今年で13回目。アジアや東欧、中近東など、原子力発電新規導入国等における若手リーダーの育成を主たる目的としている。今年は、海外13か国(ブルガリア、エストニア、インド、インドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、シンガポール、スロベニア、タイ)から18名、日本からは10名、計28名の研修生が参加した。約3週間にわたる日程で開催され、東京大学本郷キャンパスでの講義やグループワークのほか、東京電力福島第一原子力発電所、東北電力女川原子力発電所とPRセンター、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力科学研究所の原子炉安全性研究炉(NSRR)と原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)、産業交流施設「CREVAおおくま」、「株式会社千代田テクノル大洗研究所」等へのテクニカルツアーを通じ、原子力に関連する幅広い課題について学ぶ。開催に先立ち、組織委員長の東京大学大学院工学系研究科の出町和之准教授は、研修生らを大いに歓迎し、研修生同士の関係性向上が将来の人脈に繋がると、指摘した。また、暑さの厳しい時期であることを鑑み、「体調管理に留意し、実りある時間にしてほしい」と研修生を労った。続いて挨拶に立った日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、IAEAをはじめとする関係各位に謝辞を述べた上で、「グループワーク等では、主体的に、そして積極的に議論に参加してほしい」と期待を寄せた。IAEAからは、原子力エネルギー局計画・情報・知識管理部(NEPIK)部長を務めるファン・ウェイ氏が登壇。同氏は、「世界的に原子力の専門人材やリーダーシップの必要性が高まっている」と指摘し、「各国政府や教育機関と連携し、若手の知識や経験の共有、国際的なネットワークづくりを進めていくことが不可欠だ」と述べた。最後に挨拶に立った上坂充原子力委員会委員長は、「他国の知見や政策を積極的に学び、自国にとって最適な形を模索する上で、IAEAの基準や国際的な取り組みを参考にすることは、皆さんの将来にとって重要な学びになるだろう」とNEMSの意義を強調。また、「今回のプログラムで自身の目で見て理解したことを、帰国後にご家族や友人にも伝えてほしい。知識や経験の共有が、国際社会全体の原子力の未来を形づくることにつながるだろう」と述べた。
- 22 Aug 2025
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全国知事会 各省庁へ提言書を提出
全国知事会で原子力発電対策特別委員会委員長を務める中村時広愛媛県知事は8月4日、原子力規制庁を訪れ、「原子力発電所の安全対策及び防災対策に対する提言」と題した提言書を金子修一長官に手渡した。また、中村知事は翌8月5日、経済産業省と内閣府を訪れ、加藤明良経済産業大臣政務官、城内実内閣府特命担当大臣(科学技術政策)、勝目康内閣府大臣政務官(原子力防災)に対し、同提言書をそれぞれ提出した。提言書は、国が責任をもって早急に取り組むべき「原子力発電所の安全・防災対策」について、3つの章に分けて記述。第1章では、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関し、特に廃止措置とALPS処理水を取り上げ、適切な支援と風評の払拭、原子力災害の風化防止対策など、政府一丸となって取り組むことを求めた。第2章では、原子力施設の安全対策に関し、2024年1月に発生した能登半島地震を受けて、原子力発電所の安全性や避難計画の実効性を懸念する声が上がったことを踏まえ、「全国に立地している原子力施設の安全確保に向けて、原子力規制委員会には、常に最新の知見を踏まえた新規制基準の見直し、厳正かつ迅速な適合性審査の実施、そして、その結果を国民全体に明確かつ責任ある説明を行ってほしい」と訴えた。また、同地震の教訓から得られた知見や安全研究の成果を、今後の対策に活かすことを求めた。そのほか、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定など、バックエンド対策の加速も要請され、使用済み燃料の最終処分地については「国全体で負担を分かち合うべき課題」として、都市部を含む全国的な議論と情報公開を呼びかけた。さらに、原子力分野の人材不足や技能継承への懸念を示し、研究開発や安全対策に必要な予算・人材を長期的視点で確保するよう国に求めている。第3章では、原子力防災の強化に関し、自治体が制定する原子力防災対策の幅が広がっていることを踏まえ、国が前面に立ち、予算面から立地自治体を支援する必要性を強調。2024年9月の原子力関係閣僚会議で確認された「避難対策を中心とする具体的対応方針」を踏まえ、自治体の意見を十分反映させることや、複合災害時における省庁間のスムーズな連携を求めた。
- 18 Aug 2025
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除染土の県外処分 月内にロードマップを策定へ
林芳正内閣官房長官は8月10日、就任後初めて福島第一原子力発電所や中間貯蔵施設を訪問し、廃炉に向けた取り組みを視察した。東京電力の小早川智明社長らとの意見交換会も実施し、「安全かつ着実な廃炉、福島の復興は政権の最重要課題。安全確保を最優先し、廃炉作業を一歩一歩進めてほしい」と発言した。その後、記者団の取材に対し、福島県に残る除染土の県外処分に向けたロードマップ(工程表)を、今月中に策定すると明らかにした。このロードマップには今後5年間で取り組むべき課題が盛り込まれ、候補地選定条件の具体化に入る方針だ。その上で「県外での最終処分に向けては、最終処分場の構造や必要な面積などをまとめた複数の選択肢を示しており、候補地の選定を進めたい。国民への理解醸成が特に重要で、政府を挙げて積極的な情報発信に取り組んでいく」と述べた。これらの除染土は、福島県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で一時的に保管されているが、2045年3月までに福島県外にて最終処分することが法律で定められている。政府はこの最終処分量を減らすために、放射性物質の濃度が低い土を、全国の公共工事の盛り土などに用いて再生利用する方針だ。その除染土処分の第一歩として政府は、総理大臣官邸にて除染土を再生利用することをすでに発表している。7月19日~20日にかけて、中間貯蔵施設から除染土を積んだ10トントラックが官邸に到着し、前庭にて、除染土の上から普通の土をかぶせ、表面に芝生を張る作業を実施した。除染土事業を管轄している環境省は今後、1週間に1回程度、放射線量を測定し、ホームページなどで情報を発信する方針。官邸での再生利用をきっかけに除染土への理解醸成につなげる狙いがある。
- 13 Aug 2025
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カドミウムの基準超え事件 一石四鳥の「あきたこまちR」が救世主へ!
二〇二五年四月二十一日 四月上旬、秋田県内の農事組合法人が出荷したコメから基準値を超えるカドミウムが検出された。コメは首都圏の広範囲の店で販売され、自主回収が進む。こうした悲劇的事件を避ける救世主が、カドミウムをほとんど含まない画期的な新品種「あきたこまちR」だということを重ねて強調したい。これを大きく報じないのは、メディアの怠慢だろう。基準超えは重大な失態 秋田県が四月四日に公表したリリースによると、農事組合法人・熊谷農進(秋田県小坂町)が出荷した約八六トンのコメの一部から食品衛生法で定められた基準値〇・四ppm(ppmは百万分の一の単位。一ppm=〇・〇〇〇一%)を超える〇・四七~〇・八七ppmのカドミウムが検出された。販売先は加工・卸売業者も含め、青森、茨城、埼玉、東京、神奈川、千葉など広範囲に及んだ。 基準超えのコメを知らずに販売した青森県の老舗米穀会社の社長は「裏切られた。農家の生産者として、全くプロ意識がなく、憤っています」(四月八日の青森朝日放送)と怒った。自主回収の対象となった数多くの販売店も同様の思いだろう。 基準超えのコメを一時的に食べても健康への影響はないが、今回の失態は「あきたこまち」のイメージ悪化につながる重大な事件だと認識したい。小坂町はかつて鉱山の町 不思議なのは、この基準値超えを報じるメディアが、カドミウムをほとんど含まない「あきたこまちR」が登場すれば、今回のような悲劇的事件を避けることができるという事実に触れていない点だ。 コメに含まれるカドミウムは稲が土壌中から吸収したものだ。今回の事件で基準超えのコメを出荷した熊谷農進はカドミウムが高くなった原因について、「去年は水不足が発生し、田んぼに水が入っていない状況が続いた」(四月八日の青森朝日放送)と語っている。どの農家もカドミウムの吸収を抑えるために夏場に水をはるのだが、その湛水管理に失敗したというわけだ。 熊谷農進のある小坂町にはかつて小坂鉱山があり、周辺地域の土壌は他の地域に比べてカドミウムの濃度が高かった。一九七〇年代に土壌汚染対策地域に指定され、九〇年代に対策は完了していた。そうした苦い過去を考えると、生産者はより強い注意深さが求められていたのだが、ちょっとした油断が今回の悲劇を生んだといえる。カドミウムとヒ素はトレードオフ ただ、生産者を責めるには酷な面もある。 首尾よく田んぼに水をはれば、確かにカドミウムの吸収は抑制されるが、逆に無機ヒ素の吸収は促進されてしまう。ヒ素はカドミウムと同様に国際がん研究機関(IARC)によるグループ分類で「発がん性あり」のグループ1に属する重金属だ。仮に湛水管理がうまくいっても、ヒ素が増えてしまうため、カドミウムとヒ素は相反するトレードオフの関係にある。 さらに言えば、田んぼに水をはると地球温暖化の原因となるメタンガスの発生量も増える。つまり、コメのカドミウムを低くしようとすると、ヒ素とメタンガスの両方が増えてしまうのだ。 日本列島を見渡せば、土壌中のカドミウムが高い地域があちこちにある。環境省によると、基準値を超えるおそれのあるカドミウムの土壌中濃度の高い地域(二〇二二年度)は秋田、富山、愛知、群馬、島根、福岡など九十七地域(面積約六七〇九ヘクタール)もある。 ではどうすべきか。結論を先に言えば、それを同時解決するのが「あきたこまちR」なのである。「あきたこまちR」なら、手間のかかる湛水管理が不要となるため、カドミウムが減るだけでなく、ヒ素もメタンも減らすことができる。そして、その先に日本人のコメを通じた健康リスクも低下する。つまり、カドミウムの吸収を抑制する新品種「あきたこまちR」はまさに一石四鳥の救世主なのである。カドミウムとヒ素の相対的リスクは高い では、なぜ日本の記者たちはこのことをあまり報じないのだろうか。それはおそらく、記者たちが日本のカドミウムのリスクの現状をあまり知らないからだろう。この「あきたこまちR」に関しては、このコラムで過去に2回(「放射線を活用したコシヒカリの画期的な育種に反対運動 いまこそ放射線教育を!」、「汚染土の行方にも影響する『あきたこまちR』問題 いまは関ヶ原の戦いなり!」)書いているので重複する説明は省くが、日本人がコメから摂取しているカドミウムとヒ素による健康リスクは、食品中に残留していてよく話題になる農薬や食品添加物のリスクよりもはるかに高いという事実を知っておく必要がある。 もちろんコメを食べて危ないという意味ではない。日本人が平均的にコメから摂取しているカドミウムやヒ素の量は、健康影響の目安とされる耐容摂取量より低い(耐容摂取量の数分の一‘程度)ものの、農薬や食品添加物(許容摂取量の百分の一~千分の一程度)と比べると許容量に近いため、相対的なリスクが高いという意味だ。 日本人はカドミウムの約四~五割をコメから摂取している。天候に左右されず、土壌中のカドミウムをほとんど吸収しない形質をもった「あきたこまちR」の存在意義が高いのは、これでお分かりだろう。自家採種は可能 こういう説明をすれば、どの消費者も「あきたこまちR」を食べたいはずだと思うが、残念ながら、それでも「あきたこまちR」を阻止しようとする反対運動が起きている。栽培意欲のある農家に対して、電話の抗議が来たり、「死ね」といったメールまで送られてくるケースがあるという。 反対派の主張の中に「県は一斉にあきたこまちRに切り替えるのではなく、従来の品種を栽培したいと思う個人の権利を守るべきだ」という声がある。確かに個人の選択を守ることは必要だろう。これに対して、県は「全農家に強制するものではない。従来の品種を希望する農家は自家採種してよい。県外産あきたこまちの種子を購入することも可能だ」と答えている。「あきたこまち」は品種登録されていないため、農家は自分で種子を採種(自家採種)できる。ならば個人の選択は守られているはずだ。難しい表示の問題 二五年産米からは、従来の「あきたこまち」も新しい「あきたこまちR」も、「あきたこまち」として販売される。これに対して、反対派は「従来の品種とあきたこまちRの区別がつかないため、あきたこまちRと表示して販売すべきだ」と訴える。 この表示の問題はちょっと複雑な心境になる。私としては「あきたこまちR」を食べたいので、たとえば「あきたこまちR」が「しんあきたこまち」といったネーミングになれば、「しんあきたこまち」を選んで購入したい。従来の「あきたこまち」を避けたいからだ。 一方、カドミウムやヒ素の含有量が高くても、従来の「あきたこまち」を食べたい人もいるだろう。そういう意味では表示の区別があってもよいと考えるが、消費者に混乱をもたらす恐れもあり、「あきたこまち」(秋田産あきたこまちの大半は「あきたこまちR」なので)という統一表記でもよいかと思う。乾田直播にも最適 今後、「あきたこまちR」が他県にも普及していくことを期待したいが、その理由は日本の稲作農業をさらに強くしたいという思いがあるからだ。カドミウムのコメの国際基準値は〇・四ppmだが、中国や香港、シンガポールは〇・二ppm、EU(欧州連合)は〇・一五ppmと日本より厳しい国もある。そういう国へコメを輸出する場合、カドミウムの基準値クリアーは必須要件だ。その意味からも「あきたこまちR」は優等生である。 さらに今後、日本の稲作では、田んぼに水をはらず、乾いた田んぼに直接、種子をまく乾田直播(かんでんちょくは)が増えていくだろう。この技術は育苗、代掻き、田植えという工程がなくなるため、大幅な省力化や低コストにつながる。そういう未来の稲作に対しても、「あきたこまちR」は大きく貢献できる。 知り合いの大手新聞記者に「なぜ、あきたこまちRの意義を記事にしないのか」と聞いてみた。すると「育種交配など問題が複雑で短めに分かりやすく書くことが難しい」との返答が返ってきた。難しいことを分かりやすく記事にするのが記者の仕事だ。記者の矜持をぜひ見せてほしい。
- 21 Apr 2025
- COLUMN
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迷走する除染土問題 今こそ「課題解決型報道」の出番だ!
二〇二五年四月三日 東京電力・福島第一原子力発電所事故で発生した除染土の再利用をめぐるニュースが目立ってきた。その中で中間貯蔵施設を抱える双葉町の伊沢史朗町長が町内で再利用を検討する考えを表明、停滞打破へ向けて大きな一石を投じた。いまこそ伊沢町長の勇気ある行動を結実させる「課題解決型報道」が必要ではないだろうか。除染土の四分の三は放射線量が低い 福島第一原子力発電所の事故では、放射性物質が周囲の住宅地や農地などに降り積もった。その除染作業で削り取られた土と草木がいま大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に保管されている。その総量は東京ドーム約十一杯分の約一四〇〇万立方メートル。国は二〇四五年三月までに県外で最終処分する計画だが、同時に除染土の四分の三は放射線量が低いため、公共工事に再利用して除染土の総量を減らす方針も決めている。 国は二年前、再利用に向けて東京都新宿区と埼玉県所沢市で実証事業を進めようとしたが、住民の反対に遭い、頓挫してしまった。その後、表立った前進はない。 最終的には福島県外の処分地を確保するとしても、まずは最終処分量を減らすことが必要だ。だが、現状ではその入り口でつまずいている格好だ。再利用とはどんなものか つまずきの要因は何なのか。それには除染土の再利用事業がどのようなものかを知ることが先決だ。環境省は「中間貯蔵施設情報サイト」で再利用の具体案をイラストを交えて詳しく分かりやすく示している。それによると、コンクリートなどで被覆された道路や鉄道、防潮堤などの盛土、廃棄物処分場の覆土、海岸防災林の盛土や土堤、土砂で被覆された農地などに除染土を再利用する。 環境省は除染土の再生利用にあたっては、「放射能濃度が低い土を使用し、分別作業によって草木などの異物を取り除き、品質の良い土に再生してから利用する」と解説する。現に福島県飯舘村の長泥地区では、農地の盛土造成や花、野菜の栽培などを行う実証事業を進めている。そこで収穫される野菜の放射性物質の量は通常の食品と差がないことも分かっている。 再利用先が人の密集する住宅地ではなく、公共的な場所であれば、反対する合理的な理由は見つからず、どの自治体や住民もスムーズに受け入れてもよさそうに思うが、合意を得ることは簡単ではないようだ。放射線量は年間1ミリシーベルト以下 安全性の面はどうだろうか。仮に放射線による健康影響があるなら、反対運動が起きても当然である。しかし、再利用される土は一キログラムあたり八〇〇〇ベクレル(放射性セシウム一三四とセシウム一三七の合計)以下だ。これだと、仮にその土の上で長く作業をしたとしても、健康影響の管理指標値とされる年間一ミリシーベルト(この数値を超えたら健康影響が生じるという意味ではない)を下回る。 日本人は宇宙線や大地、ラドンの吸入や通常の食品から年間平均で二・一ミリシーベルトの自然放射線を浴びている。放射線は人工も自然も同じで、人への健康影響に差はない。日本国内だけでも地域によって線量に高低差があり、年間で最大一ミリシーベルトくらいの差があることを考えると、除染土による年間一ミリシーベルト以下の放射線量であれば、健康への影響はないとみてよいだろう。 私の住む千葉県北端部は、原発事故後に放射線量の高いホットスポットにあたり、事故後の数年間は一ミリシーベルトを超えていた。しかし、周りの住民は特に気にすることもなく生活していたことを思い出す。これと比べると、除染土を再利用した道路や盛土はその上に住むわけではなく、どう考えても健康影響は無視できるレベルだ。 この除染土の健康影響について、日本経済新聞は「CT検査を受けた場合に浴びるのは一回あたり十ミリシーベルト程度で、その十分の一ほどにとどまる」(二〇二五年三月三日付)と形容して報じた。こういう報道を見ても分かるように安全性の面ではクリアできそうだ。今こそ必要な課題解決型報道 ならば、もっとスムーズにことが運んでもよさそうだが、ここで重要になるのがメディアの「課題解決型報道」である。これは先進的な事例となる発言や専門家の提言を紹介しながら、課題を解決していく報道である。この報道には、記者たちが課題をなんとか解決したいと望む意欲と情熱が不可欠だ。 この点で注目したのは、毎日新聞が一面トップ(三月十七日付)で「除染土 停滞打開へ一石」の見出しで報じた記事だ。記事は、伊沢史朗・双葉町長が「県外に持って行ってと言うだけでは国民理解はなかなか進まない」としたうえで「双葉町内で除染土の再利用を考えている」との発言を報じた。毎日新聞は「覚悟を決めたように言った」と形容し、伊沢氏の覚悟が停滞打破の一石になるとの期待を込めた。 伊沢氏のこうした発言は2月下旬にあったことから、毎日新聞は社説(三月三日)で「首都圏などの自治体は、町長の発言をわがこととして重く受け止め、行動に移す時だ」と他の自治体の首長に向けてはっぱをかけた。 この除染土の問題はNIMBY(ニンビー)と似ている。ニンビーは"Not In My Back Yard"(うちの裏庭にはやめてくれ)の略語。ある施設をつくる必要性をだれもが認めていながら、「自分の庭や周辺はイヤだ」という例だ。そのイヤな役目を批判覚悟であえて引き受けた伊沢氏の行動は称賛に値する。であるならば、メディアはもっと伊沢氏の勇気ある熱情と意図を個別のインタビューで紹介し、他の自治体の首長に向けて「あなたたちは見て見ぬふりをしていてよいのか」と迫るくらいの記事がほしいが、そういう迫真の記事はほとんどない。自治体の首長は除染土再生事業を見学せよ ただ、課題解決に向けた意欲を感じさせる記事もあった。読売新聞は三月十一日付朝刊で「除染土進まぬ理解」の見出しで全国の四十六知事に行った意向調査を載せた。新聞社自らが全国の知事に向けて「あなたは解決する気持ちをもっているのか」と尋ねて、知事の意向を調査した意義は大きい。 しかし、残念ながら、除染土の再利用について、「受け入れても良い」と答えた知事はゼロだった。山形、山梨、鹿児島、沖縄の四県は「容認できない」と答え、ほかは「どちらとも言えない」だった。最終処分場の受け入れについても、「条件次第で検討する意向がある」と答えた知事は秋田、千葉、兵庫、奈良、宮崎の五県にとどまった。 読売新聞は伊沢町長のインタビューも載せた。そこで伊沢氏は首都圏の自治体首長に対して次のように述べた。「のど元過ぎれば熱さ忘れるで、自分の所の問題でなければ迷惑施設はいらないということだ。…福島で作った電力が首都圏で使われていたことを、今では忘れられたような気がする」。 この記事を受けて、読売新聞の社説(三月二十四日)は「地元だけに問題を押しつけず、全国の自治体で再利用に協力すべきではないか」と呼び掛けた。 義侠心(ぎきょうしん)とは、正義のために弱い者を助ける行動を言う。今後、伊沢町長の勇気ある行動を生かすも殺すも、自治体首長の義侠心、そしてメディアの報道いかんにかかっている。 現在、環境省は福島県飯舘村で除染土を再利用する環境再生事業を進めている。現状を知ってもらう見学会(連絡先は中間貯蔵事業情報センター)も実施している。少なくとも福島の電気を利用してきた首都圏の自治体首長全員は、一度は見学すべきだろう。
- 03 Apr 2025
- COLUMN
